
▲(写真右より時計回りに)「地域DX部門」ファイナリストによるパネルディスカッション/「庁内DX部門」ファイナリストによるパネルディスカッション/「庁内DX部門」では福島市と富士フイルムシステムサービスによる官民連携の取り組みが大賞を受賞した/「地域DX部門」は横須賀市が大賞を受賞した
※下記は自治体通信 Vol.76(2026年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
限られた人数の職員で多様な住民ニーズに対応する自治体において、DX推進は不可欠といえる。日本DX大賞は、個別にカスタマイズされた複雑なシステムや縦割りの組織構造といった障壁を乗り越えて、目覚ましい成果をあげたDX事例を表彰するイベントであり、令和4年から毎年開催されている。令和8年7月22~23日、東京都中央区で「日本DX大賞2026 サミット&アワード」が開催された。本記事では、自治体の取り組みに焦点を当て、地域課題解決や住民サービス向上につながった「地域DX部門」と、自治体の組織改革や業務改善の成果をあげた「庁内DX部門」のファイナリストによる事例を紹介する。
AIによるデータ解析で、地域医療の課題解決に成功
日本DX大賞は、戦略性・変革力・価値創出・推進力・展開性の5つの観点で審査した結果、選定される。7月22日の「DAY1・Public Day」では、「地域DX部門」と「庁内DX部門」のファイナリストによるパネルディスカッションと授賞式が行われた。
「地域DX部門」の事例からは、行政サービスや地域課題解決に活かせる学びが得られた。磐田市(静岡県)の市立総合病院では、介護タクシー予約システムとして、無料のカレンダーツールを応用して維持費ゼロのシステムを開発した。配車予約の対応時間を70%削減し、4病院が共有するインフラに発展している。
玉名市(熊本県)では、住民に災害を「自分事」ととらえてもらうため、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」をベースに、VRで浸水を疑似体験するハザードマップを作成した。このデジタル基盤の活用先は、都市政策、関係人口創出、インフラ管理などにも広がっている。
横須賀市(神奈川県)では、各所管課に分散していた住民の医療・介護・健診データをAIでまとめて解析して、生活習慣による将来の発症や入院のリスクが高い対象者に保健指導を働きかけた。結果として、保健指導の参加者からは継続率95%、満足度94.7%と高く評価された。今後は、働きかけの対象を後期高齢者にも広げるという。
データの一元管理システムで、業務に要する時間を半減
「庁内DX部門」では、行政運営の変革事例が紹介された。福島市(福島県)は、被災者支援における手作業の負担解消のため、罹災証明書と住民基本台帳を紐づけて、被災者台帳を一元管理するシステムを開発した。対象者の抽出や進捗管理の自動化で、申請への対応時間が半減した。
日向市(宮崎県)は、庁内研修で実務における生成AI活用の定着を進め、利用率77.6%を達成した。その効果測定は主観的なアンケートに頼っていたが、利用ログを分類して業務削減効果を数値化した。そうして、生成AIを業務ごとに比較し、改善の判断ができる運用を実現した。
長崎県では、内製型の庁内DX展開を目指し、3年限定でデジタル改革推進専門チームを結成した。結成前は約2,000時間規模だったDXによる業務削減時間が、結成後の令和6年度に5,000時間超、令和7年度には1万4,000時間超と拡大した。改善手順の伝授や業務フロー更新の仕組みも構築し、チーム解散後も現場が自走できる体制を整えた。
玉名市(熊本県)は、市販の360度カメラなどを活用したインフラ点検技術を橋梁メンテナンスに導入して点検レベルを5段階に階層化した。これにより、約6割を占める健全橋の記録を非熟練技術者で代替できるようになり、現場作業約50%、事務作業約70%の削減に成功した。そうして、2年間で約1,900万円のコスト削減に成功した。
自治体が住民サービスを持続的に提供していくうえで、DX推進は避けては通れない。イベント参加者にとって、リアルな事例から得られた知見は、今後の自治体運営の大きなヒントになったはずだ。
地域課題解決や住民サービス向上の事例を表彰する「地域DX部門」の大賞には、横須賀市が選ばれた。健康分野の取り組みで、住民の生活習慣病や入院リスクを医療ビッグデータとAIで予測し、保健指導まで支援する点が高く評価された。審査員でANAホールディングス上席執行役員の津田佳明氏は、「航空機の運用・保守にもAIが活用され、不具合が起きる前にメンテナンスする予知保全にシフトしているため、深く共感できた」と話した。そして「このような取り組みが日本全体に広がっていく可能性を感じた」と期待を寄せた。
自治体の組織改革や業務改善の事例を表彰する「庁内DX部門」の大賞には、罹災証明発行後の被災者支援の状況を一元管理するシステムをアジャイル型で共同開発して、庁内業務の大幅削減に成功した福島市と富士フイルムシステムサービスが選ばれた。従来は申請が前提だった被災者への支援をプッシュ型で届けられ、申請1,000件あたりの対応業務が400時間から200時間に半減される点が高く評価された。審査員で湖南市(滋賀県)元市長の谷畑英吾氏は、「自治体と企業が一緒にひとつのパッケージをつくって横展開していく、『新しい時代』に入ったと感じる」と社会が変わる手応えを示した。

日本DX大賞2026 サミット&アワード 開催概要
| 日程 | 令和8年7月22日(水)~23日(木) |
|---|---|
| 会場 | TODAホール&カンファレンス東京(東京都中央区) |
| 主催 | 日本DX大賞実行委員会(日本デジタルトランスフォーメーション推進協会/ノーコード推進協会/Re:Innovate Japan) |
| 表彰テーマ | 地域DX部門/庁内DX部門/支援部門/サステナビリティ部門/価値創造部門/業務変革部門 |
| 選考 | 応募総数186件(過去最多)
書類審査を経て6部門からファイナリスト24件を選出 |
| 目的 | 全国から集まった優れたDXの実践事例を表彰・共有し、
日本のDXを次のステージへ進める |

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