
データ利活用自治体事例 #人口問題|寒川町、御殿場市、神戸市
現在、国はもちろん地方公共団体においてもEBPM(証拠に基づく政策立案)の取り組みが推進されており、地方自治体が抱えている現状や政策課題を的確に把握し、有効な対応策を選び、その効果を科学的に検証するため統計データの利活用が注目されています。
そこで、地方公共団体との共同研究や民間ビッグデータ活用等の委託研究などデータ利活用に関する先進的な研究を実施している総務省統計局 統計データ利活用センターが作成している「統計データ利活用事例集」より、データ利活用を通じて課題解決や政策実現などを実現した自治体事例を抜粋して概要を紹介します。
同事例集は「Data StaRt Award~地方公共団体における統計データ利活用表彰~」に応募した地方公共団体の協力を得て統計データ利活用センターが作成しています。
今回は、人口問題でデータ利活用を推進している寒川町(転入者アンケートの活用)、御殿場市(人口減少対策戦略の策定)、神戸市(施策に活きる独自の将来人口推計)のデータ利活用自治体事例です。
転入者アンケートの活用|寒川町
神奈川県 寒川町では、転入手続きの際の待ち時間を活用し、転入者のアンケートを実施しています。アンケート様式は県の統一様式を一部活用しており、回収率も非常に高く信頼度も高いものとなっています。
本アンケートは平成28年度より実施されてきましたが、活用は単純集計によるものでとどまっていました。
しかし、同町では社会増により人口が微増傾向にあることから、今後の人口施策を考える上で転入者アンケートは重要な基礎データとなりうることから、人口動態を分析する上で幅広に活用できるよう整理に努めました。
取り組みの内容
目的
転入のきっかけや住まいを決める際のニーズ等を把握することで、転入者のペルソナを描き、データに基づき根拠のある人口施策の立案、または立案につながる基礎資料とすることを目的としました。
データの活用方法
①転入者アンケートの活用によるペルソナの具体化:アンケートには、転入後の世帯構成の記載があり、世帯構成別にクロス集計等を実施し、他統計データと掛け合わせながら、ペルソナ像の整理を行いました。
活用としては、他データ分析結果を掛け合わせることで、効果的な施策立案の基礎資料としています。
例えば、世代別による転入超過数が人口増へどの程度寄与しているかを重回帰分析した結果と前述のペルソナを掛け合わせることができました。
②転出者アンケートの実施及び転入者アンケートとのギャップの把握:当町を住まいとして選んでもらった理由(当町の強み)や当町の弱みを把握するために、令和5年11月から転出者アンケートを開始しました。設問は同内容にし、他市町村へ異動する人の性質は同一なものと仮定し、転入者アンケートの結果と転出者アンケートの差を確認しました。今後の施策展開の一助としていく考えです。
なお、①、②ともに差の検証については、χ二乗検定を行っており、有意な差があったものを特徴として取り上げています。
利用したデータ
- 転入者アンケート
- 統計月報(人口動態)
- 住民基本台帳
- 転出者アンケート
統計データを利活用したことによるメリット
当資料等をはじめ、各種データ分析の結果は、マーケティングレポートと称して、毎月の幹部職員出席の会議の場で報告しています。「なんとなく〇〇な世帯が増えた」といったエビデンスに基づかない会話ではなく、アンケート結果に基づく会話がなされ、EBPMを推進する土台となりました。

寒川町の転入者アンケ―ト結果
人口減少対策戦略の策定|御殿場市
静岡県 御殿場市では、令和4年に日本人転出超過が県内最多を記録したことを受け、人口減少抑制の施策立案に向けた今後の方向性を検討するため「人口減少対策プロジェクトチーム」を発足。今後も活力あるまちを維持し、より活性化させることを目的とし、人口減少の分析・調査、有効的な施策をまとめた御殿場市人口減少対策戦略の策定を行いました。
取り組みの内容
目的
本市の人口減少の実態を明らかにするとともに、人口減少対策に資する有効的な施策を検討、実施し、人口減少に歯止めをかけることが目的です。
データの活用方法
人口減少の実態を明確化するとともに、近隣他自治体の現状と比較を行いました。
利用したデータ
- 総務省「国勢調査」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」
- 住民基本台帳
- 課税台帳
統計データを利活用したことによるメリット
比較対象としたい自治体のデータが、同一基準で一括入手できるため、検討用の基礎資料作りの省力化が図られました。
取り組みの効果・成果
同市は、まずは転出者を減少させることを期待。次の段階で移住定住にも注力し、人口減少に歯止めをかけ、市全体として人口の増加を目指しています。そのような中で、静岡県が令和6年5月20日に公表した静岡県市区町別推計の人口動態において、令和6年5月1日現在の人口が、前月比143人を記録(県内自治体第4位、政令市を除くと第2位)しました。

御殿場市人口戦略
施策に活きる独自の将来人口推計|神戸市
兵庫県 神戸市では市独自の将来人口推計を実施しており、さまざまな施策に活かしています。
①住民基本台帳の人口に基づき、小学校区別、男女別1歳ごとに毎年独自で推計しダッシュボードで庁内共有、②市民には区別で集計し直し「神戸人口ビジョン」として 2024年2月に市HP「神戸データラボ」で公表―をしているもので、さらに、③2023年に一部共有を開始していた暫定版の将来人口推計を大幅に見直し、有識者の意見も聞きながら、市独自で主に次の4点について補正を実施しました。
〈補正点〉
- 女性人口の分布の偏りの影響を受けにくい子ども女性比
- 合計特殊出生率の推移補正
- 死亡率の推移補正
- 建設予定を加味した移動の補正
また、神戸市独自将来人口推計のほか、世帯数の将来推計、児童館の入所予測、小・中学校の生徒数予測、障害支援学校の生徒数予測、ごみ焼却施設の稼働予測など、さまざまな将来推計(予測)を実施しているほか、将来人口推計と公共サービスの現状に関するさまざまなデータを組み合わせたダッシュボードなども作成しています。
これらの推計結果に基づき、保育園や小学校の最適配置検討、斎場の建て替え時期見直し、人口減少地域の公園事業のあり方検討などさまざまな公共サービスの検討・見直しを実施しています。
取り組みの内容
住民基本台帳の人口に基づき、小学校区別、男女別1歳ごとに毎年独自で推計しダッシュボードで庁内共有しています。また、市民には区別で集計し直し「神戸人口ビジョン」として 2024 年2月に市HP「神戸データラボ」で公表しました。
さらに2023 年に一部共有を開始していた暫定版の将来人口推計を大幅に見直し、有識者の意見も聞きながら、市独自で主に、①女性人口の分布の偏りの影響を受けにくい子ども女性比、②合計特殊出生率の推移補正、③死亡率の推移補正、④建設予定を加味した移動の補正―これらの補正を実施しています。
また、神戸市独自将来人口推計のほか、世帯数の将来推計、児童館の入所予測、小・中学校の生徒数予測、障害支援学校の生徒数予測、ごみ焼却施設の稼働予測などさまざまな将来推計(予測)を実施しているほか、将来人口推計と公共サービスの現状に関するさまざまなデータを組み合わせたダッシュボードなども作成しています。そのうえで、保育園や小学校の最適配置検討、斎場の建て替え時期見直し、人口減少地域の公園事業のあり方検討するなど、さまざまな公共サービスの検討・見直しを実施しています。
目的
- 神戸市全体で危機意識を共有し、基本計画策定などへの積極的な参画の促進
- 具体的な政策立案への活用、政策効果の最大化
- 効率的な政策効果の把握
データの活用方法
独自推計は、特に高齢者の推移の精度が高く、斎場の建て替え時期見直しといった予算規模の大きい施策にも反映されました。
また、保育所や児童館など、将来の利用者数を予測し、施設の最適配置の検討に使用されています。
さらに、小・中学校別の学年ごとの将来の生徒数や教室数を推計し、教育の将来についての議論に活用しているほか、将来世帯数も推計し、ダッシュボードで共有を開始しており、水道料金などの将来の収入見込みの推計に活用しています。
将来人口推計だけを見るのではなく、さまざまな公共サービスに関する現状のデータをダッシュボード化し、一緒に見て議論しています。
利用したデータ
- 住基データ(神戸市)を活用し、詳細な推計を毎年実施しています。
- 子ども女性比を求める上で、母の年齢の重みづけに「人口動態調査(厚生労働省)」における神戸市の「出生時の母の年齢」データを活用しています。
- 全国の「合計特殊出生率(厚生労働省)」の戦後からの推移を活用し、将来の推移を予測して子ども女性比の推移を補正しているほか、毎年の全国の「生命表(厚生労働省)」から得られる各歳の死亡率の推移を活用して将来の推移を予測してコーホート変化率を補正しています。さらに、建築予定の庁内データを活用し、直近の人口増見込みを補正しています。
- 公園や施設などをGISで管理しています。
統計データを利活用したことによるメリット
住基データを使うことで、毎年詳細な推計が可能になりました。
また、e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)のデータを使うことでデータ整形の手間を省力化でき、毎年の推計も容易になりました
さらに、将来人口推計だけを見るのではなく、さまざまな公共サービスに関する現状のデータをダッシュボード化し、一緒に見ることで、政策議論がしやすくなりました。
取り組みの効果・成果
鵯越斎場建替計画(令和5年2月)では、社人研の平成30年推計を基に将来火葬件数を予測していましたが、「神戸人口ビジョン(令和6年2月)」を基に将来火葬件数を予測し直した結果、将来人口とともに将来死亡者数も減少し、将来火葬件数が火葬能力を超過しない見通しとなったことから、新斎場の供用開始時期を4年後に変更しました。
また、世帯数の将来推計も小学校区ごとに算定し、要望があった所属にダッシュボードで共有しており、例えば水道料金収入の将来予測などに使用されています。
そのほかにも、こども園の最適配置、児童館の入所予測、小・中学校の生徒数予測、障害支援学校の生徒数予測、高齢者・障害者福祉施設のあり方検討、ごみ焼却施設の稼働予測、人口減少地域の公園事業のあり方検討、公共施設の配置検討など、実際に将来人口推計を使った政策立案が着々と進んでいます。

神戸市将来推計人口(全市、2025~2070)

.png)
.png)

