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イベント2024.05.13

秋田市など秋田県内の各自治体+秋田ケーブルテレビ 秋田県内の各自治体で導入が拡大する 「ケーブルテレビ事業者提供のIoT」(後編) 由利本荘市が水害対策IoTの実証実験で ケーブルテレビとの連携から得た効果

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一般社団法人日本CATV技術協会
一般社団法人日本CATV技術協会

ケーブルコンベンション2024 関連イベント「ケーブル技術ショー2024」(主催:(一社)日本CATV 技術協会/(一社)日本ケーブルテレビ連盟/(一社)衛星放送協会、後援:総務省(予定))が7月18日(木)・19日(金)に開催される(オンライン展示会:6月3日(月)~ 8月31 日(土))。今回の開催コンセプトは、「Let’s join DX with Cable TV!」。“ケーブルテレビで地域共創・地域DXを推進しよう”という意味が込められている。自治体と連携した地域DXで地域課題を解決していく、というケーブルテレビの新しい事業の推進は、今回のケーブル技術ショーの大きな目標だ。

そこで月刊ニューメディアは、自治体とケーブルテレビが連携した地域DXの注目事例を連載でレポートしている。第3回の今回は、秋田市など秋田県内の各自治体+秋田ケーブルテレビの事例の後編を掲載する。秋田県内の各自治体の間で、地元ケーブルテレビ事業者である秋田ケーブルテレビ(本社:秋田市)が提供する河川水位や積雪監視などのIoTソリューションの導入が広がりつつある。大手メーカーや大手通信事業者も自治体にIoTソリューションを提案している中、なぜケーブルテレビ事業者が自治体からIoTのパートナーとして選ばれているのか。

ケーブルテレビ事業者と自治体の双方を取材しレポートする後編の今回は、秋田ケーブルテレビの提案により防災IoTの実証実験を行った由利本荘市を取材した。同市は市内を横断する1級河川、子吉川の支流である大沢川の水位などを水位計と河川監視カメラで監視するIoTの実証実験を、2023年6~12月まで半年間実施した。同市が秋田ケーブルテレビを採用した理由や、地域産業振興や公共交通などの分野にも同社のソリューションの利用を拡大していくことの可能性などをレポートする。(取材・文:渡辺 元・月刊ニューメディア編集長)

由利本荘市中心部の旧本荘地域。同市の人口約7万人の半分が住む地域だが、内水氾濫による床下浸水や床上浸水が頻発している。同市は実証実験で、この地域に水位計や監視カメラを設置した

由利本荘市の中心部を流れる子吉川。
実証実験では子吉川の支流である大沢川の水位などを水位計と河川監視カメラで監視した

内水氾濫頻発地域に水位計や監視カメラを設置

由利本荘市では2022年夏に集中豪雨があり、中心部の旧本荘地域で床下浸水や床上浸水が発生した。この地域は同市の人口約7万人の半分が住む中心地だが、近隣河川の氾濫が原因で2年続けて被害が出た。気象庁のアメダスは同市中心部から離れた場所にあるため、アメダスには中心部の降雨が反映されないことがある。より細かいエリアでの気象変化を把握する必要があり、同市は内水氾濫が頻発する場所に水位計や監視カメラを設置することになった。

また、由利本荘市は1市7町の合併による自治体で、秋田県内で最も広く、神奈川県の半分や沖縄本島くらいの広大な面積を有している。「このような広さのため、災害時に市職員が現地に出向くよりも、水位計や監視カメラなどの技術を活用して業務効率を高めることが望ましいと考えています」(由利本荘市 総務部 危機管理課 危機管理班 主査 松永俊幸氏)。

しかも、同市の人口は年間1,000人ほど減少しており、市職員の確保が難しくなっている。「人口減少に伴い市役所の規模を縮小する必要がありますが、行政サービスを維持するためにはデジタルツールの活用が不可欠です。市の行政改革推進課には行政改革班とデジタル化推進班があり、それぞれ役所の業務改革とデジタル化の推進を担当しています。今後の人口減少に対応しつつ、行政サービスの維持・提供を目指して取り組んでいます」(由利本荘市 総務部 行政改革推進課 デジタル化推進班 班長 木内 崇氏)。危機管理の観点で人手不足は課題であり、IoTの活用への期待が高まっている。

由利本荘市 総務部 行政改革推進課 デジタル化推進班 班長 木内 崇氏

由利本荘市 総務部 危機管理課 危機管理班 主査 松永俊幸氏

由利本荘市役所

由利本荘市がケーブルテレビに委託した理由

由利本荘市が秋田ケーブルテレビの提供するIoTシステムを導入した理由は、大きく4つある。

まず第1の理由は、「秋田ケーブルテレビはIoTの水位計や監視カメラなどを用いた河川の水位監視や雨量計測を、秋田県内の他の自治体で実証実験や実運用として提供してきた実績があることです」(木内班長)。ケーブルテレビ事業者は自社の導入実績だけでなく、全国の他のケーブルテレビ事業者の豊富な事例を活用してソリューションを提供することもできる。このケーブルテレビ事業者のソリューション提案力は、自治体にとって大きなメリットがある。

第2の理由は、秋田ケーブルテレビが無線技術の豊富な実績を持っていることだ。今回の実証実験では、水位計や雨量計のデータ伝送にLPWA(Low Power Wide Area)の無線技術を活用したが、「もともと由利本荘市では無線技術を使った実証実験を検討していました。秋田ケーブルテレビの提案により、LPWA活用の実証実験ができたことは有意義でした」(木内班長)。監視カメラによる河川映像の伝送には、ローカル5Gや地域BWAなど大容量映像伝送に適した無線も重要となる。その点でも、ローカル5Gや地域BWAのインフラ提供が可能なケーブルテレビ事業者への委託には意味がある。「今後も秋田ケーブルテレビの提案を受け、新たなIoTへの挑戦を進めていきたいと考えています」(木内班長)。

2023年7月の豪雨災害で有用性が示された由利本荘市の防災IoT画面。
センサーのデータを可視化するケーブルテレビ業界の標準ダッシュボードにより、
河川の各地点での水位データなどがわかりやすく表示されている

第3の理由は、秋田ケーブルテレビが2023年度から由利本荘市の指定管理者として同市のケーブルテレビの運営を行っていることによる信頼関係だ。「秋田ケーブルテレビは指定管理者として由利本荘市と強い結びつきを持っており、両者の信頼関係はIoTなどの新たな取り組みを共同で展開する上で強みになっています」(木内班長)。

そして由利本荘市が秋田ケーブルテレビのIoTシステムを導入した第4の理由は、秋田ケーブルテレビが市と緊密なコミュニケーションを取り合い、地域課題の解決に取り組むことができる地元事業者であることだ。秋田ケーブルテレビは県内で事業を展開しているため、密接な連絡体制を取れる上に、地域の事業者として由利本荘市の地域課題を具体的に理解していることが大きい。

AIを利用した水位予測にも期待

由利本荘市は主にこの4つの理由から、秋田ケーブルテレビに防災IoTの実証実験を委託した。

その後、準備は急速に進み、2023年3月には由利本荘市の危機管理課、建設管理課、行政改革推進課デジタル化推進班、秋田ケーブルテレビが連携して水位計や監視カメラの設置場所を選定した。危機管理課は災害対策、建設管理課は河川や道路などの管理を担当している原課だ。行政改革推進課デジタル化推進班は市役所全体のデジタル化を調整する役割を担い、今回は危機管理課と建設管理課との間で調整役を果たした。検討の結果、水位計は4カ所、監視カメラは2カ所、内水氾濫が起こりやすい場所に重点的に設置することが決定された。

そして、実証実験体制の構築を開始し、同年6月から実証実験を開始した。「実験期間中は内水氾濫が発生するような大雨はありませんでしたが、水位の急激な上昇時に住民に危険を知らせる手段としての有効性を確認できました」(木内班長)。

今回の実証実験は一旦終了しているが、今後のシステムの実運用について現在検討中だ。「実運用する場合の水位計の設置場所や機能拡大の可能性については、引き続き検討を行っていきます」(木内班長)。内水氾濫対策に関しては、水位計による測定に加えて、水位予測への期待も高い。「実証実験期間中は水位上昇の頻度が少なかったため、十分な予測データの収集には至りませんでしたが、水位予測のデータを集めるための実証は今後も続ける必要があると思います」(松永主査)。

水位予測にはAIの活用が有効だが、全国のケーブルテレビ事業者の中には、自社は通信インフラを担当し、専門企業から提供されたAIソリューションを組み合わせて地域DXのシステムを展開している事例もある。このようなAI専門企業のソリューションは、ケーブルテレビ事業者が他の地域のケーブルテレビ事業者に導入されている優れた製品を横展開で提供することも可能だろう。AIの導入でもケーブルテレビ事業者に委託するメリットは大きい。

鳥獣被害対策のIoT導入も検討したい

由利本荘市は今回の水害対策用IoTの実証実験を実施し、その有効性を確認したため、今後は防災以外の分野でもIoTの活用を期待している。その一つが鳥獣被害対策への活用だ。昨年、同市では熊の出没が多く発生した。同市は昨年、大手通信事業者のシステムを使って、鳥獣被害対策用監視カメラの実証実験を行った。罠に熊がかかった際に担当者に通報する仕組みだ。

この実証実験はすでに終了しているが、同市はIoTによる熊対策が必要だと考えており、2025年度以降に農水省や環境省の補助金を活用して取り組む計画だ。熊対策には広範囲の伝送が可能なLPWAなどの無線を使ったIoTの活用が有効だ。

しかし、罠に熊がかかった際の振動を検知して無線で通知するといったセンサーのみのシステムは簡易だが、他の振動にも反応して担当者に通知が送られる可能性がある。「そのため、監視カメラとセンサーを組み合わせたシステムが適していると考えています。水害対策で実証実験したIoTは他の分野でも幅広く活用できます。由利本荘市はIoTの活用を進めており、秋田ケーブルテレビと共同で取り組むなど、鳥獣被害対策のIoT導入も検討したいと思います」(木内班長)。秋田ケーブルテレビはLPWAなどの無線を利用した鳥獣被害対策のIoTソリューションを提案したいと考えている。

秋田ケーブルテレビが用意している水位、積雪深、獣害などの各種IoTセンサー、カメラ

起業支援施設に必要な通信インフラ整備

その他の分野でも、秋田ケーブルテレビが提供するICTソリューションは活躍の場がありそうだ。

湊 貴信・由利本荘市長の2024年度施政方針では「最重要課題となっている人口減少の克服など、本市が直面する様々な課題の解決を図るため」、若者・女性の地域定着、地域産業の振興、安全安心に暮らせるまちづくりを施策の柱に据えることを表明している。同施政方針では地域産業の振興に関しては、「起業するなら由利本荘で」というキャッチフレーズで、起業支援施策の充実を打ち出している。

起業支援については、市が起業を検討する人々に助成を行っているが、市の中心部でもテレワークができる場所が少ないのが現状だ。そこで同市は、テレワークが可能な街であることを強みとする地域振興の取り組みに注力し始めている。その一例として、秋田県立大学の前にある本荘由利産学共同研究センターがある。「この施設は由利本荘市が助成しており、スタートアップ企業などがコワーキングスペースやオフィスとして利用できるよう安価に提供されています。同市への移住者もこの施設でテレワークを行うことができます。通信インフラとしては有線の光回線と高速Wi-Fi環境が整備されています」(松永主査)。

ただ、この施設は駅からやや離れているため、「駅に近い同様の施設があればさらに便利です」(木内班長)。同センターの通信インフラは秋田ケーブルテレビが提供するものではないが、同社は秋田駅前のオフィスビルでローカル5Gを整備し、スタートアップ企業などにオフィス環境を提供している実績がある。同社は今後、由利本荘市にもテレワーク用施設などへの通信インフラ整備を提案していきたいと考えている。

公共交通の新形態「AIオンデマンドバス」

由利本荘市が力を入れている安全安心に暮らせるまちづくりの一環としては、交通弱者への支援がある。同市では免許証を返納して車を使えなくなった高齢者も多く、同市は2023年度から移動市役所(行政MaaS)を開始し、専用車で直接住民の元を訪れ、行政サービスを提供する取り組みを実施している。県内での行政MaaSの運用は初めての試みであり、全国でも早期に導入された。

また、同市は移動が必要な住民に対して公共交通の維持を重視しており、免許を返納した高齢者へのバス運賃の助成を行っている。さらに、新しい形の地域交通への転換も進めていく方針だ。「市長の施政方針では、AIオンデマンドバス導入の検討のについて発言がありました。市は地域交通再編計画を公表し、AIオンデマンドバスの導入を計画しています」(木内班長)。今回のAIオンデマンドバスに関しては本格的な検討はこれから行われるようだが、秋田ケーブルテレビが提供するICTソリューションの活用も可能だろう。同社は秋田県北部の上小阿仁村で自動運転の実証実験に協力している。また、AIと水位計などのセンサーを組み合わせ、雨天時の水位予想などのソリューション提供も検討している。今後、秋田ケーブルテレビがAIを活用した公共交通ソリューションの提案を行う可能性もありそうだ。

由利本荘市が注力するこのような地域DXを市民が活用するためには、高齢者もスマートフォンなどのデバイスを使いこなす必要がある。同市では高齢者のDX活用への意欲が高く、スマホ教室や秋田県立大学の学生が高齢者に一対一で使い方を教えるスマホ相談会が好評を博している。これらの取り組みは募集がすぐに定員に達するほどの人気があり、市民の関心の高さがうかがえる。「多くの高齢者の方は、スマホアプリの利用などに高い興味を持っていまする。高齢者に地域DXに慣れていただき、防災メールや公式LINEなどをどんどん普及させていきたいと思います」(木内班長)。

IoTや通信などICTインフラを提供している実績を持つ地元事業者である秋田ケーブルテレビが、由利本荘市の地域DXに寄与する分野は今後さらに増えるだろう。そして、同市と同様に秋田ケーブルテレビと共同でIoTの実証実験や実運用を始める自治体も、秋田県内でさらに拡大していく勢いだ。

前編はこちら

3/1掲載:全国に広がる「自治体・ケーブルテレビ連携型」地域DX
3/14掲載:静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワークの連携事例(前編)
3/28掲載:静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワークの連携事例(後編)

地域課題解決のヒントが満載!「ケーブル技術ショー2024」

オンライン先行開催と技術展示会開催のお知らせ
~6月3日(月)オンライン先行開催、7月18日(木)・19日(金)東京国際フォーラムにて技術展示会開催!~
~「Let’s join DX with Cable TV !」 ケーブルテレビで、地域共創・地域DXを推進!~

■開催概要

会期

oオンライン展示会:2024年6月3日(月)~8月31日(土)
o技術展示会:2024年7月18日(木) 9:30~18:00・7月19日(金) 9:30~17:00

会場

oオンライン展示会:「ケーブル技術ショー2024」公式ウェブページ https://www.catv-f.com
o技術展示会:東京国際フォーラム B2階 ホールE

入場料

無料(入場登録制)

展示規模

94社・団体、219小間

同時開催

ケーブルコンベンション2024
※詳細はこちら ≫ https://www.catv-conv.jp/

▼「ケーブル技術ショー2024」活用ガイド

〔STEP1〕6月3日(月)~

•来場登録開始、公式ウェブページは“事前確認&情報収集の宝庫"

▶事前に課題や悩み事、トレンドを検索して、頼りになる出展者を見つけよう

〔STEP2〕7月18日(木)・19日(金)

•技術展示会で“新しい取引先やクリエイティブな解決策との出会い”

▶会場での実機確認やデモ体験に参加して、積極的に出展者と展示内容を質問しよう

〔STEP3〕7月22日(月)~8月31日(土)

•公式ウェブページで、“アーカイブ配信や追加情報の収集”

▶参加したセミナーや出会った出展者の展示内容を振り返り、商談をビジネスチャンスに結びつけよう

一般社団法人日本CATV技術協会
設立1975年7月1日
代表者名理事長 中村 俊一
本社所在地

〒160-0022
東京都新宿区新宿6-28-8 ラ・ベルティ新宿6F

事業内容

CATV施設に関する調査研究を行うとともに、CATV施設に係る技術の向上及び普及を図ることによって、CATVの健全な発達普及を促進するとともに、テレビジョン電波の受信に関する調査を行うことにより、テレビジョン電波の良好な受信環境の実現を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的に活動しています。
また、ケーブルテレビ業界関連の(一社)日本ケーブルテレビ連盟、(一社)衛星放送協会の3社主催による「ケーブルコンベンション」「ケーブル技術ショー」を開催し、ケーブルテレビサービス事業者ならびに地方公共団体など地域のステークホルダーを一堂に集め地域共創・地域DXを推進する展示会を開催しています。

URLhttps://www.catv.or.jp/
その他情報

https://www.catv-f.com/

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