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イベント2024.03.28

静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワーク 行政の組織の壁を越えて実現した「水DX」(後編) 「ケーブル技術ショー2024」カウントダウン特集 地域DXでの「自治体+ケーブルテレビ連携」事例①

このイベントを主催する企業
一般社団法人日本CATV技術協会
一般社団法人日本CATV技術協会

ケーブルコンベンション2024 関連イベント「ケーブル技術ショー2024」(主催:(一社)日本CATV 技術協会/(一社)日本ケーブルテレビ連盟/(一社)衛星放送協会、後援:総務省(予定))が7月18日(木)・19日(金)に開催される(オンライン展示会:6月3日(月)~8月31日(土))。

今回の開催コンセプトは、「Let’s join DX with Cable TV!」。“ケーブルテレビで地域共創・地域DXを推進しよう”という意味が込められている。自治体と連携した地域DXで地域課題を解決していく、というケーブルテレビの新しい事業の推進は、今回のケーブル技術ショーの大きな目標だ。

そこで引き続き、自治体とケーブルテレビが連携した地域DXの注目事例を連載でレポートしていく。今回は、後編として、引き続き、静岡県三島市とTOKAIケーブルネットワークによる、水に関する防災と観光案内の情報発信を行う「水DX」をレポートする。(取材・文:渡辺 元・月刊ニューメディア編集長)

 ※月刊ニューメディア2024年2月号に三島市の「水DX」についてTOKAIケーブルネットワークを取材した記事を掲載した。今回は、新たに同社への最新の取材と、自治体側への取材を行い、記事を大幅に追加・再構成し、2回に分けて掲載する。(月刊ニューメディア編集部)

災害時を考慮したシステム設計とサービス

三島市「水DX」。水に関する防災情報、観光情報をWebサイトで発信している

https://mishima-waterdx.com/

前回配信した本記事「前編」では、静岡県三島市の、行政組織の壁を越えたDXでの連携や、各種オープンデータの連携で、地域密着の事業者としてのTOKAIケーブルネットワークがその調整者の役割をいかに果たしてきたかを見てきた。

三島市の組織の壁を越えて連携する「水DX」

だが、水DXで同社が寄与したのはそれだけではない。通信事業者であるケーブルテレビのインフラや技術力が活用され、災害時でも強靭な高性能・高信頼の水DXを実現している。

以下の本記事「後編」では、三島市が通信事業者であるTOKAIケーブルネットワークにシステム構築を委託したことによる効果について、技術面からレポートする。

前編はこちら

水位計のデータ伝送には省電力無線(LPWA)を活用する方法もあるが、河川のライブカメラ映像のような大容量データは送ることはできない。河川情報に関しては、水位データだけでなく映像を確認したいというニーズがある。そのため水DXでは、TOKAIケーブルネットワークが免許を持っているLTE 4Gの地域BWAで映像を伝送している。

「水DX」の河川ライブカメラ映像。夜間でも赤外線で水面の様子を見ることができる

水DXの情報の見せ方や採用している技術にも、通信事業者であるケーブルテレビの知見が駆使されている。
「ライブカメラ映像だけでなく、水位をグラフ化してくれるのも嬉しい機能です。映像だけ見ても水位がどこまで上がっているのかはよくわかりませんし、水位計データも数字だけの表示では、それが多いのか少ないのか判断できません。そのため、ライブカメラ映像と水位のグラフやアニメーション表示の両方が必要です。アニメーションでは、川の断面図に現在の水位を動画で直感的に表現しています。ライブカメラや水位計のデータを視覚的に表現する上で、TOKAIケーブルネットワークにシステム構築を委託したことは大きなメリットとなりました」(三島市 企画戦略部 デジタル戦略課 課長補佐 デジタル推進係長 木本 智 氏)。

プロフィール
木本 智 氏
三島市 企画戦略部 デジタル戦略課
課長補佐 デジタル推進係長
木本 智 氏

「水DX」の水位情報。各河川の断面図にイラストやアニメーションで水位を視覚化している


ライブカメラ映像と水位情報などをわかりやすく提供する水DXは、住民や観光客だけでなく地域の防災を担う水防団にも活用されている。川の合流地点には、樋管の水門を開閉して水位を調整している場所がある。水門の操作を担当しているのは水防団で、これまでは現地に行って川の様子を確認して水門の操作をしていた。それが現在は、水DXで提供しているライブカメラ映像や水位情報を遠隔地から画面上で確認し、必要に応じて現地に行って水門を操作するようになった。大雨の時に川を確認しに行くという危険もなくなった。水害は夜中に起こる可能性もある。水DXのライブカメラ映像は、夜でも赤外線で水面の様子を確認することができる。

水DXシステムの安全性にもケーブルテレビのインフラや技術力が活用されている。

「水DXには弊社のデータセンターを使用しています。耐震性などの安全も確保されたシステムです。有事の際も想定し、災害時などに三島市の人口の10%の同時アクセスが集中してもパンクしないようにしています」(TOKAIケーブルネットワーク・川口課長)。

プロフィール
川口 尊 氏
株式会社TOKAIケーブルネットワーク
次世代成長戦略本部 広域展開部 広域展開推進一課 課長
川口 尊 氏

ケーブルテレビ回線の強みも活かされている。現在、三島市の通信加入世帯の約3割強でTOKAIケーブルネットワークのインターネットサービスが利用されている。これらの世帯では、一旦インターネットに出ることなく、閉域網で同社のデータセンターにつなぐことができる。災害時にインターネットが遮断された場合でも、水DXのWebサイトで川のライブカメラ映像や水位データを確認することが可能だ。インターネットに接続できる場合でも、3割の世帯が閉域網を使うことで、その分インターネットのトラフィックが少なくなるため、残り7割の世帯ではインターネットへのアクセスの集中を軽減できるという大きな効果がある。

「災害時に多くの世帯で、安定した通信で防災情報を見ることができるのは大きなメリットです。TOKAIケーブルネットワークは地元密着の企業なので、そういったところまで気を回してもらえるのはありがたいと思います」(三島市・木本課長補佐)。

全国の自治体でケーブルテレビが横展開

国や静岡県のオープンデータ、三島市のデータなどの連携、接続などはデータ連携基盤が担った。このデータ連携基盤は将来、都市OSに接続可能なインターフェイスも搭載している。今回の水DXのシステム構築は、この分野を得意とするシステムインテグレータに依頼した。

SIerの選定も大きなポイントだ。デジ田の申請締め切りが2月、採択が3月だが、国からの交付金の金額は全体の1/2なので、残りの1/2を市が予算化しなければならない。次年度4月からの議会には時期的に間に合わないため、6~7月の議会での採択となり、契約は8月。その年度内に納めなければならないため、8月から翌年3月末までの短期間でシステムを構築する能力がSIerには必要となるのだ。現在、成功している地域DXは、自治体のデータ連携基盤構築の豊富な経験値を持つSIerが手掛けているケースが多い。今回、このSIerには福井県の松久産業株式会社がパートナーとして協力している。

TOKAIケーブルネットワークは今後、今回の地域DXのシステムを全国のケーブルテレビ事業者に横展開で提供していく予定だ。水DXに限らず、映像、データ通信、AIの3 要素を組み合わせた地域DXを提供する。観光産業向けの人流解析などにも応用できそうだ。AIによる水位予測では、的中率の目標を上回る高い精度を確認している。また、解析処理には運用コストを考慮し、オンプレミス型のサーバーで演算を実施している。このことによりクラウド費用を大幅に低減化させた。同社の地域DXシステムは、すでに他県からの問い合わせがあり、今後実証実験も予定されている。

国と県のオープンデータを市のデータと連携させるサービスの提供も予定している。河川の上流が他の自治体を流れている場合は、水位予想には上流の別自治体のデータとの連携が必要であり、このサービスのニーズは多いと見込まれる。オープンデータ連携機能を非常に安価に提供し、そこにプライバシー保護付きAIカメラ、ウェアラブルカメラ、電波式水位センサー、流速センサーやBODセンサーなど、内水監視以外にもあらゆる住宅環境で適用できるようなIoTサービスをオプション追加し、収益化するといったビジネスモデルを検討している。

2023年に開催された水DX開始のセレモニーでは、豊岡武士・三島市長と鈴木光速・株式会社TOKAIケーブルネットワーク 代表取締役社長が登壇。

豊岡市長は「災害対策だけでなく水環境のPRにも活用できるこのシステムを活用して、水の豊かさと美しさを感じていただき、三島のファンが増えることを期待しています」と語った。

現在、水DXは他の自治体からも注目されている。静岡県内だけでなく台風の通り道で水害の多い九州や四国などの自治体からの問い合わせも三島市やTOKAI ケーブルネットワークに寄せられている。自治体とケーブルテレビ事業者が連携して地域DXに取り組んだ成功事例として、三島市の水DXは全国に認知が広がりつつある。

(終わり)

※次回は4月15日(月)に掲載いたします。

プロフィール

月刊ニューメディア』 編集長 渡辺 元
情報通信業界の変遷を第一線で取材してきたジャーナリスト。現在は、月刊ニューメディアの編集長として、情報通信政策やメディアビジネス、放送・通信技術などに関する最新情報を発信する一方、各種イベントでの講演活動などを通じて、情報通信業界の未来について提言。

地域課題解決に貢献する官民連携マッチングイベント・参加無料

3/1掲載:全国に広がる「自治体・ケーブルテレビ連携型」地域DX

3/14掲載:静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワークの連携事例(前編)

ケーブルテレビ事業者は、地域密着型の強みを活かし、地方公共団体や民間企業と連携することで、地域創生・自治体DXを加速させています。
そこで、「ケーブル技術ショー2024」では、地域創生・自治体DXを推進する地方公共団体とケーブルテレビ事業者を結びつけるオンラインマッチングイベントを6月に開催いたします。
例えば、以下のテーマで、双方のニーズに合致したマッチングを行うことが可能です。

・高齢者向けサービス
・買い物支援サービス
・防災DX情報配信システム
・教育ICT
・スマートシティ
・その他、地域創生・自治体DXに関する課題

【こんな方におすすめ】

デジタル推進とか、いろいろ言われているが、予算の伝え方を含めて、アイデアが欲しいし、サポートが欲しい、伴走者が欲しいというお困りごとを抱えているような、地方公共団体で地域創生・自治体DXを担当されている方

【開催期間】

6月3日(月)~7月12日(金)

【参加申込締切】

2024年4月5日(金)

【参加申込】

申込専用フォームから参加登録を行い、地域共創・地域DXなどに関する課題やニーズを登録しますと、マッチングリストをお知らせいたします。
面談の相手は、面談候補者の中から、希望条件に合致した方を自由にお選びいただけます。
希望条件に合わない場合は、お断り可能です。
オンライン開催のため、出張申請や経費精算が不要であり、自席からでも参加可能です。

一般社団法人日本CATV技術協会
設立1975年7月1日
代表者名理事長 中村 俊一
本社所在地

〒160-0022
東京都新宿区新宿6-28-8 ラ・ベルティ新宿6F

事業内容

CATV施設に関する調査研究を行うとともに、CATV施設に係る技術の向上及び普及を図ることによって、CATVの健全な発達普及を促進するとともに、テレビジョン電波の受信に関する調査を行うことにより、テレビジョン電波の良好な受信環境の実現を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的に活動しています。
また、ケーブルテレビ業界関連の(一社)日本ケーブルテレビ連盟、(一社)衛星放送協会の3社主催による「ケーブルコンベンション」「ケーブル技術ショー」を開催し、ケーブルテレビサービス事業者ならびに地方公共団体など地域のステークホルダーを一堂に集め地域共創・地域DXを推進する展示会を開催しています。

URLhttps://www.catv.or.jp/
その他情報

https://www.catv-f.com/

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