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先進事例2020.02.06

アプリの有効活用で子育て支援を充実【自治体(町田市、上ノ国町)の取組事例】

アプリの有効活用で子育て支援を充実【自治体(町田市、上ノ国町)の取組事例】

東京都町田市 /北海道上ノ国町 の取り組み

アプリの有効活用で子育て支援を充実【自治体(町田市、上ノ国町)の取組事例】

町田市 子ども生活部 子ども総務課長 石坂 泰弘
上ノ国町 保健福祉課 健康支援グループ 保健師 大橋 朗

近年、少子化対策が自治体にとって喫緊の課題となるなか、子育て支援策に力を入れ、その充実ぶりをまちの魅力としてアピールする自治体が増えている。町田市(東京都)も、そのひとつである。スマートフォンアプリを活用し、妊娠中から子育てに役立つ各種情報を市民に配信している。そこで、同市担当者にアプリ活用状況などを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.13(2018年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

東京都町田市データ

人口: 42万8,735人(平成30年5月1日現在) 世帯数: 19万4,970世帯(平成30年5月1日現在) 予算規模: 2,589億3,323万5,000円(平成30年度当初) 面積: 71.80km² 概要: 東京都の南端にあり、多摩丘陵の西部から中央部を占める位置に立地している。市制は昭和33年2月1日に施行され、東京都で9番目に生まれた都市。古くから横浜に向かう街道は「絹の道」とも呼ばれ、交通の要衝、商都として繁栄してきた。近隣からも多くの人たちが集まり、商圏人口200万人の一大商業都市へと発展している。

北海道上ノ国町データ

人口: 4,905人(平成30年4月30日現在) 世帯数: 2,505世帯(平成30年4月30日現在) 予算規模: 70億8,539万円(平成30年度当初) 面積: 547.7km² 概要: 15世紀ごろ、北海道南部の日本海側は上ノ国、太平洋側は下ノ国と称されていた。現在の町名は、勝山館を擁し、日本海・北方交易の拠点として栄えたこの地に上ノ国の名前が残ったことに由来する。

―これまでの町田市における子育て支援策の取り組みを聞かせてください。

 平成24年から独自に人口推計をつくり、人口の移り変わりを強く意識した政策を実施してきました。とくに、保育所施設の増強や子どもセンターの設置といった子育て世代の転入強化策には力を入れてきた経緯があり、それにあわせたシティプロモーションも行ってきました。その成果もあり、平成28年における14歳以下の転入超過者数は全国1位を記録しました。

 一方で、出生者数はほかの自治体と同様に減少傾向にあるため、妊婦さんや乳幼児を抱えた子育て世代への支援には、市として特別の課題感をもって臨んできた経緯があります。

―どのような課題を感じてきたのでしょう。

 市からの情報をいかに正確に迅速に伝えるかという課題です。町田市では、子育て情報を掲載した広報誌や専用ホームページを運営しているほか、さまざまな支援策も用意しています。しかし、それらの情報を必要とする人に即時性をもって伝える有効な手段が十分ではありませんでした。子育て世代の生活スタイルも変わり、働くお母さんが増えたり、情報取得の手法がスマートフォンに移ってくるなか、従来のような書面やホームページ以外の情報提供を摸索していました。そんなときに知ったのが、『母子健康手帳アプリ』でした。

―アプリの導入を決めた理由はなんですか。

 妊娠週数や子どもの月齢といった利用者の状況に応じて、その時期に必要な各種手続きや子育て関連の施策、制度などの情報を市から直接届けることができるからです。定期配信する文面を一度作成すれば、あとは子どもの月齢など登録情報に応じて利用者にタイムリーかつ自動的に配信できますので、市としても運用の負担が少ない。そうしたことが決め手となり、町田市では平成28年12月からアプリの利用を開始しています。

「切れ目のない支援」を実現し、選ばれる自治体に

―これまでの市による利用状況を教えてください。

 妊娠中の方には妊娠週数にあわせた健診情報を中心に、また出産後は定期健診や予防接種など子どもの月齢にあわせて、市の子ども生活部と保健所、双方からの情報を一括して適宜提供しています。それにより、「切れ目のない支援」の実現をめざしています。

―利用者の反応はいかがですか。

 市で実施したアンケートの結果によると、利用者の9割近くが市から情報が届くことを「便利だ」と感じているようです。また、「情報を取得して不安が軽減された」「育児への理解が深まった」と感じている人も8割にのぼるというデータもあります。情報の取得のみならず、母子手帳のバックアップとして胎児期からの健康記録を長期間、保管するツールとしても利用されているようです。6割以上の利用者がアプリに満足しているという結果を得ています。

―今後の活用ビジョンを聞かせてください。

 今年の冬はインフルエンザが流行し、保健所に問い合わせが多く寄せられました。そうした感染症情報なども即時性をもってお伝えし、子育て世代の不安解消につなげていきたいですね。

 町田市はもともと、結婚や子育てを控えた年代の転入が多い自治体です。そのため、市としても出産や子育てで不安を抱える方への支援体制をとくに充実させてきた経緯があります。アプリを有効に活用することで、そうした支援体制やサービスを実感してもらうきっかけをつくれるでしょう。市民はもちろん、その周りの方々にも「いいね」と思ってもらうことが、「選ばれる自治体」であり続けるためには必要だと考えています。

―上ノ国町は手厚い子育て支援を展開しているそうですね。

 はい。平成21年頃から町の人口減少が顕著になり始めたことを受け、子育て世代の定着をねらった施策を続けてきました。平成26年の保育料無料化以来、学校給食の無料化などの支援を打ち出してきました。また、経済的支援のみならず、1歳までの乳児健診のほか、町独自の乳児相談や戸別訪問といった直接的な支援も強化しています。

 一方で近年、上ノ国町でも働くお母さんが増えており、子どもが1歳を過ぎて以降は保健師と密に連絡をとれる機会が少なくなり、町からの連絡が行き届かなくなるケースもありました。経済上、健康上の問題などから、支援を必要とするお母さんは増えている現状もあります。そこで、町からの情報を随時配信し、必要とするお母さんに届ける手段として、『母子健康手帳アプリ』を導入しました。

―活用状況を教えてください。

 上ノ国町の場合、乳幼児の予防接種はすべて役場が取りまとめています。なかには、日程の都合上、月に1度しか接種機会がないものも。忙しい日常のなかで忘れずに受診できるように名簿を管理し、案内をするのは役場の仕事になりますので、毎月アプリから随時配信しています。

 現在は保健福祉課が中心にアプリを活用し、子育て情報を配信していますが、子どもが成長していくにともない、対応する役場の窓口は変わっていきます。今後は住民課や教育委員会などとも連携し、役場全体を巻き込んでアプリを活用していきたいです。そのうえで、出産前後にわたってしっかりと継続的に子どもの成長を支援していける体制をつくりあげるのが理想です。

『母子健康手帳アプリ』を知ったのは、3人目の子どもの出産直後でした。役場から、予防接種の予約や健診のお知らせが随時届くので、とても便利ですね。子どもが3人いると、忙しい日々のなかで、どの子の健診がいつだったか、ついつい忘れてしまうこともあります。その点、このアプリでは、子どもの月齢に合わせて事前にお知らせがつねに持ち歩くスマートフォンに届くので、スケジュールを忘れてしまうようなことはもうありません。日々の成長の記録がグラフで示されるので、ことあるごとに振り返り、育児を楽しめるのも、うれしい機能です。

●由香里さん 妊娠2ヵ月目に母子手帳を交付してもらった際に、パンフレットで『母子健康手帳アプリ』を知りました。現在も働いているので、どうしても仕事優先になってしまう日々のなか、いつまでに、どんな準備をしなければならないか、このアプリからの情報で確認しています。私は町田市で出産する予定なので、市からのお知らせを受け取れるのは、とても便利ですね。新しい情報は逐一チェックしていて、市の助成がある歯科健診や市主催の講座情報などを活用しています。家族と情報を共有できる機能もあるので、今後は主人と一緒に使いたいと思っています。

●可奈子さん 妊娠した当初はほかのアプリも活用していたのですが、妊娠6ヵ月目頃に『母子健康手帳アプリ』を知りました。出産後の育児期間でも使えるという点が便利だと思い、ダウンロードしました。

 初めての出産なので不安なことも多いのですが、アプリからはお腹の赤ちゃんの週数や月数に応じて、「いまはこんな状態ですよ」とか、「こんなことに気をつけてくださいね」といったお役立ち情報がたくさん届きます。自分の状態と重なる記事をチェックすることで、妊娠中の不安解消に役立っています。

●豊さん このアプリには、まだ生まれていない赤ちゃんの名前を登録でき、週数、日数がわかりやすい円グラフで表示されます。私自身はまだ利用していないのですが、妻のスマホに表示されたグラフをのぞきながら、「そろそろだな」と近づく出産を一緒に実感しています。

 このアプリは出産後にも利用できるのが、いいですね。出産一時金や出生届など、私がまかされている産後の手続きもありますが、わからないことも多いです。そんなとき、市から届くお知らせが役立つと思います。使い慣れるために、そろそろ私も利用しようと思っています。

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