森林環境譲与税の取り組み 自治体事例|森林の育てびと育成・確保対策事業、山仕事体験会の実施、都市部の児童と交流する「絆事業」を実施、こどもたちへの林業体験

田辺市、八戸市、大館市、小金井市の自治体事例
森林環境税および森林環境譲与税は、森林の有する公益的機能の維持増進の重要性に鑑み、市町村および都道府県が実施する森林の整備およびその促進に関する施策の財源に充てるため創設され、令和元年度に森林環境譲与税の譲与が開始されました。
森林環境譲与税の使途について、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法第34条の規定により、市町村においては、森林の整備に関する施策、森林の整備を担うべき人材の育成及び確保、森林の有する公益的機能に関する普及啓発、木材の利用の促進その他の森林の整備の促進に関する施策に要する費用に充てなければならないとされています。
そこで、林野庁がまとめた令和5年度の「森林環境譲与税の取組事例集(市町村・都道府県)」より、森林環境譲与税の取り組みについての自治体事例を抜粋して紹介します。
今回は、田辺市、八戸市、大館市、小金井市の森林環境譲与税の取り組み自治体事例をお届けします。
森林の育てびと育成・確保対策事業|田辺市
広大な森林面積を持つ和歌山県 田辺市では、森林経営管理制度による取組を推進し、林業の持続的発展及び森林の多面的機能の発揮を図るため、森林整備の担い手の確保が課題となっています。このため、人材育成・確保対策として、新たに現場作業員を雇用した林業事業体に対して市の間伐施業を優先的に配分する「森林(もり)の育てびと育成・確保対策事業」を実施しています。
森林経営管理法により、森林の経営管理における森林所有者の責務および市町村の役割が明確化された中、森林整備を担う現場作業員の育成及び確保が喫緊の課題となっていました。
工夫・留意した点
新規就業者に対する賃金等の直接的な支援ではなく、森林経営管理制度に基づき実施する間伐施業を優先的に配分する制度としました。そのことにより、以下の効果が期待されています。
①新たに現場作業員を雇用する林業事業体の安定的な事業量の確保
②新規作業員のOJT現場の確保
③森林経営管理制度を推進するための人材育成・確保
④森林経営管理制度に基づく間伐施業の推進
取り組みの効果
安定的な事業量が確保できることから、新たな雇用の後押しにつながることが期待されるほか、林業従事者が確保されることで、今後も間伐等の森林整備の推進が見込まれています。
事業費・実績
現場作業員を新たに雇用した林業事業体に間伐事業を優先的に配分
・現場作業員を新たに雇用した林業事業体に対して、森林経営管理制度に基づき実施する間伐施業を、特別枠として優先的に配分
・一定期間の安定した事業量を確保することで、OJTを通じた林業従事者の育成と確保を促進
【事業費】25,509千円(全額譲与税)
【実績】4事業体に対して計48haの間伐施業を優先的に配分(4事業体においては、計6名の新規雇用あり)

事業スキーム
山仕事体験会の実施|八戸市
青森県 八戸市では、今後、森林経営管理を進めるに当たり、施業範囲や事業量の増加が見込まれる一方で林業従事者のマンパワーが足りておらず、人材不足・後継者不足が課題となっています。そのため、市では、林業従事者の裾野を広げるため、林業未経験で山仕事に興味がある方を対象に林業を体験してもらい、森林・林業の関心を深めてもらう機会を創出し、林業の担い手確保に取り組んでいます。
工夫・留意した点
山仕事に興味のある方や、所有林を自ら管理するため、山仕事を体験してみたいという考えのある方を対象とし、無理のない範囲で楽しみながら体験し、実生活に取り入れることができる内容・プログラムとしました。
また、ヘルメットや防護ズボンを貸し出しすることで、入口のハードルを低くし参加者を募集しました。
取り組みの効果
林業や林業にかかる機械器具などへも関心が高まり、裾野を広げることにつながりました。
チェンソーの安全な使い方などを体験できたことが、実生活で使用する薪づくりなどにつなげられたほか、森林環境への関心も高められました。

薪割りの体験
事業費・実績
林業体験会の実施
・伐倒のデモンストレーション
・チェンソーの使い方の説明及び体験
・薪の作り方の説明及び体験
【事業費】165千円(全額譲与税)
【実績】10人

伐倒のデモンストレーション(左)、伐倒後の説明(中)、チェンソーの説明(右)
都市部の児童と交流する「絆事業」を実施|大館市
秋田県 大館市では、忠犬ハチ公がつなぐ縁として、東京都渋谷区と交流促進協定を締結しており、渋谷区から児童を招き、市内児童との様々な交流が続いています。本事業では令和4年度から、植樹や曲げわっぱ作りなど林業体験を行い、木材利用の普及啓発を行っています。
本事業を通じて、森林の大切さや木の素晴らしさ、地球温暖化の防止への森林の貢献などを学び、木材の民間利用を推進しています。
工夫・留意した点
秋田杉の歴史を学ぶために座学ではなく林内を散策し、実際に自然に触れ、私たちが住む地球への木の貢献を感じてもらえるよう工夫しているほか、講座も林内で行うことで、より興味・関心を持ってもらえる工夫をしています。
取り組みの効果
伝統工芸品である曲げわっぱの製作体験を行うことにより、木材が私たちの生活に密接に関わっていることを学べるほか、森林への興味・関心を高めることで、将来、森林を守り育てる人材の育成、林業の活性化や伝統工芸品の未来への継承につながっています。
事業費・実績等
渋谷・大館交流の絆事業
・秋田杉を使った曲げわっぱ作り体験
・秋田杉の林に囲まれる矢立峠を散策、地元講師による秋田杉の歴史
講座の実施
【事業費】2,335千円(全額譲与税)
【実績】渋谷区小学生20名参加(令和5年度)

曲げわっぱ作り体験(左)、秋田杉の歴史講座(中)、矢立峠散策(右)
こどもたちへの林業体験|小金井市
東京都 小金井市では、令和4年1月1日に発出した「小金井市気候非常事態宣言」を踏まえ、市教育委員会を中心に、地球環境保護に向けて、小さな事柄でも自分の力で取り組めるこどもたちの積極的な行動を推奨しています。
このため、小学6年生が山梨県で行う林間学校において、森林の育成、間伐および間伐材利用の重要性に関する体験学習を実施しています。
小金井市気候非常事態宣言を踏まえ、教育委員会は、地球環境保護に向けたこどもたちの自発的な行動に期待しており、自発的な行動には自らの考えが必要であり、自らの考えを形づくるには体験が必要との観点から体験学習を実施しています。
工夫・留意した点
森林に分け入って、森林の成り立ち、機能及び役割を探求する調査や、間伐や間伐材加工の体験など、体験を重視した学習プログラムとし、たくさんのこどもが森林内でほぼ丸一日中活動することになるため、安全確保や保健衛生上の観点から、現地での事前準備には相当の時間をかけています。
また、教育委員会だけでの実施が難しかったため、近隣の学術系団体、現地の林業会社及び森林所有者等の協力を得てスキームを構築し、協定書も締結した上で、実施しています。
取り組みの効果
森林の機能や森林整備の重要性を学ぶだけではなく、多くの自然現象との相関性を有する森林を多角的に捉える体験を通して、単に森林だけでなく、広く自然現象についても考え、理解できるプログラムとなっています。
そのため、森林にある生命や自然を慈しみ、育む心の涵養に寄与しています。
事業費・実績
森林体験事業
・探究学習(森林調査、動物調査、植生調査、土壌調査)
・林業体験(選木、間伐、枝払い、玉切り)
・間伐材活用(木道づくり、ベンチづくり、焚き火)
【事業費】4,998千円(全額譲与税)
【実績】市立小学校(9校)ごとに、計874名の児童が参加

レクチャーを受ける様子(左)、間伐体験(中)、木を倒す方向の説明(右)



