

これまで本連載では、多文化共生、子ども・子育て支援、女性活躍、障がい者支援を取り上げてきました。テーマはそれぞれ異なりますが、共通するのは、年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、誰もが必要な情報や支援にアクセスでき、地域社会の一員として参加できる環境をどうつくるかという課題です。
一例として、東京都によるインクルーシブな社会の実現に向けた、戦略策定、意識啓発、人材育成、地域の取組支援、デジタル技術を活用した社会実装などの複数の取組の中から、その一部を紹介します。
「インクルーシブシティ東京」を掲げる東京都
東京都は、2050年代のビジョンとして「インクルーシブシティ東京は多様な個性が輝きさらなる高みへ」を掲げています。これは、東京都の「2050東京戦略」戦略09「共生社会」に示されています。
同戦略では、人権尊重、障がいの有無にかかわらず誰もが輝ける社会、多文化共生、ユニバーサルデザインのまちづくりなどを政策目標として示しています。例えば、障害者雇用数の増加、多文化共生を推進する人材の育成、駅のホームドア整備、道路や公園のバリアフリー化など、意識や理解に関わる取組と、実際の生活環境を整える取組の両面から施策を進めています。
デジタル技術で社会課題の解決を目指す
東京都では、令和4年度からスマートサービスの都内実装を進めてきました。令和7年度からは、その後継事業として「社会課題解決に向けたスマートサービス実装事業」を実施しています。
この事業では、年齢、性別、国籍、心身の障がいの有無にかかわらず共生できる社会を「インクルーシブ」と捉え、デジタルサービスの活用によって、個人のエンパワーメント、手取り時間の増加、困りごとの解消などを目指しています。
事業の詳細を紹介する「Be Smart Tokyo Inclusive」では、スタートアップとサービス導入先となる自治体や企業などをつなぎ、スマートサービスの実装を支援する仕組みが示されています。
東京都の発表によると、令和8年度の事業では、最長3か年度にわたり、スタートアップ等のサービス実装を支援する事業者を公募し、1者あたり40件以上、合計80件以上の実装を目指しています。地域の課題を把握する自治体や団体と、新しい技術やサービスを持つ企業をつなぐことで、課題の可視化にとどまらない社会実装を目指す取組です。
企業と進める「心のバリアフリー」
ハード面の整備だけでなく、障がいのある人や高齢者などへの理解を広げ、必要な配慮を実践することも、共生社会には欠かせません。
東京都は、企業とともに「心のバリアフリー」を推進しています。従業員への意識啓発や多様な人への配慮に取り組む企業を、「心のバリアフリー」サポート企業として登録する取組を開始しました。さらに、その中でも先進性や波及効果などの観点から特に優れた取組を行う企業を、好事例企業として選定します。
人を育てる取組も進める
仕組みやサービスを整えるだけでなく、それを支える人を育てることも重要です。
東京都人権プラザの「インクルーシブシティ東京プロジェクト」では、子どもの権利に関する展示や、ユース世代とその周囲の大人を対象とした参加・体験型の学習プログラムを実施しています。
令和8年度には、差別や偏見の構造を学び、行動する傍観者について考える「人権ディフェンダー」の育成プログラムを、ユース向けとユース世代に関わる大人向けに展開しています。多様な人が共に暮らす社会をつくるには、制度や設備だけでなく、身近な場面で相手の立場を理解し、行動できる人を増やすことが必要です。
多文化共生を地域の仕組みとして進める
東京都では、日本人と外国人が共に暮らし、支え合う社会の実現に向け、生活上のさまざまな場面を支える取組を進めています。
例えば、東京都つながり創生財団では、外国人住民からの相談に対応する「東京都多言語相談ナビ」を運営しています。また、生活情報をまとめた東京都多文化共生ポータルサイト「TIPS」や、地域の日本語教室を探せる「東京日本語教室サイト」も提供しています。
このほか、日本語を母語としない子どもへの支援、行政や地域の支援者を対象とした「やさしい日本語」の普及、災害時の外国人支援体制づくりなどにも取り組んでいます。
多文化共生は、外国人向けの情報提供だけでなく、相談、教育、子育て、防災など、生活に関わる取組を地域の中でつなげていくことです。自治体においても、国際・多文化共生の担当部署だけでなく、関係する原課が連携して支援を届けることが求められます。
まとめ
インクルーシブな社会の実現に向けた東京都の取組は、理念を示す戦略、地域の環境整備、企業との連携、デジタルサービスの実装、人材育成、多文化共生など、多様な領域に広がっています。
これらは、すべて同じ方法で進められるものではありません。自治体の規模や地域の状況、住民が抱える課題によって、必要な取組は異なります。
一方で、共通するのは、支援を必要とする人を一方的に捉えるのではなく、当事者の声を踏まえながら、行政、企業、地域団体、住民がそれぞれの役割を担うという視点です。
多文化共生、子ども・子育て支援、女性活躍、障がい者支援という個別のテーマを、誰もが暮らしやすく、参加しやすい地域をつくるための取組として捉え直す。その積み重ねが、インクルーシブな社会の実現につながっていくのではないでしょうか。
ご関心のある自治体の方へ
東京都の「社会課題解決に向けたスマートサービス実装事業」では、自治体や企業がサービスの導入先となることを通じて、スタートアップの実装を支援する枠組みが用意されています。Be Smart Tokyo Inclusive × CTCでは、都市課題の解決に挑む自治体・企業からの応募を随時受け付けています。
関連リンク
連載記事
- 第1回 インクルーシブとは何か――地域・行政サービスで考える意味
- 第2回 多文化対応から考える、インクルーシブな住民サービス
- 第3回 子ども支援から考える、インクルーシブ施策の可能性
- 第4回 女性活躍から考える、働き続けやすい環境づくり
- 第5回 障がい者支援から考える、誰にとっても使いやすいサービス
連載で紹介したスタートアップ
多文化対応(第2回)
- VMFi ― リアルタイム多言語翻訳ソリューション
- いろはな株式会社 ― 外国人雇用管理プラットフォーム
- Trash Lens ― AIを活用したごみ分別アプリ
子ども支援(第3回)
- 株式会社デジリハ ― リハビリ・療育・教育向けデジタル支援ツール
- アソビュー株式会社 ― 子どもの体験格差解消プロジェクト
- SOZOW株式会社 ― オンラインの学び・居場所
- コングラント株式会社 ― 寄付DXシステム
女性活躍(第4回)
障がい者支援(第5回)
- 株式会社よむべえ ― 音声読書器「よむべえシリーズ」
- 株式会社プライムアシスタンス ― 視覚障害者向け遠隔サポート「アイコサポート」
- 株式会社Ashirase ― 歩行ナビゲーション「あしらせ」
- 株式会社袖縁 ― 要配慮者と支援者をつなぐアプリ「袖縁」
東京都の関連事業・取組
- Be Smart Tokyo Inclusive(社会課題解決に向けたスマートサービス実装事業)
- Be Smart Tokyo Inclusive × CTC
- 東京都スマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo」
- 2050東京戦略 戦略09 共生社会
- 連載note「CTC BeSmartTokyo<Inclusive>」
参考資料
2. 東京都「令和8年度社会課題解決に向けたスマートサービス実装事業」報道発表(令和8年6月15日)
3. Be Smart Tokyo Inclusive「事業内容」
4. 東京都「心のバリアフリー」サポート企業・好事例企業 報道発表(令和8年9月1日)

| 会社名 | 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 |
|---|---|
| 設立 | 1979年7月11日 |
| 資本金 | 217億6300万円 |
| 代表者名 | 新宮 達史 |
| 本社所在地 | 〒105-6950 |
| 事業内容 | CTCは「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」という使命のもと、先進のITソリューションを組み合わせ、お客様のデータ活用やデジタルトランスフォーメーションを支援するとともに、社会課題の特定や解決に努めています。 |
| URL | https://www.ctc-g.co.jp/ |
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