
図1 多様な住民を前提に、地域や行政サービスを設計する――インクルーシブな地域づくりのイメージ

「インクルーシブ」という言葉を、行政や地域サービスの文脈で考えるとき、その核心はシンプルです。年齢、性別、国籍、障がいの有無、家庭環境、働き方などの違いがあっても、必要な情報や支援、機会に届きやすいこと。行政や地域サービスが、そうした多様な住民を最初から前提に設計されていること。そこに、インクルーシブという考え方の核心があります。
行政サービスは、すべての住民に公平にサービスを提供することを基本としています。そのうえで、いま改めて問われているのは、サービスが多様な住民に「届いているか」という視点です。日本語での情報取得に不安がある方、窓口に来庁する時間を取りづらい子育て世帯、移動やコミュニケーションに支援が必要な方、いわゆる「制度の狭間」に置かれやすい方など、想定される利用者像は多様化しています。一人ひとりのニーズに応じて、必要な人に必要な情報や支援が届くサービス設計が、これからの行政運営に求められています。インクルーシブとは、特別な配慮を加えることではなく、地域や行政の仕組みそのものを、多様な住民が利用しやすい形に整えていく発想です。
図2 窓口・情報・参加のしやすさを多様な住民の視点から見直す

なぜ今、このテーマが重要なのでしょうか。高齢化や人口減少だけでなく、単身世帯の増加、共働き世帯の一般化、外国人住民の増加などにより、暮らしの困りごとは一つの分野だけでは捉えきれなくなっています。令和5年版厚生労働白書は、属性別に展開されてきた公的な制度では支援が難しい「制度の狭間」の課題が表面化していることを示し、「制度から人を見る」のではなく、「その人の生活を支えるために何が必要か」という観点を改めて重視することが必要だと述べています。求められているのは、制度の区分で線を引く支援ではなく、生活の実態に寄り添う支援です。
総務省「2040年頃から逆算し顕在化する地方行政の諸課題とその対応方策」でも、新たな技術を基盤に人や地域、情報等がつながる「ネットワーク型社会」において、他の地方公共団体や多様な主体と連携していく視点の重要性が示されています。あわせて、外国人住民の増加を見据えた「国籍等に関わらず暮らしやすい地域社会づくり」、年齢や性別等に関わらず、多様な住民が自分らしく生活できる環境の整備の必要性も指摘されています。インクルーシブは、福祉や人権の分野にとどまらず、これからの自治体経営や公共サービスの持続可能性そのものに関わるテーマです。
多文化共生、子ども・子育て支援、女性活躍、障がい者支援といったテーマは、別々の政策分野であると同時に、「だれ一人取り残されない地域をどうつくるか」という共通の問いでつながっています。やさしい日本語や分かりやすい案内表示は、外国人住民だけでなく地域全体の情報の届きやすさを高めます。移動・情報・施設利用のしやすさを見直すことは、結果として、だれにとっても利用しやすい地域づくりにつながります。個別のテーマに見えても、その根底にはユニバーサルな視点という共通の設計思想があります。
もう一つ大切なのは、「支える側」と「支えられる側」を固定的に捉えないという視点です。人はライフステージや状況の変化によって、支援を受ける立場にも、支援する立場にもなります。障がいのある方や外国人住民も、支援の対象であると同時に、地域を形づくる担い手です。インクルーシブな地域づくりは、一部の方のための特別な施策ではなく、住民一人ひとりを地域の構成員として尊重し、参加や利用のしやすさを高めていく、地域全体の取り組みです。
実際、自治体と民間が連携し、インクルージョンを地域課題解決の軸とする動きも広がっています。自治体通信「インクルージョンを軸とした共創プロジェクトのご案内」では、さまざまな背景をもつ住民が安心して暮らせる共生社会の実現が、全国の自治体に共通する重要なテーマとして整理されています。東京都の「Be Smart Tokyo」の中で展開される「Be Smart Tokyo Inclusive」も、インクルーシブをテーマとするスマートサービスの社会実装を後押しする取り組みです。本連載では、多文化共生、子ども・子育て支援、女性活躍、障がい者支援などのテーマを通じて、「地域サービスは、最初から多様な住民を前提に設計されているか」という問いを共有していきます。
CTCがインクルーシブに取り組む意義
CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)グループは、企業理念「Challenging Tomorrow's Changes」のもと、マテリアリティの一つに「ITを通じた社会課題の解決」を掲げ、「すべての人にとって優しく使いやすいIT」で安心・安全な暮らしを支えることを目指しています。多様な住民を前提とした地域・行政サービスの実現は、この考え方と重なります。本連載を通じて、自治体や地域の皆さまとともに、インクルーシブな社会のあり方を考えていきたいと思います。
参考資料
1.令和5年版 厚生労働白書 第1部第3章
2.総務省「2040年頃から逆算し顕在化する地方行政の諸課題とその対応方策」
3.自治体通信「インクルージョンを軸とした共創プロジェクトのご案内」
4.東京都スマートサービス実装促進プロジェクト Be Smart Tokyo
5.Be Smart Tokyo Inclusive「本事業について」
6.CTCグループ企業理念/サステナビリティ方針/マテリアリティ
(https://www.ctc-g.co.jp/sustainability/materiality/)

| 会社名 | 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 |
|---|---|
| 設立 | 1979年7月11日 |
| 資本金 | 217億6300万円 |
| 代表者名 | 新宮 達史 |
| 本社所在地 | 〒105-6950 |
| 事業内容 | CTCは「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」という使命のもと、先進のITソリューションを組み合わせ、お客様のデータ活用やデジタルトランスフォーメーションを支援するとともに、社会課題の特定や解決に努めています。 |
| URL | https://www.ctc-g.co.jp/ |
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