自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. イベント
  3. 富山県射水市+射水ケーブルネットワーク 防災・産業・教育・観光振興など多分野でIoTを導入 能登半島地震の避難行動分析で地震・津波対策強化 「ケーブル技術ショー2024」カウントダウン特集 地域DXでの「自治体+ケーブルテレビ連携」事例③
イベント2024.05.30

富山県射水市+射水ケーブルネットワーク 防災・産業・教育・観光振興など多分野でIoTを導入 能登半島地震の避難行動分析で地震・津波対策強化 「ケーブル技術ショー2024」カウントダウン特集 地域DXでの「自治体+ケーブルテレビ連携」事例③

富山県射水市+射水ケーブルネットワーク 防災・産業・教育・観光振興など多分野でIoTを導入 能登半島地震の避難行動分析で地震・津波対策強化 「ケーブル技術ショー2024」カウントダウン特集 地域DXでの「自治体+ケーブルテレビ連携」事例③
このイベントを主催する企業
一般社団法人日本CATV技術協会
一般社団法人日本CATV技術協会

7月18日(木)・19日(金)に開催されるケーブルコンベンション2024関連イベント「ケーブル技術ショー2024」は、先行してオンライン展示会が6月3日(月)から開催される。※8月31日(土)まで。

今回の開催コンセプトは、「Let’s join DX with Cable TV!」。“ケーブルテレビで地域共創・地域DXを推進しよう”という意味が込められている。自治体と連携した地域DXで地域課題を解決していく、というケーブルテレビの新しい事業の推進は、今回のケーブル技術ショーの大きな目標だ。
そこで月刊ニューメディアは、自治体とケーブルテレビが連携した地域DXの注目事例を連載でレポートしている。

富山県射水市は射水ケーブルネットワークが提供するIoTをさまざまな分野で多数導入し、水害予防から産業、教育、観光振興、そして地震・津波対策まで、地域DXを急速に強化している。観光振興の目的でイベントなどの人流データの計測・分析をするために導入したロケーションアナライザーは、能登半島地震での市民の避難行動の実態や課題の抽出にも活用され、地震・津波対策強化の取り組みが進められている。自治体がケーブルテレビ事業者と連携した地域DXの成功事例として注目されている射水市のIoT事例をレポートする。(取材・文:渡辺 元・月刊ニューメディア編集長)

市内の全保育園の全室にIoT を導入

射水ケーブルネットワークが提供するIoTの射水市への導入が拡大している。最初に導入されたのは積雪深センサーであり、その後、除雪車位置情報や消雪装置の稼動監視といった雪害関連のIoTが導入が検討された。次に、豪雨による浸水被害の事案があったため、排水路の水位監視センサー、雨量計、排水路の堆積物センサーも導入された。排水路の堆積物は市役所の担当者がパトロールして監視していたが、IoTで遠隔監視し、堆積物が一定量に達したときだけ掃除を行うように変更された。
その後、ため池の水位・雨量監視センサー、イノシシの罠センサー、海の環境を把握するためのICTブイが導入された。

「ICTブイの目的は、漁師さんが出漁前に潮の強さや方向、風向、風速を把握するためのものです。漁師さんは燃料費や氷材、人件費を節約し、無駄な出漁を避けるために、出漁前に海の状況を知りたい場合もありますし、船の操縦にも役立つそうです。現在、新湊漁業協同組合の約150人の漁師さんが毎日利用しており、漁に不可欠なシステムとなっています」(射水ケーブルネットワーク株式会社 取締役事業本部長 渡邊正樹氏)。

射水ケーブルネットワーク株式会社 取締役事業本部長 渡邊正樹氏

その後、温湿度CO2センサーを市内の全保育園の全保育室に導入した。これにより、保育士が手書きで1日3回記録していた作業が、5分に1回自動記録され、警戒値が出るとメールで通知される仕組みになったため、大幅な業務改善が実現した。保育園でのIoT導入の効果は大きく、保育士の温湿度管理の作業時間は従来の1/10以下に減少し、データの記録頻度も従来より細かくなった。保育室だけではなく給食室の食材管理にも利用されており、夏は熱中症対策、冬はインフルエンザ対策、何かあった時の状況把握、エアコンの効き具合の確認など、用途は多岐にわたる。

また、IoTではないが、昨年7月の豪雨で多大な被害が出たため、浸水被害が多い地区に監視カメラを設置した。設置した台数はこれまでで40カ所以上に上る。緊急時には、ケーブルテレビのコミュニティチャンネルで監視カメラの映像を放送し、視聴できるようにしている。

大手SIerに比べ低コストで導入可能

今年に入ってからも、射水市でのIoTの導入台数が少し増加した。射水ケーブルネットワークが提供するIoTが多くの用途で導入され、拡大しているのは、同社が信頼されていることと、導入されたIoTが実際に効果を上げていることが評価されている結果だ。同社が提供するIoTの導入が拡大している要因には、低価格で提供していることも挙げられる。大手SIerは大規模プロジェクトで大きな利益を上げることを重視しているが、「射水ケーブルネットワークは住民に有益な情報を提供することを重視しており、利益よりも市民からの信頼を大切にしています」(渡邊本部長)。その結果、多数の導入が進んでいる。

IoTの導入費用については、水位監視センサーが1カ所20万円程度で導入でき、大手SIerに比べて安価だ。イニシャルコストだけでなくランニングコストも低い。しかし、利益を目的としていないとはいえ、ビジネスとしては成り立っている。最初は失敗も多く赤字だったが、その経験を事業展開に生かし、現在は大きな利益は出ていないものの、ビジネスとして成り立っている。利用する射水市にとっても、射水ケーブルネットワークのIoTがビジネスとして成り立っていることは、継続的なサービス提供やメンテナンスに対する安心材料となっている。

射水ケーブルネットワークは、センサー1個の導入からでも対応している。土地勘が他社より優れており、迅速な対応が可能であることも、導入増加の要因だ。

「例えば、センサー設置の要望があれば、その日のうちに現場を下見し、翌日には設置の説明や提案に行くこともあります。罠センサーは1個5,000 円と低価格ですが、そのような低価格案件でも迅速に対応しています。さらに、土地勘を活かして自治体と同じ目線で会話をしています」(渡邊本部長)。

地域のために尽力していることが、市役所から信頼されている要因になっている。

 射水市のIoT導入では、市役所の「IoT利活用検討会議」が果たしている役割も大きい。同検討会議は市のDX推進担当課が事務局を務め、各課の担当者と定期的に会議を開いている。会議では、各担当課からの悩みや課題に対してIoTの提案が行われている。射水ケーブルネットワークもこの会議に参加しており、多様な部署からの相談に対応している。

射水ケーブルネットワークが射水市のIoT利活用検討会議に参加している経緯は、同社が検討会議の設置を提案したことに始まる。令和元年頃、スマートシティやコンパクトシティが自治体で注目されていたが、射水市はまだ取り組んでいなかった。そこで、同社が勉強会の開始を提案し、市もそれに応じて勉強会を開始した。同社の渡邊本部長が全国の自治体のIoT導入事例を調査し、資料を作成して紹介したり、地元大学の研究者を招いて関連研究を紹介したりした。この勉強会が検討会議へと発展した。射水市の地域DXやIoT導入の推進の最初のきっかけを作ったのは射水ケーブルネットワークだといえる。

ケーブルテレビ業界での協力関係を活用

射水ケーブルネットワークのIoTに使われているセンサーは、それぞれ専門の会社の製品を使用している。自社で選定した製品だけでなく、他のケーブルテレビ事業者が自治体向けに採用した製品なども参考にしている。例えば、秋田ケーブルテレビや広域高速ネット296(千葉県)、ZTV(三重県)などが取り組んでいるIoT事例は、射水ケーブルネットワークにとって非常に有意義であるという。

日本ケーブルテレビ連盟は毎月1回、無線活用委員会でIoTビジネス推進タスクチームの会議を開催している。約30局のケーブルテレビ事業者が参加し、IoTの成功事例と失敗事例を報告し、情報共有している。これにより、成功事例の製品を迅速に導入できる。サービスエリアが分かれているケーブルテレビ事業者は競合関係にないため、「友好的に情報を公開し合っています。他のケーブルテレビ事業者からの情報提供が、射水ケーブルネットワークのIoT提案でも助けになっています」(渡邊本部長)。

今後は広域高速ネット296の冠水時にパトライトが鳴るシステムや、ZTVの超音波センサーなどを参考にしていきたいと語る。逆に射水ケーブルネットワークが使用しているセンサーを応用して導入された事例もある。長崎ケーブルメディアは射水ケーブルネットワークのICTブイの事例から航路の波の高さを計測するソリューションを発案し、射水ケーブルネットワークとZTVが開発したIoT用ダッシュボードに連携して商用サービスとして提供している。これらはケーブルテレビならではの協力体制だ。

ロケーションアナライザーで人流分析

近年、射水市に射水ケーブルネットワークが提供しているDXソリューションとしては、ロケーションアナライザーが大きな効果を上げている。KDDIのソリューションであるロケーションアナライザーを射水ケーブルネットワークが代理店契約を結んで運用し、射水市に人流などの計測・分析データを提供するというサービス形態だ。このシステムのデモを見た時、射水ケーブルネットワーク 渡邊本部長がイベントなどの人流データ計測・分析に応用できると考え、射水市に提案し、プロポーザル審査を経て、業務委託契約を締結した。通信ソリューションに詳しいケーブルテレビ事業者の発想力が発揮された事案だ。

射水市の観光担当課は、イベントや祭りなどの来場者の人数や属性を把握するためのソリューションを前述のIoT利活用検討会議で要望した。

「射水市では毎年、花火大会や新湊曳山まつりなど数万人の来場者が訪れるイベントが複数回開催されており、来場者の増減や来場者の属性、PR広告の効果、交通渋滞の状況などを把握するために、正確な人流データが必要になっていました。また『日本のベニス』と称される射水市が観光振興に力を入れている内川流域では、フリーマーケットやコンサート、カフェなど飲食店の誘致などさまざまな社会実験が行われていますが、これらの実験の効果を評価するためにも詳細な人流データが必要でした」(渡邊本部長)。

しかし、令和元年当時に考えていたAIカメラは高価で精度も低く、マスクをしている人をカウントできないなど、課題が山積していた。

その後、射水ケーブルネットワークは、KDDIのスマートフォンの位置情報をGPSで把握するロケーションアナライザーに出会い、この課題を解決できるかもしれないと閃いた。このシステムは、画像を解析するのではなく、GPSのデータを利用するため、マスクをしていても年代がわかるといった利点があり、過去のイベントの人流データをさかのぼって取得することもできる。また、分析結果の視覚化も可能で、棒グラフなどでわかりやすく表現できる。同市の導入目的は、地元の大規模な祭りやイベントの来場者の分析、体育館や公園など施設の利用状況の把握、都市計画などで人流データを有効活用し、エビデンスに基づいた政策立案を行うことだ。

能登半島地震の避難行動を分析

こうして同市がロケーションアナライザーの活用を始めていたときに、今年1月の能登半島地震が起こった。ロケーションアナライザーは地震発生後、各避難所の避難者の人数や年代などの状況把握や、避難行動の検証にも一役買った。

射水市は能登半島地震によって道路が隆起するなど、市内各所で液状化の被害が出たが、津波は高さ数十センチ程度で、被害はなかった。

しかし、「ロケーションアナライザーによる計測・分析で、多くの市民が津波から逃れるために高台への車での避難を試み、大規模な渋滞が発生したことが判明しました。正しい避難行動は、小学校や体育館など近くの高い建物への避難ですが、避難する人が一番集まったのは市の指定避難所ではない内陸部にあるコストコの店舗でした。市民は津波警報が出た場合どの高い建物に避難するかを事前に決めておく必要がありますが、そのことが周知されていませんでした。ハザードマップ上安全な地域に住んでいる人までが車で避難するなど、ハザードマップが十分活用されていないこともわかりました」(渡邊本部長)。

これを受けて同市は、沿岸部の避難所を改めて周知強化する予定だ。

図 ロケーションアナライザーによる能登半島地震の避難者の人流分析

また、地震発生後、避難所に向かわなかった人が一定数いたことも明らかになった。特に70歳以上ではその場所にとどまる人も多く、その人々のケア方法について検討する必要性が浮かび上がった。ロケーションアナライザーは個人の特定はできないが、その人物の属性は把握できる。同市は個人の人流データをもとに、地震発生後に避難しなかった人を個別に調査し、意図的に避難しなかったのか、それとも避難したかったが動けなかったのか、その人は独居老人なのか、足などが悪いのか、といったことを調査・把握していく予定だ。普段からその人を見守ったり、災害時に支援したりする方法をあらかじめ準備するといった対策も必要だと感じている。

射水市はコスト面の利点が大きく、地域課題にも詳しく、業界の横連携も活用できる地元ケーブルテレビ事業者が提供するIoTやソリューションを導入することで、水害予防から産業、教育、観光振興、そして地震・津波対策まで、地域DXを急速に強化することができた。自治体がケーブルテレビ事業者と連携した地域DXの成功事例として注目されている射水市のIoTは、今後さらに活用分野と規模を拡大させていきそうだ。

(終わり)

プロフィール

『月刊ニューメディア』 編集長 渡辺 元
情報通信業界の変遷を第一線で取材してきたジャーナリスト。現在は、月刊ニューメディアの編集長として、情報通信政策やメディアビジネス、放送・通信技術などに関する最新情報を発信する一方、各種イベントでの講演活動などを通じて、情報通信業界の未来について提言。

※これまでの掲載記事リンク
3/1掲載:全国に広がる「自治体・ケーブルテレビ連携型」地域DX
3/14掲載:静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワークの連携事例(前編)
3/28掲載:静岡県三島市+TOKAIケーブルネットワークの連携事例(後編)
4/12掲載:秋田県秋田市ほか+秋田ケーブルテレビの連携事例(前編)
5/13掲載:秋田県由利本荘市+秋田ケーブルテレビの連携事例(後編)

地域課題解決のヒントが満載!「ケーブル技術ショー2024」

6月3日(月)よりオンライン展示会が先行開催中!
〜7月18日(木)・19日(金)東京国際フォーラムにて技術展示会開催!~
~「Let’s join DX with Cable TV !」 ケーブルテレビで、地域共創・地域DXを推進!~

■開催概要

会期

oオンライン展示会:2024年6月3日(月)~8月31日(土)
o技術展示会:2024年7月18日(木) 9:30~18:00・7月19日(金) 9:30~17:00

会場

oオンライン展示会:「ケーブル技術ショー2024」公式ウェブページ https://www.catv-f.com
o技術展示会:東京国際フォーラム B2階 ホールE

入場料

無料(入場登録制)

展示規模

94社・団体、219小間

同時開催

ケーブルコンベンション2024
※詳細はこちら ≫ https://www.catv-conv.jp/

▼「ケーブル技術ショー2024」活用ガイド

〔STEP1〕6月3日(月)~

•来場登録開始、公式ウェブページは“事前確認&情報収集の宝庫"

▶事前に課題や悩み事、トレンドを検索して、頼りになる出展者を見つけよう

〔STEP2〕7月18日(木)・19日(金)

•技術展示会で“新しい取引先やクリエイティブな解決策との出会い”

▶会場での実機確認やデモ体験に参加して、積極的に出展者と展示内容を質問しよう

〔STEP3〕7月22日(月)~8月31日(土)

•公式ウェブページで、“アーカイブ配信や追加情報の収集”

▶参加したセミナーや出会った出展者の展示内容を振り返り、商談をビジネスチャンスに結びつけよう

一般社団法人日本CATV技術協会
設立1975年7月1日
代表者名理事長 中村 俊一
本社所在地

〒160-0022
東京都新宿区新宿6-28-8 ラ・ベルティ新宿6F

事業内容

CATV施設に関する調査研究を行うとともに、CATV施設に係る技術の向上及び普及を図ることによって、CATVの健全な発達普及を促進するとともに、テレビジョン電波の受信に関する調査を行うことにより、テレビジョン電波の良好な受信環境の実現を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的に活動しています。
また、ケーブルテレビ業界関連の(一社)日本ケーブルテレビ連盟、(一社)衛星放送協会の3社主催による「ケーブルコンベンション」「ケーブル技術ショー」を開催し、ケーブルテレビサービス事業者ならびに地方公共団体など地域のステークホルダーを一堂に集め地域共創・地域DXを推進する展示会を開催しています。

URLhttps://www.catv.or.jp/
その他情報

https://www.catv-f.com/

本サイトの掲載情報については、企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。

提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。

電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー