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先進事例2021.03.23

採用の“入口対策”で実現する「業務負荷軽減」と「受験者数増」

採用の“入口対策”で実現する「業務負荷軽減」と「受験者数増」

宮崎県宮崎市/佐賀県佐賀市/千葉県市原市の取り組み

職員採用業務の電子化

採用の“入口対策”で実現する「業務負荷軽減」と「受験者数増」

宮崎市 総務部 人事課 竹内 悠起
佐賀市 総務部 人事課 主任 木下 実
市原市 総務部 人事課 主任 仲村 淳樹

※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


自治体業務のICT化が進むなか、採用領域においてはいまだアナログが主流だ。職種別に応募要項が異なるなど、多様な試験方式に対応する採用管理ツールが少ないことが背景にある。そうしたなか、宮崎市(宮崎県)、佐賀市(佐賀県)、市原市(千葉県)は、受験者数の確保や職員の業務負荷軽減を模索しながら、「採用の電子化」に踏み込んだ。各担当者に、その現状や展望を聞いた。

宮崎市データ
人口:40万2,632人(令和2年1月1日現在) / 世帯数:19万6,861世帯(令和2年1月1日現在) / 予算規模:3,036億1,100万円(令和元年度当初) / 面積:644.61km² / 概要:南北約36kmにわたる海岸線を有し、温暖な気候風土に恵まれ、亜熱帯植物の繁殖する青島の国定公園日南海岸につらなる風光はまさに南国的。昭和40年代には、「新婚旅行のメッカ」といわれ、多くの新婚カップルが、式場から足を運んだ。平成4年5月には米国バージニアビーチ市と姉妹都市、平成16年5月には中華人民共和国葫芦島市と友好都市の盟約をそれぞれ締結し、交流を行うなど、国際リゾート都市としても発展を続けている。
宮崎市
総務部 人事課
竹内 悠起たけうち ゆうき

―宮崎市の職員採用における業務効率化の現状を教えてください。

 業務効率化を実現するうえで、採用業務の見直しと業務プロセスの検討をつねに行うことが重要と考えています。BPR、いわゆる業務改革です。そのなかでの課題は、採用選考における「受験者側の応募時の負担」と「市役所側の事務負担」です。

 これまでの応募手続きは、すべて紙で行われていました。そのため、受験者にとっては応募書類への記入、郵送や持ち込みによる応募手続きが負担となっていたことが考えられます。

 一方、市役所側も、「応募書類の内容をExcelに入力する作業」や「受験票を発送する作業」「複数人でのミス確認作業」が発生し、業務負荷が増えていました。

 そこで採用領域を電子化することを決め、採用管理システムを導入しました。

―導入の経緯を教えてください。

 長年、採用管理システムの導入は検討しており、複数のシステム会社から情報を集めていました。そのなかで宮崎市の採用業務にマッチしていたのが、民間企業の採用管理システムでした。自治体向けの応募エントリー項目が用意されていた点やシステムを使った応募者への一斉連絡などが導入の決め手となりました。

―どんな効果がありましたか。

 採用管理システムを導入したことで、受験者側はインターネットからの応募が可能になり、郵送などの負担が軽減されました。また24時間応募が可能となり、時間にとらわれずに応募できることも大きなメリットとなりました。

 市役所側にとっては、約100時間の業務時間削減につながりました。内訳は、応募書類(約800人分)の入力作業が約66時間、確認作業や受験票発送作業が約26時間、合格通知の発送作業が約17時間、各作業時間の合計で約109時間かかっていたのがシステム導入で、約7時間に短縮できました。

―採用におけるこれからの展望を聞かせてください。

 採用管理システムの導入により、受験者側の負担が軽減されたことで、さまざまな方が応募し、より多くの優秀な人材の確保にもつながることを期待しています。また、事務にかかわる約100時間の業務時間が削減できましたので、その時間を今後の採用活動に活かしたいと考えています。


佐賀市データ
人口:23万2,484人(令和元年12月末日現在) / 世帯数:10万992世帯(令和元年12月末日現在) / 予算規模:1,524億900万円(令和元年度当初) / 面積:431.42km² / 概要:九州の北西部に位置し、東は福岡県、西は長崎県に接し、北は脊振山系、南は有明海に面している。年間の平均気温は16度前後の地域が多く、気候は穏やか。観光面では、山間部にある観光りんご園、温泉、スキー場、沿岸部の干拓の個性的な動植物など、多様な魅力を備える。平成27年7月には、日本で初めて実用蒸気船「凌風丸」が造られた「三重津海軍所跡」が、世界文化遺産に登録された。
佐賀市
総務部 人事課 主任
木下 実きのした みのる

―佐賀市では採用においてどんな問題を抱えていたのですか。

 受験者数の減少が問題でした。そこで、従来からの公務員試験を廃止し、特別な試験対策を必要としない民間型の採用試験、しかも受験者が都合のよい日時、場所を予約して受験できるテストセンター方式での導入を検討していました。

 平成30年度、一部職種の採用試験でテストセンター方式を導入したところ、受験者数の増加につながったので、今年度は全職種で導入することが決まりました。そこで懸念されたのが膨大な数の応募者情報の登録作業です。

 その対策として、応募方法について郵送から電子化へのシフトを検討。過去に、佐賀県の電子申請システムの共同利用を検討しましたが、実現しませんでした。その時期にNOMA総研より採用管理システムの案内があり、導入にいたりました。

―導入による効果を聞かせてください。

 懸念していた登録作業の負荷を大幅に削減できました。特にメールアドレスの確認作業の煩雑さがなくなったこと、Excelに手入力で管理していた部分をデータ抽出できるようになった点がよかったです。

 新たにテストセンター方式を導入し、募集職種も異なるので一概にはいえないですが、応募者数も1.7倍になりました。従来通りの募集方法だと、かなりの負担だったはずです。また、採用の電子化はテストセンターとの相性もよく、連携もスムーズに行えました。

 受験者への連絡がメールになり、取りやすくなった点も大きな成果でしたね。昨年の採用試験では、2次試験の日程で台風の接近がありました。いままでは電話対応だったので、実施判断を早くする必要がありました。九州は台風も多いので、こういった試験開催の判断を直前まで待ちつつ、詳細な情報を届けられるというのはメールの大きなメリットですね。

―人材採用における業務効率化の方針を教えてください。

 採用管理システムの導入を契機にかなり採用業務の運用を変更しています。たとえば、最終選考以外の合否連絡はシステムからの通知のみにしました。合否連絡の郵送については間違いがないか入念な確認が必要でしたが、この作業も大幅に軽減でき、業務効率化につながりました。

 人事課には採用以外にも業務がたくさんあります。抜本的な見直しというより、普段の業務を少しずつ改善していくことで、業務効率化に取り組んでいきたいですね。


市原市データ
人口:27万5,385人(令和2年1月1日現在) / 世帯数:12万7,233世帯(令和2年1月1日現在) / 予算規模:1,616億6,150万円(令和元年度当初) / 面積:368.17km² / 概要:東京湾から房総丘陵にかけて、東西約22km、南北約36kmにおよび、東京都心から50km圏内に位置する。温暖な気候と海・山の幸に恵まれ、縄文・弥生時代を通じ、遺跡がおよそ2,500ヵ所、貝塚が45ヵ所ある。大化の改新後、上総国府が置かれ、文化や行政の中心として栄えた。昭和32年から臨海部の埋め立て造成が行われると、電力・石油精製・石油化学の大手企業が進出して京葉コンビナート地帯が形成され、わが国有数の工業地帯となった。
市原市
総務部 人事課 主任
仲村 淳樹なかむら あつき

―市原市が採用の電子化に踏みきった理由はなんでしょう。

 職員採用における受験者の母集団確保が一番の課題でした。採用計画があるにもかかわらず、採用者数が定員を割る職種なども出てきていましたから。そうしたなか、まずはひとりでも多くの受験者に受けてもらう。そこに対策の焦点をあてました。

 それまで受験者は、市のHPから書類をダウンロードし、紙ベースで提出。顔写真も撮って送り、郵送でやり取りしていました。民間企業はWeb上でエントリーするのがあたり前の時代に、受験者の負担になっていると考え、採用の電子化を検討したのです。

 それに付随して、システムを導入したときのほかのメリットとしてなにがあるだろうかと考えました。従来は受験者から紙ベースで申込書類が送付され、職員がExcelに受験者情報を打ち込んでいました。しかし、このやり方だと、ダブルチェックを含め、時間が相当かかります。さらにその後に受験票を送り返すという、印刷と工数の手間がありました。そこのところの負担がWeb上の申請となることで軽減できるのでは、と考えました。

―受験者の確保にはつながりましたか。

 募集職種や規模の違いがあるので単純比較はできませんが、一番応募の多い9月期でみると、全体で約300人の応募があるなかで、ほぼ6割がWebからエントリーいただけました。特に大学生をおもに対象とする上級事務職では、約7割がWebからのエントリーでした。実際にどのくらいWebから応募してもらえるのか不安でしたが、この結果は採用の電子化が望まれていたものだと判断できる数字だと思います。

 また、電子化したことで、郵送期間を考慮する必要がなくなり、応募期間を1週間ほど延ばすことが可能になったので、さらなる受験者増も期待しています。

―今後の採用における展望を聞かせてください。

 採用管理システムの導入で、職員の負担も大幅に軽減されました。全体の量でみると、ひとりが業務に取り組んだ場合の約2日分は削減されたのではないでしょうか。浮いた時間は、母集団の確保と並行して、これまで十分にできていなかった大学を訪問してのアピールなど、採用活動における質の向上につなげていきたいですね。


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