防犯まちづくり 自治体事例|見守りカメラとビーコンタグの活用、児童の登下校データ解析、地域を挙げた犯罪抑止運動

加古川市、富山市、足立区の防犯まちづくり 自治体事例
国土交通省では、警察庁、文部科学省、その他関係機関と連携し、防犯まちづくりの推進に取り組んでおり、公共施設、住宅(空き家対策含む)、防犯設備等の整備やスクールバスやドライブレコーダー等の交通施策における見守り環境の確保、さらには、相談窓口の設置などの対策等を通じて、総合的に防犯まちづくりを展開してきました。
一方、近年の登下校中の子どもを対象とした犯罪発生や、通学路沿道の土地利用の変化、地域社会における少子高齢化および共働き世帯の増加等による子どもの見守り体制の変化等、社会環境に対応した防犯まちづくりの取組展開が必要とされています。
そこで「防犯まちづくり取組事例集」(令和2年)より、防犯まちづくりの自治体事例の概要を抜粋して紹介します。
今回は、加古川市(「見守りカメラ」と「ビーコンタグ」で官民協働の防犯まちづくり)、富山市(IoT技術を活用した子どもを見守る地域連携)、足立区(地域を挙げた犯罪抑止の取り組み「ビューティフル・ウインドウズ運動」)の防犯まちづくりの自治体事例です。
「見守りカメラ」と「ビーコンタグ」で官民協働の防犯まちづくり|加古川市
兵庫県 加古川市は、複数の民間事業者とともにビーコンタグを活用した見守りサービスの普及に官民協働で取り組んでいます。
子どもや徘徊などが心配される高齢者の見守りのサポートを目的に、ビーコンタグを持った見守り対象者の位置情報履歴を保護者に提供する防犯対策を展開しています。
加古川市はまちづくりのテーマとして「子育て世代に選ばれるまち」を掲げ、官民協働でICTを活用した安全・安心のまちづくりに着手。市民の満足度や生活の質向上を目指し、とりわけ子育て世代が安心して暮らすことができる環境の整備や、地域総がかりで子どもや高齢者を見守る地域コミュニティの強化に注力しています。
取り組み内容
ビーコンタグを活用した見守りサービスの展開
小学校の通学路や学校周辺にビーコンタグ(BLEタグ)検知器を設置し、各民間事業者はビーコンタグとスマートフォンアプリを提供します(有償)。
ビーコンタグを持った子どもや高齢者など見守り対象者が見守りカメラ付近を通過すると、見守りカメラに内蔵するビーコンタグ検知器がビーコンタグ情報を取得し、保護者に見守り対象者の位置情報履歴を知らせる見守りサービスの普及にも取り組んでいます。

見守りサービスのイメージ
犯罪抑止のための見守りカメラの設置
犯罪の抑止や事件等の早期解決を目的に、通学路を中心に見守りカメラを設置。見守りカメラの設置を明示することで、犯罪を抑止するとともに、捜査機関から犯罪捜査を目的とした要請を受けた場合、その必要性を審査し、画像データを提供しています。
平成29年度は通学路や学校周辺を中心に900台の見守りカメラを設置し、平成30年度は公園周辺や駐輪場周辺、主要道路の交差点などを中心に575台の見守りカメラを設置しました。
令和4年度には、犯罪・交通事故の未然防止の仕組みを強化するため、AIを搭載した「高度化見守りカメラ」150台を設置。さらに、令和5年度には、信号のある交差点において、歩行者等と巻き込み事故を未然に防ぐことを目的とした「高度化見守りカメラ(危険運転検知特化型)」3台を設置しました。

左から、見守りカメラ(1,500台)、高度化見守りカメラ(150台)、高度化見守りカメラ 危険運転検知特化型(3台)
IoT技術を活用した子どもを見守る地域連携|富山市
富山県 富山市では、IoT技術を活用した各種センサーからの情報を集約するLPWA(Low Power Wide Area=低消費電力長距離無線通信技術)ネットワーク網(市ほぼ全域をカバー)と、IoTセンサーから得られた情報を管理するIoTプラットフォームで構成される「富山市センサーネットワーク」を平成30年度に構築。同ネットワークを活用し、市自らがプラットフォーマーとなり、IoT技術を活用したインフラ管理コストの軽減や、新たな防災力の拡充、民間企業におけるIoTデバイスの開発支援などの施策を行っています。
その一環としてIoT技術を活用して児童の登下校路の実態を「見える化」し、地域と連携して安全・安心の向上を図る「子どもを見守る地域連携事業」を実施しました(2018年度から開始し、2023年度に市内全小学校66校での実施が完了)。
富山市は、IoT技術等による新たな情報取得手段の活用と官民間・民民間のデータの共有化を促進することでSociety5.0における新たな市民サービスの創造やQOLの向上および地域産業の活性化を図り、人々が安心・安全に暮らせる持続可能な社会を実現することを目指した取り組みを進めています。
取り組み内容
IoT技術を用いて新たな地域連携モデルを検討
「子どもを見守る地域連携事業」では、小学生にGPSトラッカーを貸与し、児童の登下校路の実態調査を実施しました。得られたデータを一定の匿名化、抽象化処理を施したうえで富山大学と連携して解析を実施して「見える化」し、小学校、PTA、自治振興会等と共有することで地域と連携した安全・安心のより一層の向上を図りました。
この事業は保護者や児童生徒への直接的なメリットを提供するものではなく、以下のような間接的な成果を目指したものです。
①指定通学路と実際の児童の通学路を比較し、交通事故多発情報や道路工事に伴う交通規制情報などと重ね合わせて「見える化」することで、通学路の再設計や安全点検活動等に活用
②交通安全ボランティア等の効率的な配置に活用
③本事業を地域と連携して推進していくことで、地域社会活動の新たな担い手の掘り起こしの促進

事業イメージ
地域全体による犯罪抑止運動「ビューティフル・ウインドウズ運動」|足立区
東京都 足立区では、「美しいまち」を印象付けることで犯罪を抑止するという区独自の「ビューティフル・ウインドウズ運動」を掲げ、防犯パトロールや子どもの見守り活動に加え、迷惑喫煙防止パトロールや通学路に花を植える活動等を実施しています。こうした地域全体で防犯の取り組みを実施したことで、犯罪件数が減少傾向となっています。
この運動の原点となったのが「割れ窓理論(ブロークン・ウインドウ理論)」です。この理論は、1982年にアメリカで提唱され、ニューヨーク市で実践された理論であり考え方で「たった1枚の割れた窓を放置すると『この場所は管理されていない』という印象を与え、やがて大きな犯罪につながる可能性がある」、つまり小さな乱れを放置しないことが犯罪を防ぐ第1歩になるという理論です。
取り組み内容
ビューティフル・ウインドウズ運動とは
「美しいまち」は「安心なまち」という考えのもと、足立区ではより安心なまちづくりを目指して、さまざまな取り組みを行っています。
区内4警察署だけでなく、地域で結成された自主防犯ボランティアや学校、商店街などの機関と連携し、犯罪のない美しい住みよい街を目指したことで、平成13年には16,843件あった刑法犯認知件数が、令和元年は4,764件となりました。
その結果、今では刑法犯認知件数は大幅に減少し、「治安が良い」と思う区民の割合も年々上昇。令和4年度には過去最高の64.5%に達しています。

平成13年~令和7年までの刑法犯認知件数等の推移
青色防犯パトロール
地域の方々や区が直轄で委託している警備会社が青色回転灯をつけたパトロール車(青パト)で巡回し、防犯を呼び掛け、犯罪抑止につなげる活動です。
地域防犯ボランティア
町会・自治会やPTAの方などが子どもの登下校時の通学路の見守りや夜間の公園などの見回り活動をしています。
また、美しい街を維持しながら犯罪抑止を目的としたごみゼロ地域清掃活動も実施しています。

青色防犯パトロール(左)と地域防犯ボランティア
区内全域で歩きタバコ禁止
区の指導員による迷惑喫煙防止パトロールを行っています。
また、主要駅周辺などの禁煙特定区域内での喫煙(加熱式たばこ含む)を禁止し、違反には2万円以下の過料(当面1,000円)を科しています(参考:足立区歩行喫煙防止及びまちをきれいにする条例)。
花のあるまちづくり
ひとりひとりが、花を増やして美しいまちをつくる活動です。同時に花の手入れをしながら地域の安全を見守ります。個人はもちろん、区内花店や商店街店舗、保育園・幼稚園などと一緒に取り組んでいます。

迷惑喫煙防止パトロール指導員(左)と花のあるまちかど
ソロクリーン活動
散歩に出かけた時や、花壇の手入れの際など、ちょっとした外出のついでに、ごみを拾う―そんなひとりひとりのまちをきれいにする活動です。ソロクリーン活動者を支援するため、登録していただいた方に地域調整課美化推進係窓口にてごみバサミ、手持ち用ごみ袋(10枚)、希望者にはキャップを進呈します。

ながら見守り
散歩やジョギング等をしながら日常生活の中で「防犯」を意識してもらうことで、子どもや地域の安全を守り、犯罪が起こりにくいまちをつくる活動です。

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