防犯まちづくり 自治体事例|KPI指標による防犯まちづくりのマネジメントサイクル、庁内のハード・ソフト施策の要となる防犯設計指針、多様な主体による見守り活動を継続実施、警察と自治体の連携で路上犯罪を抑制

奈良県、足立区、市川市、名古屋市の防犯まちづくり 自治体事例
国土交通省では、警察庁、文部科学省、その他関係機関と連携し、防犯まちづくりの推進に取り組んでおり、公共施設、住宅(空き家対策含む)、防犯設備等の整備やスクールバスやドライブレコーダー等の交通施策における見守り環境の確保、さらには、相談窓口の設置などの対策等を通じて、総合的に防犯まちづくりを展開してきました。
一方、近年の登下校中の子どもを対象とした犯罪発生や、通学路沿道の土地利用の変化、地域社会における少子高齢化および共働き世帯の増加等による子どもの見守り体制の変化等、社会環境に対応した防犯まちづくりの取組展開が必要とされています。
そこで、「防犯まちづくり取組事例集」(令和2年)より、防犯まちづくりの自治体事例の概要を抜粋して紹介します。
今回は、奈良県、足立区、市川市、名古屋市の防犯まちづくりの自治体事例です。
KPI指標による防犯まちづくりのマネジメントサイクルの実践|奈良県
奈良県は、県と警察が協働して、持続的に安全・安心の施策を展開し、体系的・継続的に治安基盤を整備することで、「日本一安全で安心して暮らせる奈良の実現」を目指しています。
このため「安全・安心の確保のための奈良県基本計画」(平成29年4月に令和4年3月までの5ヶ年計画として施行、令和4年4月から第2次計画を施行)を策定し、各種取り組みに対する綿密な現状分析をベースとしたKPI指標を設定。施策の進捗管理と効果検証を行うマネジメントサイクルを推進しています。
本計画策定時における奈良県の刑法犯認知件数は、戦後最多を記録した平成14年と比べると3分の1にまで減少しており、犯罪の総量抑止という観点では一定の成果が認められました。「安全と安心の乖離」「安全・安心を脅かす事象の質の変化」「対症療法的な対策では不十分である」といった課題を踏まえて計画を作成しました。
取り組み内容
基本目標
本計画において、奈良県の目指す姿を「日本一安全で安心して暮らせる奈良の実現」としています。また、最悪の事態の未然防止対策が重要との認識のもと、次の基本目標を掲げています。
①刑法犯認知件数の総数を減少させつつ、特に重要犯罪等(殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買、不同意わいせつ、特殊詐欺)の発生を限りなくゼロ(犯罪発生率人口10万人当たり6.3件以下を目途)に近づける
②交通事故による死傷者数を減少させつつ、特に交通事故死者数(交通事故発生から24時間以内に死亡した人数)を限りなくゼロ(20人以下を目途)に近づける
「安全・安心の確保のための奈良県基本計画」の体系
①安全・安心を脅かす事象の被害に遭いやすい社会的弱者を守るアプローチと、②こうした事象を引き起こす行為者あるいは、こうした事象が起こりやすい場に着目したアプローチの2つの観点から、7つの方向性と20の推進項目を選定し、重層的に防護策を重ねることによって未然防止を図ることとしました。

「安全・安心の確保のための奈良県基本計画」の体系
KPI指標の設定による進捗管理と効果の検証
綿密な現状分析のもとKPI指標を設定し、これに基づいて施策の進捗管理と効果検証を行い、マネジメントサイクルを推進しています。
また、情勢の変化に応じて適切に改善・向上を図る必要があることから、原則5年毎に計画内容を見直すとともに、計画期間内であっても必要に応じて計画の見直しを行っています。

KPI進捗状況の例
庁内のハード・ソフト施策の要となる防犯設計指針|足立区
東京都 足立区では、美しく住みよい足立区を目指し、防犯設計による具体的な設計・計画手法について記した「防犯設計ガイドライン」を作成しています。
このガイドラインは、ビューティフルウィンドウズ運動や防犯設計タウン認定等、庁内の各種ハード、ソフト施策、また、足立区公共施設等整備基準と連携することにより、全庁を挙げた防犯対策を講じる基盤となっています。
足立区は2006年から4年連続して刑法犯認知件数が都内自治体でワーストを記録し、そこからの脱却が急務となっていました。そこで2010年4月、足立区治安対策戦略会議(委員長=区長、警視庁生活安全部長)は犯罪抑止、体感治安向上の具体的対策を列挙した「足立区治安再生アクションプログラム」を策定し、2011年4月、防犯環境設計の考え方や、場所別の配慮事項などを記載した「足立区防犯設計ガイドライン」を策定しました。
取り組み内容
防犯設計ガイドラインの位置づけ
本ガイドラインは、美しく住みよい足立区を目指して、防犯環境設計を基準にした考え方を定め、防犯に配慮したまちづくりを推進するものです。
道路の整備、公園の整備、駐車場・駐輪場の整備、共同住宅(集合住宅も共同住宅に準ずる)の整備、住宅地開発、建設中の現場等を対象とし、防犯設計による具体的な設計・計画方法を記し、特に開発事業者との事前協議における基準として活用することを前提としています。
このガイドラインを踏まえ、民間事業者等への指導を行う「足立区環境整備基準」(旧指導要綱)を改正。また、このガイドラインに基づく「防犯設計タウン認定制度」や「防犯まちづくり推進地区認定制度」の運用について、開発事業者や町会への説明を積極的に行っています。

防犯設計ガイドラインの施策体系
防犯設計の基本原則
防犯に配慮された市街地を実現するため、防犯環境設計では「視認性の確保」「領域性の強化」「接近の制御」「被害対象の強化・回避」という、4つの手法を組み合わせて実施することを原則としています。
道路、公園とその周辺環境
道路や公園は、基本的に誰もが利用でき、犯罪を企てる者の利用を妨げることが出来ません。そこで犯罪が発生しないよう、防犯に配慮した犯罪の発生しにくい施設整備を実施しています。
また、犯罪を企てる者が住まい等に接近する経路ともなるため、周辺環境と一体となって、みんなで見守る環境づくりを推進しています。
集合住宅と団地内の広場や通路
防犯に配慮した建物や住戸とするとともに、駐車・駐輪場や広場・環境緑地、通路等の各施設それぞれが犯罪の発生しにくい施設となるような整備を促進する等しています。

防犯に配慮された市街地の例
住宅地の街並み形成
宅地割りや住まいの配置の計画において、空間のゆとりの確保とそのデザインにより、防犯性を向上させるだけでなく、良好な街並み形成を促進しています。
また、居住者の日々の暮らしの中で、外部空間での活動や近隣居住者との接触を誘発させるような工夫を加え、コミュニティの育成による防犯性の向上を目指しています。
その他の施設
駐車場、駐輪場では、車や自転車などの被害対象が置かれているため、それらを守るとともに、周辺からの自然な監視の目が届くような計画を促進しています。
また、建設中の現場は、周囲から閉ざされた空間になりやすく、近隣居住者に不安を与えやすいため、見通しや情報がオープンな空間の維持を推進しています。

駐車場の整備イメージ
多様な主体による見守り活動を継続実施|市川市
千葉県 市川市の曽谷小学校周辺地区では、市の防犯まちづくり基本計画の3か所のモデル地区(鬼高小、福栄小、曽谷小)のひとつとして、地域の自治会、商工会、小学校、PTA、警察、教育委員会等の多様な主体がそれぞれの立場で子どもたちの下校時の防犯パトロール等の見守り活動を実施しています。
曽谷小学校区では、ひったくりが通過交通の多い県道沿いに限らず、小学校周辺の住宅街区内でも発生し、空き巣等(侵入盗)については、古い住宅街区から、近年建替えが進む住宅街区(農地の混在する住宅街区・傾斜地周辺)まで、さまざまな箇所で発生していました。地区内では、夜間の暗がりの解消に向け、より照度の高い屋外照明への変更や防犯パトロールを実施しましたが、防犯パトロールはすべての時間を網羅できるものではないため、より効果的な防犯活動を各主体が連携して進めていくことにしました。
取り組み内容
防犯まちづくり計画の作成
曽谷小学校周辺地区では、防犯まちづくり計画の検討・作成にあたり、地域の自治会、商工会、小学校、PTAの代表者および警察、教育委員会等の関係行政機関の担当者からなる「曽谷小学校周辺地区防犯まちづくり検討委員会」を設置しました。
平成18年10月の準備会と、平成18年11月から平成19年1月までの3回の検討委員会を開催し、前半は地区の現状や防犯まちづくりの取り組み課題について意見交換を行い、後半では防犯まちづくり計画の作成に向けた協議を行いました。

曽谷小学校周辺地区防犯まちづくり計画の位置づけ
防犯パトロールおよび見守り活動
曽谷小学校周辺地区の各自治会、商店会、曽谷小学校、曽谷小学校PTAがそれぞれの立場で防犯パトロールや道路・公園などの維持管理活動を行っています。子どもたちの下校時の防犯パトロールや、神社や緑地等の見通しの悪い箇所での登下校の見守り活動を実施しているほか、防災部と協力して、防犯灯の点検や年末の防災・防犯パトロールにも取り組んでいます。
安全点検
子どもたちの登下校の時間帯に、校門前での安全指導を行っているほか、授業時間や放課後等に、校舎内外や小学校区内を見回り、安全点検を行っています。
また、子どもたちや保護者に参加を呼びかけ、学校周囲の清掃活動(クリーン作戦)や植栽の剪定(わくわくタイム)を行ったり、PTAと連携して校庭の遊具の安全点検と修理(ペンキの塗り直し)に取り組む等、学校内外の環境の維持管理に努めています。
マップづくり
地域防犯マップは、市街地状況がわかる基本的な情報(道路・通学路・公園・学校・公共施設・主な商業施設又は商店街等)が示された地図に、防犯の観点から、安全安心の拠点となる場所や経路、注意を払いたい場所等を書き込み作成しています。
啓発活動
地域で開催される防犯座談会への参加を広く呼びかけ、防犯への関心の向上に努めているほか、空き巣被害について、聞き取り等によって具体的な情報を収集し、自治会員への注意喚起に役立てています。
また、「ふれあい110」「かけこみ110」や「防犯パトロール」プレート取り付けへの協力を保護者へ呼びかける等、防犯活動の普及に取り組んでいます。

「みまわり隊」によるパトロール(左)と「クリーン曽谷」の活動
警察と自治体の連携で路上犯罪を抑制|名古屋市
愛知県 名古屋市の白沢小学校周辺地域は、愛知県警の「防犯モデル道路」制度の指定により、一部道路がコミュニティ道路としても整備され、自動車が速度を出しにくいように左右交互に植栽桝を設置したり、交差点部分の舗装を替えたりしています。また、ボラード(道路や広場等に設置して自動車等の進入を阻止する、地面から突き出した杭)に子どもの絵を入れたり、辻広場を配したりすることで、『所有意識』や『監視性』にも配慮しています。
地元住民を中心として県警本部、学識者、自治体、小中学校による準備会で検討が行われ、防犯モデル道路第1号が誕生。翌年から愛知県の道路整備計画に防犯モデル道路が位置付けられるようになりました。
取り組み内容
防犯モデル道路の整備
歩道の新設や蛇行させた道路の整備、イメージハンプ(視覚効果によって立体的な障害物に見せかける立体路面標示)の整備、ガードレール・街路灯の整備、周辺の空き地等の改善、非常ベルの設置や防犯連絡所の増設、石碑や看板の設置が行われました。
防犯モデル道路の対象路線・区間は、路上犯罪の発生状況、地域住民等の協力、道路の構造・周辺環境・利用状況等を勘案して指定し、歩道の新設やガードレール・街路灯等の整備、一方通行や進入禁止等の交通規制、周辺の空き地等の改善、非常ベルの設置や防犯連絡所の増設等を実施。警察によるパトロールの強化や犯罪企図者の侵入を想定した住民・警察の連携訓練、モデル道路推進協議会の設立等も進めました。
昭和58年に設定した防犯モデル道路では、昭和60年までの間に犯罪発生件数が半減したことが、その後の調査で明らかになっています。
守山区重点罪種を中心とした防犯活動
守山区の犯罪情勢を考慮した重点罪種(住宅対象侵入盗、自動車盗・車上ねらい・部品ねらい等の自動車関連窃盗、特殊詐欺)を中心に、地域と協働して啓発活動やパトロールを行っています。また住宅対象侵入盗防止講座や愛知県警防犯活動専門チーム「のぞみ」による特殊詐欺防止講座等、関係機関と連携し、さまざまな場面を活用して重点罪種撲滅講座や犯罪多発地域への防犯対策キャンペーンを実施するなど、安心・安全について区民に啓発しています。

愛知県警防犯活動専門チーム「のぞみ」のシンボルマーク(左)と紹介チラシ



