カーボンニュートラルのまちづくり 自治体事例|「SMIプロジェクト」で都心部の魅力向上と活性化を目指す、「ゼロカーボンキャッスル」の実現で観光地としての魅力とブランド力を向上、再エネ施設導入によるゼロカーボンベースボールパーク整備計画

堺市、姫路市、尼崎市のまちづくり自治体事例
近年、豪雨災害や記録的な猛暑など、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化が世界的な課題となっており、わが国においても2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、地域の取組を推進しています。
そのような中で、都市・地域構造や交通システムは中長期的にCO2排出量に影響を与え続けることから、都市分野においても脱炭素に資する都市・地域づくりが求められています。
そこで、都市行政においてカーボンニュートラルに向けた取り組みを一歩進めるための手引きとなることを目的に国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室が作成した「都市行政におけるカーボンニュートラルに向けた取組事例集(第2版)」より、地域脱炭素ロードマップの脱炭素先行地域の自治体事例のほか、海外事例も抜粋して紹介します。
今回は、堺市、姫路市、尼崎市のカーボンニュートラルのまちづくり自治体事例をお届けします。
「SMIプロジェクト」で都心部の魅力向上と活性化を目指す|堺市
大阪府 堺市では、移動利便性の向上や歩きたくなるウォーカブルな空間形成と合わせたカーボンニュートラルの取り組みなどにより、堺都心部の魅力向上・活性化を目指す「SMI(堺・モビリティ・イノベーション)プロジェクト」において、脱炭素先行地域選定を活かした取り組みを進めています。
堺市は2021年3月に、2050年カーボンニュートラルを目指すことを含む「ゼロカーボンシティ」および「気候非常事態宣言」を表明し、庁内の取り組みをパッケージとして調整を進めることになりました。
堺市は2009年に環境モデル都市、2018年にSDGs未来都市に選定され、再生可能エネルギーの導入などの脱炭素型都市構造の構築や、ウォーカブルな都市空間の形成に取り組んでいます。

都市の課題と今回のまちづくり(左)と取り組み経過
SMIプロジェクトのコンセプト
SMIプロジェクトは、移動利便性の向上や歩きたくなるウォーカブルな空間形成と合わせたカーボンニュートラルの取り組みなどにより、堺都心部の魅力向上・活性化を目指します。

都心の将来像と交通
SMIプロジェクトのイメージ
SMIプロジェクトの推進に向け、便利・快適な移動環境の構築に取り組んでいます。
特に「SMI都心ライン」では、常に最先端の技術を実装する、時代とともに進化し続ける次世代都市交通(ART)の導入を目指しています。

SMIプロジェクトのイメージ
取り組みの利点
最先端の都市のアピール
脱炭素は先進都市のアピールに不可欠となっています。
SMIプロジェクトの取り組みを広く周知
脱炭素先行地域に選定されたことにより、SMIプロジェクトの取り組みを市民や事業者に周知でき、民間事業者などが堺市のまちづくりに興味を示してくれたため、今後のさまざまな事業展開につながることが期待できます。
補助メニューの活用
SMIプロジェクトの事業については、「都市・地域交通戦略推進事業」等の活用を想定。脱炭素先行地域に選定されることで補助率が上がり(1/3⇒1/2)、費用面でさらなる支援を受けることができます。
「ゼロカーボンキャッスル」の実現で観光地としての魅力とブランド力を向上|姫路市
兵庫県 姫路市では、世界遺産・国宝「姫路城」におけるライトアップ設備のLED化や駅から姫路城の区域における居心地よく歩きたくなるまちなかづくりの機会を捉え、脱炭素先行地域の取り組みによる再エネ施設整備、供給により「ゼロカーボンキャッスル」を実現し、観光地としての魅力とブランド力向上を促進しています。
同市内の姫路城から姫路駅のエリアでは、駅前広場整備に伴うトランジットモール整備やウォーカブル推進事業を進めており、景観形成や賑わい創出に取り組んできました。近年の社会潮流である「脱炭素」を加味することで、さらにアピールする狙いです。
市内における二酸化炭素の大きな排出地は工業地帯ですが、環境問題は社会の問題であり、世界遺産・国宝姫路城を中心においてシンボリックに取り組むことで、市民や来街者の意識啓発につなげる考えです。

都市の課題と今回のまちづくり(左)と取り組み経過
取り組みの全体像
姫路駅周辺では、平成27年に姫路駅北駅前広場再整備が、令和2年には大手前通り再整備が完了し、トランジットモール化による一般車の流入制限により、人を中心とした駅前空間が形成されています。
大手前通りでは、令和4年から歩行者利便増進道路(ほこみち)制度を活用した歩道利活用が開始され、日常的に賑わい、憩う空間となる取り組みを進めています。
さらに、ウォーカブル推進計画の策定や姫路城のライトアップ設備のLED化や既存店舗の魅力化など、交流を生むさまざまな取り組みが実施されています。

取り組みの全体像
市の遊休地を活用した再エネ電力の地産地消の取り組み
関西電力は、姫路市の遊休地に太陽光発電設備を設置し、脱炭素先行地域の対象となっている姫路城や周辺の公共施設に、電力を供給する「コーポレートPPA」に取り組んでいます。余剰電力は脱炭素先行地域以外の公共施設やグリーン水素の製造等で有効活用することを検討しています。
イニシャルコストは関西電力が負担しますが、姫路市が用地を提供するとともに需要家になることにより、サービス料を徴収するほか、太陽光発電設備を設置することに関して、市が庁内の調整や周辺市民への説明を行います。

取り組みの利点
地方への企業投資の促進
地方都市における脱炭素ビジネスが加速し、大手企業の地方投資を促進する機会になることが期待できます。
対外的な都市のPR、地元への取り組みPR
姫路城等の観光資源に加え、ウォーカブルなまちづくりや、脱炭素への取組を行うことで、都市のブランディング、PR面で効果があるほか、ウォーカブルなまちづくりと脱炭素先行地域の取り組みが連動することにより、どちらの事業も相乗効果が得られやすくなります。
民間技術の活用促進
関西電力と連携協定を交わし、姫路城等への再エネ供給に係る事業化支援を受け、新たな取り組みの実現につながったほか、先行地域補助金によるイニシャルコスト軽減LED照明設備整備費用に補助金を活用でき、イニシャルコストの軽減につながりました。

ライトアップされる姫路城
再エネ施設導入によるゼロカーボンベースボールパーク整備計画|尼崎市
兵庫県 尼崎市では、官民連携による阪神タイガースファーム施設誘致の機会を捉え、周辺公園緑地の再整備によるウォーカブルなまちづくりを行うとともに、脱炭素先行地域を活用することで、再エネ施設の導入による来場時の交通アクセスを含むゼロカーボンベースボールパークの計画を進めています。
同市では経済部と土木部で阪神タイガースファーム施設の誘致活動を推進し、移転の決定にあたり、市民からの要望である環境面への配慮が課題となり、環境部とも連携して取り組むこととなり、新しい技術を活用した環境配慮の取り組みを実施することにしました。
そこで、先行地域への選定を視野に、阪神タイガースファーム施設だけでなく、球場までの交通も含めた脱炭素の実現を目指すこととし、環境部、経済部、土木部、都市計画部が連携して取り組むこととなりました。

都市の課題と今回のまちづくり(左)と取り組み経過
取り組みの全体像
阪神タイガースファーム施設誘致に伴い、小田南公園及び周辺の公園や緑地等を中心とした都市の再生に取り組んでいます。
阪神タイガースファーム施設整備にあたっては、阪神電鉄は市から公園用地を定期借地し、施設整備及び管理・運営を行い、にぎわいの創出、地域の防災性の向上を図ります。
市では、周辺の大物(だいもつ)公園や大物川緑地の一体的な整備をウォーカブル推進事業を活用しながら実施し、小田南公園への集客やまちなかの周遊性を高める取り組みを進めています。

対象とする地域の概況(尼崎市・阪神電気鉄道株式会社「阪神大物地域ゼロカーボンベースボールパーク整備計画」より)
小田南公園における官民連携の取り組み
2025年に供用開始された小田南公園は、官民連携による阪神タイガースファーム施設整備を中心に、にぎわいの創出、地域の防災性向上を図っています。
阪神タイガースファーム施設としては、タイガース野球場、タイガース練習場、室内練習場、選手寮兼クラブハウスの新設、公園利用者が阪神タイガース選手が試合や練習に励む雰囲気の中で、くつろぎ、散策などが楽しめます。
公園・駅舎の脱炭素化の取り組み
小田南公園に整備する阪神タイガースファーム施設を始めとする施設整備においては太陽光パネルを設置し、小田南公園内施設、大物公園及び大物川緑地で自営線による電力融通を行い、再エネを利用した脱炭素化の取り組みを進めます。
また、小田南公園の施設整備に加え、全国的にもまだ取り組みが少ないゼロカーボンステーションにも取り組みます。阪神電鉄で駅施設への太陽光パネルの設置を行い、各駅で発電した電力は駅間で融通することで100%自家消費を行います。

再エネ利用の取り組みの全体像(尼崎市・阪神電気鉄道株式会社「阪神大物地域ゼロカーボンベースボールパーク整備計画」より)
取り組みの利点
阪神タイガースファーム施設誘致への市民理解の促進
既存公園に野球場を誘致するということで、市民から緑や住環境に対する懸念が上がりましたが、脱炭素化の取り組みにより理解の促進につながりました。
都市の宣伝効果
ゼロカーボンベースボールパークとして、環境の面でも阪神タイガースファーム施設の宣伝効果があり、立地企業等からの反響も感じられました。今後は周辺の集客施設等への人流拡大も促進していきます。
阪神グループの経営方針と合致、関連事業者の取り組みを積極的に発信
沿線活性化と持続可能な社会の実現の両立が可能となり、施設整備・運営を通じて関連事業者の環境への取り組みを積極的に発信し、脱炭素に対するさらなる啓発につなげていきます。



