カーボンニュートラルのまちづくり 自治体事例|既存の共同溝活用+エネルギーの面的利用、都市OSで街なかエネルギーを効率化
.png)
つくば市、バルセロナ市(スペイン)のカーボンニュートラルのまちづくり自治体事例
近年、豪雨災害や記録的な猛暑など、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化が世界的な課題となっており、わが国においても2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、地域の取り組みを推進しています。
そのような中で、都市・地域構造や交通システムは中長期的にCO2排出量に影響を与え続けることから、都市分野においても脱炭素に資する都市・地域づくりが求められています。
そこで、都市行政においてカーボンニュートラルに向けた取り組みを一歩進めるための手引きとなることを目的に国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室が作成した「都市行政におけるカーボンニュートラルに向けた取組事例集(第2版)」より、地域脱炭素ロードマップの脱炭素先行地域の自治体事例のほか、海外事例も抜粋して紹介します。
今回は、つくば市、バルセロナ市(スペイン)のカーボンニュートラルのまちづくり自治体事例をお届けします。
既存の共同溝活用+エネルギーの面的利用|つくば市
茨城県 つくば市では、既存の共同溝を活用した自営線マイクログリッドを構築し、太陽光発電やバイオマス発電、コジェネ等による再生可能エネルギーを価格変動が少なく安定的に供給することにより、レジリエンス強化と脱炭素化を実現し、若者の地域定着、企業誘致の促進、中心市街地の活性化を目指しています。
同市では、平成20年時点に2030年までに市民ひとり当たり二酸化炭素排出量50%削減目標を掲げた「つくば環境スタイル」に基づき早くから低炭素社会づくりの取り組みや体制づくりが進められてきました。
平成25年には環境モデル都市に選定され、「つくば環境スタイル」をベースとした「つくば市環境モデル都市行動計画」を策定。さらに令和2年に温室効果ガスへの対策を図るために、「つくば市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を策定し取り組みを推進しています。

都市の課題と今回のまちづくり(左)と取り組み経過
今回のまちづくり①
自営線マイクログリッドによる再エネの安定供給網の構築
筑波研究学園都市では既存都市インフラとして、歩行者専用道路等の下に整備されている既存共同溝を活用し、民間裨益型(=民間事業者のメリットにつながる)自営線マイクログリッドを新たに構築し、従来の熱に加え安定してクリーンな電力をエリア内に供給します。
既設共同溝の活用
既存の共同溝の活用により自営線マイクログリッドの整備コスト削減につながり価格変動が少ない再エネ供給が可能となります。
熱供給事業者(ミライデザインパワー)の経営改善
整備当初は熱供給への接続が前提でしたが、建物の更新が進み近年は接続していない施設も増加傾向にありました。
そこで従来の熱供給に電気供給を併せることで新たな顧客獲得が進み、熱供給事業者の経営改善にもつながることが期待されています。
マイクログリッドによるエネルギーのマネタイズ
モニタリングによるエネルギーマネジメントシステムによって再エネとの連携の最大化や市場価格動向と連動した系統電力からの再エネのバックアップによる価格変動が少ないエネルギー供給が可能となります。

共同溝のイメージ(左=つくば市資料「つくば市の共同溝」より)と配電系統のモニタリングイメージ
今回のまちづくり②
地域冷暖房事業者による総合的なエネルギー供給
リアルタイムで電力系統状況をモニタリングし、太陽光発電電力等の市場価格の動向を把握。市場価格の低いときに調達するなど、マイクログリッド単独でコントロールするのではなく、系統からもバックアップを取ることでカーボンフリーでありながら価格変動が少ない電力を供給するシステムを導入しています。

つくば市の取り組みと熱供給事業者の取り組み
今後の展望
取り組みを他エリアに拡大
地域冷暖房の既設範囲は自営線マイクログリッド構築のエリア以上に広がっており、周辺エリアにも配管を延長し、供給エリアの拡大を目指します。
また、再開発や施設改修等の他事業と合わせて供給エリアの拡大を図っていくほか、対象エリアの隣接地では再開発の計画が進んでおり、脱炭素先行地域の区域には含まなかったものの、再開発の際には脱炭素の取り組みとも連携し、先進的な取り組みの実施も目指します。
スーパーシティとの連携
「つくばスーパーサイエンスシティ構想」と連携し、スーパーシティの取り組みの中で収集したデータを脱炭素化にも活用することに意欲を示しています。具体的には電気の潮流を把握し余剰電力によってリアルタイムでEV充電等の価格を調整するほか、人流によって施設の割引情報を発信する等を検討しています。

筑波研究学園都市の地域冷暖房共同溝
《海外事例》都市OSで街なかエネルギーを効率化|バルセロナ市
スペインの首都(マドリード)の次に人口が多い大都市・バルセロナ市では、既存市街地で自動車の進入を規制する街区を設定(スーパーブロックの導入)しているほか、都市OS“Sentilo”による街なかエネルギーの効率化に取り組んでいます。
同市では、都市に関するデータを集約して活用する“City OS”を構築しており、市内の騒音や大気の汚れ、駐車場の利用状況などをリアルタイムで監視する約1800個のセンサー等のデバイス及びデータを集積・分析するIoT基盤である“Sentilo”が導入されています。
具体的な取り組み内容
既成市街地でのスーパーブロックの導入
スーパーブロック導入の第1段階では交通整理のみを実施。
第2段階では遊具やベンチを置くなど既存の街を簡易的な手法で変えます。
第3段階ではまちの構造を長期的かつ計画的な工事で作り変えます。
ブロック内では、入居者、ごみ収集、配送サービスの自動車や自転車のみ通行でき、時速10kmの速度制限を設定し、緑地の導入やベンチ、植木鉢、遊具などのソーシャルスペースを構築。歩行空間の確保に従い、道路沿いの商業店舗を利用しやすくなり、地域経済の活性化が期待できます。
また、公共交通ネットワークの強化も同時に行うことで、自動車から他の交通モビリティへの転換を図り、脱炭素に貢献しています。

スーパーブロック街区の概念図(バルセロナ市役所「LET'S FILL STREETS WITH LIFE~Establishing Superblocks in Barcelona」より)
ICTを活用した公共空間におけるエネルギーマネジメント
都市に関するデータを集約して活用する“City OS”を構築しており、市内の騒音や大気の汚れ、駐車場の利用状況などをリアルタイムで監視するセンサー等のデバイス及びデータを集積・分析するIoT基盤である“Sentilo”を導入。まちなかのセンサーのデータを集約、一元管理し、交通、環境など各部門がSentiloの情報を参照することで、散水・噴水・上下水道システムの自動運転や遠隔操作による水資源の節約、街路灯ごとの明るさや点灯・消灯時間の制御を実施しています。

Sentiloのサイト(https://www.sentilo.io/)よりSentiloのアーキテクチャー
日本の自治体・企業への脱炭素化の推進に関するヒント
ステップを踏んだ取り組みにより、都市の大改造を実現
スーパーブロックの導入にあたり、第1段階の交通整理から、第2段階のタクティカルな手法による取り組みを経て、第3段階で街の構造そのものを作り変える長期的な事業を行うことで、地域の特性やニーズを踏まえた都市の大改造を実現しました。

バルセロナ市の街並み


.png)

