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先進事例2025.12.10

カーボンニュートラルのまちづくり 自治体事例|熱供給ネットワーク形成とまち開発推進制度、既存住宅のリノベーションとカーボンニュートラル、《海外事例》新規開発時の地域熱供給システムへの接続検討を義務づけ

カーボンニュートラルのまちづくり 自治体事例|熱供給ネットワーク形成とまち開発推進制度、既存住宅のリノベーションとカーボンニュートラル、《海外事例》新規開発時の地域熱供給システムへの接続検討を義務づけ

札幌市、仙台市、イギリスのカーボンニュートラルのまちづくり自治体事例

近年、豪雨災害や記録的な猛暑など、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化が世界的な課題となっており、わが国においても2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、地域の取り組みを推進しています。
そのような中で、都市・地域構造や交通システムは中長期的にCO2排出量に影響を与え続けることから、都市分野においても脱炭素に資する都市・地域づくりが求められています。

そこで、都市行政においてカーボンニュートラルに向けた取り組みを一歩進めるための手引きとなることを目的に国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室が作成した「都市行政におけるカーボンニュートラルに向けた取組事例集(第2版)」より、地域脱炭素ロードマップの脱炭素先行地域の自治体事例のほか、海外事例も抜粋して紹介します。

今回は、札幌市、仙台市、イギリス ロンドン「カムデン区」のカーボンニュートラルのまちづくり自治体事例をお届けします。

熱供給ネットワーク形成とまち開発推進制度|札幌市

北海道 札幌市は、冬季の気温が低いため、暖房エネルギー消費が大きく、地域特性に応じた対策が課題です。
そこで、平成30年3月に「都心エネルギーマスタープラン」を策定し、低炭素で持続可能なまちづくりに向けて重点的な取り組みを掲げています。
さらに令和2年2月にゼロカーボンシティ宣言をし、2050年排出量実質ゼロを目指して、各取り組みを進めています。

「都心エネルギーマスタープラン」の表紙(左)と取り組み経過

今回のまちづくり①
都心エネルギーマスタープランによる熱供給ネットワークの形成

1972年の冬季オリンピックの開催に合わせて建築された札幌都心部の建物の多くが、今後建替えが進むと予測されています。
そこで、新たなまちづくりと環境エネルギー施策を一体的に展開することにより、世界のモデルとなる低炭素で持続可能なまちづくりを進めるため、札幌市では2018年3月に「都心エネルギーマスタープラン」を作成し、取り組みを進めています。

取組の方向性と期待される効果(「都心エネルギーマスタープラン」より)

今回のまちづくり②
「札幌都心E!まち開発推進制度」の運用

「札幌都心E!まち開発推進制度」は、札幌都心での建物建替えや増築などの開発計画において、事業者と市が協働し都心の目標である「脱炭素化」「強靭化」「快適性向上」の達成につながる計画となるよう誘導する制度です。
計画の早い段階での市との事前協議と、建物を使用し始めてからの運用実績報告とあわせて、市は容積率の緩和による取り組み支援を行います。
対象行為は建築物の新築、増築、改築、大規模の修繕・模様替え、建築物の用途変更で、対象規模は対象延べ面積5,000平方メートルを超える建物。対象区域は、札幌市立地適正化計画に「都市機能誘導区域(都心)」として位置付ける約480haの区域となっています。

「札幌都心E!まち開発推進制度」の概要(「札幌都心E!まち開発推進制度」説明動画=https://youtu.be/9aAegzEpajUより)

具体的な取り組み事例
株式会社北海道熱供給公社(共同提案者)との連携

株式会社北海道熱供給公社では、都心エネルギープランの実現に向けて、都心での熱供給事業を展開しており、将来の需要を想定したエネルギーセンターの整備、及び熱導管の整備によるエネルギーネットワークの拡充、需要家となる顧客の獲得を行っています。
市は熱導管を敷設する道路空間の占用料の免除や、熱導管への接続を評価する容積率緩和策を講じるなど、官民が協調して取り組みを進めています。

取り組みの利点

  • 都市の強靭化への貢献:複数のプラントをネットワークにより連携することで、省エネ性だけでなく強靭性を高めることに貢献している
  • 都市ブランディング効果:環境に配慮した強靭な都市をアピールすることで、都市ブランディングにつなげている
  • 経済効果:建物ごとの熱源機器等スペースが縮小できるため、レンタブルスペースへの転用や建設費の削減につながる
  • 企業や市民の意識向上:事業者の先進的なエネルギー利用の取り組みを発信していくことで、企業や市民の環境保全の意識向上につながることを期待している

既存住宅のリノベーションとカーボンニュートラル|仙台市

宮城県 仙台市は、2021年策定の都市計画マスタープランでは、「脱炭素社会の実現に向けた都市づくり」を掲げ、①環境負荷の小さい都市空間の形成、②エネルギー効率の高いまちづくりを推進。郊外に広がる市内最大の郊外住宅団地「泉パークタウン」で既存住宅のリフォームタイミングと合わせた再エネ・省エネ設備の導入・断熱改修を進めています。
泉パークタウンの「紫山3・4丁目地区」は平成11年頃から分譲を開始。築10~20年の住宅が建ち並び、屋根や外壁の塗り替え、設備更新など、リフォームのタイミングを迎えています。

同市は令和3年3月にゼロカーボンシティ宣言を行い、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すと表明。令和6年3月、2030年削減目標を55%とする本市の地球温暖化対策推進計画を改定しています。

「泉パークタウン」のサイト(上、https://www.izumi-parktown.com/)と取り組み経過

今回のまちづくり①
既存住宅のリフォームタイミングと合わせた再エネ・省エネ設備の導入・断熱改修

築10~20年が経過した既存住宅のリフォーム(設備・機器更新、外壁塗装など)のタイミングと合わせて、太陽光発電・蓄電池・エコキュート・V2H・HEMS等の導入に加え、住宅の断熱改修を行うことにより、防災性・快適性・経済性・環境性に優れた住宅の普及を促進しています。

また、省エネ性能が高い機器(エコキュート・V2H等)の提案と併せて、エネルギーマネジメントの取り組みを実施することで、再エネの有効活用と地域の電力供給の安定化を図っています。

今回のまちづくり②
エネルギーマネジメントシステムの導入

DR/VPPによるエネルギーマネジメントシステムを導入することにより、各住宅で作った再エネの自家消費を促進するとともに、エネルギー利用の最適化・需給調整・電力供給の安定化を図ることにより、地域における再エネ活用・普及のさらなる促進につなげています。

DRとはDemand Responseの略で、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることです。
VPPとはVirtual Power Plantの略で、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供することです。

取り組みのイメージ

取り組みの利点

  • 既存住宅に省エネ機器・太陽光・蓄電池・V2H・HEMSを導入することにより、災害時における家庭での自律的な電源を確保
  • 住宅の断熱化によりヒートショック等が抑制され、健康寿命の延伸や社会保障費の増加を抑制
  • 省エネや再エネの設備の施工を行う地域事業者を育成し、新たな雇用、企業立地を促進することで、持続可能な都市経営に貢献

《海外事例》新規開発時の地域熱供給システムへの接続検討を義務づけ~イギリス ロンドン「カムデン区」

イギリス ロンドン市の北西部に位置する自治区「カムデン区」(2021年人口:約21万人、人口密度9,633人/k㎡、区域面積21.8k㎡)では、新規開発時の地域熱供給システムへの接続検討を義務づけています。
分散型エネルギーネットワーク(以下、DEN)から半径500m以内又は1km以内で新規開発する場合の熱導管接続条件を提示し、開発者に接続検討を義務付けるもので、炭素排出量を2017年までに27% 、2020年までに区全体で40%削減するとして実施されました。

取り組み内容

新規開発時のDENへの熱導管接続検討の義務化
2011年より、DENから半径500m以内の開発では、DENへの接続を義務付けており、開発時点でエネルギープラントが未整備でも、熱交換器等の設置空間の確保を求め、DENから半径1km以内の開発では、3年以内にプラントが整備される地域の場合、DENへの接続に係るアセスメントを義務付け。接続しない場合は、理由の明確化と負担金の提供を求めました。

熱需要マップ及び熱供給源設置ポテンシャル調査の実施
2007年には区内の熱需要の調査を実施。2015年には熱需要マップの作成、熱供給源設置ポテンシャル調査及びDENの区域を設定しました。

日本の自治体・企業への脱炭素化の推進に関するヒント

①都市行政が開発条件に脱炭素化に資する取り組みを位置付ける
国や市が脱炭素化を強く推進しており、行政が開発条件に脱炭素に寄与する取り組みを位置付けることで、地域の脱炭素化を促進しています。

②土地所有者がエネルギーセンターの土地を無償提供する
土地所有企業がエネルギーセンターの土地の無償提供をすることでエネルギー料金が安価になり、常に顧客を呼び込み、地域の脱炭素化を広めることができます。

開発事業と連動した地域熱供給の仕組み

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