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自治体向けウェビナー潜入レポート「先進自治体に聞く!自治体DXと公共施設運用ICT化のポイント」 構造計画研究所、茨城県小美玉市

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2021年9月、デジタル庁が開庁し、DXの波は自治体にも一気に押し寄せている。「自治体デジタル・トランスフォーメーション」という新しいキーワードが潮流となる中、自治体や行政はDXにどのように取り組むべきか、まだまだ模索が続いている。

そんな状況を打開すべく、自治体DXに焦点をあてたウェブセミナー「先進自治体に聞く!自治体DXと公共施設運用ICT化のポイント」が2021年9月9日に開催された。このセミナーで構造計画研究所および茨城県小美玉市 職員が語った、公共施設運用のICT化で抑えたいポイント、およびDX化のポイントと効果を紹介する。


■現状バイアスに負けないDX推進、3つのフェーズ循環で成功体験を

第一部では、構造計画研究所 すまいIoT部 自治体マーケティング担当の岡田佳也氏よりこれまでの経験を元に、ICT化における前提、導入がうまくいく自治体とそうでない自治体の違い、およびスマートロックと連携した公共施設運用ICT化のポイントが紐解かれた。

岡田氏曰く、ICT化を考える上では、「問題が起きていないからこのままでもいい」という意識を取り払い、DXの概念、すなわち、スウェーデンのウメオ大学 教授 エリック・ストルターマン氏が提唱した「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることこそがDX(デジタルトランスフォーメーション)である」点を強く意識する必要があるという。問題が起きていないから良しとするのではなく、ICT化・DXの推進により、「こんな風に便利になる、より良くなる」面を強く意識すべきであると強調した。

では、実際に自分たちでDXを推進するためにはどうしたらいいのか。
「変えなくて良い」に傾きがちな状況を「DXでより良くする」風潮に変えられるのか。
状況を好転させるために踏み進むべき段階として、以下の3つのフェーズが提示された。

●第1フェーズ:課題発見深化
ICT化をしないと施設を閉めざるを得なくなる、管理業務などの単純作業に負担やコストがかかっている、現場から苦情や改善要望があがっているなど、クリティカルな課題を発見し、深化が求められるフェーズ。

●第2フェーズ:推進展開
他に同様の課題がないか検討する、これまでやらなかったことでも臆せず進める、必要に応じて他の部署や関係者を巻き込むなど、課題を解決するための推進力が求められるフェーズ。

●第3フェーズ:付加価値向上
施設を使いやすくして住民にもっと使ってほしい、もっと現場の負担を軽くしたい、予約受付運用を見直して利用促進を図りたいなど、住民サービスを向上させる意欲が求められるフェーズ。

これら3つのフェーズを意識的に循環させながら、成功体験を積み重ねることが重要である、と岡田氏は述べた。

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ウェブセミナーでの構造計画研究所 岡田氏による発表

さらに、公共施設のICT化を導入するにあたり留意すべきポイントとして以下を提示した。

・「施設を使えない層」を作らないこと
 カードやスマホなど特定のデバイスに依存するためサービスが使えない住民がいる、といった状況を作らない
・体験できる場を設けながら周囲の理解を得ること
 住民説明会や実証実験を開催し、体験の場を設ける。住民の理解が得られれば、より導入しやすくなる
・状況を見極めながら導入を進めること
 それぞれの施設の事情や背景をよく観察し、最適解を探す。予算や補助金を鑑みながら進め方を判断する

前述の3つのフェーズおよび留意すべきポイントを踏まえ、構造計画研究所が提供する公共施設の予約システムおよびインターネットにつながるスマートロック「RemoteLOCK(リモートロック)」を公共施設管理に取り入れることで、施設の予約受付から鍵の受け渡しまでインターネット上で行い、予約や利用の円滑化と利便性の向上を実現できると説いた。

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構造計画研究所が提案する公共施設のDX推進例

■自治体担当者自らが語る、DX化のポイントと効果
〜市民との丁寧な対話、さまざまな視点での検討を重ねて住民サービス向上と業務効率アップを実現

第二部では、実際に公共施設管理にICTを導入し成功した自治体として、茨城県小美玉市 文化スポーツ振興部 スポーツ推進課 田谷 寿之 係長と同 教育委員会 教育企画課 笹目 翔太郎氏がDX化のポイントと効果について語った。

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小美玉市 田谷氏(右)および笹目氏(左)から
紹介された「ICT化 導入の決め手」

茨城県のほぼ中央部、霞ヶ浦沿岸に接し、茨城空港を有することからも国内外に幅広い分野での地域振興が期待される小美玉市。日本を代表する酪農の里であり、鶏卵出荷量も全国有数、ヨーグルトやプリンなどの名産も数多い。

そんな小美玉市がICTの導入に至った背景には、従来のシステムで学校体育施設などを貸し出す際、利用者は学校や市役所など複数の施設に行ったり来たりする手間が強いられていた。また、市町村合併前の旧町村の運用システムがそのままで統一されていないといった問題や、鍵の紛失リスク、予約状況の連絡漏れなどのトラブルもあり、予約から貸し出しまでの流れの簡素化、鍵の管理の効率化が喫緊の課題となっていた。

その解決のため小美玉市が採用したのは、構造計画研究所が提供するスマートロック「RemoteLOCK」と予約システムの「まちかぎリモート」を用いた公共施設管理のICT化であった。さまざまな視点から検討を重ねた結果、決め手となったのは、導入により、
・事務の効率化による働き方改革
・コスト削減
・利用者による物理鍵の紛失問題
・新型コロナ感染症予防対策のための接触機会の低減
を図れることが判明したためだったと言う。

加えて、災害時には避難所となる学校体育施設において、電池式のスマートロックは停電下でも継続して利用でき、物理的な鍵の入手を必要としないため、非常時の避難所開設もスムーズに実施可能である。このため、防災の側面からも質の向上が実現できると判断した。

小美玉市では、2020年より構造計画研究所と実施した施設管理のスマート化に関する実証実験を通じ、問題点の精査をしながら利用者の意見を収集した。こういった導入前および導入初期の期間を振り返り、「重要なのは、市民と丁寧な対話を持ち、支持される内容で導入に向けて進めることだ」と強調した。

小美玉市で施設管理へのICT導入によって得られた効果としては、
・学校開放事業に係るコストの削減
・利用者や利用団体の管理にまつわる煩雑な業務からの開放
・予約システムを活用したお知らせなどが迅速に対応可能になり、利用状況をシステム上でリアルタイムに詳細に把握できる
・市役所への利用に関する問い合わせの減少
などであり、学校施設開放事業においては、従来より25%の経費削減に至ったと述べた。

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小美玉市 ICT化の効果

小美玉市の今後の展望として、次のように語った。現在行っている学校体育施設の管理に加え、廃校となった施設の管理や生涯学習施設の管理にも導入したいと考えている。管理人を非常駐にできないか、夜間のみ外部委託している施設管理をRemoteLOCKの活用で置き換えられないかなど、さまざまな視点から検討を重ねており、考え方によっては多くの活用方法が挙げられるという。

発表の最後に、田谷氏からICT化を考えている自治体に向けてメッセージが発せられた。 「廃校施設の再整備や施設の老朽化に伴う修繕、イベントの開催など、住民から我々自治体への要望はさまざまです。今回のRemoteLOCKの導入を、“単なる鍵の交換”と見なす方もいらっしゃるかもしれません。ですが、従来の鍵をスマートロックに交換し、予約システムと連携して運用することで、市民のみなさんの利便性向上が実現し、我々の事務の効率化が図れました。さらに、人件費の削減や委託費の軽減、これまであまり意識していなかった合鍵の作成費や紙の申請書印刷など、さまざまなコストの削減につながりました。

我々小美玉市と同じような効果が必ずしも他の自治体で得られるかは分かりませんが、まずは公共施設管理のICT化に関する実証実験に参加され、効果を検証されることをお勧めします。」

第二部に続く質疑応答では、参加者から多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがわれた。
ここでいくつかの質問と回答を紹介したい。

Q.導入されたスマートロックはWi-Fiがないと運用できない?

A:(構造計画研究所による回答)はい。運用にはWi-Fiが必須。RemoteLOCKはWi-Fi接続により、暗証番号の遠隔発行や入室履歴の参照が可能になる。検討中の環境にWi-Fiがない場合は、当社からご提案することも可能。

Q:小美玉市では、予約システムとRemoteLOCKの連動は既に行っているか。連動している場合は、実際の活用状況等はどうか。

A:(小美玉市による回答)はい。予約システムとRemoteLOCKは連動しており、予約を入れると解錠用の暗証番号がメールで利用者に自動送付される流れになっている。現在は、ほぼ全ての施設利用案件がインターネットからの予約となっており、利用時は暗証番号を入力してドアを解錠いただいている。

Q:利用者が施設を使った後(退出時)の鍵閉めおよびその確認はどのようにしているのか。

A:(小美玉市による回答)鍵は錠前に付いているロックボタンを押すことで施錠できる。管理者側では、インターネットの管理画面から施錠されているかどうかを確認できるので、もし施錠せずに利用者が帰ってしまった場合でも、きちんとドアが閉まった状態でさえあれば、現地に行かずインターネットで施錠設定することで鍵を閉められる。ただ、扉のずれが大きすぎるとインターネットでの操作では閉まらない場合があり、そういった場合は学校の警備で巡回している警備会社により手で締めていただくことで対応している。

これ以外にも質問は尽きなかったが、紙面の都合上割愛したい。

現在、自治体におけるDXの推進はまだまだ途上の道にあり、業務効率化はもちろん、住民の利便性向上に貢献できる大きな可能性を秘めている。そんな中で、茨城県小美玉市でのDX推進事例について担当者自らの口で語られた本セミナーは参加者の多くに刺激を与えるもので、今後のDX推進の一端を担うであろうことが大いに期待される。

構造計画研究所では、自治体におけるDX推進、スマート施設管理に関するセミナーを定期的に開催している。 セミナー情報はホームページ参照のこと。
https://remotelock.kke.co.jp/seminar/ict-public-facilities-management/normal

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