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DXで住民の利便性アップと省力化を実現。茨城県小美玉市 公共施設の予約・貸出をオンライン化

DXで住民の利便性アップと省力化を実現。茨城県小美玉市 公共施設の予約・貸出をオンライン化

DXで住民の利便性アップと省力化を実現。茨城県小美玉市 公共施設の予約・貸出をオンライン化

小美玉市 文化スポーツ振興部 スポーツ推進課
係長 田谷 寿之(たや としゆき)、笹目翔太郎(ささめ しょうたろう)
取材:構造計画研究所 塚本、岡田

小美玉市では学校体育施設開放事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んだ。体育館など学校体育施設開放はこれまで、利用団体が学校へ直接予約申込みをし、カギの貸し借りなど、複数施設での手続きが必要だった。

小美玉市は令和2年末頃から構造計画研究所と施設管理のスマート化の実証実験に取り組み、実証実験ではこれらの手続きを大幅に見直し、予約からカギの受取り、施設利用までがオンラインで管理できるようになった。

利用者からは、「以前は利用の際に学校や施設に申込みに行く必要があったのが、自宅からできて便利になった」、貸出管理をしていた学校側からは「現場負担がおおきく軽減された」といずれも好評だ。市では実証での成功を元に、本年度(令和3年4月)からは市内の全小中学校での運用を開始した。

全国市町村では公共施設利用の予約システム導入が進んできているものの、実態は導入自治体においても電話や窓口などの対応となることも多い。小美玉市では、市内の全小中学校の体育館開放に予約システムとICTのカギを導入(学校統廃合による廃校施設を含む)することで、今までアナログでしかできなかったカギの貸し借りを含めてデジタル化。現場課題を踏まえ、コスト面を含む事業全体の省力化と利便性を両立したDXの先進モデル事例だ。

本記事では担当者にその舞台裏をインタビューした。

【目次】
■ [背景] 公共施設の管理方法と利便性に課題意識。鍵の貸出がボトルネック
■ [環境変化] 学校統廃合による廃校対応、コロナ対策、時代にあった管理方法へ
■ [解決策] 利用手続きを窓口からDX化。予約システムと番号カギの連動
■ [実現プロセス] 実証実験から市内全小中学校へ横展開
■ [効果と反響]「すごい仕組み」利便性アップと事業の省力化を実現。他自治体からも問い合わせ

[背景] 公共施設の管理方法と利便性に課題意識。鍵の貸出がボトルネック

Q.スポーツ推進課での取り組みの背景を教えてください。

スポーツ振興のため市民の皆様に継続してスポーツ活動の環境を提供していく中で、施設の管理方法に悩みがあり、利便性の向上を図りたいと考えていました。

一般的な学校体育施設開放の手続きでは、各利用団体が学校に予約申請して許可をもらいます。ところが1回の利用には、空き状況を電話確認、学校に行って申込み、市役所での手続き、利用日前後で鍵の受け渡しなど、利用者が何度も手続きに行く必要がありました。また、運動公園などのスポーツ施設利用でも、インターネットからは空き状況の照会ができる一方で、実際の予約は電話受付など人手を介して行う必要がありました。

また、利用者の手続きが多いということは、対応する学校や行政側にも同じ負担が発生していることになります。そして一連の手続きでは人が介在することで、予約連絡のミスや物理カギ紛失などのリスクもありました。特にカギについては、物理的な物を渡す必要があるため人の手による対応が避けられないと考えていました。

[環境変化] 学校統廃合による廃校対応、コロナ対策、時代にあった管理方法へ

検討を加速させた要因として、学校の統廃合もありました。少子化に伴って学校の統廃合を進める中で、当市でも6つの廃校が計画されています。従前は、学校や民間委託先にカギの貸出しの対応をお願いすることができましたが、廃校となった場合に、管理者1名だけを常駐させるのは難しく、廃校となる体育施設を活用するには、無人でもできる代替の管理方法が必要でした。

こうした検討を進めている中で、世界的に新型コロナウィルス感染症が流行し、さらに行政としても人との接触を図らない非接触や非対面など対策を講じる必要が出てきました。

[解決策] 利用手続きを窓口からDX化。予約システムと番号カギの連動 

Q. どのように解決策を探しましたか?

物理カギの撤廃に向け、民間事例なども研究し代替方法を探しました。ところが、カードキーの入室管理システムでは結局物理カギと運用が変わらず、かといってスマートフォンアプリと連動するスマートロックは、高齢の利用者を想定して万人がうまく使えるか、という観点では難しいと感じました。

そういった中で、暗証番号を押すとカギが開くというリモートロックの仕組みはまさに単純明解でわかりやすいものでした。番号キーだと、管理上のセキュリティをどう担保するかが問題ですが、利用団体毎にユニークに発行する暗証番号と、履歴が遠隔で取れることで利用実態が把握できるとわかりました。

また、鍵の貸出にあたって紙の予定表と照会する管理の手間なども、予約システムと連動することで番号発行が自動化できることがわかりました。

カギも予約もICTで実施できるため、この方法であれば、廃校の施設でも現地に人をおかずに対応が可能になります。また当初目標である、利用を便利にし、学校や市側の業務負荷も省力化できるという見通しが立ちました。

[実現プロセス] 実証実験から市内全小中学校へ横展開。

まず試験導入をして使い勝手を確かめました。モデルとして2校、毎日利用がありスポーツ活動が盛んなマンモス校の小川南小学校と、廃校になり管理上の課題がある旧小川小学校の2箇所を選びました。それぞれ学校正面玄関と体育館入り口に設置しましたが、施設の出入りに問題はおきませんでした。予約・カギの貸し出しを含めた実証実験で、運用や利用者の反応を確かめて全施設への導入と進めました。

実施前は、色々な方が使う施設なので高齢の方も扱えるかという不安をもっていましたが、いざ実証実験が始まってみれば杞憂におわり、予約を含めてスムーズに使って頂けました。また、マンモス校の利用で、管理者側の学校の先生方の負担を大きく減らせたことも、横展開検討時の後押しになりました。

Q. 費用や予算について苦労はありましたか?

予算化にあたっては、利便性の向上などの導入効果だけでなく、事業全体を整理した上で人件費等を含む費用的な試算も出しました。

今まで鍵の貸し出しを警備会社等にお願いしていた委託作業は新しい仕組みにより不要になるため見直し、機械警備など外せない内容はそのままに、など全体の管理方法を整理しました。その結果、既存のシステムから新システムに切り換えることで利便性向上が期待できることはもとより、事業全体のランニングコストも年間30%削減できることがわかりました。

利用者も便利になり、管理側の負担や行政コストも下がる三方良しの施策、ということで誰も反対した人はいませんでした。学校統廃合なども含め、時代のタイミングとあった取り組みで、そういう意味でやるべくしたやった事業だと思いました。

Q. 住民説明会の反応は? 反対意見は?

利用団体に向けた住民説明会でも細かな質問は沢山出ましたが、ネガティブな声(例えば「申請を紙でしたい」「物理カギを取りに行きたい」といった逆行するご意見)はなく、新しい取り組みで便利になるという理解が得られました。「全国に先駆けて、皆さんと一緒にいろいろご意見をいただきながら作り上げていきたい」という姿勢でお話をしており、今までインターネットで予約できなかったのが、出来るようになり、現地に行かずにカギも受け取れるというので「すごいシステムですね、誰もいなくても開いちゃうんですか」という反応が返ってきました。

導入先施設となる学校側については、校長先生・教頭先生との連絡会でご意見を伺いました。これまで貸し出しにあたって学校の先生にもかなり対応のご負担を頂いていたこともあり、実証実験先となった先生から賛同があったことで、「導入していただきたい」という後押しとなりました。

[効果と反響】 「すごい仕組み」利便性アップと事業の省力化を実現。他自治体からも問い合わせ

Q.実施した反響はどうでしたか。

このお話をするとまず「すごいですね」という反応が返ってきます。

利用者の皆さんからは、働いている現役世代では「予約を庁舎が空いている時間にいかなきゃいけないのが、自宅で出来るので助かります」との声をいただいています。高齢の方にも便利に使って頂いていますが、一部のどうしてもという方は窓口にいらしている場合があります。その場合も「いままで学校と市役所の両方に行く必要があったのが、市役所に来るだけでよくなってありがたい」といった感想をいただき、手続きをオンラインで実現できるメリットを感じています。

管理側について、この事業を検討する中で公民館や学校にヒアリングを行いました。今までは、利用の電話問い合わせ、利用の申込み・変更、紙の予定表管理などで、学校の先生側にもかなりの負担が発生していることがわかりました。導入後に先生の方から、「凄いです、電話が鳴らなくなりました。業務に集中できるようになりました」と感謝の言葉をいただいたことが、とても印象に残っています。

また、他の自治体からの問い合わせもありました。県内の他の自治体や、遠方で南は九州の自治体まで、色々な担当者様から問い合わせがあり、実際に視察等も来られました。意見交換をしながら今回の課題が、「どの自治体にも当てはまる共通の課題」で、先駆けた取り組みであることを実感しました。
また、個人の感想とはなりますが、日頃はどうしても「行政」という視点で最適な方法を考えることが多いのですが、この事業では、市民・利用者側の視点に立った問題解決に取り組むことができ、市に残せる良い仕組みができたと考えています。

関連リンク

■茨城県小美玉市 「ICTを活用した持続可能な公共施設管理」に向け、構造計画研究所と実証実験を実施
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