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イベントリポート
イベント2025.09.01
日本DX大賞2025 サミット&アワード

全国自治体の先進DX事例から、課題解決のプロセスを追体験できる

全国自治体の先進DX事例から、課題解決のプロセスを追体験できる

※下記は自治体通信 Vol.68(2025年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

人員などのリソースが限られるなか、多様化する住民のニーズに応えるには「DXが必要」と考える自治体職員は多い。しかし、DX推進は周囲の理解不足やデジタル化への抵抗感が壁となりがちだ。その壁を乗り越えるためのプロセスを、担当者がリアルに語るイベント「日本DX大賞2025 サミット&アワード」が、令和7年7月16~17日に東京・渋谷で開催された。自治体職員や民間企業のDX担当者などの参加者は、全国の職員が語る、DX成功にいたる苦労や工夫を追体験。セッション後は、自分たちの取り組みに活かせる、より具体的なヒントを求めて、登壇者に質問の列をつくるほど、熱気にあふれていた。

DX成功は対話がカギ。先進自治体の実践知に学ぶ

 DX推進の現場では、「関係各所の協力をどう得るか」といったコミュニケーションの壁が立ちはだかる。参加者は、全国の職員の試行錯誤を追体験し、対話を通じて理解を深める工夫を学ぶ機会となった。

 函館市(北海道)は、DX推進を担う部署と、DX対象業務を主管する部署との連携に工夫をこらした。同市が「乳幼児期の煩雑な行政手続きが親子の時間を奪っている」という課題の解決のため、まず取り組んだのは地域デジタル課と母子保健課が共同で「子育て世帯への聞き取り調査」を実施することだった。両課が課題意識と目標を共有することで、市公式LINEに子育てアプリ機能を搭載する施策が素早く実行され、子育て世代が情報収集や手続きをスマホで完結できるようになった。

 山形市(山形県)は、民間企業との連携に力を入れた。消防本部に救急医療情報連携システムを導入し、正確な患者情報を事前共有することで、受け入れ病院決定までの時間を短縮し、早期治療開始を実現するDX推進に際し、システム提供を担う民間企業との連携が必須だったからだ。そこで同市は、医療機関も交え、課題と改善目標を綿密にすり合わせる意見交換や、現場での運用を見据えた調整をすることで、DX推進の迅速化を図った。その結果、住民の救命に大きく貢献したほか、救急隊の事務負担を大幅に軽減できた。

 イベントの参加者は、こうしたプロセスを聞いたうえで、登壇者との質疑などを通して、DX推進への実践的な知恵を学んだ。

DXへの「抵抗感」を「推進力」に変える秘策

 本イベントでは、デジタル化に対して当初は抵抗感を抱いていた人さえも、「味方」になってもらえる方策を考案した事例も紹介され、現場のリアルな変革プロセスを肌で体感する時間となった。

 都城市(宮崎県)がまず取り組んだのは、押印廃止、申請用紙のムダな項目削除など「デジタル化を伴わない改革」の徹底だった。業務負担軽減を実感することで、DXに消極的だった職員の間にも、改革の必要性に共感する空気が生まれた。その後、「AIカメラで窓口の混雑状況を可視化して案内を効率化する」といったデジタル化を実施したことで、スムーズなプロジェクトの実行を可能にした。

 参加者は単なる知識ではなく、現場で役立つ変革へのアプローチや、困難を乗り越えるための生きたアイデアを「自分のもの」として持ち帰ることができたはずだ。


都城市がDX推進で3連覇。幅広い先進的知見が評価

 DXの重要性が高まるなか、「日本DX大賞2025」は大きな関心を集めた。会場への来場者・オンライン視聴者は2日間で計1,000名を超え、主催者目標の900名を大きく上回る盛況を見せた。

 そのなかで、部門別「大賞」を3年連続で受賞した都城市の取り組みは、ひと際、注目を集めた。審査員で湖南市(滋賀県)元市長の谷畑英吾氏は、デジタルに限定せず、全国の幅広い先進的な知見を取り入れてDXを進める都城市の姿勢を高く評価した。都城市デジタル統括課副課長の佐藤泰格氏は、「DXのアワードだが、市民目線に立った『アナログ改革』を評価いただいたのが嬉しい」と語った。

 「日本DX大賞」は、アナログな手法も含めて、DX推進に必要な知見が直接、共有される貴重な場だ。多くの自治体職員にとって、自分たちのDX推進における具体的な知恵を見つける絶好の機会となるだろう。

「3連覇」を果たした都城市の佐藤泰格氏


日程 令和7年7月16日(水)~17日(木)
会場 渋谷ストリームホール(東京都渋谷区)
主催 日本DX大賞実行委員会
表彰テーマ 地域DX部門/庁内DX部門/支援部門/事業変革部門/業務変革部門/サステナビリティトランスフォーメーション(SX)部門
選考 応募総数158件(過去最多)
書面審査を経て6部門からファイナリスト24件を選出
目的 自治体などの優れたDX事例を広く発信し、
日本全体のDX推進を加速させる
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