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小田原市の企業誘致施策
先進事例2024.06.11

小田原市に学ぶ、自治体の WeWork 活用。人との接点を結び、企業誘致を超えた成果を目指す

小田原市に学ぶ、自治体の WeWork 活用。人との接点を結び、企業誘致を超えた成果を目指す
人口約19万人の神奈川県小田原市。2020年、同市が新たに掲げた重点施策のひとつが企業誘致でした。以来、従来の製造業誘致にとどまらず、事務系オフィスの誘致にも積極的に取り組んでいます。 小田原市役所 経済部産業政策課で企業誘致係を務める白井 直士氏は、市長肝いりのこの取り組みをリードするひとりで、単身で WeWork に入居し、民間企業との接点を増やして企業誘致を成功させています。 今回WeWorkは、白井氏に入居に至った経緯や WeWork の活用方法などついて聞きました。
インタビュー
白井 直士
小田原市
経済部 産業政策課 企業誘致係 主査
白井 直士

課題

  • 新たな施策に、事務系オフィスの企業誘致が掲げられ、誘致企業を模索することになった
  • 「公民連携」をより進めるためにはさまざまな企業との接点が必要だが、通常の活動範囲に限られてしまっていた

効果

  • WeWork 渋谷スクランブルスクエア に入居。 WeWork のコミュニティ・マネージャーのサポートもあり、1年強で4社の事務系オフィスの企業誘致に成功
  • WeWork でできたつながりから新たな接点がどんどんと広がっている。企業誘致にかぎらない公民連携も生まれている。「日本酒に合う小田原市特産品」に関するイベントを実施したほか、小田原の複合文化施設周辺を散策するツアーなども企画中

新市長が掲げた企業誘致施策における特命プロジェクト

── WeWork 入居までの経緯を教えてください。

2020年5月、小田原市が新たに掲げた地域経済活性化の施策のひとつが企業誘致です。これまで雇用創出や税収増を目的に行う企業誘致は、工場や研究所などを誘致するのが通例でしたが、昨今はSDGs、超高齢化社会、人口減少、ダイバーシティーなど地方の課題も多様化しています。
そこで市長は「これからの地域貢献」を念頭に置いた、工場や研究所などを持つ製造業以外の民間企業を積極的に誘致していこうと考えました。具体的には、事務系オフィスを誘致する施策です。

それをいかにして行えばいいのかを考え、注目したのが東京都内に点在するシェアオフィスやコワーキングスペースでした。そこで民間企業の皆さんと接点を持てば、小田原市に興味を持ってもらえるかもしれないと考えたのです。
複数候補の中から WeWork を選んだのは、数あるフレキシブルオフィスの中でも特にコミュニティが活発だったからです。市長自ら「若い方を含め、多様な方が働いている WeWork 渋谷スクランブルスクエアが最適」と決断しました。

── 2021年6月に WeWork 渋谷スクランブルスクエアへ入居されましたが、なぜ、その席に白井さんが座ることになったのでしょうか?

WeWork を拠点に誘致活動をするという話が持ちあがったのは、ちょうど私が同じ経済部内で農政課から産業政策課に異動したタイミングでした。部長からの推薦もあったと思いますが、期待をこめてというより「イキのいい人物を担当にしよう」という感覚で任命されたと思っています。
当初、私に与えられた特命は「企業を誘致する」のみで、市長からは、冗談ですが「10,000枚名刺交換するまで帰ってきちゃダメだよ」と言われたのをよく覚えています(笑)。

── 入居後はどのようなことから始めたのでしょうか?

市長は、福祉と人材不足に悩む農業をつなげる「農福連携」の推進を施策に掲げています。私が農政課に在籍していたこともあり、まずは WeWork でこれを活動のテーマに据えてみようと考え、WeWork のコミュニティ・マネージャーに相談しました。

他方で、ちょうどそのころ、小田原市に新たなワーケーション施設YURAGIが開設されました。その宣伝の話もコミュニティ・マネージャーに持ちかけたところ、「それならば、小田原市と物理的な距離も近い WeWork オーシャンゲートみなとみらい(以下、OG)に行ってみてはどうか?」とアドバイスを受け、アポイントメントなしでOGへ行ってみました。
そこで偶然にも出会ったのが、プロジェクトマネジメント集団の一般社団法人つむぐ、つづる。の皆さんです。彼らと話を重ねていく中でプロジェクトを立ち上げることとなり、一緒に活動していくことになりました。

WeWork オーシャンゲートみなとみらい での出会いから誘致に成功

── 渋谷から横浜にまで活動範囲を広げたわけですね。他にどのような出会いがありましたか?

白井:OGには神奈川県が設置しているベンチャー企業の成長促進拠点SHINみなとみらいが入居しています。私は今でも、SHINみなとみらいのオフィスに出向き、いろいろな方と接点を持っています。最初にSHINみなとみらいを訪問したときに出会ったのは、日本酒の一合缶事業「ICHI-GO-CAN®」を展開している株式会社Agnaviの玄 成秀さんです。玄さんとは、「日本酒に合う小田原市特産品」に関するイベントを企画しました。以来、ベンチャー企業の皆さんとはさまざまな情報を交換しています。

WeWork オーシャンゲートみなとみらい にあるSHINみなとみらいのオフィス

── 企業誘致に成功された経緯を教えてください。

その後、SHINみなとみらいに所属する、リスク管理ソリューションを開発するリスク計測テクノロジーズ株式会社の岡崎代表と出会いました。この方はロボットテクノロジーの実証実験フィールドを探しており、私は小田原駅直結のおだわらイノベーションラボを紹介し、実証実験を実施しました。

その後、彼と彼の仲間(SHINみなとみらいで出会った)が「SHIN4NY(シンフォニー)株式会社」という新しい会社を設立すると聞き、その拠点を小田原市にしませんか? とお声がけしたことから、誘致に成功しました。
私からは、小田原市内に新しく開設されたシェアオフィスを紹介したほか、融資元となる地元信用金庫や地元の商工会議所との接点づくり、小田原市が提供する補助金の紹介などをサポートさせていただきました。

企業誘致をする際、地域の魅力を一方的に発信してもなかなか成功しません。なぜなら、企業が新しい土地に活動拠点を移すとなると、その場所ならではの情報や実際にビジネスに関係する人々とのコネクションがなかったりするため、実現までにさまざまなハードルがあるからです。誘う側である地方自治体には、ハードルを一緒に越えていこうとする意識が大切だと思います。

SHIN4NY株式会社の方々と

── 白井さんの積極的な活動の結果、当初の目的だった企業誘致に成功しました。市長からはどのような反応がありましたか? 

今のところSHIN4NYさんを含む4社の誘致に成功し、今後、さらに3社の企業を誘致予定です。市長からは一定の評価を得ていますが、市議会や地元事業者にも納得いただけるかは、これからの成果次第だと考えています。

── 誘致に関する今後の方針については、どのように考えていますか?

自分の活動範囲をさらに広げたいと思っています。WeWork ではテーマごとのサークル活動が展開されていますが、そうしたサークルとも積極的に接点を持ちたいです。

すでに WeWork Movieclub(WeWork 内の映画部)と連携し、小田原のイベントスペースで映画を見ながら小田原の事業者と WeWork 入居企業が交流するイベントを実施したり、サウナ部と一緒に小田原の大自然の中でテントサウナを楽しむイベントを実施したり、さまざまな取り組みをしています。
今後もカメラ部と小田原リトリート(日常から離れてリフレッシュし、心身をリセットする活動)ツアーを実施予定で、これからも多くの方と新たな出会いがあると感じています。

公民連携による地域活性化に向けて

── WeWork を拠点とするようになり、働き方も大きく変わったかと思います。他の市職員から白井さんの活動はどのように映っているのでしょうか?

小田原市は公民連携推進を施策に掲げており、市外企業との接点である重要な拠点が  WeWork であると私は考えています。企業誘致にかぎらずさまざまな成果につなげるには、私を含む自治体職員が意識を変えていくことが欠かせません。

WeWork に入居している企業の皆さんはスペシャリストで、見識を持たない私のような自治体職員にもわかりやすく、すばらしい提案をしてくれます。しかし、それを持ち帰っても、内部には響かないこともあります。小田原市役所内にももっと働きかけ、意識から変えていけたらと思っています。

── その課題を解決する突破口はありますか?

入居当初の私もそうでしたが、小田原市役所で働く職員の大半は、WeWork がどのような場所なのかわかりませんでした。私自身の活動を市役所内に広めたり、メディアでWeWorkの活動を紹介したりすることで、徐々にではありますが市役所内部でも認識されるようになってきました。
今後は、若手職員を集めて、WeWork の会議室で研修をするといったことにも取り組みたいと考えています。憧れとまでは言えないかもしれませんが、若い職員などから「WeWork での活動にかかわりたい」という声が挙がるよう、今後も積極的に取り組みを発信していきたいです。

WeWork のコミュニティが今の自分を作ってくれた

── あらためて、自治体が WeWork を活用するメリットについて教えてください。

入居して強く感じたのは、WeWork がベンチャーを含む多くの企業との出会いを提供してくれる場だということです。通常の自治体職員の活動範囲では、これほど多くの出会いの機会を得るのは不可能だと思います。

同時に、民間企業の皆さんから信頼を得て、ビジネス的なつながりを持てるだろうかという不安もあるでしょう。その点においてはコミュニティ・マネージャーの存在が本当に大きく、その存在がなければ今の私の成果も出せなかったと思います。
企業とのマッチングをはじめ出会いを後押ししてくれるのが、各拠点にいるコミュニティ・チームです。WeWork は、志さえあれば、どのような自治体でも活躍できるチャンスがある場所です。
先日も、他の自治体職員から WeWork を使うということはどのような感じか話を聞かせてほしいと言われたので強くお勧めしたところ、さっそく利用契約に至ったと聞いています。

── 最後に、白井さんの目標を教えてください。

よく、たとえ話をするのですが、お隣の静岡県三島市も小田原市も新幹線が通ります。両市とも自然環境が豊かで食べ物がおいしい、とても魅力的な地域です。何が言いたいかというと、いくら小田原の魅力的な文言を並べた都市セールスをしても、どの市町村にもそれぞれの魅力があるので小田原を選ぶ理由にはならないということです。
では、企業や事業者は何に心躍らせるのか。それは、進出先の地域でビジネスを展開したときの可能性ではないでしょうか。そして、文言では伝わらない、かかわることで実感する地域の魅力だと思います。

小田原は、他の地域にはない魅力あるコンテンツが豊富な街だと自負しております。また、この小田原をフィールドに活躍する、おもしろい事業者さんも多くいます。これらを実感してもらうことが大切で、「交流」にとどまらず、小田原との「関係」を持っていただくことが企業誘致にとって重要だと思います。
小田原とともに未来を歩みたいと多くの WeWork 入居企業に感じてほしいです。税収や雇用だけではない、地域のためになる本当の意味で価値のある企業誘致を展開していくため、これからもさまざまな人と出会いたいと考えています。

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* 本記事はWeWork Japanにて2022年9月に実施したインタビューを元に一部変更しています。

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