【物価高騰対策・子育て支援】図書カード配付で行政の想いを届け、子どもたちの記憶に残る読書体験を
(図書カード / 日本図書普及)


※下記は自治体通信 Vol.73(2026年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
エネルギーや食料品価格などの物価高騰の影響を受けた住民を支援するため、各自治体は「プレミアム付商品券」の配付など、さまざまな対策に取り組んでいる。そうしたなか、宮崎市(宮崎県)では、物価高で後回しにされがちな教育への支援として令和7年に「スマイルみやざき図書カード」配付事業を実施。18歳以下の子どもを対象に図書カードを配付し、住民から好評を得たという。同市長の清山氏に、取り組みの狙いや具体的な成果などについて詳しく聞いた。

物価高騰対策だけでなく、その後も効果が残る事業を
―これまで、どのような物価高騰対策を行ってきましたか。
当市では、国の補助金を活用して「プレミアム付商品券(以下、商品券)」の配付などを行ってきました。しかし、商品券は購入者の「自己負担」が必要です。そのせいか、市の調査では、利用は対象世帯の半分弱にとどまっていました。また、商品券の使用が一番多かったのはドラッグストアで、おもに日用品の購入に充てられていました。当面の生活への手当てとしては有効なものの、それ以上の政策効果を出しにくい面がありました。そこで近年は、「住民の所得差に関係なく実施できる」「事務手続きが簡単」「市内で経済的効果が生まれる」ということを条件に、物価高騰対策プラスアルファとして、なんらかの効果がその後も残る事業を行うようにしてきました。
―具体的に教えてください。
たとえば令和6年には、ガソリン価格などの物価高騰対策と、交通渋滞緩和を兼ねて、市内の通勤・通学者が自転車とヘルメットを購入した際、購入費用を補助することで車から自転車への転換を促進する事業を実施しました。こちらは販売店に多くの購入客が訪れるなど、一定の効果がありました。そして、令和7年に着目したのが「図書カード」です。「スマイルみやざき図書カード」配付事業として、18歳以下の子どもを対象に図書カードを配付しました。
―子どもを対象にした図書カードに着目した理由はなんでしょう。
近年、子どもたちが本を読まなくなっており、それをなんとかしたいと考えたからです。小学校1年生~高校3年生を対象にしたある調査*では、実際に1日の読書量が減少しているという結果が出ています。子どもを対象にした図書カードであれば、本に触れて選ぶ楽しさの創出や記憶に残る読書体験などの教育的効果につながると期待しました。また、当市も含めた全国の書店数も年々減少しています。基本的に書店での利用を前提とした図書カードであれば、地域書店の活性化や「文化的資本」の維持などの経済的効果にもつながると考えたのです。
*ある調査:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査」
「ありがとうございます」との感謝の声が圧倒的に多かった
―成果はありましたか。
市でアンケートをとったところ、回答者の96%が市内の書店で図書カードを利用したという結果が出ました。実際に子どもをもつ住民から「子どもと一緒に絵本を選びました」などの声が聞かれました。私の実感として、商品券と比べて住民から直接「ありがとうございます」とお礼を言われることが圧倒的に多かったですね。じつは図書カードを配付する際、「子どもたちの教育のために使ってほしい」という旨の私からのメッセージを同封したんです。普段なかなか住民との接点がないなか、そうした行政の想いを直接届けられたうえ、子ども向けの積極的な本の購入を促し、行政との距離も縮まったのではないかと思います。また、書店店主からも「本の売上が伸びました」などの声があがりました。
―今回の取り組みをどのように振り返っていますか。
やはり、現金や商品券などの給付は緊急性の高い物価高騰対策としては有効だと思いますが、メッセージ性のある支援は受け取る住民のみなさんにいい意味での影響をおよぼすことがわかりました。そのため、同じ税金を使うにしても届け方など工夫の余地はもっとあると感じましたね。また、本事業をきっかけとして、その後、書店のほうから「この機会に市立図書館で書籍販売会がしたい」という依頼があり、実施しました。今後も、子どもを含めた住民の読書促進や書店の活性化につながるような取り組みを進めていきたいです。そのきっかけづくりとなった図書カードの活用は、今後も検討していきたいと思います。

ここまでは、宮崎市の図書カードを活用した物価高騰対策の取り組みを紹介した。ここでは、図書カードの発行・運営・管理を行っている日本図書普及を取材。物価高騰対策における、自治体の図書カードの活用状況や、さらなる効果的な活用方法などを聞いた。


用途限定だからこそ、想いが伝わりやすい
―宮崎市のように、物価高騰対策に図書カードを採用する自治体は増えているのですか。
濱﨑 明確な意図をもって、活用する自治体は着実に増えています。その意図とは、「学習や情操教育といった教育的観点から、子どもにはもっと本を読んでもらいたい」というものです。物価高騰対策として、ギフトカードや「プレミアム付商品券」を配付する自治体は多いです。しかし、日用品の購入が優先される可能性が高く、なかなか子どもの教育にまで手が回りません。喫緊の事情もあるでしょうから、それは当然のことだと言えます。とはいえ、子どもに教育を行いたくない保護者はいないでしょう。そこで、本や文房具などの購入に用途が限定されている図書カードが自治体から配付されれば、保護者は率先して子どもの教育に利用する可能性が高いのです。
寺田 「子どもに本を買ってあげたいけどなかなか難しい」という保護者の方々には喜ばれますし、宮崎市のようにメッセージを配付の際に同封すれば、自治体から直接子どもたちへの想いを届けることが可能です。「さまざまな用途に使えます」ではなく、「本を買ってください」と限定的なメッセージだからこそ、想いが伝わりやすいと言えるでしょう。
また当社では、こうした用途も含め、図書カードのさまざまな活用領域を自治体に提案しています。

国をあげた書店支援とも、軌を一にする取り組み
―詳しく教えてください。
濱﨑 「物価高騰対策」「子育て支援」「学習支援」「生涯学習支援」などの領域で、世代を問わず活用できる提案を行っています。また、かつての図書カードはカードタイプのみでしたが、デジタル化に対応していくことなどを理由に、平成28年から正式名称を『図書カードNEXT』に変更しました。従来のカードタイプに加え、スマートフォンで図書カードの二次元コードを提示するデジタルタイプや、印刷した二次元コードを提示するPDFタイプの図書カードを用意しています。いずれのタイプでも、オリジナルのデザインを施すことも可能です。このようにして、各自治体のニーズに合った提案を行っています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
寺田 これまで以上に『図書カードNEXT』を普及させることにより、自治体をめぐるさまざまな課題を解決する一助になるような支援を行っていきたいです。『図書カードNEXT』であれば、宮崎市の取り組みのように、複合的な効果が見込める施策立案への支援も可能です。たとえば、「物価高騰対策の支援だけにとどまらず、さらなる波及効果が望めるような新たな施策に取り組みたい」という自治体の方々は、一度ご検討ください。
濱﨑 ネット通販の普及や人口減少により、全国の書店が次々と閉鎖しているという大きな課題もあります。これを重くみた経済産業省は「書店は創造性が育まれる文化創造基盤として重要である」という認識のもと、令和6年3月に「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げ、書店活性化に向けた施策に取り組んでいます。『図書カードNEXT』の普及は、国をあげた書店支援の動きと軌を一にする取り組みです。書店支援によって全国の「文化のインフラ」を守るとともに、地域経済の活性化にも貢献していきたいですね。興味がある自治体のみなさんは、ぜひお気軽にお問い合わせください。


| 設立 | 昭和35年11月 |
|---|---|
| 資本金 | 2,500万円 |
| 事業内容 | 図書の前払式支払手段の発行、読書普及に関するサービス業務、左記各項に付帯する事業 |
| URL |


.png)
.png)
.png)

.png)