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愛知県豊田市の取り組み
先進事例2026.04.28
防災行政無線の刷新①

【防災行政無線の更新】防災無線システムを「居抜き」で刷新、維持費削減と回線の冗長化を両立
280MHz帯同報無線システム / 東京テレメッセージ

[提供] 東京テレメッセージ株式会社
【防災行政無線の更新】防災無線システムを「居抜き」で刷新、維持費削減と回線の冗長化を両立(280MHz帯同報無線システム / 東京テレメッセージ)
この記事の配信元
東京テレメッセージ株式会社
東京テレメッセージ株式会社

※下記は自治体通信 Vol.73(2026年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

設備の老朽化や更新にあたり、多くの自治体で防災行政無線の完全デジタル化が進められている。しかし、その移行には費用も時間もかかることが多く、決断には慎重さが求められる。そうしたなか、豊田市(愛知県)は、ポケベル電波を活用した「280MHzデジタル同報無線システム」に刷新。既存設備をそのまま活用する「居抜き」方式で、コストを抑えながら、回線の冗長化に成功したという。導入の経緯とその効果について、同市の深津氏に詳しく聞いた。

[豊田市] ■人口:41万3,650人(令和8年3月1日現在) ■世帯数:19万932世帯(令和8年3月1日現在) ■一般会計予算:2,118億円(令和8年度当初案) ■面積:918.32km² ■概要:愛知県のほぼ中央に位置し、県全体の17.8%を占める広大な面積をもつ。全国有数の製造品出荷額を誇る「クルマのまち」として知られ、世界をリードするものづくり中枢都市である一方、変化に富んだ地勢を活かした農業も盛ん。特に米や梨、野菜などの産出量は県内でも有数で、スマート農業などの取り組みも進んでいる。
インタビュー
深津 拓也
豊田市
地域活躍部 防災対策課 担当長
深津 拓也ふかつ たくや

既存設備を活用して、導入費・維持費を削減

―防災行政無線を「280MHzデジタル同報無線システム」へ更新した経緯を教えてください。

 当市では、平成19~20年度にかけて市内に60MHzデジタル同報無線システムの屋外スピーカー256ヵ所と、その中継局11局を整備し、主として屋外放送で防災情報等を伝達していました。しかし、屋外放送のみでは「聞こえづらい」という声があり、平成30年度から広範囲かつ建物内へ伝達しやすい280MHzのポケベル電波を利用した「防災ラジオ」を導入し、市が購入金を一部負担するかたちで希望世帯へ有償配布しています。

 この時点で、60MHzデジタル同報無線システムが約6年後に更新を控えていることがわかっていたため、「将来的に60MHzデジタル同報無線システムを280MHzシステムに統合し、経費削減を図る」という方針を持っていました。そこで令和4年度から5年度にかけて、ほかのシステムも含めて改めて検討を行いました。

―どのような点を重視して、検討を進めましたか。

 「既存設備の有効活用」「機能維持」「コストの削減」「配信卓の機動性の確保」という4つの点を重視して検討を進めました。そのなかで、「280MHzデジタル同報無線システム」なら、既存の屋外スピーカーの活用、これまでの機能の維持、保守点検に費用がかかっていた中継局の数の大幅な削減が可能となり、15年間でおよそ40億円の費用削減になると見込まれました。さらに、持ち運びができる可搬型の配信局を整備することで、マイクが固定席に設置された従来の配信卓と比べ、災害時でも配信局の機動性を確保することができます。これなら当市の求める防災無線システムを構築できると判断し、令和6年度に「280MHzデジタル同報無線システム」への更新を実施し、同年12月から運用しています。

複数の通信経路で、情報伝達の確実性が高まった

―運用後、どのような効果を感じていますか。

 住民に情報を伝達する確実性が増したと感じています。今回の更新に伴い、配信卓を市役所のほか、臨時災害対策本部となる豊田市博物館へ新たに整備しました。また、新たに整備した可搬型の配信局により、仮に市役所が被災しても防災行政無線を放送できる体制が整いました。じつは市役所は低地にあり、一級河川の矢作川も近いため、近年多発する豪雨災害に見舞われた際、市役所が機能しなくなる恐れもあります。そこで、配信卓を分散して配置する必要性が高まっていたのです。「手段A」がダメなら「手段B」を使えるという「冗長性」を担保できたわけですが、その効果は配信卓だけにとどまりません。

―詳しく教えてください。

 この防災無線システムは、配信卓から横浜市(神奈川県)にある中央配信局に情報を送信し、そこから当市の送信局がポケベル電波を発信して、屋外スピーカーや防災ラジオに電波が届く仕組みです。この中央配信局は、山口市(山口県)にも予備があるうえ、配信卓からのデータは地上と衛星の2つの回線を通じて送られます。この冗長性の高さにより、情報伝達の確実性は大きく高まりました。

―今後の方針を教えてください。

 伝達性が高く、冗長性を担保できる「280MHzデジタル同報無線システム」は、災害時に住民へ情報を届け、少しでも「安心」を感じてもらうのに適したシステムだと考えています。今後は、そのほかの情報伝達手段も活用しながら、防災体制の拡充に努めます。

支援企業の視点
整備費は通常更新の半分以下に
インタビュー
清野 英俊
東京テレメッセージ株式会社
代表取締役社長
清野 英俊せいの ひでとし

 豊田市の事例で重要なポイントは、60MHzデジタル防災行政無線の屋外スピーカーをそのまま「居抜き」で流用し、そのうえで中継局を11局から2局にまで減らした点です。これにより、屋外スピーカーの整備費を通常の更新よりも半分以下に抑え、中継局の保守点検などにかかる維持管理費を大幅に削減できました。加えて、地上回線と衛星回線の併用により、いずれかの設備が被災しても放送できる体制を整備し、災害時に強い無線システムとなりました。

佐賀県唐津市の取り組み
防災行政無線の刷新②
豪雨災害の教訓を活かし、「防災ラジオ」の利用拡大をめざす

これまで紹介した「280MHzデジタル同報無線システム」の整備を進め、非常時の情報伝達体制の強化に乗り出しているのが唐津市(佐賀県)だ。同市では犠牲者を出した令和5年の豪雨災害を教訓に、戸別に設置できる「防災ラジオ」の普及と、平時からの利用が進むよう住民に向けた取り組みを強化しているという。いったいなぜそうした取り組みを推進しているのか。その理由と防災対策の現状について、同市危機管理対策室の田中氏に話を聞いた。

[唐津市] ■人口:11万2,228人(令和8年3月1日現在) ■世帯数:5万1,556世帯(令和8年3月1日現在) ■一般会計予算:793億8,083万3,000円(令和8年度当初) ■面積:487.58km² ■概要:中心市街地は、古くから唐津藩の城下町として栄えた。平成17年1月に1市6町1村が合併し、平成18年1月に旧七山村が加わって現在の市域になった。全国から観光客が押し寄せる大祭「唐津くんち」が有名。玄界灘に面し、呼子ではイカ漁が盛ん。一方、浜玉地区にある日本三大松原のひとつ、虹の松原も名所として知られる。
インタビュー
田中 博隆
唐津市
総務部 危機管理防災課・ 危機管理対策室 危機管理防災係長
田中 博隆たなか ひろたか

防災ラジオを設置していても、利用されない例も多かった

―防災行政無線に「280MHzデジタル同報無線システム」を導入した背景を教えてください。

 当市では、平成26年に運用を開始した60MHz帯の屋外スピーカーが、約10年を経過し、更新時期を迎えました。令和2年度からは、情報伝達力の向上を目的に、280MHzの防災ラジオを導入し、希望世帯に無償で配布する制度を開始していた経緯から、屋外スピーカーも280MHzへと統一する動きが庁内で強まりました。というのも、防災ラジオを運用するなかで、「280MHzデジタル同報無線システム」なら的確に情報を伝えられるという点で、強い手ごたえを感じていたからです。

―どのような手ごたえですか。

 60MHz帯の屋外スピーカーでは、災害発生時などに職員が肉声で放送を行っていましたが、緊迫した状況下での機器操作や正確な読み上げは精神的負担が大きく、放送する人によって聞き取りやすさに差が生じていました。一方、「280MHzデジタル同報無線システム」では、テキストデータが明瞭な音声に合成されるため、音質が均一になり「何を言っているかわからない」という事態を未然に防げると、手ごたえを感じています。防災ラジオの無償配布から約5年が経ち、現在は全世帯の約4割に設置されています。しかし、そうしたなかで防災ラジオの設置世帯の普及拡大とともに、情報伝達の確実性向上にはさらなる取り組みが必要だという教訓を、令和5年の豪雨災害で学びました。

―詳しく聞かせてください。

 令和5年7月、明け方に時間雨量最大88mmという豪雨により、土砂災害が発生して3人の命が奪われました。当時、私も緊急放送を行いましたが、災害が発生した地区では屋外スピーカーの音は雨でかき消され、まったく聞こえない状況だったそうです。そうした状況下では、本来防災ラジオが情報伝達に役立つはずでしたが、電池を抜いてしまっていたり、倉庫にしまっていたりして、避難情報が届かなかった世帯も少なくなかったのです。こうした状況を回避するためには、防災意識を高める啓発活動に加えて、住民たちが「平時から防災ラジオに親しむ」工夫が必要だと痛感し、現在取り組みを進めているところです。

地域で運用できる機能で、防災ラジオの平時利用を促進

―どのような取り組みですか。

 防災ラジオの平時利用を促進するため、「280MHzデジタル同報無線システム」の放送区域を限定できる機能を用いて、希望する町内会にIDとパスワードを付与し、地域の行事連絡や生活おしらせ放送などでシステムを自由に使える運用にしています。日常的にメール感覚で情報を流せるため、利用住民からは「使いやすくて便利」だと好評です。普段の生活で使い慣れているからこそ、いざというときにも情報が自然に耳に入りやすくなるはずです。日常的な利用自体が、機器が正しく機能するかの平時の点検にもなるうえ、地域コミュニティの醸成にも資する、心強い存在だと感じています。

―今後、どのように防災体制を強化していきますか。

 引き続き、建物の壁を透過しやすい280MHz帯のポケベル電波の屋外スピーカーで配信しつつ、防災ラジオの利用拡大をめざします。また、令和7年度からは、総合防災情報システムにて、市の情報メールや公式LINEなどでも同じ内容をプッシュ配信できる仕組みを運用しています。今後とも、どのような状況にあっても、災害情報を確実に伝達できる多層的な配信体制を構築していきます。

支援企業の視点
災害時に「放送が届く」仕組みを
インタビュー
清野 英俊
東京テレメッセージ株式会社
代表取締役社長
清野 英俊せいの ひでとし

 ポケベル電波は、建物の窓から入るため、従来の無線放送よりも建物内へと届きやすい特徴があります。この特性を活かし、各世帯に設置する「防災ラジオ」にも、屋外アンテナを設置することなく、放送を届けることができます。さらに、地域ごとに運用できる仕組みとなっており、平時から住民が利用できます。この機能を用いて、唐津市では「屋外スピーカー+防災ラジオ」の二段構えで、より情報の伝達性を高めました。ほかの自治体でも参考にしていただきたい好事例となりました。

広島県広島市の取り組み
防災行政無線の刷新③
迅速な発令と防災ラジオの普及で、多媒体配信の「最後の砦」を築く

自治体による災害時の情報発信では、無線以外の情報媒体も用いた「多媒体配信」が定着しつつある。そうした自治体の1つである広島市(広島県)では、令和5年から「280MHzデジタル同報無線システム」の電波特性を持つ防災ラジオを活かし、メールやSNSに親しむ若年層だけでなく、不慣れな高齢者層にも情報が届きやすい仕組みを構築したという。その仕組みを構築するに至った経緯と効果について、同市の天津氏に聞いた。

[広島市] ■人口:117万2,194人(令和8年3月1日現在) ■世帯数:56万8,748世帯(令和8年3月1日現在) ■一般会計予算:7,940億1,135万9,000円(令和8年度当初案) ■面積:906.69km² ■概要:広島県の西部に位置し、人口117万人を擁する中国地方最大の政令指定都市。被爆地として、「国際平和文化都市」を掲げ、世界に核廃絶を訴えるとともに、多様な文化やスポーツを支える「平和文化」の発信を行っている。温暖で雨の少ない瀬戸内式気候を活かし、レモンやみかんなどの柑橘類の生産が盛ん。
インタビュー
天津 賢志
広島市
危機管理室 災害対策課
天津 賢志あまつ けんじ

多媒体での一括配信で、避難情報の発令が迅速化

―広島市では、令和5年から「280MHz防災無線システム」を運用しているそうですね。

 はい。当市では、平成24年から60MHz帯の防災行政無線をデジタル化して運用していました。令和5年に更新時期を迎えるにあたり、60MHzの防災行政無線の継続も含め、競争入札を行った結果、「280MHz防災無線システム」を導入することとなりました。同システムは、ポケベル電波を利用しており、建物浸透性の高さと、文字データを入力して音声合成で放送できる点などが、当市のシステムに適していると、運用するなかで感じています。

―広島市が運用するシステムとは、どのようなものですか。

 当市では、小学校区を基本単位として、各区長が避難情報を発令するため、各行政区で防災無線システムを運用しています。しかし、従前のシステムでは、職員がマイクで放送文を読み上げる音声通信方式だったため、放送中に他区の放送を重ねられず、迅速性に課題がありました。その点、「280MHz防災無線システム」では、放送文を電子化して送信し、受信機側で音声を合成するため、他区の放送を待つ必要がありません。また、テキストデータなので他システムとも連携しやすく、本市が運用する「防災情報共有システム」で、防災情報メールやSNS等の各種媒体と一括配信できることから、より迅速な放送が可能となりました。

 さらに、もう1つの特徴である建物浸透性の高さが、新たな制度創設にも寄与しています。

―どのような制度ですか。

 防災ラジオの無償貸与制度です。従前は受信感度の問題から、防災ラジオ設置宅の約半数で、高額かつ設置負担の大きい専用外部アンテナの取り付けが必要でした。しかし、「280MHz防災無線システム」は建物浸透性が高いため、更新以降に外部アンテナを設置した事例はなく、防災ラジオの無償貸与制度の創設につながりました。令和6年の制度開始から令和7年12月末までに456件貸与しています。これにより、当市が発信している防災情報メールやSNSなどに不慣れな高齢者の方々にとっての有効な情報入手手段になりつつあると感じています。

大規模災害時の「最後の砦」に

―今後、防災行政無線をどう運用していきますか。

 当市では多様な媒体で防災情報を伝達しており、住民の方々には、状況に応じて複数の媒体を組み合わせ、確実な情報入手に努めていただくよう周知しています。そのなかで災害に強い通信基盤を有する防災行政無線は、大規模災害の発生時には「最後の砦」となり得ると考えています。今後も、「280MHz防災無線システム」の特性を活用し、より迅速で確実な情報伝達体制の構築に取り組んでいきます。

支援企業の視点
防災行政無線の更新は、各方式の特徴を慎重に比較せよ
インタビュー
清野 英俊
東京テレメッセージ株式会社
代表取締役社長
清野 英俊せいの ひでとし
昭和29年、福島県福島市生まれ。東北大学経済学部を卒業後、三井信託銀行株式会社(現:三井住友信託銀行株式会社)に入行。外資系ファンドを経て、平成24年より現職。

―防災行政無線をめぐる自治体の現状をどう見ていますか。

 多くの自治体で60MHzデジタル防災行政無線が使われていますが、このシステムは災害時にも安定稼働する半面、更新費用が巨額です。代案として、初期費を抑えられる携帯通信網を用いたIPが注目されていますが、災害時の稼働に不安が残ります。こうして自治体では60MHzの更新かIPへの刷新かの二択で検討が進められ、第三の選択肢である280MHzのシステムは検討されない例も少なくありません。なかには「280MHzは屋外スピーカーを活用できず、60MHzより高額」と誤った情報が自治体に流れたこともあります。その原因は、情報の出所が異なるためです。

―本当はいかがなのでしょう。

 実際は、消防庁の資料に明記されているように、280MHzのシステムは「災害に強く、コスト面でも有利」です。なぜなら、災害に強い既存の屋外スピーカーをそのまま活用でき、整備・ランニング費を抑えられる仕組みだからです。すでに多くの自治体で運用され、その効果が確認されています。豊田市でのコスト削減効果(豊田市事例参照)は、その最たる例です。

―自治体に向けてメッセージをお願いします。

 防災行政無線は住民の命を守るインフラです。ですから私は、全国の首長に「本当に比較したのか」「その情報は正しいのか」「事業者に直接確認したのか」と直接お伝えしたい。それだけで、災害に強く、財政負担も抑えられる最適な選択肢が見つかることでしょう。

東京テレメッセージ株式会社
東京テレメッセージ株式会社
設立

平成20年10月

資本金

1億円

売上高

65億円(令和7年3月期)

事業内容

280MHz無線呼出し事業

URL

https://www.teleme.co.jp/

お問い合わせ先
03-5733-0247(平日 9:00~17:30)
multicast@teleme.co.jp
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