移住・定住施策 自治体事例|40歳未満の若い層を主なターゲットにした施策、「田舎暮らし初心者向けのまち」としてプロモーション
佐渡市と和気町の移住・定住施策 自治体事例
地域の伝統文化や農村暮らし等「まちの魅力」を活かした移住・定住施策で成果を出している自治体の事例を内閣府 地方創生推進室がまとめた「令和4年度 移住・定住施策 優良事例集」から抜粋して紹介します。
同事例集は、三大都市圏以外に所在する市町村の中から、行政・民間が移住定住施策に積極的に取り組んだ結果、社会増減率がプラスに転じた、または社会減の減少幅が縮小した優良事例を内閣府 地方創生推進室が選定し、取組の概要や具体的な成果を取りまとめたものです。
今回は佐渡市と和気町の移住・定住施策自治体事例です。
40歳未満の若い層を主なターゲットにした施策|佐渡市
新潟県 佐渡市がある佐渡島は、日本海側最大の島で、豊かな土壌と気候を活かした農業や漁業、畜産業などが営まれており、古くは、政争に敗れた貴族や知識人が流され、全国各地から多くの人々が移住してきた歴史を持っています。
そのため同じ島の中で、方言や文化がまったく異なったり、多種多様な伝統芸能が残されています。
平成16年に10市町村が合併し、佐渡市が誕生。最近では、約30社のベンチャー企業が佐渡市で創業もしくはサテライトオフィスを展開するなど、 「起業の島」として、行政やWeb業界からも注目されています。
取り組みの概要
平成16年の佐渡市の人口は約70,000人でしたが、毎年1,000人程度減少しており、少子高齢化が最速で進んでいる地域です。市内に大学がなく、高校を卒業した7~8割が島外に出ることはやむを得ない中で「いかに佐渡市に戻って来てもらえるか」を主眼として、40歳以上は転入超過していることもあり、40歳未満の若い層を主なターゲットとした移住推進施策と企業誘致施策の両輪に取り組み、人口減少に歯止めを掛ける施策を実施しています。
起業支援にも力をいれており、企業誘致支援団体とビジネスコンテストを実施するなど、人的・物的環境の構築支援をしています。
また、市民が自発的に移住・定住サポートに関わる取組を行っており、民間の力をうまく活用しています。

佐渡市のサイト(https://www.city.sado.niigata.jp/)。画像は佐渡トキ保護センターが保護飼育している国指定天然記念物・トキ
主な取り組み内容
住まい、子育て、就業・起業等移住に関わる幅広い支援を展開
移住では、移住支援金、引越費用補助、UIターン者奨学金返還支援事業により東京圏や県外からの移住を支援しています。
住まいでは、家賃補助、住宅のリフォーム補助を、子育てでは3~5歳の幼稚園・保育園の利用料無償化、医療費助成、返還完全免除の奨学金制度等を実施しています。
就業・起業では、医療・介護・福祉人材や農林水産業の就業支援、起業No.1の島を目指した創業支援を実施しています。
また、民間の空き家を改修し集落の協力で維持する集落連携型体験住宅等、市民が自発的に移住支援に関わっていることも特徴です。
移住窓口
平成29年に移住のワンストップ窓口として、佐渡UIターンサポートセンターを開設。運営は、空き家対策・移住者支援を担当していた地域おこし協力隊OBが設立した合同会社paletteに委託。「“住む・働く”の情報発信」と「暮らしの相談・交流」の二本柱で、移住全般のコーディネートや市役所の専門部署への取次ぎ・情報提供、住居や仕事のマッチング、島民や先輩移住者とのマッチング、移住者と島民の交流イベント企画・開催を行っています。

佐渡UIターンサポートセンターのサイト(https://sadouiturn.com/)
定住フォロー
移住者・移住希望者向けの悩みや困りごとの相談を受ける制度として、「さど暮らしサポーター制度」を開始。佐渡市より認定された市民や移住者が、得意分野を活かして、移住者・移住希望者のフォローをしています。
移住希望者から希望があった場合は、佐渡市が佐渡暮らしサポーターとのマッチングをしています。
令和3年度には移住者と市長の懇談会を実施。移住者は周囲に協力者がいないため、子供が急に病気になった場合の支援として病児保育へのニーズがあり、実際に施策として検討され、病後児保育の実現に繋がりました。

さど暮らしサポーターのサイト(https://sado-gurashi.com/)
「田舎暮らし初心者向けのまち」としてプロモーション|和気町
岡山県の南東部に位置する和気町は、豊かな自然と瀬戸内海地方の温暖な気候、地震・台風などの自然災害の少なさなどを背景に、近年、若い世代を中心に多くの移住者が転入しています。
また、JR岡山駅より電車で約30分、高速道路を利用すると1時間半で神戸、2時間で大阪中心部に到着できる恵まれた交通アクセスに加え、移住者受入体制の整備や子育て・教育環境の充実等による移住定住促進に取り組んでおり、「田舎暮らし初心者向けのまち」としてプロモーションを実施しています。

和気町のサイト(https://www.town.wake.lg.jp/)
主な取り組み内容
和気町では、人口減少が著しく住民の生活基盤の維持に深刻な影響が見込まれる中、それを克服することを目的に平成27年に和気町まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定しました。これを機に移住定住促進を強力に進めるべく移住相談窓口の役割を担う移住推進員を設置。移住推進員は自身の経験を活かした相談対応や移住希望者のニーズを踏まえた町内ガイドの実施等に取り組むとともに、町としてもお試し住宅の整備や移住に向けた滞在費補助の開始など、移住者のニーズを的確に捉えた移住施策を展開して移住者数の増加に繋がっています。
また、移住サイト「wakesum(ワケスム)」で移住者数の実績や町の魅力に関する移住者へのアンケート結果を公表することで、移住を検討する人々に「なぜこの町に移住者が多いのか」という興味を抱かせ、類似の移住ニーズを持つ層に対して効果的なアピールに繋げ、直近9年間の移住実績は870人となっています。

wakesumのサイト(https://www.town.wake.lg.jp/wakesum/)
主な取り組み内容
オーダーメイドの町内案内をはじめとする親身な移住相談
移住者向けのアンケートで「移住に向けて役立った支援」として1位に挙げられている移住推進員による車での町内案内など、移住者が責任を持って判断できるように丁寧に情報提供を行い、最大限のサポートを実施しています。
「田舎暮らし初心者向けの町」としてのプロモーション
関東・関西圏からの移住者が7割となっており、未就学児を持つ子育て世代が移住者の多くを占める中、田舎暮らしを経験したことがない人たちでも生活しやすい支援体制や生活環境が整った町としてプロモーションを実施しています。
移住支援に係る組織
総合計画や地方創生、地域おこし協力隊、ふるさと納税などを所管するまち経営課の課内室である移住推進室が移住施策を担当。同室の移住推進員と職員が中心となって移住希望者からの相談対応を行っているほか、定住に向けた移住者のフォローや情報発信等を担う「定住促進アドバイザー」もおり、相談体制、情報発信体制を整えています。
定住フォロー
定住促進アドバイザー
定住促進アドバイザーは自らの移住経験に基づきながら、地域の文化や生活習慣等に関する情報提供や、田植えや稲刈り体験等のイベント開催、移住後間もない方への積極的な声かけなど、移住者の定住に役立つ情報や交流の機会を提供し、移住者にとってより身近な相談相手としてアドバイスを行っています。
移住者有志によるコミュニティづくり
若い世代の移住者が非常に多いこともあり、SNSなど、町が直接関与しないところでも有志の移住者による交流ネットワークも生まれ、定住に繋がる好循環も生まれています。
また、そうした有志が中心となって移住者同士や地元住民との交流を目的としたイベントも定期的に行われています。
こうした機会が、既存の住民同士の親睦を深め、新しく移住してきた人が地域に溶け込む手助けとなるとともに、移住を検討する人々の情報収集の場としても機能して新たな移住者を呼び込む一助となっています。





