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先進事例2025.05.30

《自治体の移住・定住施策 優良事例》― 外部との連携で成果を出している移住・定住施策

《自治体の移住・定住施策 優良事例》― 外部との連携で成果を出している移住・定住施策

まちづくり会社・NPO・地域住民等を巻き込んで推進

民間委託やNPO法人等との連携により移住・定住施策で成果を出している自治体の事例を紹介します。
内閣府 地方創生推進室がまとめた「令和4年度 移住・定住施策 優良事例集」からの抜粋で、同事例集は三大都市圏以外に所在する市町村の中から、行政・民間が移住・定住施策に積極的に取り組んだ結果、社会増減率がプラスに転じた、または社会減の減少幅が縮小した優良事例を内閣府地方創生推進室が選定し、取組の概要や具体的な成果を取りまとめたものです。

民間委託ならではの利点を活かした移住・定住支援《宮城県 七ヶ宿町》

宮城県 七ヶ宿町は蔵王連峰の南麓、宮城県の最南西部に位置し、福島・山形の両県と境界を接し、奥羽山脈の東南斜面の一帯を占め、自然環境に恵まれた町です。
JR仙台駅からは車で約75分、JR福島駅・山形駅からは約60分の立地環境で、町のほぼ中央を東西に白石川が流れ、これに沿うように集落が形成。「七ヶ宿ダム」があり、県民193万人の水がめを擁する水源の町で、夏には、歴史ある七ヶ宿街道をわらじで歩くイベント「わらじで歩こう七ヶ宿」が開催され、冬にはウィンタースポーツなどが楽しめる高原の町です。

「わらじで歩こう七ヶ宿」の様子(左)と七ヶ宿町にある「みやぎ蔵王七ヶ宿スキー場」

概要と取り組みポイント

概要
過去のダム建設で水没した3地区の住民や進学する若者等の町外への転出が増加し、戦後約5,000人だった人口が現在は約1,300人に。現町長の就任後、移住に注力し、平成27年4月から「七ヶ宿町ふるさと創生本部」を設置し、施策検討を開始し、「子育て世代」をターゲットの中心に置き、施策を実施しています。

取り組みポイント①―地域再生推進法人である七ヶ宿まちづくり株式会社との連携、民間委託ならではの利点を活かした移住・定住支援
平成28年に町として移住相談を目的に「七ヶ宿くらし研究所」(七ヶ宿まちづくり株式会社)を設立し、移住支援窓口を委託。町で対応ができない土日などもカバーする等、町と連携しながら、移住相談や移住体験、月1回以上の自然体験や住民交流会など移住・定住に関する細やかな支援を行っています。
オンライン活用など移住希望者が気軽に相談したり、情報を得られる環境を整備。カフェも併設しており、自然の豊かさを体感しながら気軽に相談できる環境が整っています。
七ヶ宿くらし研究所は、多くの移住者(Iターン、Uターン)と地元の若い人等で構成されています。
窓口対応に加えて、移住相談・体験(お試し住宅の管理)、自然体験イベントの開催などを委託しており、相談者が町役場に来た場合は、ふるさと振興課が対応します。町とは都度打ち合わせを通して、情報共有を実施しています。
七ヶ宿まちづくり株式会社は町が大部分を出資しているほか、個人で出資している住民もいます。株式会社七ヶ宿くらし研究所と七ヶ宿まちづくり株式会社は分かれていたが、令和3年度に統合。現在、20名程度の人員で、移住関連業務は2名体制で実施しています。

取り組みポイント②―「ひとを大切に」移住後のギャップ解消を目指す細やかな支援
子育て世代への手厚い補助に加えて、移住後のギャップ・課題解消に注力しています。
地区別の特徴等をわかりやすくまとめた「しちかしゅ暮らしのガイドブック」作成、移住後アンケート結果に基づくフォロー、地域住民と移住者、移住者同士の交流会などの細やかな各施策を実施しています。
子育て世代に対する手厚い支援としては、子育て応援支援金(出生~高校入学総額第1子:30万円 第2子:50万円 第3子:70万円 ※1年以上在住の方)を支給し、保育料や給食費、高校卒業までの医療費を完全無料としています。また、ママ達の声から始まった住民との交流会や5歳6か月児までの幼児検診、3歳までのおむつ費用助成を実施しています。

「七ヶ宿くらし研究所」(七ヶ宿まちづくり株式会社)の外観(左)と「しちかしゅ暮らしのガイドブック」

交付金等の活用状況

平成29年度、平成31年度に地方創生推進交付金を活用して『移住定住支援センターを核とした「住みたい運動」実現事業』を実施しています。
この事業では、移住定住支援センターの七ヶ宿くらし研究所を核として移住定住の情報発信や相談業務、お試し居住を通して町に住みたい人のサポートや地域資源を活かした交流体験事業を通して町のファンづくりに取り組むもので、毎年100人程度の移住相談者が来訪し、うち5世帯10人前後の方が実際に移住するなどの効果が出始めています。

外部組織と連携したまちづくりと交流人口・定住人口増加に向けた新たな取り組み《岐阜県 白川町》

岐阜県 白川町は同県の中南部にある加茂郡の東部に位置し、237.89k㎡と広大な面積の約87%は山林です。海抜150mから1,223mと高低差が激しく、平野部はわずかで可住地面積は全体の5%程度。 飛騨川にそそぐ5つの川の流域に5つの集落が点在しています。
主要産業は林業関連産業で、特に優良材「東濃桧」の生産が盛ん。平成10年に有機農業でまちづくりを目指す団体としてNPO法人ゆうきハートネットが立ち上がり、有機農業の町としても注目を集めています。

町の玄関口にある土木遺産に認定された白川橋(左)と茶畑が広がる町の集落

概要と取り組みポイント

概要
平成31年に移住相談や空き家情報の発信、住まいや仕事までを幅広く支援するワンストップ相談窓口として白川町移住・交流サポートセンターを設立しました。
販売促進・技術の向上・就農支援・体験交流の4つの事業を中心にして活動しているNPO法人ゆうきハートネットの活動もあり、有機農業に関心のある移住者が増えています。
グリーンツーリズムによる町のPRを行いながら、交流人口・定住人口を増やし、多様で魅力的なまちづくりを目指しています。

取り組みポイント①―外部組織と連携したまちづくり
移住窓口である一般社団法人白川町移住・交流サポートセンターを始め、複数の外部組織と連携し、白川町観光協会やNPO法人ゆうきハートネットなどの民間団体と「白川町グリーンツーリズム協議会」を立ち上げ、 「仲間づくり」や「関係人口の創出」「移住促進」を目的に、グリーンツーリズム体験・交流ツアーの開催、ワーケーションやサテライトオフィスに関する情報集積・情報発信を行っています。
組織メンバーであるNPO法人ゆうきハートネットは有機農業の主要団体で、移住希望者から就農に関する相談があった際に取次を行うなどして連携をしています。
また、新規就農支援としては、岐阜県で実施している農業支援に加え、有機農業希望者にはNPO法人ゆうきハートネットを紹介し、就農や暮らしについて相談できる体制を構築しています。

取り組みポイント②―交流人口・定住人口増加に向けた新たな取り組みへの挑戦
白川町グリーンツーリズム協議会によるグリーンツーリズムの推進や、白川ワークドット協同組合による特定地域づくり事業の推進、田舎暮らしや移住希望者などが宿泊できるゲストハウス、ワーケーション需要に伴うコワーキングスペースの開設等、新たな取り組みを実施しています。
令和3年度から開始しているワーケーション事業では、テレワーク環境やコワーキングスペースを整備し、主に都市部のテレワーカーをターゲットとして、食のプログラムやバレルサウナ等里山体験などを楽しんでもらうような取組をしています。希望があれば有機農業や林業体験等もできるようにしており、白川町を知ってもらう良いきっかけになっています。
また、お試し住宅として「農園付きコテージ」を3地区に用意しており、使用料は5万円で期限なく住めることもあり、非常に人気が高く、常に問い合わせがある状態です。ここから移住や二拠点生活に繋がるケースも多くなっています。

NPOとの密な連携、伴走による移住受入体制強化・定住支援《大分県 日田市》

大分県 日田市は大分県の西部、福岡県と熊本県に隣接した北部九州のほぼ中央に位置し、周囲を阿蘇、くじゅう山系や英彦山系の美しい山々に囲まれています。
古くから北部九州の各地を結ぶ交通の要衝として栄え、福岡市、大分市、熊本市から1時間程度でアクセス可能。江戸時代には幕府直轄地・天領として西国筋郡代が置かれるなど歴史的な町並みや伝統文化は今なお脈々と受け継がれており、私塾「咸宜園」や塾と共生したまち「豆田町」等が教育遺産群として日本遺産に認定され、「日田祇園の曳山行事」はユネスコ無形文化財に登録されています。

豆田町の街並み(左)とユネスコ無形文化財に登録されている日田祇園祭りの様子

概要と取り組みポイント

概要
平成17年の市町村合併直後の7万人台から人口は減少傾向にあり、若い世代が大学等への進学などで市外に転出し、その後、戻らないなど社会減への問題意識から「若い世代が住み続けたいと思うふるさと日田を創る」という基本目標に基づき、移住・定住にかかる取組を開始しました。

取り組みポイント①―NPOとの密な連携、伴走による移住受入体制強化・定住支援
住民及び移住者の双方の課題が解決され、安心して暮らしていけるよう、地域のハブ役を担うNPO法人リエラに移住前の相談から移住後のしごと、住まい等のサポート、定住支援を一括委託。同法人に伴走し、移住受入体制の強化・定住支援に注力しています。
平成27年度に「日田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、平成28年度から「ひた暮らし推進室」を設置し、当初「移住施策の推進に関する事項」「移住者相談窓口に関する事項」を市の直営で実施していました。しかし、令和元年度以降、一部委託を開始し、令和3年度からは「日田市移住支え合い事業」として移住前の相談から移住後のサポート、空き家バンク調査・案内などの業務を一括してNPO法人リエラに委託し、移住受入体制を強化しました。「移住施策の推進」「移住者相談窓口」に関する事項はNPO法人リエラに委託しています。
委託事業者任せにするのではなく、伴走することを重要視し、各施策を推進しています。空き家バンクの書類受付などは市で行いますが、受付時の対応内容をNPO法人リエラにシェアするなど細やかに情報共有を実施。毎月の定例会やイベント前後の打ち合わせ等も市が主体的に関与し、大分県主催の移住・定住相談会「おおいた暮らし塾」にも、市とNPO法人リエラが交互に参加しています。
結果として、県外からの移住者は、平成28年度から6年連続で大分県内第1位の成果に繋がっています。

NPO法人リエラのサイト(https://www.re-area-hita.com/

取り組みポイント②―地区、住民の主体性を支援する受入・定住支援制度の推進
「ひた暮らし応援団」「移住受入れ地域認定制度」など、移住者の受入に意欲的な地区、住民の主体性を支援する制度・支援施策を推進しています。
「ひた暮らし応援団」は、職員目線からだけでなく、市民目線で、移住者が気軽に相談したり、交流ができ、「日田に住みたい。日田に住んで良かった」という人を増やしていくことを目的に、平成28年度から開始。移住者交流会での交流や移住者・移住希望者からの相談対応、情報発信を実施するボランティア団体となっています。
応援団の募集は、市が実施。審査・選定などはないが、NPO法人リエラが応援団としての心構えなどの研修を行っています。移住者・移住希望者への情報発信・つなぎ役もNPO法人リエラが実施しています。
組織化の議論もありましたが、ゆるやかな形式がやりやすいという参加者の声もあり、現在の形式で継続されています。
「移住受入れ地域認定制度」は、移住者と地域住民の双方が安心して移住・受入れができることを目的として、平成28年度に創設。各地区の班単位(小規模)が対象となり、地区が自分たちで話し合い、積極的に移住者を受け入れるかどうかなど方針を決めます。
移住者の受け入れを決めた地域では、地区(班)内の決まりごとや慣習、自治会費などの共益費等、インフラ整備状況・公共料金(簡易水道の地区もある)などの情報をまとめた地域紹介シート(地域カルテ)を作成しています。
認定されることで、市の公表によりPRされ、移住者からの安心感の醸成にも繋がっています。

日田市のサイトより「ひた暮らし応援団」紹介ページ(https://www.city.hita.oita.jp/soshiki/norinshinkobu/shokoroseika/koyouroudou/ui_turn/ouendan/7997.html

交付金等の活用状況
令和3年度においては「地方創生推進交付金」を活用し、広域連携の2つのプロジェクトである「おおいたの未来を牽引する事業者育成体制整備事業」(商工観光部商工労政課)と「若者が安心して働ける環境づくり推進事業」(商工観光部商工労政課)を実施しています。創業・就業等の促進を通じて移住にも繋がるなどの効果が見込まれています。
「おおいたの未来を牽引する事業者育成体制整備事業」は、研修・セミナー・イベントの開催を通して、創業者、新規創業者などの横のつながりを作り、事業継続に関わり続ける取り組みを行っていくものです。
「若者が安心して働ける環境づくり推進事業」では、現役大学生を特派員に任命し、大分県が福岡市中央区大名に開設した学生等の若者と県内企業が気軽に交流できるUIJターン支援拠点「dot.(ドット)」を活用したUターンイベントを企画・運営しています。併せて情報発信ツールや情報誌を活用し、特派員による記事を掲載するものです。

〈参照〉

内閣府 地方創生推進室「令和4年度 移住・定住施策 優良事例集(第2弾)」
https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/ijyu-jirei-2.pdf

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