SDGs 自治体事例|「お米券」による子育て支援から地域力向上へ、官民連携で「世界から愛されるまち」をつくる、デジタル地域通貨による地域活性化

厚沢部町、あわら市、真庭市のSDGs自治体事例
内閣府では、SDGsの理念に沿った取り組みを推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の三側面における新しい価値の創出を通して、持続可能な開発に取り組む地方自治体を「SDGs未来都市」として選定しています。
また、選定された都市のうち、特に先導的な事業を「自治体SDGsモデル事業」として支援し、成功事例の普及を促進しています。
ここでは、2024年度に「自治体SDGsモデル事業」、「広域連携SDGs未来都市」、「地方創生SDGs課題解決モデル都市」として選定された自治体の取り組みを紹介する内閣府地方創生推進事務局がまとめた冊子「2024年度自治体SDGsモデル事業/広域連携SDGs未来都市/地方創生SDGs課題解決モデル都市 事例集」より抜粋してSDGs事業・取り組みの自治体事例を紹介します。
今回は厚沢部町、あわら市、真庭市のSDGs自治体事例です。
「お米券」による子育て支援から地域力向上へ|厚沢部町
北海道の南端、渡島半島の日本海側に位置した農林業を基幹産業とし、「世界一素敵な過疎のまち」の実現を目指している北海道 厚沢部町では、子育て世帯を対象に地元のお米をデジタルギフトとして活用し支給することで、町内の子育て世帯・米農家への支援を行い、子供の食育・地域愛着向上や、若い世帯にとっての魅力的な居住環境構築による子育て世帯数・出生数の増加を目指しています。
これにより、地域全体の健康的で持続可能な発展を促進し、地域の魅力を高めるとともに、厚沢部のお米の良さを町民に伝えることにより、地産地消につなげています。
同町の一連の事業・取り組みはSDGsの17のゴールのうち「働きがいも経済成長も」(ゴールの8)、「産業と技術革新の基盤をつくろう」(同9)、「住み続けられるまちづくりを」(同11)に沿ったものです。
次に同町の主なSDGs事業や取り組みを紹介します。
子育て世帯を対象とした地元のお米のデジタルギフト支給
子育て世帯を対象に、地元のお米をデジタルギフトとして活用し支給することで、市場アクセスの向上を図り、子育て世帯に経済的な安定感を提供します。
また、デジタルギフトを活用することで、子育て世帯は支給されるお米の種類や時期を手軽に選ぶことができるほか、手軽に購入できる仕組みも整備することとなり、市場アクセス向上の一環となるため、地元産の食材や製品が家庭に届きやすくなり、地産地消の推進に寄与します。
また、市場アクセスの向上を通じて、若い世代にとって魅力的な居住環境の構築に寄与することで、子育て世帯の流出の軽減、子育て世帯数、出生数の増加を目指します。

厚沢部町のサイト(https://www.town.assabu.lg.jp/)
今後の展望
子育てに優しい環境づくりと農業の持続性を高めることで、地域経済の活性化を実現し、そのうえで、地域社会のつながりや共感を強化し、地域力向上を図ることで、関係人口の増加や新たな移住者の呼び込みにつなげていきます。
また、今回の取り組みの反響などをもとに、今後はお米以外のデジタルギフトの活用を検討します。
官民連携で「世界から愛されるまち」をつくる|あわら市
福井県で古くから宿場町として栄えてきた金津町と明治時代から温泉街として発展した芦原町が合併して誕生した同県 あわら市は、2024年に「あわら市観光まちづくりビジョン」を策定し、あわら温泉の将来像やアクションプランを官民連携により検討。行政と民間の役割を明確にし、観光を切り口に、経済的課題、環境的課題、社会的課題について、総合的に解決していく取り組みを進めています。
あわら市は2024年に北陸新幹線芦原温泉駅が開業し、関東圏からのアクセスが向上。宿泊拠点として注目度が高まっています。
同市の一連の事業・取り組みはSDGs17のゴールのうち「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」(SDGs17のゴールの7)、「働きがいも経済成長も」(同8)、「産業と技術革新の基盤をつくろう」(同9)、「住み続けられるまちづくりを」(同11)、「パートナーシップで目標を達成しよう」(同17)に沿ったものです。
次に同市の主なSDGs事業や取り組みを紹介します。
温泉街のランドスケープ再編・環境に配慮したモビリティ戦略
自分たちが誇れるあわら温泉らしい景観の創出や滞在したくなる空間づくりに必要な機能、まちなかの回遊性を高めるための動線づくりなどについて協議を行いながら、エリアのランドスケープを検討しています。
また、エリア内の交通再編に向けて、交通量調査や旅館の送迎バス共同化の実証実験を実施しました。
空き物件改修などの民間主導のプロジェクト推進
あわらを訪れる人も、あわらに住み、あわらで働く自分たちも楽しめるまちを目指して、若手を中心に空き家、空き店舗を利活用し、カフェ、ワーケーション施設、チャレンジショップなどの新規出店を進めています。

あわら市のサイト(https://www.city.awara.lg.jp/)と「あわら市観光まちづくりビジョン」(https://www.city.awara.lg.jp/mokuteki/industry/kanko/kanko/vision_d/fil/vision.pdf)の表紙
今後の展望
「あわら市観光まちづくりビジョン」で策定した将来ビジョンを見据えて、世界から注目されるようなあわら温泉にするとともに、持続可能なエリアにしていくことを目指します。
また、地域の事業者が稼ぐ仕組みづくりを行いながら、エリア全体のマネジメントを持続可能な形で行っていくために、総合的に課題を解決し、将来を見据えた運営スキームを検討していきます。
デジタル地域通貨による地域活性化|真庭市
中国山地のほぼ中央に位置しており、蒜山高原がある岡山県 真庭市は、2023年に金融機関・商工会等の主体と協力して導入したデジタル地域通貨「まにこいん」の市外からの流入を図るため、新しい活用方法や市外利用者の増加を促す取り組みを進めています。
市民のSDGs活動と経済活動を結び付ける仕組みや、来訪者がふるさと納税により体験プログラムを受けることで、コト消費・関係人口創出を促す仕組みを構築し、市民・来訪者等の行動変容を促していくことが施策の方向です。
同市の一連の事業・取り組みはSDGs17のゴールのうち「住み続けられるまちづくりを」(SDGs17のゴールの11)、「つくる責任 つかう責任」(同12)、「気候変動に具体的な対策を」(同13)、「陸の豊かさも守ろう」(同15)、「パートナーシップで目標を達成しよう」(同17)に沿ったものです。
次に同市の主なSDGs事業や取り組みを紹介します。
デジタル地域通貨アプリの機能強化による地域コミュニティの活性化
人口減少・少子高齢化・過疎化などで衰退した地域コミュニティ機能を維持・強化するために、地域貢献活動へのインセンティブ(地域通貨付与)を導入します。
デジタル地域通貨での旅先納税機能による関係人口創出・体験プログラムの開発
旅先でふるさと納税でき、体験プログラム(プログラム開発も同時に実施)を受けられる仕組みを地域通貨に構築することで、観光客増加・コト消費促進を図ります。
また、帰宅後も真庭市の情報をアプリから届け、関係人口を創出します。

「まにこいん」のサイト(https://manicoin.jp/)
今後の展望
デジタル地域通貨により市民同士の助け合いの輪が生まれ、人口が減っても豊かな生活が送れる地域社会を創出するとともに、市外の人とのつながり・応援の輪も広げ、関係人口を創出していきます。
また、SDGsの理念に基づく活動が根付き、豊かな経済活動の創出を促します。
〈参照〉
内閣府 地方創生推進事務局「2024年度自治体SDGsモデル事業/広域連携SDGs未来都市/地方創生SDGs課題解決モデル都市 事例集」
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/jirei/pdf/00_2024_all.pdf



