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先進事例2020.10.11

自治体サービスは一歩進んだRPAの実践的活用で革新する【自治体(多摩市)の取組事例】

自治体サービスは一歩進んだRPAの実践的活用で革新する【自治体(多摩市)の取組事例】

東京都多摩市の取り組み

RPAによる業務改革

自治体サービスは一歩進んだRPAの実践的活用で革新する【自治体(多摩市)の取組事例】

多摩市長 阿部 裕行

※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


業務改革の必要性が高まる行政の現場で昨今、RPAの導入を見据えた実証実験が相次いでいる。実証実験からは、次々と驚異的な時間削減効果が報告される一方、課題も見つかっている。最近ではそうした課題を踏まえ、より実践的な活用シーンを想定した実証実験を行う自治体が増えてきた。多摩市(東京都)もそのひとつだ。市長の阿部氏に、RPA導入への期待、実証実験の概要やその狙いなどを聞いた。

多摩市データ
人口:14万8,960人(令和元年8月1日現在) 世帯数:7万2,349世帯(令和元年8月1日現在) 予算規模:864億9,713万円(令和元年度当初) 面積:21.01km² 概要:八王子市、稲城市、町田市、多摩市にまたがる多摩ニュータウンの中心で、市域の6割がニュータウン地区。コンパクトな市域ながら4つの路線と4つの鉄道駅がある。都心へのアクセス、交通利便性を活かした企業立地や市街地開発が進められ、豊かな自然と住宅の調和がとれたまちづくりが行われている。1人あたり市立公園面積は東京26市中1位。令和3年11月に市制施行50年を迎える。
多摩市
多摩市長
阿部 裕行あべ ひろゆき

■全国の実証実験の取組まとめはコチラ

3つの技術パターンを検証

―多摩市がRPAの導入を考えた背景はなんだったのでしょう。

 当市は、日本の高度経済成長を支えた「多摩ニュータウン」の中心地として発展してきました。市制は、多摩ニュータウンの入居開始と同じ昭和46年に始まっており、2年後に市制施行50年を迎えます。団塊の世代が多い住民構成は当市の特徴であり、超高齢社会では行政にかかる期待や果たすべき責任は非常に重い。それに対して、新しいアイデアや能力の発揮を期待したい市職員の業務負担は年々増しており、課題を感じていました。RPAを活用した定型業務の自動化はその課題解決の一助になるのではと期待し、この3月から実証実験に着手したのです。

―どのような実証実験を行ったのですか。

 当市では、RPAのみならず、OCR(※)と組み合わせた際の導入効果も検証しています。OCRは、定型様式上の文字を読み取る「従来型OCR」のほか、項目名や値をAIの技術を用いて紐づけし、データ化する「項目認識AI-OCR」の2つを採用。RPA単独と合わせ、3つの技術の組み合わせを検証しました。

※OCR:Optical Character Recognitionの略。光学的文字認識。手書きや印刷された文字を、光を当てて読み取り、デジタル化する技術

―3つの技術を検証した理由はなんですか。

 より広い範囲の業務でRPAの横展開を図り、自動化の効果を最大限にえたいと考えたからです。

 RPAを活用するためには、申請内容などをデジタル化する必要がありますが、当市の定型業務の多くは紙の書類を前提としており、そこが障害となってRPAの適用業務はじつはさほど多くないのが実態です。もしOCRが活用できれば、定型様式の書類を用いている業務にRPAの適用が可能になり、さらにAI-OCRを活用できれば準定型様式の書類を用いた業務へと適用範囲を一気に広げることができるでしょう。

RPA活用のポイントは、既存システムとの連携

―OCRやAI-OCRとの連携では、どのような難しさがありましたか。

 ひとつには、OCRやAI-OCRをどのような書式に適用できるかの見極めは、RPAの効果検証とは別の難しさがあったようです。また、実証実験では3つの技術に最適と思われる業務をそれぞれ選定した結果、3業務で使用する既存システムも既存ベンダーもまったく別々のものとなってしまいました。庁内でのRPA活用では、こうした既存システムへの適合性がポイントになることも想定していたので、そのシステム間連携についても検証項目にくわえました。そのうえで、RPAには多くのメーカーのソフトウェアと連携が図れる製品を選定しています。

―検証結果はいかがでしたか。

 RPA単体、RPA+OCR、RPA+AI-OCRの3技術での時間削減効果は、それぞれ17%、62%、14%という結果がえられました。OCRやAI-OCRの読み取り精度も想定以上に高かったと聞いています。ほかの自治体の結果よりは小さい数字に思われるかもしれませんが、当市の場合、RPAの導入準備に伴う付加業務もくわえて算出しているため、より実際的な数字であり、現場では十分に高い効果を実感しているようです。

 また、この数字以上に実感している効果があります。それは実験に参加した担当課の若手を中心に意識の変革が図られ、庁内にRPAの効果を広く伝達するエバンジェリストの役割を担う素地ができたこと。これも3つの技術を検証し、RPAの適用可能性が大きく広げた成果といえますね。


―今後のRPA活用ビジョンを聞かせてください。

 RPAの実証実験は、市職員が業務や働き方を見直すきっかけになっているようです。今後は、全庁規模で積極的にRPAの導入を進めていく考えで、本格運用とそのための人材育成の事業予算が6月議会で承認されたところです。RPA導入をひとつの契機に、市民の期待に応え、満足度を高める行政サービスを提供できる環境をしっかりと整えていきたいですね。

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