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広島県福山市の取り組み
先進事例2026.07.28
ワーケーションによる医師確保

【医師不足・医師確保】「医療版ワーケーション」の導入で、医師偏在の解決に挑む
医療版ワーケーション / MRT

[提供] MRT株式会社
【医師不足・医師確保】「医療版ワーケーション」の導入で、医師偏在の解決に挑む(医療版ワーケーション / MRT)
この記事の配信元

※下記は自治体通信 Vol.75(2026年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

地方と都市部の間で生じる医師偏在は、多くの自治体が抱える共通課題であろう。福山市(広島県)もそうした課題を抱える自治体の1つで、小児科医と産科医の不足が喫緊の課題となっていた。そうしたなか、打開策として民間企業との協働で「医療版ワーケーション」の施策を立案。休暇を兼ねたスポット勤務で都市部の医師を受け入れ、医療現場の負担軽減を図るとともに、医師に対する将来的な移住・定住促進による医師偏在の解決を試みているという。取り組みの詳細について同市の井上氏に話を聞いた。

[福山市] ■人口:45万217人(令和8年5月末日現在) ■世帯数:21万9,303世帯(令和8年5月末日現在) ■一般会計予算:2,077億円(令和8年度当初) ■面積:517.72km² ■概要:県南東部に位置し、瀬戸内海に面した中核市。隣接する岡山県の笠岡市と井原市とは、江戸時代に同じ福山藩だったことから歴史や文化、経済的に結びつきが強い。そのため、平成27年3月からは周辺8市町(令和6年4月から9市町)で備後圏域として連携協定を締結。分野をまたいで連携を深めている。
インタビュー
井上 敏彰
福山市
保健福祉局 保健部 総務課・保健所 総務課 課長
井上 敏彰いのうえ としあき

年中無休の診療所で、医師の負担が増えていた

―福山市における医師偏在の状況を教えてください。

 当市は、小児科と分娩を扱う産科の医師偏在指標*が全国の下位3分の1に位置しており、医師の確保が課題です。これまでも近隣大学への寄附講座設置による医師派遣などの対策を打ち、一定の成果も得られていますが、解決までには至っていません。とりわけ、地域の開業医が交代で勤務する「福山夜間小児診療所」では、医師の高齢化などで年々出務医が減少し、残った医師の出務負担が増加していました。加えて、同診療所は年中無休のため、連休中の出務も大きな負担でした。こうしたなか、当市で「ワーケーション」の取り組みを開始したことを受け、医療分野での活用を考えました。そこで、医療人材の紹介事業を手掛けるMRT社や福山市医師会と連携し事業の骨子を固め、令和4年から「医療版ワーケーション」を全国に先駆けて開始しました。

―どのような点を骨子に据えたのでしょう。

 この事業は「都市部の医師をいかに呼び込み、当市で勤務してもらうか」を骨子に据えています。仕組みとしては、福山夜間小児診療所での短期的な勤務と、滞在期間中の福山市と近隣市町で形成する備後圏域での観光という2軸を医師に提供しています。交通費や宿泊費を当市が負担する一方、観光地などでの消費により、地域経済へと恩恵を循環させたうえで、ひっ迫する医療現場の支援を両立できる点が大きな特徴です。加えて、当市の魅力を感じてもらうことで、将来的な当市への移住・定住にも期待を寄せています。

*医師偏在指数:厚生労働省が算定する、全国の医師の地域的な偏在を可視化するための相対的な指標

勤務医師の満足度は年々向上、リピーターも増加

―成果はいかがですか。

 令和7年度は、大型連休を中心に延べ12人の医師に28日間勤務してもらいました。年間の土・日・祝日のうち約4分の1、特に3日以上の連休に限っては、約7割をカバーできたことに大きな意義を感じています。また、参加希望医師には「家族と一緒か」「歴史や文化に触れてみたいか」などの要望を事前に調査し、個々に適した備後圏域の観光を提案することで満足度も年々向上しており、リピーターも着々と増えています。

―医師偏在対策における今後の方針を聞かせてください。

 令和8年度より新たな医師確保策として、小児科医と分娩を扱う産科医を対象に医療機関の開業や承継を支援する制度を開始しました。「医療版ワーケーション」とともに、当市への移住を検討する後押しになればと思います。今後も持続可能な地域医療を目指し、医師確保に向けて取り組み続けます。

医師会の声
開業医の出務負担を軽減。今後の医師確保に期待
インタビュー
齋藤 洋
福山市医師会
理事
齋藤 洋さいとう ひろし

 当医師会が運営する福山夜間小児診療所は、市内の開業医が輪番制で診察しています。開設当初は30人体制で医師1人につき月1回の出務でしたが、現在は19人のため月2回の出務が必要な医師もいました。この出務負担を派遣医師の受け入れによって分散できています。この取り組みが将来的な医師確保につながることを期待しています。

紹介医師の声
地域医療の現場で、その厳しさを痛感した
インタビュー
西川 和希
勤務医
西川 和希にしかわ かずき

 「医療版ワーケーション」には旅行を楽しむと同時に、地域医療に貢献できる点に魅力を感じて参加しました。地域の観光を楽しめたのはもちろんですが、勤務した夜間診療所で近隣・遠方を含めて多くの患者が診察に訪れるなど、1つの診療所が貴重な医療提供の場となっている現状を実感し、医師の再配置の必要性を痛感しました。

支援企業の視点
紹介医師の地域への親しみを深め、定期的な勤務への意欲を向上する
インタビュー
原 博隆
MRT株式会社
メディカル・ヘルスケア本部 メディカルアウトソーシング事業部 医療政策セクション 課長
原 博隆はら ひろたか
昭和57年、神奈川県生まれ。平成20年より現職。医師や看護師の医療人材エージェントで得た経験を活かし、現在は地方自治体での地域医療の課題解決に従事。

―どのような経緯から福山市と「医療版ワーケーション」の枠組みをつくったのですか。

 当社は、かねてより医療機関に対し、医師のスポット紹介事業で医師偏在の課題解決に向けた取り組みを推進してきました。しかし、遠隔地への紹介は、交通費や滞在費が高額となるため、医療機関の負担が大きく、実現が困難だったのです。その折、福山市からの要請を受け、自治体が紹介医師の交通費や滞在費などを負担し、医療機関は給与のみを支払うスキームをともに構築しました。この仕組みでは、自治体が負担した公費が紹介医師の観光消費によって地域経済へと循環されるため、関係者の誰もが恩恵を得られる「三方良し」を実現しています。

―利用状況はいかがですか。

 どの導入自治体でも医師からのニーズは高く、これまで3自治体で累計400件以上の紹介を実現しています。福山市の事例では、勤務リピート率も30%を超え、非常勤医師でありながらも「同じ先生に診察してもらえる」という安心感を地域住民や診療所スタッフの方々に届けられていると感じています。

―今後の取り組み方針を聞かせてください。

 医師の将来的な地方移住・定住となるとハードルは高そうに思えますが、当社が会員医師に行ったアンケート調査では、「地方への移住・勤務を考えている」割合は27%と想定以上でした。今後は定期非常勤の医師確保も含め、さらに多くの関係人口を創出し、本事業を「地域医療の自立」に向けた本質的な施策に進化させていきます。

設立

平成12年1月

資本金

5億4,056万円

従業員数

237人(令和6年12月末時点)

事業内容

医師・コメディカルを対象とした医療機関への医療人材紹介、医療系BPOサービスの提供、医師を対象とした情報発信、プロモーション支援、オンライン健康相談・診療システムの提供など

URL

https://medrt.co.jp/

お問い合わせ先
050-5527-0841(平日 9:00~18:00)
mrt-bpo@medrt.com
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