【除雪DX・雪対策】IoTによる積雪監視網の構築で、雪対策業務の人手不足解消に手応え
(smart snow alert / ラック)


※下記は自治体通信 Vol.75(2026年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
豪雪地帯の自治体にとって、除排雪業務は冬季の道路環境の維持に欠かせない。しかし、人員不足により、現地確認を前提とした従来のパトロール体制の維持は難しくなっている現状もある。こうしたなか、旭川市(北海道)はIoTを活用した積雪監視システムを導入。業務の進め方そのものを見直す取り組みを進めることで、限られた人員でも安定的に雪対策業務を提供し続けられる体制づくりに手応えを感じているという。取り組みの詳細を、同市雪対策課の2人に聞いた。


現場確認を前提とした業務は、限界が近づいていた
―旭川市では、どのように積雪状況の確認を行っていましたか。
代田 11月半ばから翌年3月末までの降雪シーズン中、除雪センターの作業員が毎日目視でのパトロールを行っていました。強風による「吹き溜まり」の発生や、市街地と郊外で気象条件の違いがあるため、降雪の有無にかかわらず毎日状況を確認する必要がありました。しかし、当市は面積が広大で遠方の郊外までの移動に多くの時間がかかります。さらに高齢化に伴う人手不足も深刻で、現地確認を前提とした従来の業務体制には限界が近づいていました。
廣瀬 特に夜間の人員確保に課題があったことから、合理的な人員配置を目指し、令和5年度当初に9ヵ所あった除雪センターを現在の4ヵ所へ再編し、業務の集約化を進めてきました。しかし、慢性的な人員不足は解消されておらず、限られた人員で効率的な除雪体制を維持することが引き続き大きな課題となっていました。当市では早くからこうした状況を危惧し、積雪の状態を遠隔で把握できる仕組みの導入に向け、検証を重ねながら運用の見直しを進めてきました。
―どう見直してきたのでしょう。
廣瀬 センサーが収集した積雪に関するデータをクラウドで管理し、パソコンやスマホを通じて確認できる仕組みを構築しました。冬場にマイナス30度近くに達する厳しい環境下でもパトロール業務を代替し、現場の状況を安定して把握できるかを見極めるため、令和3年から約3年間にわたり、実運用に近い環境で検証しました。
代田 この期間を通じ、安定的な稼働とともに、現場の判断に必要な情報が適切に取得できることを確認しました。これにより、人が現地で判断する業務の一部をデータに基づく判断へと移行できる目途が立ち、公募型プロポーザルを実施。ラック社の積雪状況監視・通報システムの導入を決めました。
パトロール日数を減らし、データに基づく判断も可能に
―評価した点を教えてください。
代田 測定精度や、過酷な環境での安定稼働実績に加え、ほかのシステムと連携できる拡張性、電源・回線工事が不要なセンサーの採用、それらの設置の容易さを高く評価しました。この仕様により、電気の通っていない郊外にも迅速な配置が可能となり、令和7年度までに、全80ヵ所ある観測地点のうち、パトロール負担の大きな郊外の吹き溜まり発生エリアなど13ヵ所へのセンサー設置を完了し、市内郊外の面的な監視体制を整えました。現在は、気温、積雪深、降雪量、静止画、風向・風速といった現場のデータを、遠隔からリアルタイムで閲覧可能です。
―導入効果はいかがですか。
廣瀬 積雪がない日は遠隔からそれを確実に確認できるようになったことで、パトロールを見送る判断が可能となり、シーズン142日間のうち、パトロール出動日数を82日に抑えられました。重要なのは、回数の削減そのものより、「客観的なデータに基づいて行動を判断できるようになった点」です。これにより、土木事業所と除雪センターが同じデータをもとに迅速に意思決定できるようになりました。アラートに関しても、ニーズに合わせたきめ細かなしきい値を設定でき、使い勝手のよさを感じています。
代田 除雪センターの集約が進み、人員配置の余裕が減るなかで、こうした仕組みは欠かせません。本システムによる業務の省力化・効率化は、地域のライフラインを守る持続可能な除排雪体制の確立に直結します。今後は、「積雪予測」のような、より高度な判断を行える機能の実装で、さらなる効率化が進むことを期待しています。

ここまでは、除排雪業務のためのパトロールに積雪監視・通報システムを導入した旭川市の取り組みを紹介した。ここでは、同市を支援したラックに取材。パトロールにIoTを活用するポイントなどについて、同社の2人に聞いた。


「経験や勘」に頼る判断にも、リスクが高まってきている
―雪対策をめぐり、自治体はどのような課題を抱えていますか。
飯田 豪雪地帯の自治体では、除排雪の出動判断を行うためのパトロール業務が大きな負担となっています。その背景にあるのはまず、過疎化や高齢化に伴う深刻な人手不足です。除雪作業員の確保が最優先となるなか、現地を見回るパトロール業務の省力化は現場にとって重要な課題となっています。また、市町村合併による管理エリアの広大化で、遠方や山間部までの移動だけで多大な時間と労力がかかっているケースも少なくありません。さらに、局所的な集中豪雪など雪の降り方の変化により、従来の「経験や勘」に頼る出動判断のリスクも高まっているという声も聞きます。
―そうした課題はどのように解決すればよいでしょう。
稲森 重要なのは、「業務をデジタル化する」ことそのものではなく、現場の意思決定を支える仕組みを整えることです。データに基づいて出動の要否を判断できれば、現場に赴く労力や調整にかかる負担を確実に減らせるからです。そのため、当社は積雪監視システム『smart snow alert』の設計においては、現場での判断に必要な情報を担当者が把握しやすい形で共有できることを重視し、ハードとソフトの両面において、現場運用を前提とした設計方針を採用しています。
―具体的に聞かせてください。
稲森 センサーについては、電源や通信環境が整っていない場所にも設置できるよう、ソーラー給電とモバイル回線を組み合わせています。また、設置場所の変更にも柔軟に対応できるよう、可搬性にも配慮しています。さらに、マイナス30度近くに達する厳しい環境下でも安定的に稼働し、現場の運用に無理なく組み込めるよう、厳しい環境下での安定稼働に配慮した設計・品質管理を行っています。

運用負担を抑え、データ活用を支援
―ソフト面の特徴についても教えてください。
飯田 職員や事業者がブラウザを一目見て出動判断を下せるよう、操作性と視認性に優れたポータルサイトを提供しています。また、単に数値を表示するだけでなく、地域の気象特性に合わせて複数のしきい値の設定も可能です。たとえば、強風によって雪が堆積する「吹き溜まり」の発生を警戒し、風速に応じたアラートを設定するといった使い方ができます。現場の意思決定に活用しやすい設計を意識しています。
稲森 これらの仕組みの根底には、我々がサイバーセキュリティ会社としてつねに考える、「システムは導入して終わりではなく、継続的に使われることが前提」という考え方と、その実現のために蓄積してきた知見があります。大量のデータを継続的に監視し、異常や変化を把握してわかりやすく伝えるという考え方は、サイバーセキュリティ分野で培ってきた知見とも共通しています。結果として、自治体の担当者は、機器の管理に煩わされることなく、「データの活用」という本来の業務に専念できるでしょう。
―今後、どのような方針で自治体を支援していきますか。
飯田 引き続き、現場の意思決定に資する新機能の実装などを通じ、より高度な支援に取り組んでいきたいと考えています。除排雪に限らず、自然条件などに左右される現場業務は多く存在します。こうした分野においてデータを活用した判断基盤を整備していくことで、持続可能な地域運営の支えになることを目指していきます。


| 設立 | 平成19年10月 |
|---|---|
| 資本金 | 26億4,807万5,000円 |
| 売上高 | 628億円(令和8年3月期:連結) |
| 従業員数 | 2,467人(令和8年3月31日現在:連結) |
| 事業内容 | セキュリティソリューションサービス、システムインテグレーションサービス、情報システム関連商品の販売およびサービス |
| URL |

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