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※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和3年1月に地方自治法施行規則が改正され、自治体も企業の間で普及している電子契約サービスを利用できるようになった。それ以降、自治体における「契約の電子化」に向けた機運が一気に高まっているが、「どのような観点からシステムを選んでいいのかわからない」などの理由から、いまだ電子契約システムの導入に至っていない自治体も少なくないのが実情だ。そこで『自治体通信』編集部では、電子契約システムの運用を始めた3つの自治体による鼎談を企画。システム選定におけるポイントや、運用後の具体的な成果などについて聞いた。



システムの利用促進で重要な、ベンダーの専門的アドバイス
―電子契約システムを選定する際、みなさんが重視したポイントを教えてください。
畑谷 山口県では、重視ポイントの1つに「自治体への導入実績」をあげていました。当県は令和4年12月からGMOグローバルサイン・ホールディングス(以下、GMO)社の電子契約システム『GMOサイン』の運用を始めていますが、例規改正や業務フローの再構築など、契約の電子化を進めるうえでいくつかの課題を抱えていました。そうした課題を他自治体の事例をもとに的確にアドバイスしてくれるベンダーがいれば、導入がスムーズに進むと考えました。

山田 確かに、ベンダーのそうしたアドバイスは、自治体がシステム導入などを進めるうえで重要な要素だと思います。豊田市でも、令和3年に策定した「デジタル強靭化戦略」に基づき、令和5年4月から契約業務の電子化に向けて『GMOサイン』を導入しています。導入時には、職員や事業者向けに説明会を開き、操作方法はもちろん、「なぜ契約の電子化が必要か」「どう利用すればいいか」など、システムの利用促進に関する説明は、専門家であるベンダーの意見をアドバイスとしていただきました。庁内への説明でも、聞き手の納得感は高まりますよね。
中井 我々大阪府(GovTech大阪)では、府内各自治体のDX支援を目的に、令和3年度からさまざまなシステムの共同調達に注力してきました。電子契約システムの共同調達は令和5年度に行い、13自治体が参加しました。我々がシステム選定でまず重視したのは機能面です。「どのシステムでも機能面に大差はない」という話は聞いていました。とはいえ、添付ファイルの容量は、建設工事の図面など膨大な量のデータを契約書に添付できるかどうかに影響します。そうした「機能面の細かな違い」に加え、共同調達では多くの自治体が一気に利用を始めるため、各自治体への「サポート体制」も重視し、『GMOサイン』を選定しました。

山口県では「説明会」が奏功し、年間約4,000件を電子化
―導入後のシステムの運用効果はいかがですか。
畑谷 山口県では令和5年度の1年間で、約4,000件の契約を電子化しています。従来は契約のたびに担当職員が、契約書の印刷・製本・押印・郵送に追われていましたが、システムを導入して以降はPDFデータをシステム上にアップロードするだけで済み、業務効率は格段にあがりました。これだけの利用実績をあげることができたのは、豊田市さんの話にも出たように、職員や事業者への説明会を頻繁に開催したことも要因だと考えています。
山田 豊田市では、令和5年度と令和6年5月までの契約業務の電子化により、事業者は約1,112万円分の収入印紙代が不要になったと試算しており、その分、地域への経済波及効果も得られたと考えています。この成果の背景には、問い合わせればすぐに駆け付けてくれるGMO担当者の「フットワークの軽さ」があったと評価しています。各課の職員が安心して利用するうえで、そうしたサポートは必須だと考えています。
中井 大阪府でも、各自治体の担当者が一堂に会して運用状況を報告し合う「定例会」を2ヵ月に1回開催しており、おおむね順調な運用状況が報告されています。この定例会にはGMO社の「導入支援」「活用支援」の専門チームも参加し、システム運用で浮上した課題を議論していますが、ここで出た意見は各自治体での利用促進策に活かされています。この定例会を通じて私が痛感しているのも、山口県さんや豊田市さんのお話と同様、システム導入に際した「サポート体制」の重要性なんです。

―なぜそう感じるのですか。
中井 システム導入後の成果を最大化させるための条件は、いかに現場にシステムの利用を「定着」させるかにあり、その際はシステムを熟知したベンダーによる導入後の継続的な伴走サポートが決定的に重要だからです。導入前にどれだけ説明や解説を受けても、現場の多岐にわたる運用シーンで多くの課題が浮上し、その課題がシステムの定着を妨げ、いずれ使われなくなる。これは、自治体において過去のシステム導入の際にたびたび見られてきた教訓です。GMO社のサポート体制には、「システムは利用されてこそ価値を発揮する」という姿勢が感じ取れます。このサポートが後押しとなり、令和6年度からは新たに、共同調達への参加自治体が10増えました。

電子契約の仕組みを使えば、「処分通知の電子化」も可能に
―電子契約システムの今後の活用方針を聞かせてください。
畑谷 山口県としては、できるだけ早期に全契約を電子化したいと考えており、そこに向けた利用促進については明るい見通しを持っています。私自身がシステムの利用を通じて、「もっと早く取り入れるべきだった」と思うほど操作は簡単ですから。この「簡単」という要素は重要で、アナログの象徴ともいえる「紙」の契約業務を簡単に電子化できたという実績は、「ハードルが高い」と思われがちなDX推進の機運を庁内に醸成する効果ももたらすでしょう。電子契約はいわば、山口県におけるDX推進の原動力になると考えています。
山田 豊田市も、さらに多くの部署での活用を促していきます。いまでも多くの職員が、システム活用の効果を実感しているとともに、「まったく難しくない」という感触を持っているはずです。そのため、電子契約システムを通じてさらに多くの職員が、DXを抵抗なく進められる意識を持てるようになると期待しています。そうした意識は、これから豊田市が市を挙げて取り組む「部局間システム連携」など、高度なDXミッションを進めていくうえでの「素地」になり得ると考えています。

中井 大阪府では、府内全43自治体に、電子契約システムを広げることを目指しています。さらに大阪府としては、この電子契約の仕組みを活用することで、いま多くの自治体で注目されている「処分通知の電子化」にも取り組めると考えています。じつはそのことも当初から視野に入れて、今回システム選定を行った経緯があります。処分通知の発行は、契約手続きに比べ膨大な数にのぼるため、さらに大きな業務改善効果が期待できます。今後は「処分通知の電子化」にもスポットを当てながら、各自治体が電子契約システムをより効果的に活用できる方法をGMO社とともに伝えていきたいです。

―電子契約システムを導入する際、自治体はどういった点に留意すべきですか。
システムの「使いやすさ」「費用」といった側面はもちろん大切ですが、重要なポイントの1つに「定着化支援」があると私たちは考えています。電子契約システムは、自治体職員の業務効率を格段にあげる効果があり、契約の相手方である事業者に至っては、「収入印紙代が不要」といった経済的メリットまでもたらします。まさに地域全体にDXの効果を波及させられるシステムであり、活発な活用に向けた「定着化」は、その効果を最大化させるために重要だと考えています。
―「定着化」の視点でサポートができるベンダーが必要だと。
そのとおりです。その点当社は、導入時の例規改正や運用後の説明会の開催といった、いわゆるソフト面のサポートはもちろん、システムの機能改善といったハード面での対応でも、「定着化」を強く意識しています。導入自治体には運用後の状況を細かくヒアリングし、システム面での改善要望があれば即座に対応するなど、一人でも多くの利用者に「使いやすさ」を感じてもらい、使い続けられるシステムを追求しています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
大阪府からも話があったように、電子契約の仕組みを活用すれば、今後は「処分通知の電子化」も可能と考えられています。当社としても、より多くの自治体に電子契約システムが持つ「可能性」をお伝えし、導入・運用を手厚く支援していきたいです。
ここまでは、電子契約システムの選定ポイントや導入効果について、自治体担当者の声を紹介した。そこには、契約の電子化が自治体業務に大きなインパクトを与えている現状が語られていたが、そこで指摘されていた電子契約の仕組みのもう1つの適用可能性が、「処分通知」への適用だという。それは一体どういうことか。2人のエキスパートに、詳細を聞いた。


「処分通知」の現状は、紙による契約業務と同じ状況
―電子契約の仕組みを「処分通知の電子化」に適用するとは、どういうことでしょう。
牛島 まず、電子契約の仕組みを簡単に説明すれば、「紙文書」の代わりに「電子文書」、「印鑑」の代わりに「電子署名」、「郵便」の代わりに「電子メール」を活用しています。いま多くの自治体では、「道路の通行許可」や「補助金決定の通知」といった処分通知について、書類に印鑑を押して申請者へ郵送しています。いわば、電子契約以前の、紙による契約業務とまったく同じ状況のため、電子契約の仕組みを活用できないかと多くの自治体が考え始めています。処分通知の発行件数は契約業務の数倍、数十倍に達するため、業務改善への期待が大きく高まっています。令和5年3月には、デジタル庁が「処分通知等のデジタル化に係る基本的な考え方」を発出し、その期待を後押ししていますが、そこには、1つの「論点」が残されています。
―どのようなことですか。
牛島 デジタル庁の考え方では、「『処分通知の電子化』には、電子署名法第2条の電子署名等を利用できる」としています。電子契約の「電子署名」はまさにそれに該当しますが、そこには、「GPKI*の官職証明書やLGPKI*の職責証明書の基本領域を参考にすること」とあります。この「基本領域」についてさまざまな捉え方があるなか、当社は「当事者型」の電子署名タイプがそれに当たると考えています。そこで当社では、電子契約で提供している「当事者型」の電子署名タイプを活用し、首長等の職責を記載した電子証明書の発行や、受領の安全性を担保するための機能を開発し、すでに複数自治体で運用が決まっています。
佐藤 「処分通知の電子化」により、職員の業務負担は劇的に改善されると期待できますが、その際には、当社がさまざまな自治体に提供している「文書管理システム」と電子署名サービスを連携させてこそ、その効果は最大化すると考えています。
*GPKI : 政府認証基盤
*LGPKI : 地方公共団体組織認証基盤

何十万枚もの通知書を、手動でアップロードする負担
―詳しく教えてください。
佐藤 文書管理システムを導入している自治体では、このシステム内で処分通知書の電子決裁、施行処理などを行っています。この段階ですでに通知書は電子化されているため、文書管理システムと電子署名サービスをシステム連携すれば、電子署名サービスへの通知書のアップロード、電子署名および申請者への通知書の電子的な送付までが自動的に行われます。職員にとっては、以前必要だった「押印」「郵送」の作業がなくなるのです。一方で、両システムが連携していない場合、職員が1通ずつ、通知書を電子署名サービスへ手動でアップロードしなければなりません。自治体の規模によっては、その数が何十万枚にもおよぶケースもあり、せっかく「押印」「郵送」が不要になっても、このアップロード作業だけで膨大な時間を要します。もちろん、アップロードに時間がかかるぶん、「署名」「送付」は大幅に遅れてしまいます。
牛島 当社では、この文書管理システムと電子署名サービスとの連携を含めた導入支援で、「処分通知の電子化」の効果を最大化するお手伝いをします。関心のあるみなさんは、ぜひご連絡ください。

設立/大正12年8月 資本金/475億8,606万7,310円 売上高/1兆1,032億1,400万円(令和6年3月期:連結) 従業員数/2万7,325人 事業内容/エネルギー、インダストリー、半導体、食品流通の分野における各種事業 URL/https://www.fujielectric.co.jp/ 電話番号/03-5817-5733 (平日 9:00〜17:00) メールアドレス/x-public-sales-div2@fujielectric.com
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設立 | 平成5年12月 |
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資本金 | 9億1,690万円(令和5年12月31日現在) |
売上高 | 174億9,900万円(連結:令和5年12月期) |
従業員数 | 999人(連結:令和5年12月31日現在) |
事業内容 | クラウド・ホスティングサービスおよびセキュリティサービスを中核とした各種インターネットソリューションの開発・運用 |
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