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先進事例2022.10.07
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第16回

新しい事業提案を民間にも行える、発想力を行政でも育てていきたい

新しい事業提案を民間にも行える、発想力を行政でも育てていきたい

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第16回

新しい事業提案を民間にも行える、発想力を行政でも育てていきたい

茨木市長 福岡 洋一

※下記は自治体通信 Vol.43(2022年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第16回目となる今回は、令和4年4月に公民連携の専門窓口として「公民連携係」を設置した茨木市を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、市長の福岡氏と同市担当者に話を聞いた。

[茨木市] ■人口:28万4,320人(令和4年8月31日現在) ■世帯数:13万1,013世帯(令和4年8月31日現在) ■予算規模:1,843億609万3,000円(令和4年度当初) ■面積:76.49km2 ■概要:淀川北の大阪府北部に位置し、北は京都府亀岡市に、東は高槻市、南は摂津市、西は吹田市・箕面市・豊能郡豊能町に接している。北大阪の交通・産業の要衝であり、住宅都市としての要素もあわせ持つ。日本で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成氏が育ったまちとして知られる。
茨木市長
福岡 洋一 ふくおか よういち

重要プロジェクトでの連携を、市活性化の起爆剤に

―茨木市が公民連携の専門窓口を設置した経緯を教えてください。

 当市は、市内に6つの大学を擁し、早くから官学連携の素地はあったといえます。一方で、民間企業との関係性でいえば、「まちづくりは行政の仕事」という認識が役所側に強く残っていたと思います。しかし、近年の社会課題の複雑化・多様化は、そうした考え方が限界だということを示しています。私自身、弁護士であり青年会議所出身ということもあり、行政のほか多様な主体と連携し、まちづくりに参画してきた経験から、公民連携の重要性は認識してきました。折しも、当市では旧市民会館跡地に整備が進む新複合施設「おにクル」の開館が、来年秋に迫っています。ここを舞台とした連携事業の開発を、今後の公民連携強化のきっかけにしたいと考え、令和4年4月に「公民連携係」を政策企画課内に設置しました。

―専門窓口の設置以降、どのような成果があがっていますか。

 SDGsやCSRといった考え方が浸透する民間企業からの連携提案が増え、設置後3ヵ月で19社と対話を進めています。また、5月には新たに京都芸術大学と包括連携協定を締結し、「おにクル」に関連した映像制作など、文化・芸術活動を通じたまちづくりでも連携を図ります。庁内でも、公民連携をきっかけに、これまでにない部署間連携が生じていると聞きます。この変化の機運を活かし、従来にない事業提案を市側から民間に対して行えるような発想力を育てていきたいですし、そうした連携のコーディネート機能を公民連携係には果たしてほしいですね。

―今後の市政ビジョンを聞かせてください。

 当市では現在、市北部で「安威川ダム」の建設とともに、周辺地域の整備も進めています。これは北部地域の活性化を担う重要プロジェクトで、ここには「おにクル」と同様、幅広い主体のリソースを投入し、市活性化の起爆剤にするビジョンがあります。「次なる茨木へ。」というスローガンで、新しい時代の豊かさを追求するまちづくりを成功させるうえで、公民連携の発展は不可欠な要素です。


民間からの連携提案を受け止め、課題解決へ「手段を選ばない」市に

茨木市 企画財政部 政策企画課 公民連携係 係長 北冨 稔晃

「おにクル」など市の重要プロジェクトを前に、公民連携の基盤づくりを担う茨木市「公民連携係」。その一環として、同係が現在もっとも力を入れている事業のひとつに、イオンとの取り組みがある。そこでの成果や今後の活動ビジョンなどを、係長の北冨氏に聞いた。

茨木市
企画財政部 政策企画課 公民連携係 係長
北冨 稔晃 きたとみ としあき

「場の提供」とは異なる、新たな実験的企画を推進

―イオンとの取り組みの概要を教えてください。

 同社とは平成30年に包括連携協定を締結し、市内3ヵ所のショッピングモールを活用した取り組みを共同で進めてきました。たとえば、期日前投票所の設置。1週間の長期にわたって投票所を設け、投票の利便性向上に取り組んできました。また、電子マネーの利用額の一部を自治体に寄附する「いばらきWAON」の取り組みも、その一例です。この4年間で約95万円を寄附いただき、学校の読書教育の推進などに活用しています。

 そして今回、公民連携係の発足を受け、従来の「場の提供」とは異なるかたちの新たな実験的企画を進めているところです。

―それはどのような企画ですか。

 9月の「SDGs週間」において、市に関連する企業、団体などに広く参画を募り、それぞれが取り組むSDGs活動を一堂に紹介するイベントを共催したいと考えています。ここには、行政の活動を市民に広く知ってもらうほか、同じ理念を持つ多様な主体が集うことで、公民連携の土壌をさらに広げる狙いもあります。当市が、「次なる茨木へ。」というスローガンのもとに目指すまちづくりには、「市民と一緒に取り組む」という精神が込められています。そこでは、市からの情報発信のあり方も変わり、従来の「結果の報告」ではなく「過程や方針の共有」という側面が求められるはずです。そうした行政と市民との新しい関係構築も追求していきたいと考えています。

―今後の活動ビジョンを聞かせてください。

 SDGsやCSRの考え方が浸透し、公民連携に関心を持つ企業が増えるなか、「公民連携窓口のある自治体に優先して声をかけている」という意見も聞きます。今後は公民連携をめぐっても自治体間競争が予想されるなか、当市では民間からの連携提案をしっかり受け止める体制を整えるべく、「民間提案制度」の創設を検討していきます。地域課題の解決や地域活性化の取り組みにおいて、直営事業や業務委託、補助金執行といった従来の手法に「公民連携」を正式にくわえ、良い意味で「手段を選ばない」市になろうと考えています。


支援企業の視点

パートナーシップの深化へ。専門窓口との対話でふくらむ期待

イオンリテール株式会社 近畿カンパニー 北大阪事業部 事業部長 廣橋 義徳
イオンリテール株式会社
近畿カンパニー 北大阪事業部 事業部長
廣橋 義徳 ひろはし よしのり

―茨木市との取り組みに、どのような意義を感じていますか。

 当社が展開する小売り事業は、それ自体が地域に根ざした産業という性格が強く、地域の発展があって初めて成り立つものです。当社も企業理念に、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」と掲げているように、地域とのつながりを非常に大切にしています。特に茨木市は、北摂エリアの重点地区のひとつと位置づけており、「いばらきWAON」の発行や期日前投票所の設置、当社店舗での就労支援など、幅広い分野で多彩な連携事業を展開してきました。これらは、生活至便の立地環境で事業を展開する、当社の利点を活かした内容の連携がほとんどでした。しかし今回、公民連携係の発足を機にイベント共催という提案を受け、茨木市との連携に新しい可能性を感じています。

―公民連携専門窓口の役割を、どのように評価していますか。

 当社との連携はテーマが幅広いため、多くの部署との折衝が必要になりますが、公民連携係が窓口になってくれていることで、非常にスピーディな対応で連携事業の具体化に貢献いただいています。熱心に企業側の事情に向き合ってくれるその姿勢からは、パートナーシップの深化に向けた今後への期待がふくらみます。

 公民連携係と対話を重ねるなかで、当社としても茨木市の課題解決に貢献するための新しい役割、新しい価値提供のあり方が見いだせるのではないかと、今後の連携事業の発展に期待を感じているところです。

廣橋 義徳 (ひろはし よしのり) プロフィール
昭和39年、兵庫県生まれ。平成2年、ジャスコ株式会社(現:イオンリテール株式会社)へ入社。おもに海外業務や店長職などの業務を担当する。令和4年から現職。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

一大プロジェクトで示せるか。「公民連携係」設置の意義

 多種多様な課題を抱えている市のまちづくりを、行政だけで解決することは困難。茨木市はそう考え、令和4年4月に「公民連携係」を設置しました。市として、次なる時代の姿を市民・企業とともに考え、実行していくうえで、「公民連携」を重要なキーワードと考えています。

 「公民連携係」設置後、企業などからの提案に対して対話を重ね、一つひとつ着実に推進していると聞きます。その代表例が、市の一大プロジェクトである文化・子育て複合施設「おにクル」での取り組みでしょう。市民・団体・企業などさまざまな主体と連携したこの取り組みは、「公民連携係」設置の意義を示すものと期待しています。

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