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《申請枚数急上昇の、その後は!?》マイナンバーカードは「オンライン上での公共空間形成」に不可欠

    《申請枚数急上昇の、その後は!?》マイナンバーカードは「オンライン上での公共空間形成」に不可欠

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    自治体DXを本気で考えている職員さんに読んでほしい話。#6
    (xID株式会社 執行役員 官民共創推進室長/元静岡県庁 職員・加藤 俊介)

    本連載の第4回第5回の2回にわたって「自治体DXの本丸」についてお伝えしました。今回は自治体DX、デジタル化の実現のために不可欠なマイナンバーカードに触れます。マイナンバーカードほど認知度が高く、その一方で正しい理解がされていないものは珍しいかもしれません。デジタル田園都市国家構想交付金やマイナポイント等で注目が高まるマイナンバーカードを正しく理解し、今後、どう活用していけばよいのか、一緒に考えていきましょう。

    マイナンバーカードはデジタル社会のパスポート

    マイナンバーカードの本質は、ICチップに格納された電子証明書を活用する本人認証の仕組み(公的個人認証)です。対面で身分証としてカードを利用するだけでなく、オンライン上で自分が自分であることを証明したり、申請データに改ざんがされていないことを担保することができます。

    オンライン上で「確かに私である」ことを証明するのは実は難しいことです。オンラインでのやり取りでは顔が見えないことも多くありますし、身分証の画像アップロードは偽造が容易です。顔が見えてもフェイク画像の可能性は十分ありますし、顔が正しくても誰であるかの証明はできません。これは、リアルの世界でも同じかもしれません。

    これまでのオンライン空間は匿名性が高く、アカウントを用いるSNSやECサイト等でも複数のアカウントを作成することができます。エンタテインメントの分野などであれば、「それが誰であるか」は重要でないかもしれませんが、行政サービスや金融サービスなど公共性の高い分野では、「それが誰であるか」を特定することが重要ですし、給付金などは複数回取得されては問題が起こるため“その人がひとり”であることが求められます。

    私がよく自治体職員のみなさんにお勧めしている書籍『次世代ガバメント』(責任編集・若林 恵/日本経済新聞出版、原題は『NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』)では、《これまでのインターネット空間は私道しかない空間であり、そこに公道をつくる必要があるのではないか》と述べています。オンライン上に公道をつくるには、オンライン上で「確かに私である」こと、「確かに市民であること」を確認できることが必要で、それができるのがマイナンバーカードであり、マイナンバーカードが「デジタル社会のパスポート」とされる所以です。

    復習! マイナンバーとマイナンバーカードの違い

    マイナンバーカードは「個人番号(マイナンバー)」とは別物です。その名前から未だに両者は混同されがちですが、個人番号は希望するかしないかに関わらず、全国民に割り当てられた12桁の番号です。一方、マイナンバーカードはICチップの組み込まれたプラスチックカードであり、希望者だけが申請により受け取ることができます。
    ですから、マイナンバーは既に割り当てられているため、「マイナンバーを取得する」という表現は間違いです。

    マイナンバーカードの裏側に、個人番号が掲載されていることも混乱を招く要因ですが、マイナンバーカードのICチップを利用した公的個人認証サービスでは個人番号は用いません。 セキュリティについては、政府情報*などに委ねますがマイナンバーカードのICチップには税や年金などの情報は含まれていません。

    *マイナンバーカードのセキュリティについての政府情報資料:「持ち歩いていも大丈夫! マイナンバーカードの安全性」(デジタル庁)

    マイナンバーカードの「利活用体験」を

    マイナンバーカードは2万円分のマイナポイントの後押しもあり普及が拡大しており、2023年1月4日時点で申請枚数が約8,300万枚となり、運転免許証の保有者数を超えたと発表されました。一方、マイナンバーカードを取得しても利用場面がまだまだ限定的で、対面での身分証としての利用やコンビニでの証明書取得のほかに用途を知らない住民の方も多いのではないでしょうか。ここが非常に課題の残るところです。

    ポイント付与によるカードの「交付」とカードの「活用」が分断されてしまっており、「デジタル社会のパスポート」としての利用場面、活用方法が住民に伝わっていないことが懸念されます。

    ポイントまで付与してカードを配っても、使われなければ意味がなく、利活用する場面や機会がないまま電子証明書の有効期限となる発行から5回目の誕生日を迎えては多大なる無駄が発生します(注・カードの有効期限は発行から10回目の誕生日まで)

    カード交付やポイント付与と合わせて、オンラインでの利活用体験まで組み込んだ普及策が理想です。

    課題は利活用体験を組み込んだ普及策!

    【自治体事例】「体験」を組み込んだ御前崎市の取り組み

    そこで、私の所属するxIDが関わったマイナンバーカードの普及と利活用体験を一体として実施した静岡県御前崎市の「デジタル応援キャンペーン」をご紹介します(キャペーン実施期間は2022年9月26日〜同年12月28日まで)

    御前崎市ではマイナンバーカード取得者を対象に、マイナンバーカードで本人認証をしたxIDアプリを利用した、①電子申請と②デジタル通知の受領の2つをキャッシュレスポイント付与の条件としたキャンペーンを展開しました。実際に市で利用している電子申請の体験を組み込むことに加えて、今後展開していく市から住民へのデジタル通知を使って、キャッシュレスポイントを付与する内容です(下図参照)

    御前崎市「デジタル応援キャンペーン」の流れ

    人口およそ3万人の御前崎市で5,000人を超える方から応募を受け付けました。マイナンバーカード所有者の約3割が応募し、マイナンバーカードをオンラインで利用するデジタル体験をしました。今後、対象者を特定した通知をアプリに届け、そこから電子申請を行い、その返答やポイント給付をデジタルで完結する流れも見えてきます。

    広く住民にお知らせする広報ではなく、必要な人に必要なサービスをプッシュ型でお知らせする道もでき、まさにこれはデジタル空間の「公道」であると考えます。

    デジタル田園都市国家構想交付金へチャレンジを!

    マイナンバーカードの活用は今後の重要な論点です。本来、活用があって交付が進むものを、ポイント給付などで交付が先行しているのが今です。

    ただし、記載したとおりマイナンバーカードは自治体のデジタル化、オンライン空間の「公道」を作るためには不可欠なもので、利用できる場面は多くあります。

    次回も引き続きマイナンバーカードの「活用」について、紹介や提案を記載したいと思いますが、今まさに取り組まれているデジタル田園都市国家構想交付金では、マイナンバーカードの申請率が交付金の申請要件や加点対象となり、実施する事業でもマイナンバーカード活用が求められています

    マイナンバーカードは今後さらに普及・利活用を進めていくべきものです。交付金申請に迷っている自治体の職員さんがいれば、ぜひチャレンジをしてみてください。一緒にデジタル上に公共空間をつくり、自治体DXを推し進めていきましょう。

    (続く)

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    ■ 加藤 俊介(かとう しゅんすけ)さんのプロフィール

    xID株式会社 執行役員 官民共創推進室長/元静岡県庁 職員
    公共政策学修士。静岡県庁職員として実務経験後、デロイトトーマツにて自治体向けコンサルティングに多数従事。自治体マネジメントに関わる分野を専門とし、計画策定、行政改革、BPR等に加えシェアリングエコノミーなど新領域開拓も経験。xID参加後は、官民共創推進室長として、自治体向け戦略策定、官民を跨ぐ新規事業開発を担当。現在は住民へ確実に届くデジタル通知サービス“SmartPOST”を推進。兵庫県三田市スマートシティアドバイザー。

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