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《鍵は“深度旅游”》「交流」を軸にした「地方送客」~前編

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    みなかみ町の大胆インバウンド戦略【第Ⅱ章】#2(みなかみ町 職員・阿部 真行)
    インバウンド復活―。街中で大きなスーツケースを引く外国観光客の姿を見かけることが増えました。そこで、台湾インバウンドで成果を挙げているみなかみ町(群馬)のインバウンド担当者、阿部 真行さんが小規模自治体でも効果を出せる施策等を解説! 今回はコロナ後の旅行需要の変化とそれに対応した阿部さんのチャレンジをお届けします。

    実践した3つの「交流ツアー」事例を紹介

    コロナの規制緩和が進んだ今春頃から海外からの一般ツアーも復活し始め、有名観光地等ではインバウンド復活の動きが伝えられるようになりました。
    今回は、みなかみ町が最近受け入れた3つの「交流重視のツアー事例」を紹介します。特に有名でもないみなかみ町の台湾インバウンドの鍵にもなっているのが「交流」です。

    その1~再会ツアー

    今年3月中旬に、みなかみ町が台南市内で以前に運営していた「水上交流館」の運営を通じて知り合った台湾の企業やライオンズクラブ等の人達による旧交を懐かしむツアーを実施しました。3年以上ぶりに再会する人達が多く歓迎会や交流会も行われる旅行行程でした。
    (参照記事:台湾で「みなかみ町ブーム」を起こしたPRノウハウ)
    ちなみに、このツアーの参加者30人のうち、8割が女性でした。事あるごとに私も紹介していることなのですが、台湾は女性の社会進出度が高いように感じています。企業もそうだし、私がみなかみ町から台南市政府へ出向した際に所属していた国際関係科の同僚も半数以上が女性で、上司である科長も次長も、私より年下の女性でした(台湾の現総統も女性です^^;)。

    筆者の阿部さん(前列左端)が台南市政府に出向した当時の国際関係科メンバー。ほとんどが女性(!)

    これからのインバウンドを考える際に、「交流」と「女性」は重要なキーワードになるかもしれません。みなかみ町の新しい台湾インバウンド施策として、交流×女性の観点で考えたのが、お祭りでお神輿を担ぐ体験を打ち出した「沼田祭り」(みなかみ町のお隣の沼田市で毎年8月上旬に開催)参加ツアーです。詳細は後ほど紹介します。

    その2~住民との交流を重視したモニターツアー

    4月中旬に、台南市旅行商業同業公会の理事10名によるモニターツアーを実施しました。
    コロナ前後で、台湾の旅行環境にはいくつかの変化がありました。たとえば、台南市には約230社の旅行会社があるのですが、その多くがコロナ禍の影響で営業形態を変えたり経営者が変わったりと大きな影響を受けました。
    また、今まで主流だった団体ツアーから、少人数グループを対象とした長期滞在かつ深い体験が出来る旅へと需要が変わり始めています。こうした形態の旅行を中国語で「深度旅游」と言います。
    そこで上記の4月中旬に実施したモニターツアーでは

    1. 和服を着て街歩き体験
    2. 一般家庭見学
    3. 地元スーパー買い物体験
    4. 地酒飲み比べ体験

    等々、団体客ではちょっと対応が難しい、地域住民との交流を重視した「深度旅游」の企画を試してみました。すべてではありませんが、手応えを感じる素材もいくつか発見しました。

    交流重視で実施したモニターツアーの様子。地酒飲み比べ体験(上写真)や和服を着て街歩き体験等の企画を実施。手応えを感じた

    ちなみに「その1」と同様、こちらの理事参加率も女性が多く、10名のうち7名が女性。前述した「沼田祭り」参加ツアーの造成及び販売にも興味を持ってくれています。

    その3~ランタン交流

    2020年から開始した「ランタン交流」をきっかけに、台南市消防局や消防団及びランタン関係者36名による交流ツアーを4月に実施しました。
    (参照記事:みなかみ町の大胆インバウンド戦略【第Ⅱ章】#1)
    コロナ禍の初期では人の往来がまったくできず、私も出向先の台南から動けませんでした。その時、偶然出会った台南市消防局第七大隊の大隊長と一緒に考えたのがランタン交流です。
    台南では毎年、春節(1月~2月の旧正月)の時期に街中にランタンを飾る習慣があり、この第七大隊が所属する消防署の外壁には地元小学生や中学生が消防や火の神様(火徳星君)をテーマにイラストを描いたランタンを1,000個展示しています。2022年1月に行われたランタン交流では、春節を前に厄よけの意味が込められたランタン約2,000個とともに群馬県のみなかみ町や沼田市などから送られたちょうちん約130個を台南市の消防署に飾りつけるとともに、台南の小中学生が描いたランタン560個を台南市からみなかみ町に送ってもらい、展示しました。台湾の文化を感じてもらいながら、コロナ早期収束を祈るとともに学校交流、神様交流、そして防災交流に繋げようという狙いです。
    展示場所はみなかみ町内にある「たくみの里」。ここには「火伏すの神様」(防火の神様)として「烏天狗」が祀られおり、毎年10月末には地域の祭りで烏天狗神輿が担がれます。

    ランタン交流では、台南市消防局から送られたランタンをみなかみ町で展示し(左上下の2点)、みなかみ町等から提灯を台南市消防局に送る(右)ランタン交流を実施

    「どうしてランタンがインバウンドに繋がるの?」と、当初は日本側だけではなく台湾側にも疑問に思われることもありました。私の狙いは台南市消防局隊員やランタンに絵を描いた子ども達にみなかみ町を訪れてもらい、この烏天狗神輿を担いでもらう旅行商品を造成することでした。ランタンという「モノの交流」を「ヒトの交流」につなげようというアイデアです。

    ランタン交流のメリットについては、後編でお伝えします。
    (後編に続く)


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    ■阿部 真行(あべ まさゆき)さんのプロフィール

    出向していた台南市政府のデスクで

    みなかみ町 観光商工課 観光振興係 インバウンド担当 /
    台南市政府 対日事務相談顧問
    高校講師などを経て、2005年にみなかみ町(群馬)に入庁。2013年6月から台南市政府に出向。台南市政府から「台南市政府対日事務相談顧問」に任命され、日台間のブリッジコーディネーターとしての役割を担う。日台双方の国家資格などを取得し、インバウンドを主とした交流を推進中。
    昨年3月に帰国。著書に上毛芸術文化賞を受賞した『台湾・台南そして安平! ~日本公務員の駐在日記~』(上毛新聞社)がある。

    • 連絡先
      電話: 0278-25-5017 (みなかみ町 観光商工課)

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