
※下記は自治体通信 Vol.72(2026年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
豊かな自然や国内有数の製造業拠点という、恵まれた地域資源を有する茨城県。令和7年9月に知事3期目に入った大井川氏は、こうした資産を最大限に活かしつつ、民間手法を取り入れた大胆な挑戦を続けてきた。その結果、企業誘致件数で全国上位を記録し続けるなど、目覚ましい成果をあげている。令和8年度からは新たな総合計画が始動し、これまでの取り組みをさらに深化させていく。就任から8年間の成果と今後の県政ビジョンについて同氏に聞いた。

この8年のなかで、もっとも変化した県の1つに
―知事として3期目に突入しました。これまでの大井川県政をどのように振り返っていますか。
人口減少や物価高など、地方を取り巻く環境は激動の最中にあります。こうした時代に地域を守る唯一の道は、高い付加価値を生み出せる地域社会をつくることです。そこで私はこれまで、「新しい豊かさ」「新しい安心安全」「新しい人財育成」「新しい夢・希望」の4つのチャレンジを総合計画の柱に掲げて県政を推進してきました。そこでは「民間企業の経営手法」の導入が不可欠だと考え、慎重さよりもスピードを重視し、ときに軌道修正をしながら、人員や予算を最重要施策に絞る「選択と集中」を徹底してきました。
茨城県は豊かな自然や産業、首都圏への近接性など有利な条件に恵まれていますが、それゆえに現状に安住し、リスクを避けて挑戦を躊躇する傾向が弱点でもありました。しかし、変化の激しい時代にそれでは生き残れません。リスクを取り、工夫を重ねていく意識改革が必要だったのです。
―そうした意識改革により、どういった成果が生まれましたか。
たとえば、企業誘致では、過去の経緯にとらわれず、現実離れしていた土地の分譲価格を思い切って下げるとともに、民間同様のマーケティング手法で企業分析を行い、積極的な誘致活動を展開しました。その結果、これまで停滞していた企業誘致が一気に活性化し、県外からの企業立地件数は8年間連続で全都道府県中1位となっています。農林水産業においては、単に量をつくって東京の市場に出すだけでなく、自分たちのブランドを確立して付加価値を高めることに注力しました。生産量日本一を誇るメロンや干し芋などでブランド化を進めたほか、梨では1玉1万円を超える価格で販売されるような事例も出てきています。水産物についても「常陸乃国」ブランドとして差別化を図り、地元の名産として観光誘客にもつなげています。これらの取り組みにより、本県情報のメディア掲載による広告換算額も就任前の4倍以上に増えました。茨城県はこの8年間で全国の中でももっとも変化した県の1つになったと自負しています。
客観的なデータに基づいた「いばらき幸福度指標」
―2期目は、県民の幸せを「見える化」する取り組みも全国から注目されました。
私の県政の基本理念は、茨城県を「活力があり、県民が日本一幸せな県」にすることです。その実現には、自分たちの価値を正しく把握する必要がありますが、当時の茨城県といえば、都道府県別の「魅力度ランキング」で下位が続き、県民もそれを気にしていました。しかし、根拠の曖昧な調査に一喜一憂していても仕方ありません。政府統計などの検証可能で客観的なデータに基づき、社会の実情を可視化すべきだと考えました。そこで、総合計画の4つのチャレンジに紐づける形で独自の「いばらき幸福度指標」を導入したのです。
指標はたとえば令和7年度には「豊かさ」で全国5位、「人財育成」で4位を記録するなど、県民が本県のポテンシャルを再認識する契機となりました。その一方で、医師の不足や犯罪の多さといった課題も明確になり、行政の打つべき手も見えやすくなりました。数値による可視化は、職員や県民の意識をポジティブに変える大きな原動力となっています。
―令和8年度からは新たな総合計画も始動します。そのなかで重要なポイントはなんですか。
これまで掲げてきた4つのチャレンジに加え、重点的に進める3つの取り組みとして、「他地域にはない特長をつくるための差別化」「将来の発展を見据えたインフラへの投資」「多様な人財が活躍できる社会の実現」を新たに設定しました。これらはいずれも、人口減少がさらに進む2050年の未来を見据えたとき、地域が豊かさを維持し生き残るために、いま、早急に取り組むべき必要不可欠なテーマです。
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能力と意欲に応じて、誰もが活躍できる社会を
―詳しく聞かせてください。
まず「差別化」についてですが、現状維持では変化の激しい時代を生き残れません。ほかの自治体との横並びではなく、「ここが売りなんだ」「ここが違うんだ」ということを引き続き明確に打ち出し、選ばれる地域になる必要があります。そこで、常識にとらわれることなく新しい発想で工夫を重ね、本県独自の差別化に取り組んでいくため、重点事項に設定しました。
また、「インフラへの投資」に関しては、これまでの施策が実を結び、経済の活性化に大きく寄与しています。この勢いを一時的なもので終わらせず将来につなげるために、つくばエクスプレスの土浦延伸や茨城空港の機能強化、水戸保健医療圏の病院再編といったインフラへの投資を惜しみなく行い、産業の発展基盤をさらに強化していく方針です。
―「多様な人財の活躍」についても教えてください。
人口減少は全国共通の課題であり、豊かさの維持には人財確保が必須です。そのため、国籍や性別、年齢、障害の有無などにかかわらず、誰もが能力と意欲に応じて活躍できる社会づくりを目指します。昨今は、外国人との摩擦に対する懸念が急速に高まっており、これは決して簡単なテーマではありません。しかし、だからといって歩みを止めるわけにはいきません。ルール違反には毅然と対処しつつ、マナー教育やコミュニティへの融和にも正面から取り組んでいく。摩擦を恐れずに「秩序ある共生」という難題に挑み、外国人財に選ばれ、ともに成長する地域をつくりあげることこそ、私たちに課せられた新しい挑戦です。
人口減少に手をこまねいては、無策と言われても仕方ない
―県政推進の先にどのような未来を描いていますか。
経済的な豊かさを維持しつつ、県民が安心して暮らせる「日本一幸せな県」です。住んで幸せを実感できる地域には、自然と人や企業が集まり、そこに活気が生まれます。この好循環を生み出すためには、まず最低限の経済的基盤が不可欠です。人口減少により日々の生活すら成り立たなくなりつつある現状に対し、手をこまねいているのは行政の長として無責任であり、無策と言われても仕方ありません。今後は、海外市場の開拓や、過去の延長線上にない新しい取り組みへも果敢に挑みます。こうした改革を実際に実行に移し、結果を出していくのが茨城県です。
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