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文化庁移転で存在感を高める「文化首都」京都の施政ビジョン

府民が共生する「あたたかい京都」をつくり、生活に根差した豊かな文化を継承する

府民が共生する「あたたかい京都」をつくり、生活に根差した豊かな文化を継承する

文化庁移転で存在感を高める「文化首都」京都の施政ビジョン

府民が共生する「あたたかい京都」をつくり、生活に根差した豊かな文化を継承する

京都府知事 西脇 隆俊

※下記は自治体通信 Vol.41(2022年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


現在、令和5年3月27日の業務開始を目指し、文化庁の京都移転の準備が進んでいる。文化庁では今後、観光やまちづくりなどのさまざまな関連分野との連携を強化し、総合的に施策を推進するための機能強化も図っていく。明治以来初となるこの中央省庁移転を受け、「世界の文化首都」をビジョンに掲げ、「文化の力」を活かした地方創生により一層力を入れていくという京都府。その取り組みの詳細について、知事の西脇氏に話を聞いた。

危機管理に追われながらも、総合計画の9割以上を事業化

―今年4月から2期目に突入していますが、1期目の成果をどのように振り返っていますか。

 振り返ると、「危機管理」が、いかに行政における根幹的な役割であるか、ということを痛感した4年間でした。就任1年目の平成30年は、京都に甚大な被害をもたらした西日本豪雨や台風第21号の上陸、翌令和元年には京都アニメーション放火殺人事件があり、被災者・被害者への支援に奔走しました。さらに令和2年は新型コロナウイルスの感染拡大で幕を開け、京都府内でも1月30日に初めて感染者が確認されて以来、今なお収束を迎えていません。

 これらの経験から、情報発信を通じた府民や事業者、あるいは医療関係者などとの信頼関係の醸成がいかに重要かを、大いに学びました。

―詳しく教えてください。

 たとえば、新型コロナ対応では、医療機関の体制強化、飲食店の営業自粛など、さまざまな対策が迫られたわけですが、これらはいずれも法的拘束力があるわけではなく、すべて「要請」なんですね。府からの要請や依頼にみなさんの納得が得られなければ、施策は実現しないんです。今回のコロナ対応では、特に「知事の判断」のあり方がクローズアップされました。最終責任を意識しながら、なぜその施策に至ったのかを丁寧に発信してきました。

 一方で、危機管理に追われながらも、就任後に策定した総合計画に盛り込んだ施策の9割以上を事業化し、それらの成果は、総合計画の進捗を審議する有識者会議で、「コロナ禍による厳しい状況の中で、全体としてしっかり取り組まれている」との評価をいただきました。これは、膨大な緊急対応をこなしながらも府民との信頼関係を構築し、府政を前に進めてくれた職員の活躍によるものと感謝しています。

3つの柱で推進する、「あたたかい京都づくり」

―コロナ後を見すえたとき、最重要課題はなんでしょう。

 「あたたかい京都づくり」を打ち出しています。コロナ禍で人と人とがふれあえる日常が失われ、国際情勢は不透明感を増し、物価高騰は足元の生活に不安を与えています。そうしたなかで、誰もが未来に夢や希望を抱いていくために、もっとも重要なのは「日々の生活」を守っていくことであり、そこには人々の支え合いによる「あたたかい社会」が重要だと考えています。

 この「あたたかい京都づくり」を、「安心」「温もり」「ゆめ実現」という3つの柱で推進していきます。「安心」が意味するのは、府民のみなさんが文字通り安心して暮らせる京都をつくること。感染症対策や防災減災対策はもちろん、価格高騰などに対する緊急対策も含まれます。また、「温もり」では、「子育て環境・日本一」という目標を最大の柱に据え、未来を担う子どもたちをあたたかく育むと同時に、府民のみなさんの生活や絆を守る共生社会づくりを目指します。子育てにやさしいまちは、すべての世代にやさしいまちであるはずですから。

―「ゆめ実現」では、どのような施策を展開していくのですか。

 ここで掲げているのは、夢(ゆめ)や希望にあふれる京都の魅力と活力を創造していくということです。具体的には、地域特性を活かした伝統産業や新産業創出への支援をはじめとする産業振興策があります。交通インフラ整備も進んできており、大阪・関西万博など京都発展の機会をとらえて府内に特徴的な産業創造を行うリーディングゾーンをつくり、特色ある産業を育成する計画です。

 もうひとつは、「文化首都」としての京都の魅力発信です。京都の魅力の源泉は、やはり「文化」です。コロナ後を見すえたとき、日本文化全体の発信地として、京都は重要な役割を果たしていかなければならないと考えています。

文化庁の京都移転を、日本全体の文化振興の契機に

―令和4年度中には、文化庁の京都移転も控えていますね。

 これは、京都の文化振興にとって大きな後押しになると感じています。しかし、明治以来初めて国の役所が東京を離れるという大改革を成功に導くためには、京都の文化振興という視点だけではなく、京都移転が日本文化全体の振興と発信に寄与するものでなくてはならないと考えています。

 文化庁は現在、機能強化を図っていますが、その過程で、生活文化や地域文化に焦点を当てて各地の文化振興に力を入れていく方針を打ち出しています。それは非常に重要な視点だと思います。京都移転を機に、眠った文化資源に光が当たって地域の魅力が再発見され、日本全体の文化振興につながっていくことを期待しています。

―伝統・文化は、生活に根差したものだということですね。

 そのとおりです。たとえば、京都にある寺社仏閣には多くの観光客が訪れていますが、これらは今も日々の宗教活動が営まれている場所です。祭事や諸行事もそれぞれに、生活に根差した起源があり、茶道や華道、能や狂言、歌舞伎と、それらを彩る道具や着物などのものづくり、伝統産業も日々の生活のなかで独自に発展してきた歴史があります。ですから、いまの生活を守っていくということは、歴史的な視点でとらえると、これからの時代の伝統・文化を形づくっていくということも意味するのです。

豊かな伝統・文化をつくり、これからの時代へと継承したい

―伝統・文化に恵まれた京都だからこそ、その背景にある「生活」を大事にする視点が強いのでしょうか。

 そうかもしれませんね。ですから、「あたたかい京都づくり」は、いまの府民の生活を守ることにとどまりません。いかに豊かな伝統・文化をつくり出し、これからの時代へ継承していけるかという潜在的な命題も背負っていると言えるのではないでしょうか。「あたたかい京都づくり」では、スタートアップの創業支援や各種スポーツの振興を通じて、新しい京都の魅力づくりにも力を入れています。それらが花開き、これからの京都の伝統・文化へと育っていってほしいですね。

西脇 隆俊 (にしわき たかとし) プロフィール
昭和30年、京都府生まれ。昭和 54年、東京大学法学部卒業後、建設省(現:国土交通省)に入省。道路局次長、総合政策局長、大臣官房長、国土交通審議官などを歴任し、平成28年に復興庁事務次官に就任。平成30年4月、京都府知事選挙に出馬し、当選。現在、2期目を務める。関西広域連合副広域連合長、全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部副本部長などの役職も兼務する。
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