【住民サービス・行政DX】子育て支援カードをLINEに実装し、対象世帯の利便性向上を実現
(持ち運べる役所 / アローリンク)


※下記は自治体通信 Vol.66(2025年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
子育て支援の一環として、対象世帯が域内の店や施設などで特定のカードを提示すれば、割引などの各種サービスを受けられる「子育て支援パスポート事業」に取り組む自治体は増えている。そうしたなか、鳥羽市(三重県)では、さらなる住民サービス向上のため、独自で発行している紙の子育て支援カードを、LINE公式アカウントを活用することでデジタル化した。同市担当者2人に、取り組みの経緯や得られた成果などを聞いた。


高い費用対効果が期待できる、LINE活用支援サービスを選択
―鳥羽市が、子育て支援カードをデジタル化した経緯を教えてください。
北村 当市では、18歳以下の子どもがいる子育て世帯に対し、市内の店や施設などの協賛事業所に提示すれば割引やプレゼントなどの特典が受けられる「とばっ子カード」を平成18年度から発行しています。紙で発行していた際は、利用者が携帯する必要がありましたし、世帯ごとの発行は1枚のみで、たとえば母親が携帯していれば、父親や祖父母は利用できない不便さがありました。また、対象から外れた世帯がカードを使えないようにするため、毎年デザインを刷新し、対象世帯に発送するという行政側の手間もあったのです。
小林 さらには、各世帯がどの協賛事業所でカードを利用したのかの実態を市で把握できていませんでした。そうした背景があり、課内でデジタル化を検討したのです。
―LINE公式アカウントを活用してデジタル化した理由はなんですか。
小林 独自のアプリを作成する案も出ましたが、開発費がかさむうえに対象世帯がダウンロードしてくれるとは限りません。その点、LINEは住民にとって身近なツールのため、普及しやすいと考えたのです。とはいえ、その時点で当市はLINE公式アカウントをもっておらず、我々はITの専門家ではないため、「とばっ子カード」をLINEに実装する方法がわかりませんでした。そこで、さまざまなLINE活用支援サービスを検討するなか、アローリンク社が提供するLINEマーケティングツール『Liny(リニー)』を導入することにしたのです。
―導入した決め手はなんだったのですか。
北村 まずは、すでに他自治体で子育て支援カードをLINEに実装した実績があった点です。また、同社には独自のサポートプランがあり、「他サービスより費用対効果が高い」と判断したのです。令和5年12月から導入し、令和6年4月からサービスを開始しました。
伴走支援を受けつつ、さまざまな機能を搭載
―成果を聞かせてください。
小林 アンケートを取ったところ、7割以上の世帯が「便利になった」と回答しました。世帯の保護者全員がスマホでカードを提示できるようになったほか、実装にあたっては、マップ上で協賛事業所とそのサービス内容が確認できる工夫をしました。また、市役所で「とばっ子カード」を提示すれば、ごみ袋を60枚無償提供するサービスを以前から実施していましたが、事前にLINEで必要項目を記入できるようにして「書かない窓口」を実現できました。対象世帯は自動更新されるほか、利用状況が市で把握できるようになり、今後の運用の参考にできます。これらの機能装備は、アローリンク社の伴走支援があったからこそ実現できました。
北村 令和7年1月からは内容を拡充し、全住民にLINE公式アカウントを公開しています。今後もLINE公式アカウントを活用して、住民サービスの向上に努めます。


―LINE公式アカウントの活用で、子育て支援カードをデジタル化する自治体は増えていますか。
当社の支援事例で言えば、増えています。3、4年前までは、LINE公式アカウントを活用する自治体は数百だったのが、現在は1,500以上が活用しています。独自でアプリを開発するより、すでに多くの住民に浸透しているLINEを使い、さまざまな情報を住民に発信したり、各種行政手続きの電子申請に活用したりする自治体は多いです。そして近年は、「広報機能」や「窓口機能」だけでなく、鳥羽市のように独自のニーズでLINE公式アカウントを活用する自治体が増えています。そうした個別具体的な活用を検討している自治体に対して、当社ではLINEマーケティングツール『Liny』の導入をおすすめしています。
―特徴を教えてください。
「持ち運べる役所」としての総合的な機能はもちろん、子育て支援だけでなく、移住定住促進、観光促進、ふるさと納税促進などさまざまな目的に則した開発支援を行っています。また当社では、独自のサポートプランを用意しており、「サービスを導入して終わり」ではなく、行政課題の解決や行政計画の実現に向けて、伴走支援することを大切にしています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『Liny』はデジタル庁の「デジタル地方創生サービスカタログ(2024年冬版)」などにも掲載されており、より多くの自治体に活用してほしいと考えています。興味がある自治体は、一度相談してほしいですね。

設立 | 平成26年1月 |
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資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 54人 |
事業内容 | 官公庁・自治体DX推進事業、DX導入・伴走コンサルティング、AIシステム企画・構築・運用サポート、RPA運用コンサルティング、LINEAPI企画・構築・運用サポート、LINEマーケティングツール『Liny』運用サポートなど |
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