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神奈川県小田原市の取り組み
先進事例2023.12.05
観光分野におけるEBPM①

決済データの多面的な分析結果が、観光振興策の道標になっている

[提供] 三井住友カード株式会社
決済データの多面的な分析結果が、観光振興策の道標になっている
この記事の配信元
三井住友カード株式会社
三井住友カード株式会社

※下記は自治体通信 Vol.54(2023年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍の収束に伴い、観光事業に力を入れ直す自治体が増えている。そこでは、いかに有効な施策を打ち出して地域経済の活性化につなげるかが、共通する重要なテーマとなっている。そうしたなかで小田原市(神奈川県)は、クレジットカードの決済データから観光客の消費実態を分析。合理的根拠に基づいて政策を立案する「EBPM」の手法で、観光振興に向けた手がかりを掴んだという。取り組みの詳細を、同市の担当者2人に聞いた。

[小田原市] ■人口:18万6,323人(令和5年11月1日現在) ■世帯数:8万4,521世帯(令和5年11月1日現在) ■予算規模:1,893億308万6,000円(令和5年度当初) ■面積:113.60km² ■概要:東京から約80kmの距離にある、神奈川県西地域の中心都市。戦国時代には後北条氏の城下町、江戸時代には東海道屈指の宿場町、明治期には政財界人や文化人たちの別荘・居住地としてそれぞれ栄え、発展してきた。黒潮の影響を受けた温暖な気候と適度な雨量が、生活の快適さだけでなく、梅やみかんをはじめとした多くの農産物の成長を支えている。
インタビュー
長島 秀実
小田原市
経済部 観光課 観光振興係 主査
長島 秀実ながしま ひでみ
インタビュー
内山 俊貴
小田原市
経済部 観光課 観光振興係 主事
内山 俊貴うちやま としき

複雑で多様な消費実態。従来は把握できなかった

―小田原市観光課がEBPMの実践に着手した経緯を教えてください。

長島 当市では令和4年度に、「美食のまち」のイメージを市内外に定着させて観光客数や観光消費額の増加を目指す「美食のまち小田原推進事業」を開始しました。「食」をめぐる施策では従来、産業振興の観点から個々の部署がブランディングやPRを行ってきました。それに対して本事業は、庁内の関連部署や事業者が一体となったうえで「食」を観光資源として捉え、観光客をターゲットに据え直す新しい取り組みです。そのため、まずは観光客の消費動向を改めて把握し、事業推進の手がかりにすること、つまりはEBPMの実践が重要になると考えました。

内山 そこから、施策立案の根拠となるデータの収集方法を検討したのですが、一般的なアンケート調査の場合、複雑で多様な消費実態を掴むのは難しいと感じました。

―それはなぜでしょう。

内山 取得できる情報が回答者の記憶や主観に依存し、必ずしも実情を正確に捉えられるとは言い切れないためです。消費動向を詳細に捉えようとして設問の多い調査票を作成しても、回答者の属性や消費金額、消費した時間帯などを、すべて正確に把握するのはほぼ不可能だと感じたのです。そこで、別の調査手法を調べるなかで、三井住友カード社の『Custella(カステラ)』というサービスを知りました。これは、クレジットカードの決済データをもとに人々の消費動向を分析するというもので、我々は分析の依頼を決めました。

「消費は市街地に集中」という、新たな課題も浮き彫りに

―そのサービスのどのような点を評価したのですか。

長島 まず、既存の決済データを活用するため、データ収集に新たな時間や手間をかけずに済む点です。それでいて、消費における実利用額などアンケート調査ではとうてい拾い切れない詳細かつ客観性の高いデータを収集できる点も評価しました。今回分析したのは、令和4年の1年間に当市を訪れた観光客の決済データです。その豊富なデータの一つひとつに「誰が、いつ、どこで、なにに、いくら消費したか」という情報が紐づけられているのですから、分析に用いるデータ項目の組み合わせは無限大と言えます。同様の分析は、従来の調査手法では決して実現できなかったと思っています。

―分析結果はいかがでしたか。

内山 「食」に特化し、消費者の数や消費金額を把握するために行った分析では、かまぼこと海鮮の消費割合が圧倒的に大きいことがわかりました。本市にはほかにも柑橘類や野菜、梅干しといった名産が豊富にあるので、今後は消費割合が低かった食材のアピールを強化し、「美食のまち」のイメージ定着につなげていく必要性を感じました。そのほか、消費が行われた場所の分析により、「観光客の周遊パターン」も把握できました。そこでは、1回の来訪で駅前の「市街地」エリアしか訪れていない人が全体の95%以上を占め、消費が集中している実態が明らかになりました。これは、周遊促進に注力してきた当市にはショッキングな結果ですが、今後より有効な改善策を模索するための重要な根拠として活用していきます。

長島 今回行った分析の結果からは、eスポーツの推進や観光PR動画の制作、二次交通の拡充など、複数の観光施策の意思決定に役立つ根拠も数多く得ることができました。今後は、これらの根拠を「観光振興による地域経済の好循環の実現」という最終ゴールに近づくための道標とし、新たな施策の立案や、施策の改善を行っていきます。

支援企業の視点
観光分野におけるEBPM②
客観性が高い決済データこそ、施策立案の重要な糸口になる

ここまでは、クレジットカードの決済データから観光客の消費実態を掴み、施策立案のヒントを得た小田原市の取り組みを紹介した。ここでは、その取り組みを支援した三井住友カードを取材。観光施策でEBPMを実践する際のポイントを、同社の齋藤氏に聞いた。

インタビュー
齋藤 正典
三井住友カード株式会社
マーケティング本部 データ戦略部 データビジネスグループ シニアマネージャー データアナリスト
齋藤 正典さいとう まさのり
昭和59年、広島県生まれ。平成22年に大学院を修了後、コールセンターの受託企業に入社。ECの運営会社でデータ分析などに携わった後、令和5年3月、三井住友カード株式会社に入社し、現職。おもに、企業や自治体に対するキャッシュレスデータを用いたデータ分析の提供に従事。

カンや経験に頼っては、期待通りの効果が得られない

―観光施策の立案をめぐる自治体の課題はなんでしょう。

 観光客の消費金額を増やし、確実に地域経済の活性化につなげていく道筋が見えていないことです。消費を促す有効な打ち手がわからず、カンや経験に頼って施策を推進せざるを得ないケースは少なくありません。その結果、期待通りの効果が得られず、予算や労力を十分に活かしきれないこともあるのです。そこで課題の解決策となりえるのが、統計や指標などの合理的な根拠に基づき、適切な施策立案を図るEBPMの実践です。

―EBPMを実践するに当たってのポイントはなんですか。

 1つ目は、偏りなく客観的に消費実態を捉えることです。つまり、消費者の主観や記憶、調査側の思い込みに左右されないデータを収集し、正確な実態把握をすることが重要となります。2つ目のポイントは、KPIを定め、それを追跡することです。根拠に基づいて施策を立案したからといって、必ずしも期待通りの効果が得られるとは限りません。その場合でも、失敗の要因を仮説立て、KPIの推移を注視しながら検証と改善を重ねていくことが大切なのです。

 当社では、自治体がこれらのポイントを押さえたEBPMを実践できるよう、クレジットカード決済データを分析するサービス『Custella(カステラ)』を提案しています。

―特徴を教えてください。

 客観性が高く豊富な決済データから、多様な分析を行える点です。具体的には、観光客の属性や時期・時間帯、場所・店舗などの項目をかけ合わせた分析が可能です。そこでは、過去の施策についても、さかのぼって効果を検証することができます。また、分析結果の多くは具体的な数値で表せるものなので、「どの指標をKPIに定めるか」という検討もしやすくなります。分析を定期的に行えば、施策効果の最大化に向けてPDCAサイクルを回せるようになるでしょう。

 サービス提供に際しては、アナリストがしっかりと介在し、きめ細かな支援を行えるのも特徴です。

課題やニーズに合わせた、カスタマイズも可能

―具体的に、どのような支援が可能ですか。

 たとえば小田原市には、「食」に特化した消費動向を把握するためのカスタマイズを提案しました。本来、「店舗」に関する決済データには「飲食店」などの業種や店舗名の情報しか残りませんが、小田原市のケースではそこへ「かまぼこ」や「海鮮」といった品種情報を独自にタグづけしたことで、「かまぼこを購入した人を年齢層別に把握する」といった細やかな分析を行えるようにしたのです。このほか、イベント期間の経済効果検証や、富裕層分析、インバウンドの国籍別分析などの実績もあり、自治体の課題やニーズに合わせた幅広い分析を提案できます。

―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 多様なソリューションの提供により、自治体の地域活性化を支援していきます。観光領域ではたとえば、公共交通機関でのタッチ決済により移動の利便性を高めるソリューションや、それによって蓄積した乗降データを活用して周遊の実態を捉える分析なども提案可能です。ぜひご連絡ください。

三井住友カード株式会社
三井住友カード株式会社
設立

昭和42年12月

資本金

340億3,000円(令和5年3月末日現在)

売上高

5,225億円(令和5年3月期)

従業員数

3,190人(令和5年7月末日現在)

事業内容

クレジットカード業務、デビットカード・プリペイドカード・その他決済業務、ローン業務、保証業務、その他付随業務

URL

https://www.smbc-card.com/

お問い合わせ先
custella_qa@smbc-card.com
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