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広島県三原市の取り組み
先進事例2023.08.08
図書館運営の民間委託①

民間の知恵で図書館運営を活性化し、新たな「にぎわい創出」の場に

[提供] シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
民間の知恵で図書館運営を活性化し、新たな「にぎわい創出」の場に
この記事の配信元
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社

※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

さまざまな場面で業務の多様化・複雑化が進むなかで、財政負担を抑えながら行政サービスを向上させるため、民間事業者への業務委託に活路を見出す自治体は増えている。そうした自治体の一つである三原市(広島県)では、図書館の運営業務を民間へ委託し、同業務の安定化・効率化を図るとともに、来館者の増加も実現したという。同市教育委員会の竹本氏と向井氏に、取り組みの内容とその効果について聞いた。

[三原市] ■人口:8万8,472人(令和5年6月30日現在) ■世帯数:4万3,286世帯(令和5年6月30日現在) ■予算規模:778億9,076万8,000円(令和5年度当初) ■面積:471.51km² ■概要:平成17年3月に、三原市、本郷町、久井町、大和町が合併して誕生。広島県の中央東部に位置し、中国・四国地方のほぼ中心にあり、同地方の各地域と連携する上で恵まれた地理的条件を有している。
インタビュー
竹本 康典
三原市
教育委員会 生涯学習課 課長補佐兼 学習施設係長
竹本 康典たけもと やすのり
インタビュー
向井 博哉
三原市
教育委員会 生涯学習課 学習施設係 主任
向井 博哉むかい ひろや

駅前再開発事業の目玉として、新設した図書館への期待

―三原市が図書館の運営業務を民間事業者に委託した経緯を教えてください。

竹本 当市では、長年の懸案であった、三原駅前の百貨店を中心とする商業施設の跡地を活用した再開発事業の中核として、令和2年7月に市立中央図書館を開設しています。この図書館開設には、駅前の人の流れを活性化する狙いがあったほか、生涯学習・市民活動への支援、課題解決型の図書館の実現、さらには市民の居場所や交流の場など、複合的な機能が求められていました。

向井 そこに向けては、市が求めていた20時までの開館時間の延長のほか、各種イベントの開催、居心地の良い空間づくりやレファレンスといった図書館サービスの充実を図る必要があります。こうした新たな試みをスピード感をもって実施していくためには、民間の柔軟性や時代に合ったノウハウを導入する必要があると感じていました。そこで、開館に先立つ平成31年4月から中央図書館を含めた市内4つの図書館の運営を民間事業者に委託することとし、プロポーザルの結果、シダックス大新東ヒューマンサービスへの委託を決めました。

―選定の決め手はなんだったのでしょう。

竹本 「三原市」を意識したイベント開催の提案のほか、商店街といった地元事業者との連携を通じた、駅前のにぎわい創出策といった運営計画の内容を評価しました。また、業務の効率化や人員配置の見直しを図ることで、運営コストを抑えながらそれらの施策を実現できるという点も評価しました。

向井 また、本の帯やPOPの製作教室、「子ども司書」養成講座など、子どもや学校を支援する体制をとるという提案内容に対する期待もありました。

趣向を凝らしたイベントが好評。来館者数は約33万人まで増加

―民間委託後の運営状況はいかがですか。

竹本 プロポーザルにおける提案内容の実現のほか、提案にはなかった読書記録通帳や「本の除菌ボックス」の設置など、新中央図書館の開館に合わせた新しいサービスが積極的に導入されました。また、図書館オリジナルグッズの販売や図書館のロゴマークの作成など、新たな取り組みも行われています。図書館運営が活性化し、市民にとってより便利で身近になっていると感じています。

向井 定期的に開かれる趣向を凝らしたイベントも好評で、地元音楽家によるコンサートや作家との交流会など、市民に「また来たい」と思ってもらえるような企画を運営してもらっています。それらの成果によって、年間来館者数は開館初年度の令和2年度と翌令和3年度が約24万人だったのに対し、令和4年度は約33万人にまで増加しました。将来的には年間40万人の達成を目標にしています。

―今後の図書館運営ビジョンを聞かせてください。

竹本 今年6月から、シダックス大新東ヒューマンサービスが新たに開発した図書館Webサービス『ネオリス』をいち早く導入しました。これは、利用者カードをスマホに取り込み、図書館業務のDXを推進するだけでなく、サービスの利便性を高め、活字離れが懸念される若い世代の来館を促す狙いもあります。

 教育だけでなく、まちづくりの観点からも多くの市民の期待を背負って生まれた図書館ですから、幅広い世代の方々に活用してもらいたいのです。そのためにも、今後も民間の活力を積極的に導入していきます。

支援企業の視点
図書館運営の民間委託②
行政支援経験を活かしたサービスで、図書館の魅力はもっと高められる

ここまで紹介した三原市(広島県)の事例では、図書館運営を民間事業者へ委託することで、運営の効率化と来館者の増加を同時に実現した。この取り組みを支援してきた民間事業者が、シダックス大新東ヒューマンサービスである。自治体は図書館運営の民間委託によって、どのような効果が得られるのか。同社社会サービス事業本部事業本部長の増田氏に聞いた。

インタビュー
増田 崇彦
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
社会サービス事業本部 事業本部長
増田 崇彦ますだ たかひこ
昭和49年、神奈川県生まれ。平成24年4月にシダックス大新東ヒューマンサービス株式会社に入社。事業本部セグメント統括・副本部長などを経て、令和3年10月より現職。

全国約100館の運営で築いた、高い専門性と運営ノウハウ

―図書館運営をめぐり、自治体にはどのような課題がありますか。

 大きく3つあるとみています。1つ目は、「人材の確保」です。各自治体は財政的な制約があるなか、会計年度任用職員の制度変更もあり人件費は逆に上がっていることから、必要な数の人材を確保することは年々難しくなっています。そのうえ、図書館の場合には「図書館司書」という有資格者を一定数確保しなければならないという条件がつきますので、より一層の難しさがあるといえます。

 2つ目は「業務の効率化」です。図書館は「紙の媒体」を扱う場所ということもあり、業務のDX推進のスピードが緩やかで、随所にこれから効率化が図れる業務が残存しています。そのことが、3つ目の課題である「利用者サービスの向上」の制約になってしまっています。利用者サービスの向上によって来館者はまだまだ増やせますし、自治体の貴重な資産である図書館は、もっと大きな役割を果たせると考えています。

―課題はどう解決できますか。

 図書館運営に関する高い専門性とノウハウをもった民間事業者へ運営を委託し、運営の改善を図る方法があります。たとえば当社では現在、全国約100の図書館を運営する業界有数の受託実績を有しており、そこで築いた高い専門性と運営ノウハウを提供し、図書館運営の改善に貢献しています。全国規模での事業基盤を背景に、有資格者を含めた人材の募集や教育に関する知見を施設間で共有し、ときにはほかの地域から人材を融通するといったサポートも可能で、安定した図書館運営を実現しています。当社では、図書館以外にもさまざまな公共施設の運営を受託してきた実績を活かし、業務の効率化のほか図書館以外の事業で利用者満足度の高かったイベントを図書館で開催することで「利用者サービスの向上」にも活かしています。

新開発の図書館アプリで、新しい利用者層を開拓

―詳しく教えてください。

 たとえば当社には、道の駅やレストラン、ホテル、公園といった観光施設運営を通じて培った接客マナーや礼遇・接遇の技術、公民館やコミュニティセンターの運営で得た施設運営コスト削減や業務合理化のノウハウなどがあります。そうした図書館運営だけでは得ることができない知見を提供できるのが当社の図書館運営事業の特徴です。また、学童保育事業の経験から、学校と連携した児童への「読み聞かせ会」や地元事業者と組んだ物販企画、地域住民を巻き込んだ各種イベントなども開催し、図書館の利用促進を働きかけています。さらに当社では、DXによる図書館業務の効率化と利用者サービスの向上を図る新たなツールとして、図書館アプリ『ネオリス』を開発し、提供を開始しています。

―どのようなアプリですか。

 従来の利用者カードをスマホに取り込み電子化するだけでなく、貸し出し履歴をまとめた「読書記録」や返却時期を知らせる「リマインド機能」、書籍への「読者コメント」といった多様な機能を実装した図書館アプリです。今後も利用者の声をもとに新たな機能を随時追加していく予定で、活字離れが進んでいるといわれる若い世代に図書館利用を身近に感じてもらうと同時に、個人情報を除いた年齢、性別、地域などの利用者の属性情報を図書館のマーケティング施策にも活かしていければと考えています。これらの施策により、図書館本来の魅力を引き出し、持続可能な図書館運営や来館者の増加に貢献していきます。ぜひ、お問い合わせください。

シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
設立

昭和61年11月

資本金

1億円

売上高

431億6,971万1,000円(令和5年3月期)

従業員数

2万0,519人(令和5年3月現在)

事業内容

社会サービス事業、地域活性化事業、学童保育事業、学校給食事業

URL

https://www.shidax.co.jp/corporate/group/shidax-daishinto-human-service/

お問い合わせ先
03-6731-9111(平日 9:00〜18:00、年末年始を除く)
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