

東京都府中市×民間企業の取り組み
道路管理の効率化
不足する「熟練職員」に代わるAIが、道路の不具合を車載動画から検知
国際航業株式会社 インフラマネジメント事業部 PFI戦略部 部長 花村 嗣信
※下記は自治体通信 Vol.37(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
住民が日々使用する道路を安全な状態に維持することは、自治体の重要なインフラ管理業務のひとつだ。しかし、限られたマンパワーで広大な道路の状況をいかに把握するかは、多くの自治体で課題となっている。こうしたなか、府中市(東京都)では、車載カメラで路面の不具合を把握する実証実験を行った。取り組みの詳細や成果について、府中市の楠本氏と、同市の実証実験を支援している国際航業の花村氏に聞いた。


老朽化したインフラを、限りある財源で維持する
―府中市では、インフラ管理をめぐりどのような取り組みを行っていますか。
楠本 道路を含む各種インフラの維持管理を民間へ委託する「道路等包括管理事業」を推進しています。高度成長期に整備したインフラが老朽化するなか、当市では限りある財源でいかにインフラを維持するかを重要課題と捉えていました。そこで、平成23年度、国際航業の協力を得て「道路施設等包括管理検討調査」を実施。道路施設等の包括管理委託を目指す取り組みとして、国内で初めて国の「先導的官民連携支援事業」にも採択されました。平成26年度には、市内の一部地域を対象に道路等包括管理事業を開始。令和3年度からは対象地域を市内全域に広げ、維持管理の効率化を目的とした実証実験も行いました。
―どういった実証実験を行ったのですか。
楠本 先導的官民連携支援事業のなかで、人工衛星から照射されるレーダを用いて道路の経年変位を計測するものや、車両に設置した加速度センサから路面の凹凸を検知するものなど、複数の企業と連携してさまざまな技術を活用する実証実験を行いました。なかでも、国際航業の「道路巡回システム」を用いた実証実験は、職員の負担を減らしながらも、道路の不具合を高い精度で検知できるという有効性を確認できました。
主要市道の不具合状況を、わずか1ヵ月で把握
―どのように道路の不具合を検知するのでしょう。
花村 まず、車両にカメラを搭載し、道路の巡回時に路面の様子を撮影します。その映像を「道路巡回システム」に取り入れることで、当社が開発した「舗装AI」がポットホール*1や道路舗装の剥がれといった道路の不具合を検知するのです。当社は30年以上にわたり、数多くの路面性状調査を手がけており、「舗装AI」では、当社技術社員の豊富な実績と知見にもとづく調査結果を教師データ*2として使用しています。そのため、熟練職員と同等の高い精度で道路の不具合を検知できるのが特徴です。
―実証実験ではどういった成果を得られましたか。
楠本 主要市道における路面上の不具合を、わずか1ヵ月で把握できました。不具合の発生箇所は地図上にプロットされ、レポートとして映像とともにシステムから即日提供されるため、路面状況の調査は非常に迅速に進みました。精度の高いデータをすばやく網羅的に得られることで、道路の予防保全に早期に着手でき、経費の削減と行政サービスの向上にもつながると期待しています。
花村 「道路巡回システム」は、カメラの設置角度や、AIに学習させる教師データを変えることで、道路付属物の点検にも活用できます。ほかにも、同システムで取得したデータをGISに統合して道路の補修計画をシミュレーションするといった活用も可能です。今後も、府中市におけるDXの推進や道路管理の効率化を支援すると同時に、そこで得られた成果をほかの多くの自治体にも広げていきたいですね。
設立 | 昭和22年9月 |
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資本金 | 67億2,900万円 |
売上高 | 384億4,700万円(令和3年3月期) |
従業員数 | 1,942人(令和3年3月末) |
事業内容 | 公共コンサルタント事業、インフラマネジメント事業、防災環境事業、LBSセンシング事業など |
URL | https://www.kkc.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 042-307-7240 (平日9:00〜17:00) |
お問い合わせメールアドレス | kkc_pfi@kk-grp.jp |
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