自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 先進事例
  3. ICTを活用した、生活習慣病対策はここまで来た
先進事例2020.05.28

ICTを活用した、生活習慣病対策はここまで来た

[提供] 日本生命保険相互会社
ICTを活用した、生活習慣病対策はここまで来た
この記事の配信元
日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社

鳥取県の取り組み

住民の健康づくり

ICTを活用した、生活習慣病対策はここまで来た

鳥取県 福祉保健部健康医療局 健康政策課長 丸山 真治
[提供] 日本生命保険相互会社

※下記は自治体通信 Vol.24(2020年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


現在、政府が重要政策のひとつとして掲げる「健康寿命の延伸」。この実現に向けて、自治体でも有効な施策が求められている。そうしたなか、民間企業と共同で、いち早く県民の生活習慣病の予防を狙いとした取り組みを開始したのが、鳥取県だ。その取り組みの内容や効果などについて、同県福祉保健部健康政策課長の丸山氏に話を聞いた。

鳥取県データ
人口:55万2,209人(令和2年4月1日現在)世帯数:22万271世帯(令和2年4月1日現在)予算規模:3,432億円(令和2年度当初)面積:3,507km²概要:中国地方の北東部に位置し、東西約120km、南北約20~50kmと、東西にやや細長い県。北は日本海に面し、鳥取砂丘をはじめとする白砂青松の海岸線が続き、南には中国地方の最高峰・大山をはじめ、中国山地の山々が連なっている。山地の多い地形ながら、三つの河川の流域に平野が形成され、それぞれ鳥取市、倉吉市、米子市が流域の中心都市として発達している。
鳥取県
福祉保健部健康医療局 健康政策課長
丸山 真治まるやま しんじ

「働き盛り世代」の、健康改善が大きな課題

―県民の健康づくりに向けて、鳥取県ではこれまでどのような施策を実施してきましたか。

 平成30年から6年間の計画として、「鳥取県健康づくり文化創造プラン(第三次)」を策定しています。ここでは大きく2つの対策が主眼に置かれています。ひとつは、地域や職域における健康づくりの基盤整備、もうひとつは、死亡率が全国的に見て高いがん対策や生活習慣病予防です。当県は車社会が浸透し、「歩かない県」として知られている現状があります。こうした生活習慣を改善し、発生予防、早期発見、早期治療を進めてきました。なかでも、当県の特徴として、40代から60代の「働き盛り世代」の健康状態が相対的に悪く、ここの改善が大きな課題でした。

―特別な対策は実行しましたか。

 はい。たとえば、がん検診では、市町村が行う土日の検診や、検体を自宅で採取できる検査キットの配布への助成など、忙しい働き盛り世代の検診受診率を向上させる施策を行ってきました。その結果、検診受診率は近年着実に向上しています。一方、生活習慣病に関しては、平成29年11月に「包括連携協定」を締結した日本生命からの提案を受け、「糖尿病予防プログラム」に平成31年1月から試行的に取り組むこととしました。

―どのようなプログラムですか。

 「糖尿病の予備群」を対象に、最新のICT機器や医療機器を活用して、3ヵ月にわたってバイタルデータのセルフモニタリングと生活習慣改善指導を行い、糖尿病の発症を予防するプログラムです。モニタリングでは、血糖を24時間リアルタイムで測定できる最新の機器を用い、プログラム期間の最初と最後の各2週間を常時測定。そのうえで、期間中を通じて体重や血圧、歩数による運動量も記録し、これらのデータをもとに保健師による遠隔保健指導を受けるというものです。

ICTの活用効果で、高く維持できた継続率

―導入の決め手はなんでしたか。

 ICT機器やウェアラブル端末を活用して、参加者の負担や制約を取り除いている点が、忙しい働き盛り世代に受け入れられやすいと判断したからです。たとえば、プログラム期間中、2週間に一度実施される保健指導は、電話やメールで行われます。場所や時間に縛られることなく、専門家のアドバイスが受けられるのです。また、ウェアラブル端末を装着し、血糖の変動をリアルタイムで表示する手法も画期的で、測定データが明確な根拠となり、納得感を伴って参加者の行動変容を促すと判断しました。そこで効果を検証するため、県庁職員のほか国保連、協会けんぽの職員19人で参加しました。

―導入効果を聞かせてください。

 短期間ではありましたが、さまざまな測定数値が改善されました。たとえば、体重は参加者の68%が減少したほか、血圧では79%、歩数も63%の参加者が改善されたという結果が出ています。

 もっとも良かったのは、参加者の継続率が高く維持できたことです。これはICTの活用効果だと思います。私自身も参加したのですが、遠隔面談なので長く時間を奪われることなく、定期的に保健師の適切なアドバイスを受けられるのも、良かったですね。専門家に「見られている」感覚が、参加者の背中を押してくれるんです。

―今後、どのように県民の健康づくりを進めていきますか。

 今回の試験導入で効果が実感できたので、今後はさらに参加者の枠を広げていきたいと考えています。早速、複数の県内民間企業から参加者を募り、このほど新たにプログラムをスタートさせたところです。この枠組みを広く活用し、県内で課題となっている生活習慣病の改善、特定健診や特定保健指導の実施率の向上につなげていきたいですね。


研究者の視点

職員の健康管理

約8割の参加者が改善。医学的に意義あるプログラム

日本生命病院 糖尿病・内分泌センター長 総合内科担当部長 予防医学センター予防医療科 担当部長 住谷 哲
[提供] 日本生命保険相互会社

鳥取県が導入し、その効果を実感した「糖尿病予防プログラム」。このプログラムの開発を医学的な知見をもって支援し、運営にも携わっているのが、日本生命病院だ。このプログラムにはどのような効果が期待できるのか。同病院で糖尿病・内分泌センター長を務める住谷氏に聞いた。

日本生命病院
糖尿病・内分泌センター長 総合内科担当部長 予防医学センター予防医療科 担当部長
住谷 哲すみたに さとる

9割以上が継続し、約8割で血糖管理が改善

―本プログラムが多くの自治体でトライアル実施されているようですが、成果はいかがですか。

 このプログラムは自治体職員を中心に広く紹介され、今年の3月末時点で約1,000人の方々に参加していただく予定となっております。プログラムを終了された方の結果を見ますと、(下図参照)約8割に血糖の指標である推定A1cの数値が低下したという結果が出ています。今後1,000人のデータが集まると、統計学的な精度は上がり、参加者の属性と血糖管理の相関関係など、新たな知見が生まれる可能性もあり、医学的にも意義のあるプログラムといえます。また、このような介入研究(※)の成果を測定するうえで重要な要素となる継続率については、9割を超えています。これは、当初の想定を上回る結果といえます。

※介入研究:研究目的で、人の健康に影響を与える要因の有無や程度を制御する行為

―プログラムが効果を発揮している要因はどこにありますか。

 ICT機器を駆使することで、一定期間にわたり特定の保健師から適切な保健指導を受けられる仕組みにあります。従来の特定保健指導がなかなか成果をあげられない理由は、継続性が保てないからです。このプログラムでは、24時間の血糖変化を2週間にわたってモニタリングできる測定器のほか、体重や血圧の測定値もスマホで簡単に収集し、保健師に送信できる仕組みを取り入れ、生活改善の心理的・物理的ハードルを大きく下げることができました。

―3ヵ月という期間の設定にはどのような意味があるのですか。

 HbA1cの有意な変化量を計測できる期間として、3ヵ月程度の時間が必要なのです。さらに、ヒトが行動を習慣化し始めるために必要な時間としても、3ヵ月は最低限必要な設定となっています。

早期の対策で、発症や進行は止められる

―健康増進に関心がある自治体職員にアドバイスをお願いします。

 現在、糖尿病患者は全国で約1,000万人とされますが、じつはそれと同数以上の予備群がいると推定されています。これら予備群が糖尿病へと進行してしまう原因の多くが、病気に対する認識不足。自覚症状がないため、つい予防対策や治療を後回しにしてしまうのです。しかし、深刻な合併症を引き起こす恐ろしい病気です。一方で、糖尿病は慢性疾患ですから、一定の段階を踏んで悪化していくもの。早期の対策で発症や進行を止めることはできます。予防が早いほど労力も少なくて済む。一日も早い予防対策をお勧めします。

 この「糖尿病予防プログラム」は、ネットワーク環境さえあれば、どこでも保健師との面談が実施できることが特徴です。遠隔でも顔を見ながら話すことができるため、人間関係を構築したうえで、安心して指導を受けていただくことができます。ICTを活用し、正確なバイタルデータを確認できるので、これまで以上に効果的な保健指導を実施することができています。

住谷 哲 (すみたに さとる) プロフィール
昭和35年、大阪府生まれ。昭和61年、大阪大学医学部卒業。平成6年、カナダ・トロント大学留学。平成19年に日生病院予防医学センター副部長に就任。平成31年より現職。

支援企業の視点

血糖の可視化が、参加者の行動変容を促す

日本生命保険相互会社
営業企画部 ヘルスケア開発室 ヘルスケア開発担当部長 須永 康資
営業企画部 ヘルスケア開発室 ヘルスケア開発担当課長 西野 菜美子
[提供] 日本生命保険相互会社

日本生命保険相互会社
営業企画部 ヘルスケア開発室 ヘルスケア開発担当部長
須永 康資すなが やすし
日本生命保険相互会社
営業企画部 ヘルスケア開発室 ヘルスケア開発担当課長
西野 菜美子にしの なみこ

―「糖尿病予防プログラム」は自治体に浸透していますか。

須永 はい。これまで25団体、約1,000人に参加いただきました。国の政策でも健康増進は重要政策に掲げられており、自治体の関心度は高まっています。ほかの自治体での導入の動きやその成果を聞き、プログラムの導入に向けて、予算措置を講ずる動きも出てきています。

西野 自治体のなかには、鳥取県のように職員のみならず、地域住民にも対象を広げて、導入する自治体も増えていますね。

―多くの自治体から評価されている理由はなんでしょう。

西野 ICTの活用により、場所や時間に制限されず、保健師の指導を受けられる点です。近くに医療機関がなく保健指導を受けるのが難しい、保健師が足りないといった地域は多いです。そうした環境の制約を受けずに、適切な保健指導を受けられる仕組みはとても評価されています。また使用する機器では今まで見えなかった血糖の変化を可視化し、参加者の意識変革や行動変容を促す効果もあり、参加者のみなさんからも大変好評です。

―今後、どのように自治体を支援していきますか。

須永 包括連携協定を結ぶ自治体を中心に今後、自治体職員のみならず、地域の企業や団体のみなさんにもこのプログラムを積極的に提案していきます。それによって、地域の健康づくり、ひいては地域の活性化に貢献していきたいと考えています。

須永 康資 (すなが やすし) プロフィール
群馬県生まれ。平成16年、日本生命保険相互会社に入社。平成28年から現職。
西野 菜美子 (にしの なみこ) プロフィール
石川県生まれ。平成21年、日本生命保険相互会社に入社。平成30年から現職。
日本生命保険相互会社
創立 明治22年7月
従業員数 7万3,260人(うち内勤職員1万9,392人)(平成30年度)
事業内容 生命保険業、付随業務・その他の業務
URL https://www.nissay.co.jp/
お問い合わせ電話番号 0120-201-021(月~金 9:00~18:00、 土 9:00~17:00 祝日・12/31~1/3を除く)
この記事で支援企業が提供している
ソリューションの資料をダウンロードする
\ たった1分で完了! /
 資料ダウンロードフォーム
日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社
電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー