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先進事例2020.10.11

自治体×RPAの効果を最大化させるのは「導入後」を見据えた運用計画【自治体(別府市)の取組事例】

自治体×RPAの効果を最大化させるのは「導入後」を見据えた運用計画【自治体(別府市)の取組事例】

大分県別府市の取り組み

RPAによる業務改革

自治体×RPAの効果を最大化させるのは「導入後」を見据えた運用計画【自治体(別府市)の取組事例】

別府市長 長野 恭紘

※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


別府市(大分県)は、従来の実証実験で浮き彫りになったRPA導入への課題を踏まえ、特徴ある試行を実践している。行政実務における積極的なIT活用を推進してきた同市では、その経験からRPAの本格導入には欠かせない運用の手法を検証したという。ここでは、市長の長野氏にRPA試行の狙いや導入への期待を聞いた。

別府市データ
人口:11万7,033人(令和元年7月31日現在) 世帯数:6万2,250世帯(令和元年7月31日現在) 予算規模:1,028億2,100万円(令和元年度当初) 面積:125.34km² 概要:九州の北東部、瀬戸内海に面した大分県の東海岸のほぼ中央に位置する。古くから日本を代表する温泉地として賑わい、歴史と文化あふれる国際観光温泉文化都市。大地から立ちのぼる「湯けむり」は別府を象徴する風景として市民や観光客から親しまれている。市内には、別府八湯と呼ばれる8つの温泉エリアが点在し、毎分8万7,000ℓを超える温泉は、日本一の湧出量と源泉数を誇る。
別府市
別府市長
長野 恭紘ながの やすひろ

■全国の実証実験の取組まとめはコチラ

試行でこだわった「シナリオの内製化」

―別府市では、これまでもIT活用の推進を打ち出してきました。

 はい。当市も多くの自治体の例にもれず、業務の複雑化・多様化を前に職員の負担増大には強い危機感をもってきました。また、当市の主要な産業である観光業をさらに促進するうえでも、デジタルマーケティングのようなIT活用は必要だとの課題も感じてきました。そこで当市では、「デジタルファースト宣言」を行い、全庁的にIT活用の積極的な推進を打ち出していた経緯があります。

―宣言後、職員の意識に変化は見られていますか。

 まだまだこれからですね。依然として役所には縦割り意識が根強く残っており、目の前の業務で効果を実感できなければ、個々の職員がIT活用の意義に納得感をえるのは難しいです。その意味では、昨年11月から6ヵ月間にわたって行ったRPAの試行には大きな期待を寄せていたのです。

RPAの試行とは、どのような内容だったのでしょう。

 入力・点検作業といった定型業務が多い保険年金課から14業務、情報推進課から1業務を選定し、RPAの導入効果を検証しました。ゆくゆくは全庁展開を目指しますが、まずはRPA導入のインパクトを最大化させるために、もっとも大きな効果が期待できそうな部署の業務を選定し、集中的に検証する方針をとりました。

 それともうひとつこだわった方針が、「シナリオ(※)の内製化」でした。

※シナリオ:実行してほしい作業のワークフローを記述したRPAへの指示書

―シナリオの内製化にこだわった理由はなんですか。

 導入後の本格運用では、職員が日常でいかに使いこなせるかが、RPA導入の効果を最大化させるカギになると考えたからです。いまでも庁内には職員間にITリテラシー格差があります。そのため、たとえ業務の効率化が期待できたとしても、一部の職員しか使いこなせないソフトウェアは、「使える人材が不在時の不具合が怖い」「人事異動で業務の継続性が困難になる恐れがある」といった理由から、導入すべきではないという議論も起こっているようです。

 しかし、本来は業務効率化が期待できるならば導入すべきであり、ITリテラシーの格差こそが問題なのだと考えました。RPAの導入でも同様で、シナリオを庁内で内製化できる体制が、現場での運用のカギになると考えたのです。実際に、試行期間は情報推進課の職員が、15業務すべてのシナリオを作成しています。


〈 別府市の試行の報告書 〉
https://www.city.beppu.oita.jp/sisei/kakusyukeikaku/rpa.html

85.2%の時間削減効果

―検証結果はいかがでしたか。

 15業務全体でみると、従来年間1,265時間を要していた作業時間がわずか187時間へと、じつに85.2%の時間削減効果がえられました。非常にインパクトのある結果であり、庁内でRPAに対する関心を喚起してくれました。

 また、シナリオ内製化にも、一定のめどをつけることができました。シナリオを作成した職員によると、試行の際に使ったRPAツールは、ビジュアル的にもわかりやすいユーザーインターフェースを備え、十分に使いこなせたと。導入実績が多く、広いユーザーコミュニティが形成されているため、シナリオ内製化の際に生じるあらゆる疑問を相談・解決できる場があることも心強かったようです。

―今後、どのようにRPAを市政に活かしていきますか。

 今年5月から本格導入を開始しており、職員課と市民税課にも導入し、成功事例の輪を広げていくとともに、シナリオ作成を担う人材の育成にも力を入れていきます。

 RPAの導入で職員の日常に余裕が生まれれば、従来の組織の枠を超え、さまざまな業務改革のアイデアが生まれてくるはず。一人ひとりが「デジタルファースト宣言をした自治体の職員」という自覚をもって、テクノロジーの活用を市民サービスの向上につなげる意識をもつ。そうした組織風土づくりに、RPAが一役買ってくれるものと期待しています。

長野 恭紘 (ながの やすひろ) プロフィール
昭和50年、大分県生まれ。日本文理大学商経学部を卒業後、衆議院議員秘書を経て、平成15年に別府市議会議員に就任。市議を2期務める。平成27年に別府市長に就任し、現在2期目。
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