主権者教育 自治体事例|現実の社会課題をテーマに設定した高校生との意見交換、将来の町を担う人材育成につなげる「ふるさと探究高校生議会」

神戸市会、山田町議会の主権者教育 自治体事例
主権者教育は、国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくものとして、子どもたちが地域の課題について議論する中で民主主義や地方自治について学ぶ機会にもなっています。
こうした中、議会や議員の重要性が改めて認識されるよう令和5年4月に地方自治法が改正され、地方議会の役割及び議員の職務等が明確化されました。
この改正を踏まえ、全国都道府県議会議長会・全国市議会議長会・全国町村議会議長会では、議会への関心・理解を高め、多様な人材の参画を促すために、主権者教育を国民運動として進めており、そのひとつとして、議会が主体的に行う主権者教育の取り組みをまとめた事例集「地方議会が進める主権者教育事例集」を発行しています。
ここでは主権者教育の自治体事例を同事例集より抜粋して紹介します。今回は、神戸市会、山田町議会の主権者教育自治体事例です。
現実の社会課題をテーマに設定した高校生との意見交換|神戸市会
兵庫県 神戸市会は、正副議長と会派代表議員が市内の高校に出向き、現実の社会課題について高校生とディスカッションする意見交換会を実施しています。クラスごとで実施された生徒間のディスカッションには議員も参加し、意見交換を行っています。
地方議会では地域課題や議会に対する住民の無関心や議員のなり手不足などの課題に直面しており、神戸市会では議会活動の理解促進を図るため市会広報委員会を設置し、さまざまな広報活動を検討していました。その中で市内の教育機関に対し、主権者教育の一環として学校による議会見学などについて、これまで以上に広報をするなど、教育活動における市会との連携を呼びかけることとなりました。
主権者教育の具体的な取り組みを検討する中で、学校や教育委員会においては選挙年齢の引き下げや科目「公共」の創設などにより教育現場において主権者教育の具体的な展開が求められていたことから、兵庫県立神戸甲北高等学校と具体的な教育実践に着手することで合意しました。
開催内容(令和5年度の例、抜粋)
- 社会課題提示:「神戸市の子育て支援施策はどこに重点を置くべきか」
- 会派意見紹介
- 課題に対する会派代表への質問
- 提示された社会課題について、各教室で生徒間でディスカッション
- 参加議員が各教室を訪問し、生徒と意見交換

神戸市会が実施した高校生徒との意見交換会の模様
授業内容の工夫点・留意点
地方議会がどのようなものか知らない生徒がほとんどなので、まずは、議員を知ってもらう機会を設定しました。社会課題の議論を行う前に、議員に対する質問タイムを設け、議員になった理由や、議員の日常生活や趣味に関する内容の質問があり、議員をより身近に感じてもらえました。
ディスカッションテーマについては、現実の社会課題を設定することとしました。課題が難しいのではないかとの意見もありましたが、リアルな社会課題について議会でどのような議論が行われているのかを知ることで、議会制度に対する理解が深まることを期待しました。
地域の社会課題を研究する生徒のグループからも、ディスカッションテーマについての意見を発表。参加生徒数が多いため、代表生徒が発言することにより、社会課題を我が事として、より身近なものにとらえてもらえるよう工夫しました。
また、当日出席した議員に対しアンケートを実施し、次年度開催に向け学校とも共有しました。
取り組みの効果
参加した議員からは「多くの生徒と意見交換ができ有意義であった」との感想がありました。学校からも「多くの議員に参加していただき、生徒も議会をリアルに感じることができた」との意見をいただきました。
クラスでの議論への議員参加は、意見交換と交流が進み、効果的でした。
また、神戸甲北高校の取り組み概要を市内の全高等学校に参考送付しました。

将来の町を担う人材育成につなげる「ふるさと探究高校生議会」|山田町議会
岩手県 山田町議会は、高校の「ふるさと探究」事業の集大成として、将来の町を担う人材育成につなげる高校生議会を町全体で協力実施しています。
生徒は地域の課題を「考える」「調べる」「対話する」「見る」という段階的な過程を丁寧に踏みながら、各グループで検討を行った上で、高校生議会において解決策を質問・提案します。
町内唯一の高校である山田高校の求めに応じて山田町および山田町議会がその趣旨に賛同し平成31年から毎年1回実施。平成27年の公職選挙法の改正により、選挙権年齢が引き下げられたこともあり、政治的事象を扱うことの重要性が一層増しており、主権者としての社会参加意識を高め、震災からの地域の復興と発展に自らの意見を表明する機会を実現するため、議会・教育委員会・総務課が協力しています。
高校生議会当日の日程(令和4年の例、抜粋)
一般質問(次の8つのグループごとに議員役1名及び補佐役1名がそれぞれ質問。カッコ内は質問内容)
①子ども・健康(町民の塩分摂取量が高いため減塩に向けた今後の取組は)
②教育・文化(山田高校にも給食を提供しては)
③防災・減災(小中高校と町で避難訓練を開催しては)
④災害伝承「碑の記憶」(災害の教訓を刻んだ石碑の周知を)
⑤福祉(なかよし公園のバリアフリー化を)
⑥税務・人口減少(ふるさと納税の返礼品で山田の魅力発信を)
⑦農林・水産・観光(養殖が始まっているトラウトサーモンのブランド化は)
⑧都市計画(7つある廃校舎を体験型施設にしては)

山田町議会が実施している「ふるさと探究高校生議会」の様子
高校生議会に向けた事前の学び
生徒は、次のプロセスを経て、高校生議会に臨みます。
考える
生徒は各グループに分かれ、町の課題を見出し、その解決に向けた過程を考えます。
調べる
グループごとに設定したテーマのもと、校外調査でインタビューやアンケート、実施検証を行います。
対話する
山田町職員とのワークショップで課題の解決策を探ります。
見る
山田町議会を傍聴し、議員と執行部との質疑応答などを見て、議会の仕組みを学びます。
工夫点・留意点
円滑な運営を図る
高校生議会では生徒が理解しやすい言葉、内容を心がけ発言しています。
また、生徒と執行部との質疑応答に際し、正確な答弁ができるよう参加する生徒から事前に発言要旨を提出してもらうとともに、再質問がスムーズにできるよう生徒に答弁書を事前配布しています。
取り組みの効果
高校生議会で提案のあった一部低地部の利活用が実際に実現するなど成果が上がっています。町の現状・課題に触れることで、将来の議員候補のみならず役場職員のなり手確保にも期待されています。



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