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【自治体通信Onlineレポート 2019/03/13】自治体×RPA

実証実験で見えた「自治体×RPA」の未来

総務省が平成30年度に初めて自治体へのRPA(Robotic Process Automation)導入支援を予算化した。実際、この1~2年、全庁導入を前提としたRPAの実証実験を行う自治体が急増している。各地で行われている実証実験事例の内容や背景、RPAがもたらす“自治体の未来”などをレポートした。
【目次】
■ RPAでなにができるのか
■ 実際の効果~奈良市の実証実験結果
■ 2040年問題とスマート自治体

RPAでなにができるのか

RPAとはソフトウェア型のロボットが代行・自動化する概念で「定型業務やデスクワークの自動化」と説明されることが多い。民間企業では労働人口減少や生産性向上を背景とした働き方改革が本格的に議論され始めた2016年頃から導入の動きが始まり、データ入力などの定型業務が多い企業を中心にRPA導入ブームが起きている。

実際“RPAができること”とはなにか。ある民間企業の事例をもとにをその概略を解説してみよう。

この企業がRPAで自動化したのは、インターネット検索を行い、所定フォーマットに情報を蓄積する大量の定型業務。従来は社外スタッフに発注し、それでも人手が足りなければ社員が残業するなどして対応していた。

効果は導入後、すぐに現れた。RPA導入により、ボタンひとつで「極端に言うと一瞬で」(同社社員)定型業務を終了させることができるようになったからだ。

この会社の社員はRPAの効果について、次のように話す。

「ランチに行ってる間にRPAが仕事を終わらせてくれる。おかげで単純作業から解放され、クライアントへの提案資料をつくるなど“知識労働”に時間をかけられるようになった。社外委託コストも大幅削減した」

やや技術的な解説になるが、RPAが得意とする定型業務の自動化はエクセルのマクロ処理と同じではある。大きく異なるのは、マクロ処理では難しくコストもかかるシステムやソフトをまたいだ処理が、RPAでは簡単かつ低コストでできる点にある。

自治体業務に即してイメージを描くと、たとえば、一定年齢以上の住民にイベントの案内状を送付するケース。この業務の流れは、まず該当する年齢の住民のデータを抽出し、名前や住所などの必要情報だけをエクセルで一覧化。案内文などの印刷用差し込みデータを作成して、宛名ラベルを作成するといったものになるだろう。それぞれの個別業務はマクロ処理できるものの、全体としては自動化できないため、手間も時間もかかる。しかし、こうしたマクロ処理が難しいソフトやシステムをまたいだ一連の業務も、RPAならすべて自動化できるのだ。

RPAとAIの違いについても少し触れよう。このふたつは混同されることも少なくないが、AIは学習機能によって業務プロセスを“指示”しなくても自己完結させることができる。一方、RPAは業務プロセスを明確にしてあらかじめ入力する必要がある。RPAの導入・運用にあたっては前準備として「業務の標準化」が欠かせないのは、そのためだ。(下図の「RPAで進化する自治体業務の例」を参照)

出所:総務省、自治体通信Online編集部が加工(記事末「資料出所一覧」の①を参照)

後述するが、RPA導入に向けて業務の標準化を行う副次的メリットは大きい。標準化により庁内業務や自治体間業務が飛躍的に効率化するからだ。自治体職員の人材高度化、AIによるさらなる高度な自動化の準備にもつながる。

参照記事:「住民サービスを向上させたい」職員の想いをRPAなら実現できる
https://www.jt-tsushin.jp/interview/jt15_uipath/3/

実際の効果~奈良市の実証実験結果

自治体の近未来には、高齢者増加にともなう業務量の増大、そのなかでの財政事情などを背景にした職員数減少という“壁”が待ち受けている。確実に訪れる重い課題に対応するため、国は予算化するなどして全国の自治体へのRPA導入を支援しており、全庁導入を前提とした実証実験に踏み出す自治体が、ここ1~2年で増加している。

そのひとつ、奈良市役所(奈良県)の実証実験の概要を紹介しよう。同市の仲井げん市長は「(RPAの導入による)約80%の時間短縮を実現した業務もあった」と評価している。(下図の「奈良市役所が取り組んだRPAによる業務の効率化のイメージ」を参照)

出所:奈良市役所(記事末「資料出所一覧」の②を参照)

奈良市役所では平成30年5月からの約2ヵ月にわたってRPAの庁内業務の効率化に対する実証実験をした。目的は、同市が進めている時間外勤務縮減などの働き方改革や「よりコンパクトな市役所」実現のための職員数の適正化などに向けて、その有効性を検証するため。

RPAが対応可能な庁内業務において作業の効率性や正確性などの効果を検証し、そこで得た結果やノウハウを基に本格的な導入に向けた検討を進めることにしている。共同実施事業者は株式会社チェンジ(RPAソフト「UiPath(ユーアイパス)」の日本販売代理店)とUiPath株式会社(RPAソフト「UiPath」のベンダー)の2社。

仲井市長は「(実証実験の)結果は驚くべきもので、職員に与えたインパクトも大きかった。業務の標準化など副次効果の大きさも実感した。当市ではRPAを早期に本格導入し、経営効率を意識した行政運営を進めていきたい」と総括している。(下図の「奈良市が期待するRPAの導入効果」を参照)

出所:自治体通信Onlineより抜粋して加工(記事末「資料出所一覧」の③を参照)

また、同市ではまずは身近な「定型業務など単純作業の自動化」といったスモールスタートから始め、技術の進化に合せたICT化を進め「特定業務のスペシャリストや高度な専門知識を要するアドバイザーの補助業務の自動化」を図るという意欲的な考えを示している。

奈良市の実証実験のくわしい内容については自治体通信Onlineの特集「RPAによる『生産性革命』」を参照していただきたい。同特集では、加賀市、茨城県のRPAの実証実験についてもレポートしている。

参照記事:RPAによる「生産性革命」
https://www.jt-tsushin.jp/interview/jt15_uipath/

2040年問題とスマート自治体

RPAは自治体にさまざまなメリットをもたらし、住民の利便性向上などの実現が期待される新しいテクノロジーだと言えそうだ。半面、自治体をとりまく近未来の環境や諸条件を考えた場合、必要不可欠な“自治体ツール”にもなりそうだ。

「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」を研究テーマとした総務大臣主催の「自治体戦略2040構想研究会」(以下、研究会)は平成30年4月(第一次)と7月(第二次)に公開した報告のなかで、いわゆる“2040年問題”を見据えた自治体戦略のグランドデザインを提示。そのなかでRPAは将来の「スマート自治体」を実現するための基礎的なインフラ技術であると指摘した。

研究会は、自治体にとっての2040年問題は「内政上の危機」(研究会報告より)であるという衝撃的な指摘をした。現在の年齢別地方公務員数をみると団塊ジュニア世代が相対的に多く、山となっているが、2040年頃には団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となる一方、その頃に20歳代前半となる者の数が団塊ジュニア世代の半分程度にとどまるからだ。

端的に言えば、自治体の職員数が現状の半分程度に縮小する一方で65歳以上の団塊ジュニアの高齢者が急増し、「人数半分、業務倍増」という状況が到来するのだ。

こうした事態に備えるため、研究会は「自治体の経営資源が制約される中、法令に基づく公共サービスを的確に実施するためには破壊的技術(AIやロボティクス、ブロックチェーンなど)を積極的に活用して、自動化・省力化を図り、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制の構築が欠かせない」(研究会報告より)と提言する。

研究会は、これらを実現した自治体を「スマート自治体」と呼び、スマート自治体への転換が2040年までに必要だと指摘している。(下図の「スマート自治体の概念図」を参照)

出所:総務省(記事末「資料出所一覧」の④を参照)

研究会は「従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組み」を導入・運用している自治体をスマート自治体の姿として想定している。それは、自治体の機能や住民サービスの質量を後退させずに超高齢化社会に対応しようという、高いハードルではあるが、志の高い前向きな挑戦だ。

実証実験を行った自治体の検証結果を見れば、RPAはすべての自治体が懸命に取り組んでいる重い使命をともなったチャレンジの大きな支えになりそうだ。

【資料出所一覧】
総務省「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(第5回)」に提出されたUiPath社の作成資料「RPAの動向」
奈良市役所の定例記者会見報道資料「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)実証実験の実施について」)
自治体通信Online「RPAによる『生産性革命』」
総務省「自治体戦略2040構想研究会」の第二次報告


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https://www.jt-tsushin.jp/

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