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民間のノウハウを集約する「窓口」が、行政サービス拡充の基盤になる

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大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第6回

民間のノウハウを集約する「窓口」が、行政サービス拡充の基盤になる

守口市長 西端 勝樹

※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能を持つ「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第6回目の今回は、今年4月に公民連携の専門窓口として「公民連携デスク」を設置した守口市を取材。公民連携への考え方や取り組みにより得られた成果などについて、市長の西端氏と同市担当者に話を聞いた。

[守口市] ■人口:14万3,337人(令和3年7月1日現在) ■世帯数:7万3,591世帯(令和3年7月1日現在) ■予算規模:928億6,473万4,000円(令和3年度当初) ■面積:12.71km2 ■概要:大阪平野のほぼ中央部、淀川の左岸にある。大阪市に隣接する西部地域から市街地が発展し、特に高度成長期には一挙に市街地が広がった。大阪市中心部まで約15分の京阪電車や大阪メトロのほか、大阪空港まで約35分の大阪モノレールが縦横に走るなど、各都市を結ぶ交通の要衝となっている。
守口市長
西端 勝樹 にしばた かつき

「選択と集中」で行財政改革。その原動力は公民連携

―公民連携の必要性を、どのようにとらえていますか。

 私が市長に就任した当時は財政状況が厳しく、行財政改革が急務でした。そこで、徹底した行財政改革を断行し「民でできることは民で」の考えのもと、民間への業務委託や施設移管を推進。また、「選択と集中」により改革の成果として生み出された財源を、行政サービスの充実やまちづくりに効果的に配分してきました。たとえば、子育て支援では、国に先駆けた幼児教育・保育の無償化を実現しました。その結果、子育て世代人口は増加し、全体としても人口減少に歯止めがかかっています。こうしたことは、この間の改革において、民間活力の積極的導入というカタチで、広い意味での「公民連携」を推進してきた大きな成果ととらえています。

―このほど「公民連携デスク」を設置した経緯を聞かせてください。

 当市は、令和3年度からスタートさせた第6次総合基本計画の将来都市像に「いつまでも住み続けたいまち 守口」を掲げました。この実現に向け、これまでの民間委託にくわえ、民間事業者の社会貢献をはじめとする事業提案を積極的に受け入れる。そして、効果的な連携を図り、行政課題の解決に取り組むことが重要と考えました。そこで、専門窓口を設置したのです。

 設置後は、民間事業者からの問い合わせが増え、さまざまな知見やノウハウを持つ民間事業者との対話から、先進的で多様な行政サービスのアイデアが生まれると期待できます。デスクには、大阪府の公民戦略連携デスクへの出向経験がある職員を配置し、民間事業者と各部局をつなぐ「ハブ」としての役割を効果的に果たせています。今後も行政サービス拡充に向けた基盤になると考えています。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 当市は、この間の行財政改革により健全な財政状況を保っています。今後も、お互いの持つノウハウやネットワークを共有することで、相乗効果を発揮できる公民連携を強化し、みなさんに「いつまでも住み続けたいまち」として選んでもらえる自治体を目指します。

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動画をメディアミックスの柱にし、「住み続けたいまち」の魅力を発信

守口市
企画財政部 企画課 課長 仲嶋 浩平

今年4月、公民連携の専門窓口として発足した守口市の「公民連携デスク」。多くの民間事業者と、新たな行政サービスを模索する対話の場となっている。なかでも、連携協定を締結して事業を進めたF.C.大阪との取り組みは、市内外の注目を集めた。その取り組みについて、公民連携デスクを所管する同市企画課の仲嶋氏に詳しく聞いた。

守口市
企画財政部 企画課 課長
仲嶋 浩平 なかじま こうへい

「音」「動き」「表情」を、情報に盛り込める

―F.C.大阪と連携協定を締結した経緯を聞かせてください。

 第6次総合基本計画で掲げた「いつまでも住み続けたいまち 守口」の実現に向け、市の魅力創造や発信は非常に重要な課題のひとつと考えています。当市の魅力を発掘、創造し、地域内外にうまく発信できれば、定住や地域活性化などの施策を後押しできる。当市はこれまで、情報発信ツールとして、広報誌やホームページだけでなく、SNSなども活用してきましたが、より効果的なチャンネルについても新たに検討していました。そうしたなか、プロサッカークラブのF.C.大阪から、「動画によるプロモーション戦略のノウハウを提供し、市の発展に貢献したい」と。この申し出を受け、5月中旬に連携協定を結びました。

―どのようにして取り組みを進めたのでしょう。

 同クラブはインターネット番組への配信プラットフォームを構築しています。この仕組みを活用して、ライブ配信番組『もりぐちTV』を立ち上げ、5月下旬に第1回の配信を行いました。当市にゆかりが深く「もりぐち夢・未来大使」でもあるタレントさんに、当市の魅力を熱く語っていただくコーナーなどを設け、多くの方々からご好評いただきました。動画は文章だけでなく、「音」「動き」「表情」を盛り込むことができ、メディアミックスによる情報発信戦略の新しい柱になると感じています。7月上旬には第2回を配信。今後は2ヵ月に1回程度のペースで配信を予定しており、市民や地元事業者の方々にも出演をお願いするなど、より有益で魅力あふれる情報発信の場にしていきたいと考えています。

―今後の取り組み方針を聞かせてください。

 今回の連携協定では、情報発信以外に、スポーツを通じた児童生徒の健全育成、市民の健康づくりなどが盛り込まれています。市民の交流が世代を超えて生まれ、地域がより活性化することで、当市を「いつまでも住み続けたいまち」と感じてもらえるよう、公民連携による取り組みを進めたいです。

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支援企業の視点

難しい調整業務を円滑に進めてくれ「頼りがい」を感じた

株式会社F.C.大阪
代表取締役社長CEO 近藤 祐輔
株式会社F.C.大阪
代表取締役社長CEO
近藤 祐輔 こんどう ゆうすけ

―守口市との連携事業に、どのような意義を感じていますか。

 私たちのような地域に根差したクラブチームが存続できるのは、地域の支えがあってこそです。だから私たちは、試合に勝つことだけでなく、さまざまな地域貢献活動を通じて、大阪を盛り上げる取り組みを行っています。今回の守口市との連携協定締結もその一環で、活力ある大阪の自治体をひとつでも増やしたいとの想いがそこにはあります。「大阪を世界に誇れる都市にする」という私たちのミッションの実現に一歩でも近づければ、クラブとしての存在価値も高まるはずです。

―実際に取り組んでみた感想を聞かせてください。

 連携協定の締結後、初回の打ち合わせからわずか10日ほどで配信までこぎつけられました。正直、このスピード感は過去の民間企業にもないほどですね。これは、公民連携デスクが中心となり、番組の内容や構成、進行のほかに、当日のスケジュール管理まで各部局との調整業務を率先して行ってくれたからだと思います。経験上、この調整業務は非常に手間のかかる難しさがあるのですが、頼りがいを感じるくらいスピーディに進めてくれました。

―今後、公民連携をどのように進めていきますか。

 現在、守口市をはじめ、大阪府ならびに大阪府下の9市町村と、今回と同様の連携協定を結び、すべて無償で協力しています。大阪に根差したクラブチームとして、大阪府下すべての自治体と連携協定を結び、大阪の活性化に貢献したいです。

近藤 祐輔 (こんどう ゆうすけ) プロフィール
昭和61年、北海道生まれ。平成17年、北海道文教大学明清高等学校(現:北海道文教大学附属高等学校)を卒業後、Jリーガーとして活躍。ポジションはゴールキーパー。現役引退後は株式会社F.C.大阪の事業部に所属し、令和3年3月から現職。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

民間との多様な連携を生み出す「公民連携デスク」の存在は大きい

 守口市の「公民連携デスク」の発足にあたり、大阪府からは運営面におけるノウハウや情報を提供しました。また、同市の職員を研修生として受け入れるなど、人材育成面でも連携しています。公民連携デスクの設置後、民間事業者からの問い合わせが急増していると聞きます。「一元的な窓口機能」への期待の表れであり、情報が集まれば集まるほど、多様な連携を生み出すチャンスが広がります。

 F.C.大阪と連携して開設した『もりぐちTV』は、市政の情報発信力の強化につながっており、職員一人ひとりの情報発信に対する意識を高めるという意味でも、大きな成果と言えるでしょう。