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事業化に向けて重ねる「対話」が、公民連携に新たなアイデアを生む

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大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第5回

事業化に向けて重ねる「対話」が、公民連携に新たなアイデアを生む

枚方市長 伏見 隆

※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第5回目の今回は、昨年9月に公民連携の専門窓口として「公民連携プラットフォーム」を設置した枚方市を取材。公民連携への考え方や取り組みにより得られた成果などについて、市長の伏見氏と同市担当者に話を聞いた。

[枚方市] ■人口:39万8,287人(令和3年6月末現在) ■世帯数:18万2,971世帯(令和3年6月末現在)■予算規模:2,696億7,416万9,000円(令和3年度当初) ■面積:65.12km2 ■概要:大阪市と京都市のほぼ中間に位置する。西に淀川が流れ、東には緑豊かな生駒山系の山々がある。江戸時代には、京街道の宿場町として栄えた。戦後は、大規模な住宅団地の開発により人口が急増。市内には5つの大学があることから、「大学のまち」としての一面も有する。
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枚方市長
伏見 隆 ふしみ たかし

公民連携の窓口設置で、4倍以上に増えた事業提案

―昨年9月に、「公民連携プラットフォーム」を設置した経緯を聞かせてください。

 これまでも当市では、社会課題を解決するにあたり、庁内のリソースだけで対応できない部分は、民間事業者の知見やノウハウを最大限活用してきました。しかし、時代の変化が速く、複雑化、多様化する一方の社会課題に今後も向き合っていくには、公民連携の機動力を高める必要があると考えました。そこで、大阪府公民戦略連携デスクの取り組みも参考にしながら、企画政策室に公民連携の専門窓口となる「公民連携プラットフォーム」を設置したのです。

―専門窓口を設けたことで、どのような成果が得られましたか。

 当市に寄せられる公民連携の事業提案が、4倍以上の約40件に増えました。これは、庁内の公民連携にまつわる情報を一元化したことで、民間事業者への情報提供が質・量ともに充実したことの表れだと考えています。設置から約7ヵ月で、51の民間企業や大学などと接点を持ち、すでに8つの取り組みを事業化できました。これまでにないスピードで進んでいます。

 さらに、「公民連携プラットフォーム」を通じて、民間事業者と「対話」を重ねられている意義は大きいと感じます。

―具体的にどういった意義を感じますか。

 公民連携に新たなアイデアを生み出す可能性を探れるところです。これは、単に事業を依頼して終わりではなく、私たちと民間事業者が「対話」を重ねることで、事業の意義や目的をしっかりと共有し、事業の具体案を固めていくからこそ生まれるものです。

 たとえば、コロナ禍で生活が困窮している学生を救済するために、Reviewと一緒に進めた取り組みでは、協議の場を何度も設けました。その結果、「学生の救済」と同時に、「EBPMの推進」というもうひとつの価値を創造する事業へと発展できたのです。公と民がそれぞれ持つリソースやノウハウの融合をさらに深化させ、公民連携の新たな領域を切り開く場が「公民連携プラットフォーム」の重要な役割だと考えています。

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EBPMにつながるデータ収集業務に、「学生支援」を結びつけられた

枚方市 総合政策部 企画政策室 課長(地域活性化担当) 尾松 直樹

昨年9月、公民連携の専門窓口として発足した「公民連携プラットフォーム」。発足から約7ヵ月で、接点を持つ民間事業者の数は51にのぼるという。なかでも、連携協定を締結して事業を進めたReviewとの取り組みは、市内外の注目を集めた。同事業について、担当の尾松氏に詳しく聞いた。

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枚方市
総合政策部 企画政策室 課長(地域活性化担当)
尾松 直樹 おまつ なおき

生活に困窮する学生を、公民連携で支援

―Reviewと連携協定を締結した経緯を聞かせてください。

 当市には5つの大学があり、約1万8,000人の学生が学ぶ「大学のまち」です。昨年は、多くの学生がコロナ禍の影響で通学できず、アルバイトもできない状況で生活に困窮していました。昨年度、そういった学生支援の予算を市として十分に確保できていないなか、早急な支援提供のあり方を模索していたところ、Reviewから「全面的に協力するので、連携して取り組みましょう」と打診を受けたのです。一刻も早く支援内容を検討したく、スピード感を強く意識しながら事業化を進めました。

―どのような支援内容に決まったのですか。

 単に学生への支援にとどまらず、それを「市の政策形成・推進に結びつけられないか」といった視点を持ちました。「社会課題の解決につなげる」という公民連携の意義を大事にしたかったのです。そこで、GPSを駆使したReviewのリサーチプラットフォームを活用し、学生に市内の「空き家調査」と「交通看板調査」の業務を行ってもらうことにしました。空き家については、市が保有する空き家に関するデータを提供し、それらの現在の利活用状況を調査してもらいました。交通看板については、道路をくまなく歩いてもらい、設置・劣化状況を調べてもらったのです。

―事業の成果はいかがでしたか。

 空き家調査は、「入居済み」「用途変更」「空き家のまま」など、空き家のその後の利用状況を把握できたので、今後はエリアごとに分析し、現在策定中の「第2次枚方市空家等対策計画」の基礎データにしていきます。交通看板調査は、1,347件のデータがそろいました。報告された設置・劣化状況をもとに効率的なメンテナンスの実施に役立てていきます。

 今回、EBPMにつながるデータを収集できたことは、効果的な政策立案を推進する当市にとって、非常に大きな収穫でした。そればかりか、調査を手伝ってくれた学生たちから、「収入が得られて本当にうれしい」「市に貢献できた充実感がある」といった声があがっていることも、事業の大きな意義だったと受け止めています。

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大阪府公民戦略連携デスクの視点

ユニークなテーマでも連携構築へ、枚方市の公民連携チャレンジに注目

 枚方市の「公民連携プラットフォーム」は、市の課題を明確化して公表し、課題解決につながる提案を民間事業者から広く募集する制度です。民間事業者にとっても新たな技術・アイデアの実証の場として効果的な仕組みといえます。また、「子ども夢基金」を活用した「今までにないような体験から子どもたちがワクワクと胸を躍らせて笑顔にあふれる取り組み」の募集など、ユニークなテーマでも連携構築に取り組んでいます。令和3年6月には、全国計30社の企業から公民連携の事業提案を受ける「OSAKA MEIKAN GROWTH DRIVE*1」を開催。まちの魅力や住民サービスの向上を目指した同市の公民連携へのチャレンジには今後も注目です。


支援企業の視点

親身に寄り添ってくれる姿勢で、行政との距離感が縮まった

株式会社Review 代表取締役CEO 藤本 茂夫
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株式会社Review
代表取締役CEO
藤本 茂夫 ふじもと しげお

―枚方市との連携事業に、どのような成果を感じていますか。

 「新型コロナ」という危機への対応が発端となった取り組みでしたが、行政と民間の協働によってまだまだ新たな価値が生み出せる事実を示せたことは、大きな成果と受け止めています。当社の事業展開にとっても、ターニングポイントになると感じています。実際、今回の取り組みが評価され、すでに全国20以上の自治体から同様のスキームでの事業化を打診されています。「防犯」や「教育」など自治体によって情報収集の目的はさまざまですが、いずれの事業でも今回の仕組みは応用できます。また、枚方市とも今後の事業の発展について協議しています。

―この間における「公民連携プラットフォーム」の役割を、どのように評価していますか。

 当社から枚方市にコンタクトしてから協定締結までに要した時間は、わずか10日ほど。過去に協業したどの民間企業よりも、動きが速かったですね。行政に対する先入観を完全に覆されました。また、現場の所管課と実際の事業を進めるうえでも、公民連携の専門窓口として、迅速かつ柔軟に調整を担ってくれ、親身に寄り添ってくれる姿勢に、行政との距離感が縮まる感覚を味わいました。「公民連携プラットフォーム」は、公民連携の情報発信にも注力しており、事業募集に関する情報がプッシュ型で送られてきます。多様なテーマでの連携を模索している枚方市からの発信によって我々の事業意欲も刺激されており、毎回情報が届くのを楽しみにしています。

藤本 茂夫 (ふじもと しげお) プロフィール
昭和52年、大阪府枚方市生まれ。マンパワーグループ株式会社、株式会社アディション代表取締役などを経て、平成28年3月、株式会社Reviewを設立、代表取締役CEOに就任。

*1:※ : 主催 OSAKA MEIKAN実行委員会