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高知県の取り組み

処理時間の削減と100%の正確性を実現。適用業務の見極めで確かな効果を実感

高知県 総務部 情報政策課 主幹 西森 学

※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


PCで行う単純作業による負担を減らし、住民サービスの向上へつなげるための取り組みとして、RPAを導入する自治体が近年、急速に増えている。こうしたなか、高知県も今年度、RPAの実証実験を開始し、一部の業務で高い効率化の効果を得ている。RPAを活用する業務の選定方法や、今後の活用方針などについて、情報政策課の西森氏に聞いた。

高知県データ
人口:69万7,674人(令和元年10月1日現在) 世帯数:31万8,030世帯(令和元年10月1日現在) 予算規模:7,776億8,240万2,000円(令和元年度当初) 面積:7,103.63km² 概要:北は愛媛県と徳島県に接し、南は扇状に突き出すように太平洋に面し、面積は四国四県でもっとも広い。温暖多湿な気候のため、足摺岬や室戸岬ではアコウやビロウなどの亜熱帯植物が自生し、高知平野では早場米が収穫される。幕末には、坂本龍馬など多くの志士を輩出。明治維新では板垣退助などが自由民権運動を起こし、「自由は土佐の山間より」とうたわれるようになった。
高知県
総務部 情報政策課 主幹
西森 学にしもり まなぶ

複数の評価項目から、適用の優先度を決定

―RPAの実証実験を始めた経緯を聞かせてください。

 当県は今年度、行政業務のデジタル化を推進することで、業務効率化を通じたコスト縮減や、県民サービスの向上、デジタル技術を通じた課題解決、産業振興などを図る「高知県行政サービスデジタル化推進会議」を発足。事前に行った全庁的なヒアリングでは、業務効率化につながりそうな提案が約140件あがりました。そのうち転記作業や、市町村に調査を依頼して回収するといったPCを使う単純作業で、RPAで代替できそうなものが30件ほどにのぼりました。そこで情報政策課では、RPAを適用する業務の絞り込みから実証実験の取り組みを始めました。

―どのように適用業務を絞り込んでいったのでしょう。

 業務の処理に要する時間や発生頻度、作業手順の明確さといった項目ごとに、「○」「△」「×」などの記号を使って評価し、適用させる優先度を決めていきました。

 たとえば、各所属の人件費予算を見極めるために財政課が行う「人件費推計表作成業務」は、処理時間が年300時間と長く、毎年3回実施。作業はマニュアル化済みで、ロボットへの代替も容易なため、実証実験期間中でも本格的に適用できます。早急に高い効果を得られるとみて、優先的にロボット化(※)しました。RPAツールには、自治体での導入実績が豊富で将来的な全庁展開も行いやすいものを採用しました。

※ロボット化:RPAにおいて、作業フローのシナリオを組み、ソフトウェア型の“ロボット”に作業を記録・代替させること


ロボットの内製化で、RPA活用の幅を広げたい

―どのような作業フローをロボットに代替させたのですか。

 人件費推計表作成業務は従来、給与システムから全職員の給与データを紙出力した帳票をもとに、職員が表計算ソフトに手作業で転記。所属ごとにまとめたうえで配信していました。

 実証実験では、ロボットがデータを扱えるよう、紙で出力していたデータを給与システムから直接CSV(※)データで入手。これを表計算ソフトに転記し、所属ごとに分ける作業を丸ごとロボットに代替させたのです。

 ダミーデータを使った検証により、人件費推計表作成業務では大幅な業務時間の削減が見込まれています。ロボット化した処理は数値項目の集計と分配がメインで、作業の正確性は100%でした。

※CSV:comma-separated valuesの略。項目をカンマで区切ったテキストデータのこと

―今後はどのような業務のロボット化を進めていきますか。

 今後は、インターネット系を利用する業務や民間事業者に委託している手作業の業務などへ、対象範囲を広げていきたいです。

 実証実験を検討するにあたり、ほかの自治体による先行事例も調査しましたが、なかには当県ではすでにシステム化していたり、外部に委託しているものもありました。逆に、当県であがったRPA適用業務案のなかには、ほかの団体では見られないようなものもあるでしょう。RPAを活用できる業務の幅広さを実感しています。

―RPA適用の対象範囲を広げるための方針を聞かせてください。

 今回、実証実験でのロボット化を先送りした業務のなかには、汎用性が高いものの、転記する様式が複数あり、ロボット化を外部委託すると費用がかさむものがありました。しかし、ロボット化の難易度が低いものについては、職員による内製化を推進していきたいと思っています。そのために、情報政策課だけでなく、ロボットを作成、運用できる人員を各課で育成し、RPAの活用を広めていきたいと考えています。


自治体のなかには、実証実験を経て、RPAの本格導入に進んでいる事例も増えている。そのなかでも葛飾区(東京都)は、手書きや印刷された文字をデジタル化する技術であるOCRをRPAと組み合わせ、紙を扱う業務へもその活用を広げている。具体的な技術の活用方法や得られた効果などについて、情報政策課の担当者2人に聞いた。

東京都葛飾区データ
人口:46万4,459人(令和元年10月1日現在) 世帯数:23万6,346世帯(令和元年10月1日現在) 予算規模:2,944億1,870万円(令和元年度当初) 面積:34.80km² 概要:東は江戸川を境として千葉県松戸市に、西は足立区と墨田区、南は江戸川区、北は大場川を境として埼玉県八潮市・三郷市にそれぞれ接する。江戸時代には農耕地に灌漑用水を供給したほか、江戸と地方を結ぶ交通網も発達し、街道や宿場も整備された。現在の葛飾区は、東京府南葛飾郡の7町村が昭和7年に合併して誕生した。
葛飾区
政策経営部 情報政策課 課長
谷口 正たにぐち ただし
葛飾区
政策経営部 情報政策課 企画係
岡 英輔おか えいすけ

異なる技術を組み合わせ、業務効率化の幅を広げる

―葛飾区におけるRPA導入の、きっかけを教えてください。

谷口 平成28年に始まった、マイナンバー制度がきっかけとなりました。制度開始にともない、当区では源泉徴収関連のシステムを新たに導入することに。これにより、庁内の多くの課で、報酬額や源泉徴収額のデータをマイナンバーに紐づける作業が発生。作業自体は定型的で単純なものですが、作業量は多い課で年間1万件にのぼり、各課から「業務負担を抑えたい」といった要望があがりました。そこで当課では、解決策としてRPAを活用できるのではと考え、実証実験を経た後、平成30年度に本格導入しました。

―導入後はどのようにRPAを、活用していますか。

谷口 RPA単独だけでなく、OCRと組み合わせた活用も推進しています。

 当区ではもともと、手書き文字をOCRで電子化することで、システムに取り込む業務効率化を図っていました。しかし、システムによっては電子化された文字データを直接取り込めず、あらためて手入力しなければいけません。せっかく手書き文字を電子化しても、別の手作業が発生してしまうのです。そこで、データの取り込み作業をロボットに任せることで、業務全体の自動化を試みたのです。そして、サーバ型(※)のツールでOCRと連動できるものを新たに導入。紙の文書を扱う業務の効率化に着手しました。

※サーバ型:ロボットがサーバ内で動作するタイプのRPAツール。一方で、ロボットが個々のPC内で動作するものは「デスクトップ型」と呼ばれる

年712時間分の業務を代替

―どのような業務にOCRとRPAを導入したのでしょう。

 たとえば、保育課における保育園の入園申込書関連業務です。この業務は、区民から紙の文書で保育園の入園申込書を受け取り、申込情報を人手で管理システムに入力するもの。処理件数は年間2,900件にのぼります。OCRとRPAを導入した後の作業手順は、まず、申込書を専用の複合機でスキャンし、文書に記載された文字をCSVデータに変換。そのデータをロボットが既存システムに入力してくれるのです。

―業務の自動化で得られた効果を教えてください。

 年間712時間の削減効果が得られました。人が行う作業は、紙に書かれていた情報がOCRできちんと電子データに変換されているかどうかの確認と、RPAが出した例外処理の対応だけになりました。OCRの活用では、帳票のフォーマットを変更するといった工夫を行い、機械が文字を読み取りやすくすることで、100%近い精度で処理できています。システムへの入力も、ロボットに任せることで、ケアレスミスの心配がなくなったため、生産性の向上を強く実感しています。

―今後はRPAをどのように活用していきますか。

谷口 これまでは、各主管課から要望があった業務のみを対象にロボット化を進めてきました。また、より多くの現場でRPAの活用を広げていくため、全庁的な説明会を通じ、RPAに関する知識を職員に身につけてもらっています。ロボットにはなにができ、人間の代わりにどのような仕事を任せられるか。こうした人とロボットで分担できる役割を見極めながら、今後も全庁的な業務効率化にRPAを活用したいと考えています。



RPAは、ロボットに作業フローを覚えさせることで、PC操作をともなうさまざまな業務を柔軟に代替させられることが強みだ。自治体においても、庁内業務のロボット化は、さまざまな部署で広がりを見せている。ここでは、RPAツールの開発を手がける民間企業が導入を支援した自治体の事例をもとに、庁内各部署におけるRPAの活用シーンを紹介する。


▶︎業務内容  管理担当者が時間外勤務命令を入力後、各課の担当者が勤怠管理システムにその内容を入力したうえで、時間外勤務命令が出ている職員にメールを送信していた。各課の担当者が手入力で行っていた業務を丸ごとロボット化した。

▶︎効果 
●タイミングがバラバラだったメール通知をいっせいに行えるように
●システムへの入力ミスや登録漏れを防げた

▶︎業務内容  毎年1,300人が異動し、人事・給与システムの登録内容を更新。単純な転記作業だが、けっしてミスのできない業務だった。そのため、人事異動データのシステムへの入力作業をロボットに代替。初期段階では他社製品を検討していたが、画像認識で要素をうまく認識できなかったため、オブジェクト認識が可能なツールを選択。

▶︎効果 
●作業時間を約3分の1未満へ短縮


▶︎業務内容  ほかの課から工事実施場所の住所が送付された後、担当者は住所や工事実施場所周辺の地図情報を読みこんだうえ、住所や工事期間を入力し、工事業者に渡す書類を作成。印刷したうえで工事業者にわたしていた。RPA導入により、書類の作成と印刷作業をロボットに代替させている。

▶︎効果 
●業務が効率化され、印刷漏れを防げるようになった
●ほかの課がもつ同様の業務への横展開が可能に

▶︎業務内容  住民から送付される水道・ガスの申込情報を担当者が紙媒体に印刷し集計。関係者に対して申込情報をメールで通知していた。手続き終了後は一定期間データを保管した後に削除。このうち、紙媒体への印刷と申込情報の集計、メール通知、申込情報のPDFへの保存をロボット化した。

▶︎効果 
●情報をPDFで保存する機能をくわえ、業務を効率化
●申込情報を漏れなく正確に管理できるように

▶︎業務内容  担当者はeLTAX(※)で提出された法人市民税申告書の内容を確認し、添付書類が2枚以上あれば2枚目以降を4分の1に縮小して印刷。あわせて、課税台帳へのデータ入力を行っていた。現在は、添付書類の縮小印刷の判断やその印刷を含め、作業をロボット化している。

▶︎効果 
●作業のほとんどをロボットに代替
●担当者はロボットの入力をチェックするだけになり、データをチェックする人員も2人から1人に減らせた


※eLTAX:地方税共同機構が提供する地方税ポータルシステムの呼称

▶︎業務内容  事業者から受信したExcelデータを担当者が整理した後、手作業でデータをコピー&ペーストし、帳票に変換。帳票を出力し、データをメールで各所属へ送付していた。帳票への変換と紙媒体への出力、各所属へのメール送付をロボットに代替。

▶︎効果 
●従来144時間かかっていた一連の業務を、担当者の手作業6時間、ロボットの稼働1.8時間の計7.8時間に短縮できた

▶︎業務内容  担当者は市内すべての部署から公共料金情報を収集し、財務会計システムに情報を手入力していた。「早収料金制度」により、期日を過ぎると料金が高くなるため、担当者は時間に追われるストレスを抱えていた。RPAの導入により、担当者が専用のファイルに格納した情報の読み込みと、システムへの入力をロボットに任せた。

▶︎効果 
●年間100時間の業務時間を50時間に短縮
●担当者は期日を気にして作業する必要がなくなった

▶︎業務内容  担当者は、40以上の医療機関から健康診断の受診結果ファイルを受け取った後、専用システムにログインし、各受信者の画面を表示。診断結果を入力していた。現在は、担当者がデータベースに転送したファイルからロボットが医療機関の名前を判別し、データを抽出。診断結果を専用システムに転記・入力している。

▶︎効果 
●年間200時間以上の業務時間を50時間に短縮
●40以上の医療機関すべてのファイル形式に対応できた

▶︎業務内容  担当者は、作成した職員名簿をもとに、不足人員数と再配備対象者や、職員自宅からの参集時間を確認し、人員を再配備。応援参集職員名簿を作成したうえで、名簿を関係者に通知していた。このうち、各種情報の確認作業から名簿の作成をロボットに代替。

▶︎効果 
●1,300人以上の職員を対象に30日かかっていた処理時間を、5日に短縮できるようになった
●確認・転記漏れがなく、確実に処理を行えるように

▶︎業務内容  各課の職員が申請した通勤手当の金額が妥当かどうか、担当者は路線情報サイトを検索して確認していた。職員住所と職場間の距離の確認や、最寄り駅の検索、適切な通勤手当の決定など、一連の業務をロボットに代替。申請内容が妥当でない場合の職員への通知もロボット化した。

▶︎効果 
●1件あたりにかかる時間が20分から7分に短縮
●2,000件ほどある業務負担を大幅に軽減
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