自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 先進事例
  3. 【札幌市】教育現場でのタブレット端末活用(教育ICT化の事例)
先進事例2017.09.25

【札幌市】教育現場でのタブレット端末活用(教育ICT化の事例)

【札幌市】教育現場でのタブレット端末活用(教育ICT化の事例)

北海道札幌市 の取り組み

【札幌市】教育現場でのタブレット端末活用(教育ICT化の事例)

教育委員会 学校教育部 教育課程担当課 課長 廣川 雅之

全国の公立学校でICT環境の整備に向けた動きが加速している。その一方で、ICT化を進めながらも、「教育現場で機器の活用度がなかなか上がらない」との悩みを抱える自治体も多い。そうしたなか、外部コンサルタントの専門的な知見を駆使し、現場での活用率を高める例が増えている。札幌市(北海道)もそのひとつだ。そこで、札幌市教育委員会の廣川氏、ICT環境整備の舞台となる市立札幌開成中等教育学校校長の相沢氏とICT担当の西村氏に、教育ICTを成功させる要諦について聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.10(2017年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

北海道札幌市データ

人口: 196万2,622人(平成29年8月1日現在)世帯数: 94万2,270世帯(平成29年8月1日現在)予算規模: 1兆6,532億1,900万円(平成29年度当初)面積: 1,121.26km²概要: 日本最北の政令指定都市。人口は日本で5番目。北海道の政治、経済、文化の中心地であり、北海道旧本庁舎や札幌市時計台、明治9年に札幌農学校として開学した北海道大学など、北海道の歴史を語る建物がいまも残っている。「さっぽろ雪まつり」や「YOSAKOIソーラン祭り」、「札幌国際芸術祭」などのイベントが開催され、近年では観光都市として世界中から注目を集めている。

―札幌市における教育ICTの整備状況を教えてください。

 今年度から市立小中学校で、コンピュータ教室のパソコンを段階的にタブレット端末へと移行を進め、同時に無線LAN設備を導入していきます。また、教員の授業用タブレット端末や特別支援学級用タブレット端末も整備していきます。一方で、札幌市が教育ICTのモデルケースと位置づけている市立札幌開成中等教育学校では、生徒一人ひとりに一台ずつタブレット端末を配布しています。

―そのねらいはなんでしょう。

 「課題探究的な学習」を推進することで、札幌市が教育理念とする「生涯にわたって学び続ける力」を養うことです。そのためには、「調べたい」と思ったときに、いつでもどこでも使えるICTツールが不可欠です。学校現場でのひとつの挑戦として、中高一貫教育校である市立札幌開成中等教育学校では、今年度からタブレット端末を家庭にもち帰っての調べ学習などに利用しています。そこでは、学校外も含めた利用環境の整備といった多くの課題が浮上します。そうなると、自治体単独では技術面での問題を乗り越えるのは難しい。そこで札幌市では外部コンサルタントと提携し、教育理念を実現するための最適な基盤整備や運用方法などへの助言をもらっています。

―今後の目標を教えてください。

 まずは市内300校でのICT整備と並行し、市立札幌開成中等教育学校でのモデル研究を進め、「課題探究的な学習のための最適なICT環境」を見出していきたい。そして、その成果を市内に広く展開していきたいと考えています。

―学校の概要を教えてください。

相沢 札幌市の市立高校改革議論を経て、3年前に改編された中高一貫の学校です。中高一貫といっても決して受験校ではありません。6年間の連続した学びの環境でこそ実現できる「課題探究的な学習」を推進し、生徒の「生涯にわたって学び続ける力」を養うのが目的です。そのひとつの方法として当校では、国際標準の教育プログラムである「国際バカロレア(IB)(※)」を活用。「探究-行動-振り返り」という学習サイクルを生徒主体に展開することで、自立した学習者を育てるのが教育理念です。

西村 この理念を実現するための手段として、ICTを積極的に活用しています。真に課題探究的な学習を実現するには、個々人が探究するためのツールをもち、いつでもどこでも自由に使える環境が必要です。そこで本校では、一人ひとりの生徒が学校内ではつねにタブレット端末を活用できる体制を整えています。

※ 国際バカロレア:国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム。世界の複雑さを理解して、それに対処できる生徒を育成するとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与えている。

―タブレット端末はどのように活用していますか。

西村 国語や英語といった言語学習や社会や理科の実験や調査、体育等実技教科の授業にいたるまで幅広く使っています。その際、タブレット端末を情報収集のツールとして使うだけではなく、自らの考えを作品としてアウトプットするためのツールとして使っているのが特徴です。街や学校のPR動画をつくったり、短い作曲をしたりと、「だれになにを伝えるのか」という課題や学習の目標を設定し、生徒がICTを使って主体的に探究します。そのなかで生徒たちは情報リテラシーやモラルを学んでいく。本校では画一的な知識や課題に対する解答を教えるのではなく、こういった生徒主体の学習を重視しています。

相沢 こうした「課題探究的な学習」を通じて気づくのは、生徒にとってはタブレット端末がもはや紙や鉛筆といった文房具のような存在になっていることです。タブレット端末を本当に使いこなしている理想的な姿ではないでしょうか。

―「課題探究的な学習」を成功させるポイントはなんですか。

相沢 現場の先生たちがICTの運用に振り回されず、教育に専念できる環境が不可欠です。ただし、現場ごとに抱える課題やニーズは異なり、場合によっては利用に制限をかけることも必要です。そうした最適なICT活用環境は学校現場だけでも、教育委員会だけでもつくれません。本校のケースでは、教育現場の実情とICTの分野横断的な技術的側面をともに深く理解した外部コンサルタントの助言により、市教委や財政部門と一体となった整備が進められました。

学校教育・生涯教育関連ソリューションまとめ

学校教育・生涯教育関連のソリューションをまとめています。是非、参考にしてください。


 

電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー