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東京都江東区の取り組み
先進事例2026.07.28
「分身ロボット」活用による障害者の就労支援➀

【障害者の就労支援・DX】「分身ロボット」の遠隔操作を通じて、障害者の就労と社会参加の場を創る
分身ロボットOriHime / オリィ研究所

[提供] 株式会社オリィ研究所
【障害者の就労支援・DX】「分身ロボット」の遠隔操作を通じて、障害者の就労と社会参加の場を創る(分身ロボットOriHime / オリィ研究所)
この記事の配信元
株式会社オリィ研究所
株式会社オリィ研究所

※下記は自治体通信 Vol.75(2026年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

障害の有無にかかわらず住民が自立して生活できる社会の実現に向けて、障害者の就労支援は、自治体が取り組むべき重要な施策のひとつだ。そうしたなか、江東区(東京都)では、外出困難な障害者の就労支援の一環として、自宅から遠隔操作できる「分身ロボット」を活用。障害者が同ロボットを通じて、自宅にいながら接客を行える事業を展開し、手応えを感じているという。同区長の大久保氏に、区全体の障害者支援の方針に加え、同事業の取り組みの詳細を聞いた。

[江東区] ■人口:54万4,445人(令和8年6月1日現在) ■世帯数:29万9,341世帯(令和8年6月1日現在) ■一般会計予算:2,927億2,600万円(令和8年度当初) ■面積:42.99km² ■概要:東京23区の東部に位置している。東に荒川、西に隅田川、南は東京湾に面しており、歴史的に水とかかわりを持って発展を遂げてきた。深川・城東エリアでは、富岡八幡宮といった歴史的建造物などから、区の「伝統」を感じることができる。一方、豊洲や有明エリアは、近代的な高層マンションやオフィスビル、商業施設が立ち並んでおり、「下町情緒」と「近代的なベイエリア」という対照的な2つの顔を併せ持っている。
インタビュー
大久保 朋果
江東区長
大久保 朋果おおくぼ ともか

外出が難しい障害者向けに、就労の新たな選択肢を模索

―江東区ではどのような障害者支援に取り組んでいるのですか。

 当区では、令和6年3月に「江東区障害者計画・江東区第7期障害福祉計画・江東区第3期障害児福祉計画」を作成しました。この計画では「共生社会の実現」「障害者の自立支援」「安心して暮らせる社会の実現」の3点を基本理念として掲げており、障害のある人もない人も、ともに支えあい、自己の意思決定に基づいて、地域で安心して暮らすことのできる共生社会の実現を目指しています。それらの理念に基づき、障害への理解促進のための講座開催や、福祉サービスの充実、障害者施設の整備などさまざまな取り組みを行っています(下部図参照)。

―取り組みの一環で、「分身ロボット」による外出困難な障害者の就労支援を行っているそうですね。

 はい。当区庁舎には障害者通所施設に通う障害者の方々がつくった手工芸品や食品を販売する「手づくりショップ『るーくる』」があり、店内にて区内の外出困難な方々が「分身ロボット」を通じて、在宅などでも接客ができる環境を整備しています。ロボットの操縦者は「パイロット」と呼ばれており、同ロボットを遠隔操作することで、店を訪れた人に声をかけたり手を振ったりなどのコミュニケーションを図って接客を行います。パイロットの雇用期間は原則1年で、令和6年6月から事業を開始しています。

―同事業に取り組んだ狙いを教えてください。

 『るーくる』では、障害がある人もない人も協力しあって店舗を運営しているのですが、「外出困難な障害者の方々でも参加できる仕組みを取り入れられないか」と考えたのが、そもそものきっかけです。障害者支援は国も含めて各自治体が注力していますが、特に障害が重い方々は、就労するのがより難しいという現実があります。しかし、「外出が困難」という理由だけで就労の機会や社会との接点が閉ざされてしまうのは望ましくありません。そんなときに、「分身ロボット」を活用した障害者の就労支援の方法があることを知り、現在のテクノロジーを活用した新しい働き方の選択肢として注目し、導入することにしたのです。

「親亡きあと」も、自立して働けることが重要

―導入後、どのような手応えを感じていますか。

 当初は正直「応募があるのか」という不安がありましたが、予想を超える応募があり、ホッとしました。実際、パイロットに従事した障害者の方々からは「自分にも働くことができると思えるようになった」「パイロットを卒業した後もなんらかの形で社会にかかわっていきたい」といった非常に前向きな声が寄せられています。また、「分身ロボット」に初めて接するお客さまの多くが「AIロボット」だと勘違いされるのですが、障害者が遠隔で操作していることを知って、大変驚かれます。結果、多くの区民に障害者の就労や社会参加の新たな形について知ってもらう良い機会につながっているのを実感しています。

―今後の障害者支援の方針を教えてください。

 今年度は、第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画の策定年度になっていますが、国や東京都の動向、障害者やその家族を取り巻く現状や課題をふまえ、計画を策定し施策を進めていきます。特に障害者支援について語る際、「親亡きあと」とよく言われるのですが、たとえ親がいなくなったとしても安心して暮らせる環境づくりが重要であり、さらには、障害者が生きがいや、やりがいを持てるような施策が必要です。「分身ロボット」は、それに資するものであり、障害者が世の中とかかわり、貢献するための選択肢をひろげるものだと感じています。

職員の声
「分身ロボット」活用による障害者の就労支援②
「分身ロボット」を入口にして、重度障害者のキャリア形成を支援

ここまでは、江東区における障害者支援の方針および「分身ロボット」を活用した取り組みについて同区長の大久保氏に聞いた。このページでは、江東区の障害者支援課の岩瀬氏を取材。より現場の視点に立った、「分身ロボット」活用の詳細を聞いた。

インタビュー
岩瀬 聖志
江東区
障害福祉部 障害者支援課 障害者就労支援係
岩瀬 聖志いわせ きよし

社会に出て働けるという可能性に気づいてもらえた

―「分身ロボット」を活用した障害者の就労支援に取り組んだ経緯を教えてください。

 当区では障害者に対して各種支援を行ってきましたが、特に重度障害者の方々が働く環境が限られている状況が見受けられました。新たな働き方を模索するなかで、オリィ研究所が「分身ロボット」の『OriHime』を開発し、障害者の就労支援を行っていることを知りました。同社が東京都の日本橋で『OriHime』が実際に働くカフェを運営していると聞き、当時の職員が見学に行きました。そこでは、「パイロット」の方々が「分身ロボット」を介してお客さまと会話しながらイキイキと働く姿がありました。そこに大きな可能性を感じ、区内でパイロットを募り、『るーくる』で働いてもらうことにしたのです。

―導入効果はいかがですか。

 数字面で言うと、『るーくる』の売上自体が右肩上がりで伸びています。これは『OriHime』の認知度と人気が向上している表れであり、パイロットのやりがいにもつながっていると思います。実際、お客さまから「今日はアコピヨ*さんが出勤しているんだね」などと、“推しパイロット”活動が生まれるような効果も出ています。なによりパイロットの方々に「環境さえ整えば、自身が社会に出て働ける」という可能性に気づいてもらえたのが一番大きいと思います。

―障害者に対する今後の支援方針を教えてください。

 オリィ研究所の協力を得て、令和8年度からパイロットの卒業に向けたキャリア支援を新たに開始しました。雇用期間は原則1年のため、パイロット経験だけで終わらせることなく、『OriHime』を入口に重度障害者の今後のキャリアを形成していく支援を行っていきたいですね。

*アコピヨ:パイロットのニックネーム

パイロット経験者の声
自分のキャリアを再構築する、良いきっかけになりました
インタビュー
アコピヨさん
アコピヨさん

 私が病気になり、ほぼなにもできない状態になったとき「もう働けない」とあきらめていました。そこから5年後、気分も落ち着き「なにかできないか」と考えた際に偶然区の広報紙を見て『OriHime』のパイロット募集を知り、応募・採用に至りました。いざやってみると、「分身ロボット」による接客を通じて知らない人とふれあう業務に面白さを感じるようになりました。また、私と同じく障害者の方々がつくった商品を扱うため「売れるサポートがしたい」と、お客さまへ積極的にお声がけをするなど色々工夫するようにもなりました。おかげで、必ず商品を買ってくれるファンのような人もできました。卒業を控えた頃から区とオリィ研究所の支援を受けつつ就職活動を開始し、今は区の就労継続支援B型事業所で広報活動を行っています。パイロット経験は、自分のキャリアを再構築する良いきっかけになりました。

支援企業の視点
「楽しかった」では終わらせない。その先を見据えたサポートが重要に

これまでは、区長の大久保氏や職員の岩瀬氏へのインタビューなどを通じて、江東区の「分身ロボット」を活用した障害者の就労支援の詳細を紹介してきた。ここでは、同区の取り組みを支援したオリィ研究所を取材。「分身ロボット」を障害者の就労支援に活用する際のポイントなどを聞いた。

インタビュー
相嘉 駿甫
株式会社オリィ研究所
事業開発本部 事業開発チーム マネージャー
相嘉 駿甫あいか しゅんすけ
印刷・イベント・人材など幅広い業界で10年間営業を経験。知人との縁を機に障害福祉の可能性を知り、福祉事業所の立ち上げに参加。令和5年より現職で、事業開発を担当している。

―障害者の就労支援に「分身ロボット」を検討する自治体は増えているのですか。

 当社が提供する、分身ロボット『OriHime(オリヒメ)』への問い合わせが増えているのを実感しています。当社では、外出困難者が同ロボットを遠隔操作して接客するカフェを運営しています。その状況を視察し、『OriHime』を障害者の就労支援に活用する自治体が増えています。我々も自治体支援を通じて、『OriHime』が持つ障害者就労支援への適性には自信を持っています。

―その適性とはなんでしょう。

 まず、直感的に動かせることを追求した操作画面と広い画角を備えており、「パイロット」は簡単かつ円滑に『OriHime』を動かせます。リアルな場で「両手を広げる」など身振り手振りを交えて会話ができ、接客される側は存在感を、パイロットは「そこにいる」という没入感を得られます。操作側の映像はないため、パイロットは体勢を気にする必要はなく、デザインがシンプルでどんな表情にも見えることから、接客される側も余計なバイアスを持たずにコミュニケーションが図れます。

―『OriHime』を自治体の障害者就労支援に活用する際、どのようなことが重要ですか。

 自治体の事業の場合、就業期間は原則1年です。この制約のなかで、パイロットとして働いた経験を「楽しかった」で終わらせず、就労のステップの1つに位置づけることが重要です。そこで当社では、自治体の事業目標に沿ってキャリア支援プログラムをオーダーメイドで提供しています。就業期間中にこの支援を行い、パイロットの働く意欲や自信を将来につなげられる取り組みを行っています。

―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。

 障害者だけでなく、外出困難を抱える人への幅広い支援を自治体と行っていきたいです。たとえば子育て世代の就労支援や不登校児の教育支援など、誰ひとり取り残さない社会のために、『OriHime』を活用いただきたいですね。

株式会社オリィ研究所
株式会社オリィ研究所
設立

平成24年9月

資本金

1億円

従業員数

77人(令和8年3月時点)

事業内容

コミュニケーションテクノロジーの研究開発および製造販売

URL

https://orylab.com/

お問い合わせ先
sales@orylab.com
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