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自治体職員の「装合計画」#16(元東京都職員/イメージコンサルタント・古橋 香織)
「服装のあり方」を見直す自治体が急増中!

今なぜ「公務員×服装」がトレンドなのか?

    プロフィール
    古橋 香織
    《本連載の著者紹介》
    元東京都職員/イメージコンサルタント
    古橋 香織ふるはし かおり
    早稲田大学を卒業後、東京都庁に入庁。都職員時代は消費者行政や東京都議会議会局に勤務。在職中にイメージコンサルティングを学び、2020年1月に東京都を退職し独立。2021年11月に『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)を上梓。最近は個人のイメージコンサルのほか「公務員×服装」に関する研修を多くの自治体で実施している。色彩検定1級、UC級所持。

    元東京都職員でイメージコンサルタントの古橋 香織さんによる、見過ごされがちだった「公務員の装い」をテーマとした本連載。今回は多くの自治体で「職員の服装」を見直す動きが広がっている理由・背景を深~く考察しました。自治体の明るいミライは「服装改革」にかかっている、かも!?

    芽吹き始めた「公務員の服装改革」

    現在、ありがたいことに多くの自治体から、職場での印象アップに繋がる研修の依頼をいただいています。そんな話を本連載の担当者と話していると「『公務員の服装意識がなぜ高まっているのか?』を次回の連載テーマでいきませんか?」と連絡が来たのは、まだまだ残暑が厳しい9月でした。
     
    「服装への意識が高まっている。とまで言い切ってしまっていいのだろうか?」とふと疑問に思いましたが、思い浮かんだのは、今の私が片足を突っ込んでいるファッション業界でのトレンド(流行)の作られ方です。
     
    私たちが追いかけているファッションアイテムのトレンドは、ほとんどの場合、流行らせたいものを流行らせるために上から造作的に作られています。
     
    裏を返すと、実はボトムアップで形成されたトレンドというものはあまり多くないのです。すなわち、トレンドは人の手によって意図的に作られるものなのです。

    というわけで、このトレンド(改革?)を牽引するひとりとして、「公務員の服装改革」の種が無事に少しずつ芽吹き始めた要因を考えてみたいと思います。

    「職員のイメージアップ」に取り組む自治体が急増しているワケとは?

    自治体が直面する「危機的」状況を見て

    冒頭に書いた自治体研修の依頼案件は、「身だしなみ接遇」のようなベーシックな内容から「スーツの着こなしやセルフプロデュース」などのテクニックを伝える内容までさまざまですが、そのなかで必ず組み込んでいるメッセージがあります。それは「取り巻く環境の変化に追いつけない自治体はいずれ消えてなくなる」ということです。
     
    特に近年著しいのは「人材を集めること」の難しさです。
     
    SPI (Synthetic Personality Inventory=適性検査)をはじめとした民間の試験制度の導入や公務員独自の試験科目の廃止などの改革によって、自治体は入口の段階で民間と比較される機会が増えており、実際に多くの自治体は、受験者数の減少や内定辞退者の増加など、人材確保の面で厳しい局面に立たされています。

    もはやこれまで言われていた制度面の安定性だけでは戦えなくなってきているのです。

    自治体職員を志望する若い人が減っているのは少子化だけが理由じゃない!
    (グラフは総務省「地方公務員の職員採用方法の多様化について(令和3年12月24日)」より引用し加工) 

    これを受けて、制度面はもちろん視覚的な視点からの「公務員のイメージアップ」も急務であり、その中でももっとも簡単な手法が、仕事服をシュッとさせることである、と私は考えています。

    「何を着て働くか」は職員が勤務する上での「幸福度」にも繋がります。特に最近はSNSを経由した「視覚から得る情報」の量が圧倒的に増えているため、私たちとファッションの距離は以前よりも格段に近くなっています。
     
    そのような背景を踏まえて公務員独特の「仕事服を攻めの気持ちで選べない」問題に対して、そろそろメスを入れる時期がやってきたということです。

    思っていたけど、ずっと言えなかった服の話

    まず、大きなターニングポイントとなった出来事が、私にとって初めての著作となった『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』という本の出版です。しかも版元はあの、自治体職員からの圧倒的な信頼を得る「株式会社ぎょうせい」さんからでした。
    (参照記事:公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる)
     
    業界初のメンズファッションの指南書の位置付けであるこの本、簡潔にまとめると「公務員男性諸君、ちゃんと服を着ろ!」という内容が問題意識の醸成から着こなしのテクニックに至るまで、極めてマイルドかつ平易な言葉で書いてあります。
     
    この本をきっかけに「職場の服装について、自分が思っていたことを代わりに言ってくれた」という読者の皆様からのメッセージをいただくようになりました。実は界隈に、私と同じ気持ちを持っていた人はひっそりと存在してくれていたわけなのです。
     
    まとめると、少々差し出がましいかもしれませんが、書籍の出版や連載など私自身の露出が増えることで、関心を持ってくれた方が大幅に増加した、というのが今に繋がるひとつの大きな要因ではないか、と感じています。それゆえこれまでお声がけいただいた方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

    単なる「トレンド」で消費されないために

    以上、スペースの関係で非常に簡潔にではありますが、公務員の服装意識の高まりがなぜ起きているのかについて書かせていただきました。
     
    「公務員、もっと服に力を入れてもいいのではないか」という問題意識から始めたこの活動ですが、研修依頼の件数は、なんと昨年の4倍にまで増えており、最近では「接遇マニュアル」などの改定の相談などのご依頼をいただくこともあります。まだまだ小さな芽ではありますが、興味関心を持っていただける方の存在があることが、私がこの活動を続けていける源になっています。

    しかしながら、対自治体レベルの規模の仕事になってくると、「公務員×服装」は属人性の高い領域にとどまってしまっています。首長や担当者が服装への高い意識を持っていないと、研修の実施やマニュアル改定の実現が難しいことが課題です(実際、研修の企画が上司を突破できなかったという話も頻繁に伺います)。
     
    しかし一方で、現場では「ノータイ通年化」や「ノージャケットの試行」など、服装のカジュアル化がどんどん進んでいます。選ぶ服装の選択肢が増えるなかで「適切な服装を選び、着こなす力」は、公務員、そして社会人の基礎力としても必要な能力ではないでしょうか。

    「服装のあり方」を見直す動きは全国の自治体に広がっている
    (各自治体のホームページから引用し加工。上から千代田区三条市上郡町茅ヶ崎市

    界隈での服装への意識の高まりを単なるトレンドで終始することなく、多幸感を持って組織を生き抜くためのスキルとして広め伝えていけるよう、私自身も研鑽を怠ることなく活動していきたいです。


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    ■ 古橋 香織さんの著書紹介

    『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)の表紙カバー

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