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我らはまちのエバンジェリスト #20(福岡市 職員・今村 寛)
対話が拓く水道企業団の未来③

中と外を混ざり合わせる「外部関係者との対話」

    プロフィール
    今村 寛
    《本連載の著者紹介》
    福岡市 職員
    今村 寛いまむら ひろし
    福岡地区水道企業団 総務部長。1991年福岡市役所入庁。2012年より福岡市職員有志による『「明日晴れるかな」福岡市のこれからを考えるオフサイトミーティング』を主宰し、約9年間で200回以上開催。職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。また、2012年から4年間務めた財政調整課長の経験を元に、地方自治体の財政運営について自治体職員や市民向けに語る「出張財政出前講座」を出講。「ビルド&スクラップ型財政の伝道師」として全国を飛び回る。好きなものは妻とハワイと美味しいもの。2022年より現職。財政担当者としての経験をもとに役所や公務員について情報発信する「自治体財政よもやま話」(note)を更新中。

    自治体職員は地域のエバンジェリスト(伝道者)であれ―。そう提唱する本連載筆者が総務部長を務める福岡地区水道企業団50周年事業を通じた対話の実践例をお届けします! 「ライブアートイベント」など20ものユニークかつ独創的な取り組みが誕生した“秘訣”は、庁内を飛び出して積み重ねた「外部との対話」でした!

    50周年を契機に挑戦する三つの「対話」

    前回に続き、私が昨年春の異動以降、一番力を入れている「福岡地区水道企業団設立50周年記念事業」の取り組みについてご紹介いたします。
    (参照記事:50周年事業という“対話”引き継がれていく“レガシー”として

    大きな河川がない福岡都市圏が安定的な水源を求めて圏外の筑後川からの導水を行うために設立された当企業団がその設立50周年を高らかに謳うのは、50年の間この使命を果たしてきた我々企業団が、設立の背景と設立目的を改めて多くの市民に知っていただくための情報発信、すなわち、水源に乏しい福岡都市圏の水事情について都市圏住民の皆さんに理解を深めていただくことが目的です。
     
    50周年記念事業は情報発信による福岡都市圏と水源地域住民の相互理解の浸透。
     
    両地域の相互理解は、これから先50年、100年と続く両地域の連帯を確かなものとするための前提となるものです。
     
    この事業目的を達成するために私たちが挑戦している三つの「対話」
     
    このうち、前々回前回では「職員同士の対話」についてお話ししたところですが、本日は二つ目として「外部関係者との対話」について。

    外部からの理解と協力を得るために

    50周年記念事業として、現在20ものプロジェクトが動いています。
     
    講座や見学ツアーなどによる市民への体験機会の提供、NPOや大学など、企業団と普段関わりのない市民や団体との連携協力、SNSやHP、マスメディアなどの媒体活用、そして記念式典等を通じた水源地域への感謝の発信、といった多岐にわたる事業をそれぞれ目的に沿って遂行するには、実際のところ私たち企業団の職員だけでは手に負えません。
     
    そこで、記念事業について企画段階から大学やNPOなど、さまざまな方にご相談し、企業団外部の知見を取り入れ、連携して事業を構築してきました。
     
    その連携の過程で注力したのは企業団の事業活動を外部に対して可視化し、外部から見た企業団の印象、見え方をお聴きし、理解促進と協力意欲の醸成を図る「対話」。
     
    記念事業を始めとする企業団事業への理解や信頼を醸成するとともに、協力したいという気持ち、自分にも役割があるという当事者意識を関係者間で培うことができればと期待したのです。
     
    この当事者意識を基に、関係者がそれぞれの持つ媒体や方法で多面的に情報を発信することで、企業団単体からの情報発信では届きにくい層にまでいきわたらせることができ、また、発信者が持つ企業団への親近感や信頼感を一緒に届けることができる、そんな期待も併せて企画を進めるなかで、さまざまな連携協力が実現しています。

    関係者に広がる理解と協力の輪

    今年3月には九州大学芸術工学部の学生に50周年記念ロゴマークの原案を作成してもらいました。
     
    企業団の事務所のすぐ近くにある大学でデザインを学ぶ学生さんたちに、授業の中でロゴマーク作成を制作課題として掲げたところ、30近くの作品が提案されました。
     
    最優秀作品として採用したのは筑後川と福岡都市圏の固い絆を表す「水引」をモチーフとしたものでしたが、私たち企業団の事業内容や50周年を契機に何を伝えたいかという私たちの思いを汲んだあたたかなデザインとなりました。

    九州大学芸術工学部と福岡地区水道企業団の50周年記念ロゴマーク

    このほか、福岡都市圏の学生さんから募った学生マネジメントスタッフ(学生おうえん隊)が、記念ポスターのキャッチコピーや記念ロゴの入ったグッズの検討に携わり、今もさまざまなイベントの企画や運営を企業団職員と一緒に取り組んでいただいています。
     
    この4月からは、九州産業大学映像・メディア学科、福岡市教育員会との連携により、筑後川から福岡都市圏に水を送り続ける私たちの生命線、福岡導水を題材とした小学生向けの学習動画素材を大学生が制作するというプロジェクトもスタートしました。
     
    5月から始まった連続講座『考えてみよう! ふくおかの「水」のこと』では、市民自らが学びの場を企画し運営しているNPO福岡テンジン大学との連携により、市民自らが福岡都市圏の水事情や筑後川との関係性について学びを得る場を創り出すことができています。

    海水淡水化施設で障がい者のライブアート

    つい先日には、私たちが管理運営する海水淡水化センター まみずピアでライブアートイベントを開催しました。

    まみずピアは夏休み期間中は知る人ぞ知る子どもたちの自由研究の題材として人気を博しており、親子連れでの来場が結構あります。
     
    そこに着眼し50周年の節目に改めてまみずピアの施設見学の充実強化を図り、来場者の皆さんに喜んでもらうとともにより多くの見学者を呼び込み、日本一の能力を誇る、都市部では全国でも稀な海水淡水化施設がなぜ必要だったのかという福岡都市圏の水事情も含めた施設の概要を広く知ってもらう機会として取り組んでいるものです。
     
    通常の見学ルートに加え、期日限定でバックヤードツアーを実施したり、特製の記念グッズを配ったりして見学者の満足度向上を図っているのですが、この見学強化プロジェクトの一環として、2日間、まみずピアでライブアートイベントを開催し、「水」をテーマにトラックの幌へ2日間かけてアートを描いてもらいました。

    ライブアートイベントの模様

    このライブアートイベントを手掛けるPICFA(ピクファ)は佐賀県基山町にある就労継続支援B型の障がい者施設で、この施設では、知的障害や自閉症、ダウン症などの「障害のある人たち」が創作活動を「仕事」にしています。
     
    『利用者の創作活動が「アート」だけでなく「人生」にも広がるように』を合言葉に、主に「絵画」「デザイン」「ライブイベント」「壁画」「ワークショップ」等の創作活動を軸に活動しておられ、最近ではローソンの「マチカフェ」で使用するコーヒーカップのデザインも手掛けるなど、その活動は全国に広がっています。
     
    今回、縁あって企業団施設をPICFAの創作活動の場として提供し、PICFAのアーティストの皆さんのライブパフォーマンスでまみずピア見学強化プロジェクトを盛り上げていただきました。
     
    このライブアートイベントで完成した作品は、10月に福岡市役所西側ふれあい広場にて開催の「筑後川のめぐみフェスティバル」に展示する予定です。

    水道とアートという異色の取り合わせですが、このご縁を通じてまみずピアのこと、PICFAのこと、もっともっと知ってもらいたいと思っています。

    互いに気づき学びあう中で培う絆

    うれしいのは、この連携の中で確実に関係者の中で私たちの水事情についての理解が進み、当事者意識が沸き上がっていることです。
     
    前述のロゴマークを作成してくれた学生をはじめ、各イベントの主催者、登壇者の皆さん、学習動画素材を制作している学生、その他事業に協力してくれている多くの関係者の方が福岡都市圏の水事情のことをしっかり勉強してくれていますし、私たちにもいろいろな気付きを与えてくれています。
     
    先述のPICFAのライブアートイベントではアーティストの皆さんが企業団のこと、福岡都市圏の水事情のことを自分たちで学び、そこから作品のモチーフ、テーマを話し合い、それを作品にしてくれました。
     
    このように、企業団の中と外が混ざり合い、さまざまな方々の協力を得て連携しながら記念事業を進めることで、私たち企業団職員も、自分たちが持っていない視点やスキル、ノウハウなどに触れることができ、それらを取り入れることで、より充実した事業企画が実現していると実感しています。

    立場や世代を超えた対話が力強いシナジーを生む!

    この連携が50周年の今年に限った一過性のものではなく、50周年記念事業を通じて結ばれた固い絆として、これから先も当企業団の事業運営を支えていく関係性となればいいなと期待し、ご協力いただいているすべての皆さんに改めて感謝申し上げ、これからもいい関係を構築していきたいという気持ちを新たにしています。
    (「対話が拓く水道企業団の未来④~『自治体と住民の対話』が未来をつくる」に続く)


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