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人口が増え続ける南箕輪村が描く行政ビジョン

子育て支援を重点施策に据え、村ならではの「小さな幸せ」を追求

子育て支援を重点施策に据え、村ならではの「小さな幸せ」を追求

※下記は自治体通信 Vol.71(2026年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

長野県の南部に位置し、中央アルプスと南アルプスを望む自然豊かな環境にある南箕輪村。全国の自治体が人口減少に悩むなか、昭和40年代から人口が増え続けており、当時の約6,000人から現在では約1万6,000人と2.5倍以上になっている。同村長の藤城氏は、「地域独自の環境に加え、先人の取り組みが人口増加につながった」と話す。令和7年に村政150周年を迎えた南箕輪村。村政運営のバトンを引き継いでいる同氏に、現在の取り組みなどを聞いた。

インタビュー
藤城 栄文
南箕輪村長
藤城 栄文ふじしろ えいぶみ
昭和54年、東京都生まれ。平成14年に中央大学理工学部物理学科を卒業後、江戸川区役所に入庁し、地域振興や人事業務などに携わる。平成22年、一般財団法人(現:公益財団法人)日本フラッグフットボール協会の事務局次長に就任。平成29年、地域おこし協力隊として南箕輪村に移住し、移住・定住促進を担当する。平成31年、南箕輪村議会議員に当選。令和3年、南箕輪村長に就任する。現在は2期目。

先住者と移住者が、暮らしやすくなる施策に注力

―南箕輪村では、昔から人口が増え続けているそうですね。

 はい。当村には、中央自動車道・伊那ICがあり、東京や名古屋方面へのアクセスが良好で、自然の豊かさと高い利便性が両立しています。そのうえで、電子や精密機械など製造業の企業が多数立地し、地元住民の就業の受け皿になっています。また、保育園から大学まで教育機関が揃うほか、村一番の人気スポットである大芝高原には人工林を主体とした森林が形成され、住民の憩いの場となっています。こうした背景には、先人が工業団地を計画的に整備・分類して企業誘致を積極的に行ってきたことに加え、信州大学に広大な土地を寄付して誘致を図ったという経緯があります。さらに、約130年前から原っぱに植樹をして、自然豊かな森林になるまで大切に育ててきたからにほかなりません。それらが、人口増加につながっているのです。また、近年は人口増加にも新たな傾向が見られます。

―どのような傾向ですか。

 子育て世代の移住者の増加です。これは、先代の村長が平成17年度から段階的な保育料の引き下げを実施したほか、福祉医療費の支給対象者が未就学児までだったのを平成18年度から段階的に拡大したことなどが要因です。こうした施策は県内の自治体でも先進的で、「南箕輪村は子育て支援が手厚い」と口コミで広がったのです。こうした施策を長年積み重ねてきた結果、当村の移住者の割合は73.3%*で、平均年齢は43.8歳*と県内で一番若い自治体になりました。

 私が村長に就任した当初は、新型コロナウイルス感染拡大防止という目の前の危機対応に必死でした。それが収束して以降は、先人の取り組みを活かしつつ、先住者と移住者がさらに暮らしやすくなるための施策に注力しています。

*73.3%:令和4年度地域福祉計画策定時のアンケート結果より
*43.8歳:令和2年国勢調査より

温泉や昼食を無料で提供し、産後間もない母子を支援

―具体的にどのような施策に注力しているのですか。

 引き続き、子育て支援は重点施策として取り組んでいます。たとえば、「ママのためのゆったりタイムin大芝の湯」という事業を令和6年から実施しています。産後2ヵ月程度のママと乳児が対象で、ママは村内の「ふれあい交流センター 大芝の湯」にて昼食つきで温泉に無料で入浴できます。その間、役場の保育士と保健師が乳児の面倒をみるサービスで、育児に関する悩み相談も可能です。毎日がんばるママが、心身ともにリフレッシュし、育児に向き合えるようにとの想いから始めました。利用者から大変好評です。また、会計年度で任用する保育士の報酬を最大3割引き上げました。子育て世代の移住者増加に伴う、育児需要の高まりに対応するための人材確保が目的です。賛同する親御さんも多く、令和6年に実施しました。

 この子育て支援施策に加え、私が村長就任以降、特に重視していることがあります。

村の暮らしに求められるのは、「人と人」「人と自然」のつながり

―それはなんでしょう。

 「人と人とのつながり」と「人と自然とのつながり」という2つの環境づくりです。南箕輪村で暮らしたいと考える場合、「土地代が高額で家も建てられない都会でストレスを抱えて暮らすより、自然に囲まれた土地に大きな家を建てて子どもたちと思いっきり人生を満喫したい」という人が多いと思います。そこでまず重要なのが、人と人との距離感です。南箕輪村には移住者が多く、受け入れる風土はあるものの、先住者の移住者に対する過干渉はトラブルを生みかねません。とはいえ、孤立するのもいけない。そこで、「人と人とのつながり」の面で力をいれようとしているのが「ほど良い地域コミュニティの形成」です。

―詳しく教えてください。

 まずは地域コミュニティの基本となる、自治会の改善です。特に災害などの緊急時には「共助」の力が不可欠なため、自治会の存在は重要です。しかし、さまざまな業務を個々に課してしまうと、若い世代は入会をためらうほか、身体に負担がかかる高齢者の退会も招きます。そこで、自治会の業務を見直し、必要なら村が一部の業務を引き受けるなどで、入会しやすく持続可能な運営を目指します。

 また、自治会のほかにも地域コミュニティ形成の核となる団体への支援を強化します。令和6年に地方自治法の一部が改正され、条例をつくれば、地域住民の生活サービスの提供に資する団体を市町村長が指定できるようになりました。これにより、たとえば子ども食堂を運営する団体などに対し、私が「公共性が高い」と判断すれば、自治会と同様に補助金が出せます。こうした取り組みは先進事例も少ないですが、意欲的に取り組みます。

50年後を見据えた、森林づくりに取り組む

―「人と自然とのつながり」で取り組んでいることを教えてください。

 令和6年に「大芝高原森林づくり実施計画」を策定しました。大芝高原の森林は、かけがえのない住民の財産ですが、約1万3,000本のアカマツが「松枯れ」の被害に遭い、年間100本以上が枯れ木となっています。こうした状況などを踏まえ、約2年かけて住民や信州大学の教授と話し合いを重ねたうえで、整備計画を完成させました。今後は計画的な樹種転換なども含め、50年後を見据えた森林づくりに取り組んでいきます。

 また、令和7年3月、村政150周年のメインイベントとして植樹祭を開催しました。約450人の家族連れなどの住民が参加し、計150本の苗木を植樹しました。住民それぞれが名前やメッセージをプレートに書き、植えた場所に設置しました。大芝高原の森林を次世代につなぐと同時に、子どもと苗木の成長をともに見守ることで、村への愛着をさらに深めていってもらいたいですね。

―こうした取り組みの先に、どのような村の姿を見据えますか。

 私が掲げている、「いつまでも幸せに暮らせる村」を創りあげていきます。私は、妻の実家が近隣にあることがきっかけで、平成29年に地域おこし協力隊の移住定住担当に任用され、初めて南箕輪村を訪れました。村のことを色々調べた結果、未来を見据えた先人の過去の努力を知りました。そして、南箕輪村が好きになり、「この村を時代に合った施策でさらに磨きあげ、後世につないでいきたい」という考えにいたりました。南箕輪村ならではの小さな幸せを住民が積み重ねていけるような、理想的な環境を追求していきます。

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