
※下記は自治体通信 Vol.71(2026年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
成田国際空港(以下、成田空港)の拡張事業や首都圏中央連絡自動車道(以下、圏央道)の延伸など、広域的な交通・物流網の整備が進む千葉県。令和7年7月には、東京圏国家戦略特区の区域が県全域に拡大され、物流・産業拠点の形成に注目が集まっている。その同県では、令和7年4月から知事2期目に突入した熊谷氏のもと、10月には新たな総合計画を決定している。今後、どのような県政運営がなされるのか。同氏に聞いた。

市町村との関係を密接にし、産業政策でも着実な成果
―2期目のスタートにあたり、1期目の成果をどのように振り返りますか。
県と市町村の距離をかなり縮めることができたと感じています。私自身も1期目の4年間で県内54市町村すべてを現地訪問したほか、現場職員たちも積極的に各地に足を運び、それぞれが抱える課題をつぶさに確認し、その解決に取り組んできました。その成果は、新型コロナ対応や防災危機管理などに活かされています。社会課題をともに解決するパートナーとして、コミュニケーションをとっていく文化が醸成されてきており、各市町村長からも、「県庁との関係性が本当に変わった」との言葉をいただくようになりました。
もう1つ、力を入れてきたのは、成田空港を核とする産業政策です。
―詳しく聞かせてください。
これまで県として大きな産業政策がしばらくなかった千葉県ですが、成田空港で現在進行している拡張事業にあわせて、周辺の物流・産業拠点の形成に力を入れてきました。成田空港の拡張事業は、第3滑走路の新設を含め、空港機能を2倍へと拡張する大規模なものであり、「第2の開港」ともいわれています。
この動きに連動するかたちで、千葉県としても企業集積を図る取り組みを進めてきました。こうしたなか、令和6年度の製造業等の立地件数は過去最高を記録するなど、着実に企業誘致が進んでいます。さらに、この間に国との協議を重ねた結果、国際的ビジネス拠点形成・新事業創出に向けて、千葉県全域が国家戦略特区に指定されるなど、今後のさらなる産業集積に向けた環境整備も進めることができました。

成田空港の拡張事業を受け、波及効果を最大化させる施策
―千葉県では先ごろ、今後4年間の新たな総合計画が決定されました。計画のポイントはどこにありますか。
千葉県の総合計画の特徴をいくつか申し上げると、1つは先ほどふれた「防災危機管理」です。千葉県は「令和元年房総半島台風」をはじめ、自然災害で大きな教訓を得てきた県です。「防災危機管理に終わりはない」という考えのもと、「被災者支援システム」の全県導入を進めるなど、防災DXの促進を柱に「防災県千葉」をつくる取り組みを進めていきます。
もう1つの特徴も、先ほど申し上げた成田空港を核とした産業政策になります。
―計画では今後、どのような取り組みを進めていくのでしょう。
成田空港の拡張事業にあわせて現在、広域的な道路ネットワークの拡充が進められています。令和8年度には圏央道が全線開通する見通しで、さらに北千葉道路や新湾岸道路といった重要な建設プロジェクトも進んでいます。この一連の動きによる波及効果を最大化させるため、県として道路が整備される周辺地域で新たな産業用地の整備などを進めていきます。
また、全国有数の農林水産県でもある千葉県として、その強みを活かし、成田空港の機能拡張を千葉県産農水産物の輸出拡大にもつなげていきたいと考えています。すでに成田空港近隣の公設地方卸売市場には、輸出に必要な手続きを実施できる「ワンストップ輸出拠点機能」が整備されています。この機能を活用し、海外へのPRを積極的に行っていく考えです。
―そのほかに、総合計画におけるポイントはありますか。
3つ目のポイントとして、少子化に対する問題意識は強く持っており、「人口減少対策」は重点施策と位置づけています。千葉県の人口減少のスピードはまだ比較的緩やかであり、それは東京都に隣接している恩恵といえます。一方で、県境の地域は、豊かな税収を背景とする東京都の施策によって、人材の流出が深刻な状況にあるのも事実です。ここで重要なのは、自治体間で限られたパイを奪い合うことではなく、千葉県としての出生率を上げていくことであり、そのために、子育て支援や医療的支援はもちろん、若者の出会いそのものを官民でつくる取り組みにも着手しようと考えています。
こうした人口減少対策に力を入れる一方で、仮に今後人口が減少していくなかでも、県民一人ひとりが求めるサービスを受けられるように、持続可能な医療・福祉・介護サービスの提供体制を整備していくことも同時に必要です。
東京・世界・田舎の視点、あわせ持つことが千葉の魅力
―そのためにも、千葉県のポテンシャルを活かした産業政策が重要になるわけですね。
そのとおりです。私はよく「千葉経済圏の確立」という理念を語ります。東京圏に位置する千葉県は恵まれた環境にあり、東京へのアクセスを向上させていくことも必要ではありますが、それ以上に今後大事になるのは、独自の求心力を生み出していくことだと考えています。世界経済が日本を上回る成長を続けると予想される将来にあっては、その成長を日本や首都圏、さらには千葉県としてもどのように取り込み、豊かさを循環させていくのか。その視点が問われていくことになるからです。その際、成田空港という「成長する世界への窓」を抱えていることは、千葉県の大きな強みです。
そもそも千葉県には、東京に限りなく近い都会もあれば、自然豊かな田園地帯や漁村、過疎地域もあり、まさに「日本の縮図」だと私は思うのです。さらに、成田空港を通じて世界とも接しています。東京に一番近く、世界にも近く、そして田舎にも近い。この3つの視点をあわせ持つことこそ、千葉県の魅力であり、その魅力をいかに磨き上げていくかが、今後の県政運営の最重要テーマにほかなりません。
20年後、30年後の県民から、感謝される存在に
―最後に、今後の県政運営におけるビジョンを聞かせてください。
今回の新たな総合計画では、10年後を見据えた課題意識と目指す姿が示されていますが、我々行政は、さらにその先の20年後、30年後の県民から感謝される存在にならなければいけないと考えています。その壮大な目標を実現するためには、多くの関係者を巻き込み、アイデアやネットワーク、プロジェクトを引き込むことが必要ですし、そのためのチームビルディングこそ私の役割だと自覚しています。いまの計画が進めば、20年後には、成田空港など千葉県のポテンシャルを活かした県づくりが間違いなく確立していると想像できます。その未来の実現に向けて、この4年間はこれ以上になく重要な時期だと位置づけています。


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